龍の国 日本 作:揚物
パーパルディア皇国では、レミールを通さない限り日本の布は手に入らず、浮島に態々買い付けに来るものが多くいたが、販売量が少なく買える商人は少なかった。
横暴に振舞おうにも、ミリシアル帝国の商人もいるためその様な事はできず、丁寧に対応する日本の商店から大人しく購入していた。
「親方様、今回は布の買い付けが4反物分、砂糖が200kg、ウォッカを五瓶確保できました」
「うむ、これで今回も大もうけが出来る」
今日もまた、パーパルディア皇国から商人が買い付けに来ていた。決して多い量ではないが、需要に対して供給がまったく追いついていないため、これだけでも武装商船を往復させるだけの価値を生み出してくれる。
「さて、今回も寄っていくとするか」
商人は部下を連れて混み合う往来の中を進み、一際大きくテーブル席が店の外にまで広がった店舗に入る。
「親方様、この店は?」
連れられてきた次期番頭は周囲を見回している。
「ここでしか飲めない酒を味わえる場所だ。 おい、ビールをくれ」
最近では浮島でしか飲めない冷えたビールの売れ行きが良く、高い身分でありながらわざわざビールを飲む為に訪れる好事家も現れ始めていた。
酔えば口が軽くなり、また話す内容は重要なものが多くなる。
「ロウリア国がクワ・トイネに向け海軍を出航するそうだ」
「蛮族なのに数は多いからな。 まったく仕入れが面倒になる」
「クワ・トイネの食料は安く、輸出に向くというのにまったく」
こういった酒場の客にはいくらか諜報員も混ざっているが、商人達の会話から得られるものは多い。日本が発展していると分かれば、やっかいものだが情報封鎖で文明圏ぎりぎりの国家であるならば、探られる心配もない。
「お客さん、新しいビールが少しだけ入荷してますよ」
常連客には優遇する。 時折少数ながら別種類のビールも販売し、気分をよくすれば口はなおさら軽くなり情報は得やすい。
「おぉ、ではそれを頼もうか。 つまみも頼むぞ。 金には困っとらんからな」
趣味や趣向、売れる物や各国の情報、交流実験や情報操作をしている浮き島は、様々な理由をつけてここでしか食事が出来ないものが多くある。
クイラの獣人達が働き始めて一ヶ月、新たに一つのことが判明した。
それは獣人族は身体能力が標準的な人間に対して1.5倍程度優れており、肉体労働および兵力として非常に優れているということ。訓練の結果次第では国外での軍事活動要員とし、主に獣人を中心とした国営軍事会社を設立してはどうかと計画が始まっていた。