龍の国 日本 作:揚物
商業都市マイカルの南東部の山に囲まれた海岸線沿い。
これから技術流出を一切させず、他国に知られることもなく、技術を急激に発展させなくてはならない。
南東部の海岸線の一部を租借地として大規模に借り受け、無人機と自律建機によって24時間作業によって都市及び設備建設が進められた。
封鎖軍事都市
兵士によって厳重に管理され、一切の情報が外部に漏れないエリア、ムー国でありながら、ムー国ではない特定軍事都市、全ての技術が1960年程度まで引き上げられ、あらゆるものが生産開発が進められる。
ジェット戦闘機や誘導弾に必要な集積回路や誘導システム、材質工学や航空力学、電子工学に通信技術、軍事に必要なモノを時代を限定して開放、そして製品企画の概念を教える。
よくて1920年程度であった技術を40年も飛び越す技術の向上に、それなりに優秀な者達が集められたと言っても、理解し取り込むには日々苦労することが予想されている。
建物が立ち並ぶ中、心配そうにしている住民として集められた20歳から40歳までの民間人、技術者と科学者の第一陣数千名、全てが封鎖軍事都市で暮らしている。
共通開発区
技術に関して共通範囲の知識を得る為、学校や研究所に、重工業および科学工場が建てられていた。
真空管ではない初歩的なLSI技術、それに伴う科学と化学技術、最低でも初期の誘導弾及び亜音速ジェット機を製造できなくては困る。
しかし発展に伴い汚染される空気や大地、除染や除去技術もむろん開放し、自己開発と生産をしつつも、部分的には最新の日本の技術が投入されている。
生活水準は1980年代レベルで、ただ生活するだけでも驚きの連続であり、ムーとミリシアルから比較的優秀な人員が集められたが、混乱するものも少なからずいた。
しかし解放されている科学情報にミリシアルやムー国の学者達は驚きながらも、数年出れないと言う事を含めても歓喜して知識を吸収していった。
海軍区
造船所と船渠も建設が完了し、渡された設計図を見てムー国の造船技術者たちが悲鳴を上げる。
「不可能です! こんな巨大なものを作るにはノウハウがありません!!」
前世界のグラ・バルカス帝国から入手したグレードアトラスター級戦艦の設計図、それを日本が手を加え戦艦と言うカテゴリーの最後の艦船を設計した。
それとは別に空母の設計図も渡しており、これもまたグラ・バルカス帝国の空母の設計図に手を加えている。
むろんそれは技術移転を行うための一点物ではあるのだが、1960年までのあらゆる船舶に関する技術が詰め込まれていた。イージスシステムに関するものは秘匿されているが。
「それを可能とするだけの技術を得るのが目的です。5年で建造し、それから毎年一隻以上建造してもらいます。作る為の技術移転ももちろん進めますから安心してください。当分の間は眠れるとは思わない事です」
笑顔で話す太陽神の使いに、ラ・カサミでさえまだ建造が始まっておらず、未知の技術の塊である造船に技術者達は悲鳴を上げた。
空軍区
日本に保管されているグリペンE 最終的な目標であるが、当面はサーブ 35 ドラケンを生産できなくてはならない。
もちろんジェット機の概念さえ考えたことがない為、まずは単翼レシプロ機として一式戦闘機 隼の設計図を渡した。
「これは、どういう理論で飛行するのでしょうか?」
いまだマリンも製造が始まったばかりで、単翼機の飛行理論もいまいち理解しておらず、そこから航空技術者たちに理解させていかなければならない。
「理論は共通開発区での学問と共に平行していきますが、まずは製造する為のノウハウを得るために、試作してください」
「はい?」
「ですから試作製造してください。 工作機械を作り、半年以内に形にしてください。 それまで休みはないと思ってください」
表情が失われた顔で伝える太陽神の使いに、ムーの技術者たちは青ざめていく。
まだまだ段階は多くあり、LSIなどは共通区で開発するとしても、まずは電子システムを必要としない構造のジェット機も間に挟む必要性があり、沢山の段階を踏まなくてはならない。
隼がつくれたら次は橘花を作る為に散々苦労してもらう腹積もりであった。
陸軍区
戦車
自走砲
対空砲
兵員輸送車
輸送車
小火器
軽機関銃
対装甲火器
等、他の部門より遥かに多様なものが必要となる。それを一から開発しなければならないため、できうる限り部品の共通化と多くの人員の割り当てが予定されている。
中でも苦労すると思われたのが装甲車両系であり、もっとも情報があり多様な派生型を生み出したM4中戦車をベースとした。M4中戦車・M7自走砲・T34カリオペ対地ロケットなど、多様に生産されたため色々と融通が利く。
車両は基本的な技術が向上すればほとんどの事が解決し、機銃についてもまた同じこと。何よりも基礎科学力の向上が急務となる。
渡された設計図を見ながらなんとか理解しながらも、現物がない為首を傾げている者もいた。
「これは、装甲を付けた車両?? でしょうか」
「砲がついてますが」
「タイヤではなく、これは一体??」
「これをまずは製造できるようになってもらいますが、半年ほどで試作してもらいます。各部門ごとに別れ、協力して24時間体制で取り掛かるように」
各区域では技術者たちが悲鳴を上げているけれど、以前は提供して任せていたのだが、危機感がありながら時間をかけてもまともに量産が出来ていなかった。
だからこそ今回は徹底して管理し、日本が無人機を少数出すだけで片が付くだけの力を付けさせる。その為には厳しい教育を行っていくつもりであった。
試験区
日本本土に今他国に対し、軍需品を売却する余裕はない。だからこそ、他国に製造させるしかなかった。
しかし何もしないわけにも行かず、日本では民生品を軍用品に近付けた改造を施す事で解決を図ったのだが、そんな危険な代物を国内で試験するわけにもいかない。
中小企業を主体とした開発、それ故にムー国内で実戦に即したテストを、ムー国軍人に行ってもらっていた。
防弾鋼板
装甲鋼板を作るメーカーも生産ラインに余裕がない為、経験のない手空きの中小企業に依頼したは良いが、やはりノウハウなしで要求水準を作るのは無理であり、せいぜい小口径の6~7mmの防弾が可能程度なものしか作れず、安価な防弾鋼板として採用された。
ドイツのウニモグの装甲車モデルを参考に重機銃を搭載したガントラック
安価な防弾鋼板を使用し、重機銃を複数搭載する民生トラックの改造品
テクニカルを参考にブルドーザーをフレームベースとした簡易戦車
安価な防弾鋼板を三重に全面溶接し、極めて鈍重ではあるが装甲車としては十分であった。ムーが所有する程度の砲であるならば、105mmであっても問題ないとされる
玩具がベースの自爆兵器
簡単なAIを積んだ電子科学教育玩具を改良し、C4を搭載した自爆兵器。
サッカーボールほどのサイズで自律徘徊歩行し、設定範囲内に人間を見つけると追いかけ自爆する制圧型兵器。
その他いろいろな民生品を元に改良した兵器が開発され、テストしながら民生品として改良すべき点の見極めが行われている。
どんな製品にも一種の共通する通過点がある。民生品を兵器化する為のボーダーラインを探していた。