憑依學園剣風帖(東京魔人学園剣風帖×クトゥルフ神話)   作:アズマケイ

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憑依學園剣風帖42

「ふっふっふっ、ありがとうね、槙乃ッ!これで二学期一発目の真神新聞の売り上げは決まったようなもんだわッ!さあ、犬神先生にもみせにいきましょうか」

 

緋勇が不在の1週間、午前中は如月の仕事の手伝い、午後は真神新聞部の活動に尽力していたため、ほぼ同時並行で情報収集と情報を共有する媒体である新聞の作成を行ってきた。なんとか緋勇たちが真神学園で補習をしている蓬莱寺たちと合流する前に渡せそうである。

 

「あ、ちょっと待ってよ?アラン君て龍麻たちを尋ねてくるのよね?インタビューできないかしら。そしたら結構美味しいことに......」

 

「どちらにしろ、私たちが新聞部だって話すとっかかりには必要ですし、OKしてくれるかわかりません。これをアラン君に渡しましょう。一応、これを決定稿にして犬神先生にもっていきませんか?期限は今日なんですから」

 

「まあそうね。よし、あとから差し替えも考えて......槙乃先にいっててくれない?あたし、あとから行くから」

 

「わかりました」

 

私は職員室に向かった。

 

「失礼します。新聞部の時諏佐です」

 

「よォ、時諏佐。新聞はできたか」

 

「はい、こちらです」

 

「まあ座れ」

 

「はい」

 

私は素直に隣の先生の椅子に座った。犬神先生は渡した新聞をざっと見て、今私たちがなにをしているのかだいたい把握したようで煙草に火をつけた。

 

「星空は最近見てるか、時諏佐」

 

首から下げてる笛をみるなり犬神先生がいうので私はうなずいた。

 

「お前は《星辰の正しきとき》ってのはなんだと思う」

 

「星辰ですか?星の配列の事ですよね。それが、正しいってことは、魔術的に意味のある位置に来る事です」

 

「最近、星の位置がおかしいのはきづいてるな?」

 

「はい」

 

「まさかとは思うがお前の仕業か?」

 

「......はい?なにいってるんですか、犬神先生。そんなことが出来たら、それこそ邪神の仕業じゃないですか。ある神の役割のひとつは《星辰の正しきとき》がまだ来ていないのに、強引な手を使って無理矢理星辰を正しく調整する事なんですよ?そんなことさすがにできないですよ」

 

私は笑ったが、犬神先生は笑いもしない。

 

「お前が見てるのはこの事件の犯人たちが起こしてるからこその星の位置だろ。地球と火星と金星が正三角形に並んで、その中心近くに水星がある。まさに軌道の流れを考えるならおかしい惑星の並び方」

 

「え、違うんですか?」

 

「違う。たしかに次に完璧に並ぶのは2043年9月16日のはずが、今来ているのは明らかにおかしいがな。俺がいいたいのは北辰だ」

 

「えっ、北極星ですか?私はかの神を目覚めさせる儀式をしている訳では無いですよ?」

 

「お前にそのつもりがなくてもだ。新聞部のくせに北辰の位置が動いたと騒ぎになっているのを知らないのか?」

 

「えっ......北極星が?え?」

 

呆れたように犬神先生が新聞記事をみせてくれた。北極星が昔のように僅かであるが動いているという国立天文台のコラムだ。

 

地球から見て北極星はほとんど動かないという特殊な性質があるため、世界各地では一般的に不動の星として認識されており、様々な伝承が残っている。ところがその中にあって、日本においては北極星は僅かだが動くことが、民間伝承として伝えられている。伝承とは次のようなものである。

 

江戸時代大坂に、日本海の北回り航路で交易をしていた桑名屋徳蔵という北前船の親方がいた。ある夜留守を預かる徳蔵の妻は、機織りをしながら時々夫を思っては北の窓から北極星を見ていた。すると北極星が窓の格子に隠れる時があり、彼女は北極星は動くのではないかと疑いを持った。そこで次に彼女は眠らないように水をはったたらいの中にすわって一晩中北極星を観察して、間違いなく動くことを確かめた。帰ってきた徳蔵に彼女はこのことを告げ、この事実は船乗りたちの間に広まっていった。

 

