憑依學園剣風帖(東京魔人学園剣風帖×クトゥルフ神話)   作:アズマケイ

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憑依學園剣風帖48

私達は世田谷区の駅に向かって歩いていた。

 

「ラーメンでも食って帰ろうぜッ」

 

「あ~、ごめん。明日、ボク早いから帰るよ。練習試合が近いんだ」

 

「ごめんなさい、私もそろそろ......先に電話いれるの忘れていたから、晩御飯作って待ってると思うし......」

 

「なんだよ、二人揃って付き合いわりィなァ」

 

「小蒔ちゃんも葵ちゃんも一人で帰るのは危ないですよ。特に小蒔ちゃん、さっき魔法の粉撒いちゃったから残り少ないですよね?高笑いが聞こえたら大変ですよ」

 

「うげッ、そうだった~ッ!高校最後の試合が近いのに......!どうしよう......」

 

「ミサちゃんがいう死の暗示があの化け物なら、今の私と同じくらい危ないですよ小蒔ちゃん」

 

「帰り道にうっかり会っちゃったら1人じゃさすがに逃げるしかないよね......」

 

「当たり前だろ~がッ!」

 

「俺達総出でなんとか勝てたレベルなんだぞ?絶対戦うなよ?」

 

「練習試合が近いんだろう、桜井。無茶なことはしない方がいい」

 

「なら、一緒に帰りましょうか、小蒔」

 

「どうしようかなァ......ボクもだけど葵も襲われたらひとたまりもないもんね......」

 

「なら、送っていこうか?」

 

「!!龍麻君が送ってくれるってさ~、よかったね、葵ッ!」

 

「ちょっ、ちょっと、小蒔ッ......」

 

「嫌なら駅まで送るよ、葵」

 

「あ、ありがとう......龍麻君......迷惑じゃなかったら、お願いします」

 

「龍麻君のこと呼び捨てにしたの葵が先なのに、また君づけに戻っちゃったね」

 

「もうッ!小蒔ッ!!」

 

「あははッ、やだなァ怒らないでよ、葵ッ!ボク、ホントのこといってるだけじゃないかァッ!」

 

にやにやした蓬莱寺が醍醐を小突いた。

 

「なにぼーっとしてんだよ。桜井が一人になるってよ、大将」

 

「むッ......き、京一......」

 

「桜井、醍醐が心配だから送ってやるってよ」

 

「お、おいっ!」

 

「え、ほんとにッ!?ありがとう、醍醐君ッ!実は心細かったんだ~」

 

「......あ、ああ、桜井がいいなら......」

 

「醍醐が一緒に帰ってくれるなら安心だよッ!ありがとう!」

 

「美里のことには機敏なくせに自分のことになると途端に鈍感になるのどうにかなんねーのかね、桜井の奴。醍醐が可哀想だぜ」

 

「醍醐君のアプローチがわかりにくいのもあるも思いますよ」

 

「だよなァ......まッ、荒れた中学時代だった訳だから女に耐性ね~のも無理ねぇが」

 

聞こえてるぞお前らという顔で睨まれてしまったが、私は笑って返した。

 

「って~ことは......」

 

「私は大丈夫ですよ、京一君」

 

「よし、一人寂しく食うよりマシだなッ!付き合いわりぃ奴らはほっといて行こうぜ、槙乃。ついでに送ってやるよ。お前、あの《印》つかえねえもんな」

 

「ありがとうございます、京一君」

 

「京一ッ、槙乃死んじゃうかもしれないんだから、絶対に怪我させちゃダメだからねッ!」

 

「言われなくても逃げるに決まってんだろッ!俺をなんだと思ってんだッ!」

 

「京一のことだから俺のことはいいから先にいけってあの化け物に向かっていきそうだよな。それ、逃げた先で槙乃があぶないパターンだからやめとけよ」

 

「龍麻までッ!うッ、ウルセェなッ!好き勝手いいやがって!」

 

「槙乃を変なことに誘うなよ」

 

「誘わね~よッ!家まで送るっていってんだよ!だいだい校長センセにバレたらやべ~じゃねェかッ!!」

 

「あはは。大丈夫、頼りにしてます、京一君」

 

「槙乃......ッ!ほんとお前いい奴だなァ......てめ~ら、少しは垢を煎じて飲みやがれッ!!」

 

