憑依學園剣風帖(東京魔人学園剣風帖×クトゥルフ神話)   作:アズマケイ

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憑依學園剣風帖49

4月に初めて旧校舎地下に広がる旧軍施設に潜ってから半年がたった。龍麻たち総掛かりでも大蝙蝠や野犬、蟲といった雑魚でしかないやつらに手間取っていたことを思い出す。今や京一は単身で旧校舎に突撃しても引き際さえ誤らなければ余裕で攻略できるくらいには強くなっていた。

 

「槙乃も今夜から共犯だからぶっちゃけるけどよ。実はずっと前から一人で潜ってんだよ、俺」

 

「えっ、そうなんですか?」

 

「あァ、合鍵をつくってちょちょいとな」

 

「あれ、龍麻君がもってるんじゃ?」

 

「業者紹介したの俺なんだよ」

 

「ああ、なるほど」

 

「新しい《技》練習するにしたって体育館は無理だし、俺んち普通の家だからできね~しなァ。それを龍麻に見付かっちまってからは二人で潜ってたんだ。俺らがやってんのは命かけた殺し合いなわけだよ、稽古じゃ間に合わねェだろ?」

 

「たしかに一理ありますね」

 

「だろ?っつーわけで、龍麻といつもやってんのはあれだ、ひたすら地下に降りてく単純なやつ。実践あるのみってな。ただ、槙乃とはまず手合わせって話だったからァ」

 

「つまり、この階層の敵を全て片付けてからですね」

 

「そういうことだなッ」

 

京一と槙乃は背中を合わせて敵と向かい合う。槙乃は《氣》を《アマツミカボシ》の《氣》に変質させてから《力》を解放する。瞳が奇妙な色彩を放ち、京一にはわからないいろんなものをうつす。京一はその様子を見とどけるまえに飛び出していた。

 

その動きにつられた敵に一瞬のうちに囲まれてしまう。京一は木刀を構えた。囲まれている敵を瞬時に薙ぎ倒そうと型をとる。

 

まずは格好のマトになりそうな位置にいた大蝙蝠に上段の構えから振り下ろす。剣技を習得する際、一番最初に学ぶ基本技だが、京一が一番多用する型でもあった。大蝙蝠は耳障りな悲鳴をあげて吹き飛ばされてしまう。

 

「よっしゃ、これでも喰らえッ!」

 

いい具合に団子状態になった敵めがけて、特異の連気法と呼吸で高めた剄力を剣先から遠間へと放つ。京一の視界から一瞬にして敵が消えた。

 

「よっしゃ、掃除終わりッ!どーだ、槙乃ッ。終わったかァ?」

 

いうまでもなかった。背後から真夏の太陽よりどぎつい光が爆発するように広がり、敵の断末魔が旧校舎にこだましたのだ。

 

「おわりましたよ、京一君」 

 

「おつかれ。じゃあ、はじめるか」

 

龍麻の鍛錬の真似事をする時のように京一はいった。龍麻は二人じゃないと組み手ができないため、京一も付き合うようになったのだ。初めから全力は出せない。だからだんだんとエンジンをかけていって、緊張から体をほぐし、自然に体が動くようになる。

 

そう、考えていたのだが。

 

「───────......やっぱやめだ」

 

京一はいった。そしてわらう。

 

切羽詰まった焦燥感が爆発的な殺意に変わる。終りなき鬼気は、京一に期待に満ちた目を向けさせた。互いに殺し合いたいほどのなにかを感じながら、それを言い現わす事もなく剣先を向ける。

 

「忘れてたぜ。槙乃のいう本気ってのは殺す気でかかってこいってやつだったなッ!」

 

「私の原点ですから」

 

「わかったぜ、槙乃」

 

なんの躊躇もなく首やらなんやら解体屋でもする気かという動きしかしてこないのだ。悠長なことをいっていたら負けるのは京一である。白羽が稲妻のように閃いた。いつもはやらない《技》も使わないとダメだと判断した京一ははやかった。

 

「諸手突きッ!」

 

「!」

 

見たことない動きに槙乃は目を見開く。京一は諸手上段を試行錯誤のすえに改良させた《技》を放つ。上段から斬り付け、突きに移行する連続技だ。弾かれた。

 

「まだだッ、八相発破ッ!」

 

八相の構えから繰り出す一撃は槙乃に対して斜め上段に斬りつけ、腹部への突きに移行する連撃で不意をつこうとしたがかわされた。

 

「剣掌・神氣発勁ッ!」

 

修練によって身につけた練氣法と呼吸法によって高めたより純粋なる勁力を剣先から遠間へと放つ氣功術が炸裂する。

 