現在におけるポラリスの日周運動直径はおよそ1.4度だが、過去は3度の日周運動を描いていた。この伝承は、北極星の可動性を説いたものの一つである。伝承は瀬戸内海沿岸を主として広く分布している。

 

驚くべきことに、1997年末から北極星の日周運動は3度を超えるかなり大きな日周運動を描いているらしい。

 

「..................」

 

言葉が浮かばない私は新聞記事を見ているしかない。

 

「《アマツミカボシ》が妙見菩薩と同一視されてるのは知ってるだろうが、こいつの宿星《青龍》も関係があるんだ。またお前の影響力を受けるやつが増えたってことだな」

 

「え、《青龍》もですか?北極星から《玄武》と同一視されたのは知ってますが」

 

犬神先生は教えてくれた。

 

妙見信仰は北辰信仰と結びつくことにより龍蛇の伝を持つ。北辰とは北斗七星だが、その字のごとく、あるいは北斗七星の曲がりくねった形のごとく、龍(辰)になぞらえられる。

 

今でも妙見菩薩の寺に龍綱を作る催事を催す場所があり、かつては百村の旧家から選ばれる北斗七星になぞらえられる七人の男衆であった。相当に念の入った「北辰妙見の龍」だった。

 

まるで見てきたかのようにいう犬神先生に私はなるほどと頷くしかない。

 

「《アマツミカボシ》の信仰があろうとなかろうと、多少なりとも《宿星》は影響しあう運命だ。間違えるなよ、時諏佐。まちがえたとき、運命を共にするのはお前だけじゃないんだからな」

 

「そう、ですね。そうですよね。私、気をつけます」

 

「あァ、そうしろ。お前は今のところ報連相が出来ているようだからまだいいが......抱え込むようになったら終わりだぞ」

 

それは18年前、仲間に無断で柳生と相打ちになるために龍脈に続くはずの門を自分以外の人間が入る前に閉じてしまった緋勇の父親のことをいっているのか。

 

それともこの学園の守り人となることを決意させた女性のことをいっているのか。

 

私にはわからなかったが、犬神先生が私を担任の生徒として心配してくれているのは事実のようなので、素直にうなずくことにする。

 

「引き止めて悪かったな、いっていいぞ」

 

「失礼しました」

 

私は職員室をあとにして玄関に急いだ。犬神先生が促した窓の先に遠野が校門前に走っていく様子が見えたからだ。

 

 

 

 

 

 

私が急いで校門前に向かうと、いつものメンバーが勢揃いしていた。

 

「やァ、緋勇クンッ。夏休みをエンジョイしてるかい?」

 

「ひがみはよせ、京一」

 

「よォ、毎日補習ばっかの蓬莱寺クンッ。今日も元気にマリア先生に扱かれたかい?俺は両手に花でお出かけしてきたよ」

 

「龍麻も煽るな」

 

「龍麻てめぇッ!」

 

「いや~......日頃の行いが露骨にでるとはな~。夏休みになったら京一とも遊びたかったのにな~......まだ一回も遊びに行けてないのにな~......誰のせいかなァ~......??」

 

「そ、それは悪かったよ......だからってなァ!」

 

「ほんとに悪いな、龍麻。こいつは毎日補習なもんで、拗ねてるだけだ」

 

「誰が拗ねるかッ!ガキじゃあるまいし!クソッ、俺の高校最後の夏休みが無駄にすぎていく。浜辺でビキニのお姉ちゃんが俺を待ってるっていうのによォ」

 

「やれやれ。まあ、俺も京一も自業自得だからな。この夏は腰を据えて勉強するしかなさそうだ。それより龍麻、久しぶりだな。元気そうで安心したぞ」

 

「里帰り出来てよかったな、龍麻ッ」

 

「うん、ただいま。で、あそこはなにしてんだ?」

 

「いや、俺達も今来たばかりでな、わからん」

 

「俺らが来た時にはもうこうなってたぜ」

 

緋勇たちが不思議そうにみる先には遠野から生まれて初めての取材を受けて、有頂天になっているアランがいた。遠野は面と向かって美しいと連呼されたことはないようで、いつもの遠野はどこへやら。ペースを乱されてなかなか本題に入っていけないようである。

 