ぎゃいぎゃい騒ぎながら私達は世田谷区の駅から新宿駅まで一緒に帰り、そこから別れたのだった。

 

「さァて、邪魔者はいなくなったか」

 

「やっと本題に入れますね。最近、バイアクへーの呪文のために蜂蜜酒ばかり飲んでるから舌がおかしくなりそうなんですよ。なんかいいのありません?」

 

「阿呆、幻覚みえるやべーやつ常用してりゃそうなるわ。大丈夫かよ、ヤク中じゃねーか」

 

「大丈夫です、桜ヶ丘中央病院の定期検診はパスしましたから」

 

「ぜって~バレてるぞ」

 

「バレてますね。おばあちゃんにもバレてますが、必要なことなのはわかってくれますので」

 

「アイテムでデバフかける酒飲むのはいいのに、普通の酒はダメなのか。めんどくせェな。旧校舎でバケモンが落としたやつとか、骨董屋で買ったやつのがやべーじゃねーか」

 

「京一君も同じですよね、それ?」

 

「今んとこ問題ね~からへーきへーき。さあて、今夜はどうすっかな~」

 

「まずはラーメンですね」

 

「そーだな、すきっ腹に強めの酒はやべーしなッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

王華に寄った私達はいつもの席に座った。

 

「なんか頼むか?」

 

「やだなァ、京一君。がっつり食べたら飲めなくなるじゃないですか」

 

「へへッ、そりゃそうだなッ!親父~、味噌ふたつッ!」

 

「あいよッ!」

 

私はセルフサービスのところから水をもってきた。蓬莱寺はすでに箸を並べてくれている。私が席につくなりの手垢の汚れが年季を感じさせるお手製感が満載のメニュー表をみながら蓬莱寺はいった。

 

「最初の頃、ここ来る時毎回頼むの違ってたよな、槙乃。俺は味噌一択でほかなんて考えたことね~けど」

 

「1回だけなら五目なんですが、何回もくるなら色々冒険したくなるんですよね、私。色々食べ比べた結果、ここは味噌のが美味しかったので固定ですが」

 

「わかってるじゃねェかッ。やっぱここのラーメンと言えば味噌だよな。でも基本は五目か~、醤油が好きなんだな?俺はもちょっと、こってりした方が好きだけどッ」

 

「五目は時々塩の時もあるんで、思わぬ発見があって好きなんですよね」

 

「えっ、まじか。五目といやァ、醤油のイメージだったぜ。そっか、塩かァ......俺はどうも、塩は苦手なんだよな。いいこと聞いた。五目はほかの客が食べてなかったら頼むのはやめとく」

 

「あははッ、塩が苦手なら五目はメニューに写真のってなかったら博打ですしね」

 

「そ~だなァ、せっかくのラーメンが好きな味じゃなかったらテンションさがっちまうぜ。まァ、そもそも俺は味噌しか頼まね~けどッ」

 

「味噌二丁おまちッ!」

 

「ありがとうございます」

 

「さんきゅ~!」

 

私達の前には顔全部が埋まりそうな大きなドンブリがおかれる。大切りのチャーシューが入っていてたっぷり煮込まれたスープもよくダシが出ている。味噌と他の旨味成分と見事に融合して、混沌として複雑で豊かな味を作り出している。王華のラーメンは真夏でも汗をかきながら食べたい類のラーメンだった。

 

「そーいや、アン子のやつは今日も学校来てなかったよな?」

 

「そうですね」

 

「その辺は大丈夫なのか?ズル休みしてて勝手に首突っ込んでたりしねーよな?」

 

「あァ、はい。おうちに電話したらお母さんが出てくれました。なかなか熱が下がらなくて寝込んでるって。代わってくれたんですが、たしかに声かすれてたし、辛そうでした」

 

「ははッ、さすがにズル休みってわけじゃなさそうで安心したぜ。あの野郎、桜ヶ丘中央病院に潜入しようとして紗夜ちゃん達に止められてたからなッ」

 

「あの化け物のこと考えたらおうちにいてくれた方が安心できますしね」

 

「そうそう。龍麻のことだ、ほかの連中にも声掛けてくれるだろうけど......明日はグループにわかれた方がいいかもなァ」

 

「魔法の粉も《旧神の印》も数に限りがありますからね」

 

