憑依學園剣風帖(東京魔人学園剣風帖×クトゥルフ神話)   作:アズマケイ

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陰陽師2

翌日の放課後、チャイムがなるなり3のCの教室に飛び込んできたのは遠野だった。教室では昼前に12月だというのに夏服で登校して来た京一が風邪をひいたのかくしゃみを連発している

 

「えへへへへへッ、みなさ~ん、ごきげんよう~!!」

 

「あら、アン子ちゃん」

 

「なんだ、遠野。いつになくご機嫌だな」

 

「えェ、そりゃあもう!!あ~ら、京一君。やっぱり風邪をひいたのねェ~」

 

「てめェ......、なにがいいたいんだよッ!」

 

「うふふ......いってもいいのかしら~?」

 

「お前、まさか......」

 

「えッ?なになにッ、アン子!!ボクたちにも教えてよ~ッ!!」

 

「んふふふふ~、そうね~、どうしよっかなァ~。ねッ、龍麻君は聞きたい?」

 

「そりゃもう」

 

「ふふッ、龍麻君も意外とゴシップ好きねェ。いいわよ、あたしが最高のネタを提供してあげるッ!本当なら、情報提供料っていいたい所だけど、やっぱりこういう話題は、みんなで笑い飛ばしてやるのが、ふふふ......1番よねェ~、京一くーん?」

 

「ま、まさか、お前......あの時、あそこにいやがったのかッ!?」

 

「お───────ほほほほほッ!バッチリ見せてもらったわよッ!アンタが───────、パンツ一丁で歌舞伎町を駆け抜けていくのをねェッ!!」

 

「うわああああああッ!!そんなデカい声で......!!」

 

「パンツで歌舞伎町をッ!?」

 

「京一君......」

 

「いくらなんでも、そこまで馬鹿とは......」

 

「なにやってんだよ、きょーちゃーん。さすがに俺も親友として恥ずかしいんですけどー」

 

「しッ、しょうがねェだろッ!!財布から学ランから何から何まで一切合切根こそぎあのイカサマ野郎に巻き上げられたんだからよォッ!!」

 

「京一君......それじゃあさすがに風邪もひくはずだわ」

 

「それにこの時期、ひとりだけ夏服登校だもんねェ~」

 

「くっそォ~ッ!!こうなったら意地でもヤツから全部奪い返してやるッ!」

 

「あら、相手は相当な腕の持ち主なんでしょ?所詮、素人がプロのイカサマは見抜けないと思うわよ」

 

「なるほどな、それで龍麻を頼った訳か」

 

「えッ......?それ、どういうことなの?醍醐君」

 

「龍麻には、古武道を通して鍛えた鋭い動体視力がある。それをもってすれば、微かな小手先の動きを読み取ることができるかもしれんからな。そうじゃないか?京一」

 

「ちッ、バレてたか」

 

「ふ~ん、面白そうだね。ねッ、ひーちゃん、ここは協力してあげたら?」

 

「仕方ないなあ、きょーちゃんの仇はとってやるよ」

 

「えへへッ、結局ひーちゃんは京一のこと、助けるんだよねェ」

 

「親友だしな」

 

「いささか甘やかしすぎのような気もするが......まあ、そこが龍麻のいいところだな」

 

「ひーちゃん......お前、ほんっとにいいやつだぜ!恩に着る!さすがは俺の相棒だッ!!」

 

「まァ、京一のことはいいにしても、たしか新宿区内には白い学ランの高校は無いはずだ。余所者にこの街でやりたい放題させておく訳にもいくまい」

 

「わざわざ新宿に出てきて、あくどい商売しようなんてほんと図々しいにも程があるよッ」

 

「まぁ、どうせ目的はイカサマ勝負で金品を巻き上げることだと思うけど、龍麻君、少し身の回りに気をつけた方がいいわよ」

 

「ひーちゃんがどうかしたのかよ?なんか、狙われるのがわかってるような口ぶりじゃねェか」

 

「アン子ちゃん?なにか、また事件が起こっているというの?」

 

「うん、確証はないんだけどね。ここひと月くらい、23区内で結構な男子生徒が行方不明になっているのよ。警察がそこに着目してるかどうかは定かじゃないけど、でも、あたしの調査によれば、行方不明になったこは全員、今年になってから今の高校に転校してきている。つまり───────」