アランはハイテンションで陽気な外国人の皮を被っておきながら、邪神への秘めたる復讐を滾らせている冷静な面がある。周りを巻き込みたくない理性も残っているため、遠野のように首をつっこみたがる一般人には、こうやって煙にまいてしまう。貝のように口が固くなってしまう。なかなかに複雑な精神構造をしているので難しいところがあるのだ。

 

私は緋勇たちより先に遠野とアランのところに向かう。

 

「お待たせしました、アン子ちゃん」

 

「あッ、槙乃ッ!!よかった~、槙乃って英語できるもんねッ!通訳お願い。肝心なところ英語でしゃべられちゃってわかんないのよ」

 

「わかりました。任せてください」

 

遠野がカメラを構える。私は取材ノートを手にしたままアランを見上げた。

 

「はじめまして、アラン君。お待ちしてました。私は槙乃、龍麻君の友達です。天野さんから話は聞いてます」

 

「oh......エリーの友達ネ?」

 

「そうですね」

 

「HAHAHA、ありがとうございマース。ボクの名前はアランクロード、いいマース。聖アナスタシア学園高校の3年生デース」

 

がしっと手を掴まれた。そしてぶんぶん振られる。驚いているとアランがウインクしてきた。

 

「この街に来てからボク、ホントに絶好調デースッ!君のおかげデスネッ!風が教えてくれましタッ!ニンジャと一緒に戦ってましたよネッ!ベリーベリークールでしたヨ~ッ!君はマイビーナスデースッ!!」

 

「えっ、あ、あの......もしかして見てたんですか?」

 

「イエースッ!ニンジャ初めて見るから隠れまーシタッ!ニンジャは仕事中は見られちゃいけないッ!ボク、知ってまースッ!」

 

「嘘ッ、全然わからなかったのに」

 

「風が味方してくれまーシタッ!出会いはいつも劇的でなければナリマセーンッ!一生忘れないようにネッ!ボクはこの国に来るのは、ほんとにほんとに8年越しの悲願なんデースッ!!」

 

「私は忍者ではないですよ?」

 

「NONNON、ニンジャでなくとも一緒に攻撃できる方陣があるなら、ニンジャの仲間デースネッ!エリーいってマシタ。タツマは仲間、ニンジャも仲間、みんな仲間ッ!ベリーベリー素晴らしいネッ!ボク、ずっと仲間いなくて寂しかったんデースッ」

 

「アラン君......よかったです。私たちずっとあなたのこと探してたんですよ。会えてほんとに嬉しいです。できたら仲間になってはもらえませんか」

 

「WOW!!ボクも嬉しいネッ!」

 

感極まったアランに抱きつかれてしまった。思った以上に大歓迎されてしまった上に、あっさり仲間になることを了解してくれた。おそらく江戸川区の事件を一人で未然に防ぎながら、私たちが調査しているのをずっと見ていたからなのだろう。私たちが共に戦える仲間に値するか、ずっと見ていたようだった。

 

「ボクも早く事件解決したいネ。あいつら、ボクの村の仇を呼ぼうとしてる」

 

「えッ、それってどういう───────」

 

アランはウインクして私から離れていった。

 

「待ってくださ~いッ!マイスウィートハニー!」

 

どうやら美里と桜井が到着したようである。さすがは南米の血が半分入っているだけはある。女の子には必ず口説きに入らなければならないと本気で思っているようだった。美里だけでなく桜井も口説きにかかったために、面白くない醍醐と緋勇が二人がかりで止めにはいる。蓬莱寺が美里から引き剥がしながら緋勇の後ろに美里を逃がした。

 

「oh......ナンデソンナトコニ、カクレールデスカ?」

 

美里は緋勇の後ろに逃げ込んで、腕を掴む。

 

「龍麻......ごめんなさい、助けて......」

 

とうとう美里が緋勇を呼び捨てにした。好感度の威力を感じる。あの美里が緋勇を名前で君付けなだけで蓬莱寺たちが一瞬驚くレベルなのだ、呼び捨てにした時点でにやにやが止まらなくなる。一瞬固まった緋勇だったが、大きくうなずいた。美里は不思議そうに瞬きしている。

 

「oh......NO!ユーは誰デースカ?どーしてボクとハニーの邪魔するデースカ?」

 