「───────ッ!」

 

打ちあおうとした槙乃の意表をついた。弾かれたが後ろに弾き飛ばされた槙乃がバランスを崩す。

 

「追風・虎一足」

 

畳み掛ける。風の如く素早き抜刀で、足目がけて斬りつけようとした。足さえ使い物にならなくなれば反応が遅くなると踏んだのだ。

 

「ぐッ!」

 

槙乃の射程範囲に入った瞬間だった。槙乃は急所を狙ってきた。まさか《氣》を練らずに繰り出されるとは思わず反応におくれがでた。

 

「大いなる白き沈黙の神よ」

 

「いッ!?」

 

スレスレでかわしたが距離が近すぎた。槙乃の真下に魔法陣が形成される。京一は眼のある紫の煙と緑の雲をみた。宙に巻き上げられ、地表に叩きつけられる。

 

「テェなッ!?」

 

受け身すら取れない速度だった。激痛に顔を歪めた京一は、体の違和感にきづく。

 

「やっべッ」

 

先程のすさまじい冷気を伴った攻撃のせいで麻痺になってしまったようだ。槙乃の《技》は必ずなんらかの状態異常が耐性を持っていても貫通してくるため食らったら厄介なことになるのは予想していたがこうくるとは。

 

槙乃は動かない。京一が麻痺により動きに制限がかかったことに気づいたようだ。

 

京一の振り抜いた木刀の真っ向こうに颯然と蛍を砕いたような光が飛んだ。あッといった時にはそれが目前に迫る木刀だと気づく。

 

「───────ッ!!」

 

京一はふたたび吹き飛ばされた。

 

「思い出してきました。最前の方法は相手が動く前に削りきるか、封殺するか、なんにせよ行動力の暴力でねじ伏せるのが一番。ゆえに弱点を探さなければならない。それが限られたリソースを使い切る前に勝利をもぎ取る方法」

 

「きっついなァ......ッ!今度は混乱かよッ......」

 

打ちどころが悪かったのか、先程のひかりに目が焼かれたのか、平衡感覚が完全に死んだ。悪態をついた京一は乱暴に口元をぬぐった。

 

「俺も思い出してきたぜッ!いっつも怒られてたんだよなァ。相手を見誤ったら死ぬってのと、間合いを考えろッてよォ」

 

京一は立ち上がる。しっかりした手つきで、木刀を慎重に取りあげ、さもいとおしげにこれを眺めた。それ今回最後の覚悟に思いを馳せているかのように見えた。  

 

京一は型をとる。ゆっくりと木刀を右へ引いた。さらに今度は刃先の向きをかえてやや上に切り上げた。京一は顔の表情ひとつ動かさなかった。笑ったままだ。一瞬、白刃が空を舞ったかと思うと、重たい鈍い響きとともに、《氣》が放たれる。唐突に水を打ったような静寂が訪れた。

 

「剣掌・旋三連ッ」

 

「!!!」

 

遠心力を懸けて剣先に乗せた勁力を三連続で放つ。竜巻状の衝撃波が、天を切り裂く。警戒して反応が遅れた槙乃は大きく後ろに後退した。

 

けほ、と濁った唾液を吐き出す。槙乃は受身をとれたようで目立ったところに怪我はないが打撲はあるのか腕に違和感が残ったようだ。

 

明日はまた佐久間の捜索があるためにこれ以上は難しいと判断したらしい槙乃は攻撃をやめた。京一は残念に思ったがここには回復用のアイテムも美里たちもいない。これ以上派手にやればみんなにバレてしまうだろう。

 

「木刀しかないのが手持ち無沙汰になりますね。アラン君や翡翠君に道具かりようかな」

 

「ゲリラかなんかかよッ!ズリぃぞ、なんでもありになるじゃねェか!それなら《氣》をつかわねェとかハンデつけろよ」

 

「殺し合いにハンデもなにもないですよね?」

 

「いえてるが打ち合いだからなッ!」

 

「本気でかからないと京一君本気出してくれないでしょう?」

 

「まァ、たしかに槙乃がここまで殺す気でこなきゃセーブしちまってただろうな」

 

「私、10年のブランクがあるんですよ、京一君。やっぱり取り戻すには時間がかかるようです。もうちょっと付き合ってもらえませんか?」

 

「これでブランクとか、前の世界ではマジでなにしてたんだよ」

 

「あはは」

 

「まッ、次も付き合ってやるよ」

 

「ありがとうございます」

 

「さァて......明日なんて龍麻たちに言い訳するよ?」

 

「あはは......」

 

我に返った2人は顔を見合わせて笑ったのだった。

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