 

「全員、転校生、というわけか」

 

「そうよ───────。もしも相手が《力》の持ち主で、意図的に転校生を狙っているとすれば、龍麻君を探していり可能性もなくはない」

 

「もしそいつが、その転校生狩りの犯人だとすれば、京一が狙われたのも俺たち、いや龍麻をおびきだすための罠かもしれんな。もしそうなら。皆で一度そいつの顔を拝みにいくか」

 

「うんッ、ここは向こうの誘いに乗ってみるのも手だと思うよ。アン子はどうする?ボクたちと一緒に行ってみる?」

 

「残念だけど、あたし、槙乃も誘ってこれから日本橋に行くの。そこでやってる大好きな画家の個展が今日までなのよッ!」

 

「画家の個展~ッ!?お前にそんなにまともな趣味があったのか」

 

「余計なお世話よッ!秋月さんは、あたしたちと同じ高校3年生なんだからッ!」

 

「あら、アン子ちゃんの好きな画家ってあの、秋月薫さん?」

 

「さすがは美里ちゃん!!やっぱり知ってるのねッ!中央区の超名門校、私立清廉学院1年の秋月薫!!今評判の車椅子の女子高生天才画家よッ!!大胆かつ柔らかな絵のタッチとあの浮世離れしたどこか儚げな風貌......もうッ、護ってあげたいって感じの美少女なのよ~ッ!!」

 

「アン子が京一になった......」

 

「薫ちゃんにはお兄さんがいるんだけど、これまたイケメンでね~、将棋の日本チャンピオンなのよ!!絵も上手だしね~、征樹っていうんだけどこれまたいい絵をかくの!!」

 

「ファンの心理というのは他人には全くわからん物だな......」

 

「な、何よォ~ッ!アイドルおたくの京一と一緒にしないでよねッ!!」

 

「誰がおたくだッ!!俺が好きなのは舞園さやかちゃんだけだッ!」

 

「ふん、好きなことにかわりないでしょッ!と、そんなことより龍麻くん、昨日連絡した話、みんなに伝えといてくれた?」

 

「あ~、ごめん。昨日、やっと先生と電話繋がって長話したら終わっちゃったんだよな」

 

「今の今まで忘れてたわね?もー、気持ちはわかるけど」

 

「え、なになに?」

 

「桜ヶ丘中央病院に転校生狩りについて調べるついでに話を聞きに行ったんだけど。那智真璃子さんがね、あたしまで襲われたこと聞いて、式神用意してあげるから要望とりまとめといてって言われたの。詳しくは龍麻君に聞いといてね」

 

「わかった、今から連絡とっとくよ」

 

「よろしくね~。そんなことより京一くーん。とりあえずあんたのパンツ姿は激写しておいたから、写りがよかったら後で焼き増しして校内掲示板にはっといてあげるわ」

 

「なッ!?やめろおおおおおおおッ!!」

 

「おーっほっほっほ!今度の新聞楽しみにしてなさいよね~ッ!それまでこれ読んでて」

 

遠野は最新の真神新聞を緋勇に渡した。

 

「この鬼ッ!悪魔ッ!お前には人の心がないのかッ!!」

 

「なんとでもいいなさいよ。あたしは新聞が売れればそれでいいんだからッ!それじゃ、あたし槙乃待たせてるから。じゃあね~ッ!」

 

「バカヤロ~ッ!ネガよこせー!」

 

「いやよ~ッ!」

 

蓬莱寺の声が階段から聞こえた気がした。

 

「いやァ~、わらったわらった。転校生狩り追いかけるついでに、まさかあんなスクープが撮れるなんてッ!やっぱり、あたし、ついてるわ~ッ」

 

「あはは......アン子ちゃんイキイキしてますね」

 

「お待たせ、槙乃ッ。いやだって、まさか那智さんから秋月兄妹の個展に誘われるとは思わなかったじゃない~?昨日は売上間違いなしのスクープもゲットできるし!京一と反対であたしついてるわ~!さあて、急ぎましょっか、槙乃。那智さんとは日本橋駅で待ち合わせよね、たしか?」

 

「そうですね!」

 

私達は顔を見合わせて笑ったのだった。

 

 


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