「見てわかんないか?葵が嫌がってるからだよ」

 

緋勇は美里を隠しながら自己紹介した。緋勇に呼び捨てにされた段階でようやく自分が先に呼び捨てにしたのだと気づいたらしい美里が顔を真っ赤にしたまま固まってしまう。

 

「ォーッ、そんなコワーイ顔しないでくださーいネ。ボクの名前はアランクロード、いいマース。聖アナスタシア学園高校の3年生デース。ユーたちは、ボクのsweethoneyと1体どういう関係デースか?」

 

「大切な仲間だし、友達だし、それに......」

 

「oh......Jesusッ!ボクはただ、彼女と話がしたかっただけデース。迷惑かけるつもりなかったーネ......」

 

「あっ、あの野郎、決定的な言葉聞く前に遮りやがったぞ」

 

「NOッ!!それは誤解デースッ!レディたち逃げるからボク追いかけた。見失いたくなかったデース。やっと会えたボクの理想のヒトッ!!お願いデース。名前、おしえてくださーいネッ!please!」

 

「み、美里です......美里葵......」

 

「COOLッ!アオーイっ!!名前までbeautifulネッ!!アオーイッ。ボク、ちゃんと覚えマシータ。ついでにユーたちの名前も教えてくださーいネ」

 

「野郎はついでかよ、気持ちはわかるけどさ。俺ついさっき自己紹介しただろ......」

 

緋勇は呆れながら、みんなのことを紹介して回る。

 

「ユーは初めてあった気がしませーん!よろしくネ!」

 

「葵狙いだろ、なんかしたらただじゃおかないからな」

 

「だから誤解デースッ!!これでみんなの名前はちゃんとおぼえマシータ。これでボクたちみんなfriendデース。Goodfriends、仲良しネッ!ボクが日本に来た本当の理由は、《鬼道衆》がやばいやつを呼ぼうとしてると聞いたからデースッ!つまり、ボクも仲間デースッ!」

 

「───────はあッ?!!」

 

満面の笑顔でとんでもないことを言い放つアランに緋勇たちがとうとう固まってしまう。

 

「詳しくはマキノに聞いてくだサーイッ!ボク、難しい話は苦手デース」

 

散々引っ掻き回した挙句になぜこのタイミングで私に振るのか、これがわからない。ウインクするアランに私は面倒ごとを全部押し付けられたことを悟った。みんなの視線が集中するなか、私はおずおずと真神新聞を緋勇に差し出して話を始めたのだった。

 

 

アランは一部始終の説明のあとに、補足する形で話を始めた。

 

そもそも村にきた調査隊が今思えばあやしかったのだという。一度だけ浅黒い肌の男がとある研究のために採掘をさせてくれと依頼に現れた。業者がはいり、現地に職場が生まれて村は潤っていったが、たまに人がいなくなる。地中から不規則に並んだ不気味な穴の遺跡が見つかり、70cmほどの円形の碑文が発見され、そこには《鬼道衆》が呼ぼうとしているやばいやつの復活に関する予言が刻まれていた。 だが、アランは具体的にどんな予言なのかは教えてくれない。

 

「ボクの親は《力》が使えるから村では発言権があったけど、そもそも遺跡の発掘自体に反対したから肩身が狭かったネ。ボクは絶対に碑文を見るなといわれたヨ。友達がこっそり教えてくれたから知ってるケド。その友達も、採掘に関わった大人たちも、夢とも現実ともつかない奇怪な経験をした結果、おかしくなっていったネ。そして、ボクもその話を聞いてから、無数のリュウグウノツカイに貪り食われて、深海に横たわる首になり、身動きが取れないまま深海で永遠に生き続ける夢を見たヨ。みたい?なら教えるヨ」

 

あまりにも具体的な悪夢にみんな聞こうとはしなかった。

 

「八年前のある日、事件は起こってシマッタヨ。業者がそいつを復活させようとしたンダ。儀式は失敗したケド、ボクの村は滅んだし、《力》に目覚めたボクだけが生き残ったヨ。キドーシューってやつがなにかわからなかったから、ずっと日本語勉強してたネ。依頼者は浅黒い肌をしてたが、日本人だったヨ。今度はボクが教えてほしいネ。キドーシューってなに?」

 

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