「ものは相談なんだけどよ、そんとき槙乃と一緒にいってもいいか?」

 

「はい?私は別に構いませんけど」

 

「よっしゃ、決まりだなッ。龍麻には話通しとく」

 

「なんでまた?」

 

「なんでってそりゃァ......みなまで言わせんなッての。心配だからに決まってんじゃねェか。そもそも裏密に死ぬって言われてんのにその落ち着きぶりはなんなんだよ」

 

「それは......」

 

「前から思ってたが槙乃、おまえやっぱあれだろ。比良坂英司のこと引きずってんだろ。あれから自分にどんな理不尽な感情向けられても換算して動き過ぎだ。怒れよ、まずはよッ」

 

「京一君......」

 

「比良坂英司といい、那智真璃子といい、俺達よりあいつらにばっか感情的になってんじゃねェか。そんなに頼れねェかよ、ちと寂しいぜ」

 

「......」

 

「怒ってるわけじゃねえんだぜ、寂しいっていってんだ。それにさァ、このさい言わせてもらうがお前は事後報告がすぎるんだよッ!那智んとこに前から接触してたとか真っ先にいえっての!そりゃあ、《力》のせいで俺達より色んなことが見えてるかもしれねーが、一人で動いてる時になんかあったらどうするつもりだ。そりゃあ、幼馴染だし如月のが頼りになるかもしれねーが、今回が初めてだろ、お前からちゃんと俺達に頼ってくれたの。すんげェ嬉しかったんだぜ」

 

「......」

 

「まァ、ようするにだ。槙乃ばっかつええ敵と戦ってんじゃねェよ、ズリぃなッて話だ!」

 

だんだん自分のいってることが恥ずかしくなってきたのか蓬莱寺は茶化すように笑った。

 

「だァ~っ!なにやってんだ、俺の柄じゃねェッてのに!こーいうのは普通醍醐や龍麻がやることだろッ!」

 

「あははッ、ありがとうございます。そこまで心配させてしまったみたいですいません。それなら、次からは京一君にも声掛けさせてもらいますね」

 

「おう、わかってくれるならいいんだよ」

 

蓬莱寺は修行が嫌いだとうそぶいていながら、強くなりたい衝動がずっとくすぶっていた。緋勇と出会い、一緒に戦う日々によりその本音と次第に向き合うようになっていく。卒業式のあとは緋勇以外には誰もいわずに武者修行のために中国に旅立ってしまうところがある。どれも気になったことなのだろうが、蓬莱寺的には誤魔化すようにいいはなったことが本題なのだろう。

 

「なら、早速なんですが」

 

「おう、なんだよ」

 

「今回現れた化け物なんですが、使用者はたしかに優れた魔術師だと思います。制御出来なければ自爆するわけですから」

 

「なんか気になることでもあんのか?」

 

「吸血生物なのは間違いないんですが、人間一人を吸い尽くすのに約1分ほどの時間しか、かかっていません。早く気づかないと被害にあうわけです。なのに私、気づけなかったんですよね。《力》を使えばどこにいるのか、何体いるか、どんな姿なのかわかったのに。京一君の方が早かったじゃないですか。だから、稽古してもらえません?」

 

「稽古だァ?」

 

「いや、違いますね。いつでもいいので私と本気で戦ってもらえませんか?やっぱり環境が変わると衰えるものがあるんだと思い知らされたので」

 

目を瞬かせた蓬莱寺だったが、にやっと笑った。

 

「それがどーいう意味なのか、わかっていってんだろうな?本気かよ?」

 

「京一君が剣道ではなく剣術を習ったんだろうことくらいはわかりますよ」

 

「へへッ、そんなにいうなら1回手合わせしてから考えようじゃねェか。最近、佐久間のせいで旧校舎いけてねェし、龍麻も忙しそうで構ってくれねェから退屈してたとこなんだよ。どーする、時間あるか?」

 

「おばあちゃんに1回連絡いれときますね、心配しますから」

 

「つーことは酒盛りはまた今度かァ。さすがにそのあと探すとなると深夜回っちまうしなァ。校長せんせ怒るだろ」

 

「えっ」

 

「えってお前」

 

「えええええッ」

 

「お前なァ......忘れてるかもしれねェが一応俺も男だからな......??」

 

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