憑依學園剣風帖(東京魔人学園剣風帖×クトゥルフ神話)   作:アズマケイ

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咆哮3

 

私達はただちに得意とする属性の技ごとにわかれて攻撃をしかける。水流や氷結が宝玉の中に溶けていく。吸い込まれそうな水色の濁流に潜む、なにかを明確に感じ取る。

 

「来ます!みなさん、気をつけて!」

 

私は声をはりあげた。その直後、どこからともなく発生した火の柱が襲いかかる。それを濁流が押し流した。私達は二本の脚で地を踏みしめ、背後から押し寄せる力に耐えた。

 

翡翠だった。

 

勢い良く通っていく川の堰が切れて濁流が流れていくような、騒々しさだった。激流が、目前を通過していく。洪水が宝玉の炎を砕き流す。流れはいよいよ、ふくれ上り、海のようになっていった。流れ入った水勢は底に当って、そこから弾き上り、四方へ流れ落ちて、縁から天然の湧き井の清水のように溢れ落ちていた。

 

坂になっている小径を滝のように流れている水勢が、骨と皮ばかりになっている復一を軽々と流し、崖下の古池の畔ほとりまで落して来た。

 

耳の注意を振り向けるあらゆるところに、濁流の音が自由に聴き出される。その急造の小渓流の響きは、眼前に展開している自然を動的なものに律動化した。聴き澄している大地ごと無限の空間に移して、悠久に白雲上へ旅させるように感じさせる。 

 

赤い宝玉から光線が放たれる。呪詛だった。だが、ノーデンスの《加護》を獲得した《旧神の印》が緋勇たちをあらゆり厄災から守り抜く。私は們天丸からもらったお守りがあらゆる状態異常をはじきかえす。無効化したり、反射したり、誰一人犠牲になる者はいなかった。

 

美里たちが回復魔法を発動しはじめる。私もその恩恵にあずかりながら、ふたたび《アマツミカボシ》の《氣》を練り上げて、契約している邪神の奉仕種族たちを呼び出したり、その《力》を刀に宿して宝玉に放ったりした。

 

ぴしり、と赤い宝玉にヒビが入る。ぱらぱらぱら、と煌めく赤が落ちてきて、やがて亀裂が大きくなっていく。私達はその破損箇所目掛けて怒涛の攻撃をしかけ、どんどん破壊していく。やがてふりそそぐ赤い破片が大きくなってきて、割れ目はとうとう半分にまで到達した。

 

「風にのりてあゆむ者よッ!我に力を!」

 

水による攻撃でびしょ濡れになっている宝玉全体を魔の風が攻撃する。まるで意志をもっているかのように、どんどん赤い宝玉を凍てつかせていき、そこに入り込んでいた水が凍りついて質量を増し、バキバキバキザキバキッという音が轟いた。

 

「今です!」

 

「へッ、これで仕舞いだッ!雷神降臨乱舞ッ!!」

 

神罰の執行者である雷神の気を纏いあらゆる邪妖を滅する乱撃が赤い宝玉に襲いかかる。

 

内側から光が溢れたかと思うと、赤い宝玉は消滅した。

 

「やりましたね、雷人君!」

 

「へへッ、槙乃さんたちのおかげだぜ」

 

「よし、朱雀の宝玉は片付いた。みんなのところに加勢しよう」

 

「はい!」

 

「おうよ!」

 

雨紋たちは玄武の宝玉に向かうようなので、私達は青龍の宝玉のところに向かったのだった。

 

 

 

 

純粋無垢、新たなスタートを意味する白。清潔感があり、万人に受け入れられる色でもある。無色透明は「水」と「光」を象徴する浄化の色だ。周りの景色や光が写り込むことでさまざまな表情を見せ、その美しさは無限に広がる可能性を秘めている。角度によって石の表面に白~青色の光の筋が浮かぶ不思議な宝玉だ。乳白色の中に青白い輝きを持ち、雲の切れ間から顔を覗かせる月の光が封印されているようでもあった。

 

それは見上げるほど巨大な宝玉であり、内側からなにかが蠢く気配がしなければ見入っていたに違いない。

 

「私達も加勢します。大丈夫ですか?アラン君たち!」

 

「待たせたね」

 

私達が加勢したことで《アマツミカボシ》の《宿星》の影響下にある仲間たちの《力》が大きく上昇していく。

 

だいぶダメージを与えていたようで、巨大な白い宝玉は、今にも砕けそうなほどにまでひび割れていた。

 

近くまで寄らなければならない方陣は使い物にならない。それぞれが射程範囲の長い、あるいは広範囲の属性攻撃をしかけているようだった。

 

私は《如来眼》で青龍の宝玉を見る。

 

「みなさん、もっと下がってください!青龍の宝玉による報復がきますよ!!」

 

私の叫びにあわててみんな後ろに下がる。しばらくして、内側から真っ白な光が放たれ、先程までいた石畳が一瞬にして丸焦げになった。スレスレで回避した村雨が口笛を吹くのがみえた。

 

青龍の宝玉は動かない。静止したままだ。こちらに動く様子はないから、射程範囲にだけ気をつければいいだろう。私がそういって攻撃をしかける。朱雀の宝玉よりダメージは与えられないが、ヒビは着実に大きくなっていくのがわかる。

 

ぱらぱらぱら、と真っ白な破片が空から落ちてくる。それごと吹き飛ばしながら私はさらに《アマツミカボシ》の《氣》を青龍の宝玉に叩きこむ。さらに粉砕された青龍の宝玉の破片が粉雪のように舞いちって、月光の下で煌めいた。やがて音もなく消えてしまう。

 

「愛がいなかったら、今頃大ダメージだったな。立て直すのが難しかった」

 

「力になれて良かったです。これが最後の戦いなんですから、頑張りましょう。もう一息です」

 

「そうだな、早く四神の宝玉を破壊して、《黄龍》と柳生のところに向かわなくては。いくら龍麻たちでもキツイだろう」

 

「そうですね、急ぎましょうッ!!」

 

本来はもっと小さな宝玉が《黄龍》の周りに4つずつ出現し、16こも出現する。すべて壊せば《黄龍》の降臨を鎮めることが出来るのだが、私達の前にある宝玉はあまりにも大きいし、ほかに宝玉が見つからないことから、これを壊せばいいのだろう。ただ、先程破壊した朱雀の宝玉の影響を《黄龍》や柳生が受けた様子がない。このまま放置すれば四神が降臨すると柳生が宣言した以上、破壊するのが先決なのは間違いない。だが弱体化が望めないことに一抹の不安を覚える。

 

それに柳生と《陰の黄龍の器》と《黄龍》は3連戦になるはずなのだが、今同時に相手にしているため戦力が分断されてしまっているのだ。はやく緋勇たちに合流しなければならない。

 

私は青龍の宝玉目掛けて一撃を叩き込んだ。

 

私達とは反対側からガラスが砕け散る音がした。振り返ると雨紋たちが加勢した玄武の宝玉が破壊されたようである。あとは白虎の宝玉だけだ。雨紋たちが連戦にもかかわらず疲れもみせずに仲間たちのところに向かうのがみえた。

 

「RIP Shot ッ!!」

 

アランの霊銃から全てのものに安らかな死を与えるという意味を持つ、最強の聖撃が放たれた。青龍の宝玉が一瞬の静寂ののち、一気にヒビが入り、砕け散る。歓声があがる。私達はうなずいて、白虎の宝玉に向かう者と緋勇たちに加勢する者とに別れたのだった。

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