龍の国 日本   作:揚物

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6.制御された暴力とはつまり武力である

 1630年末

 空軍区

 相次ぐ体調不良者の続出や過労による入院者が出る中、特定基地の飛行場に試作一号機である一式戦闘機 隼が完成していた。

 不完全な溶接個所に不均一な鋼板、形状も一定ではなく僅かな歪みのある風防、多大なる犠牲者を出しながらも、苦労の末に製造されたが、まずは飛行試験をしなくてはならない。

 

「かかってくれよ……」

「頼む……。 飛んでくれ!」

 

 もし失敗すれば休暇はお預けであり、技術者たちは祈る様に成功に願いを込めていた。

 ゆっくりとエンジンに火が入れられ、プロペラが回り始める。徐々に加速し始め、ムー国テストパイロットが操縦する隼は機首を上げ、ゆっくりと機体を宙に浮かび上がらせる。

 

「やったぞ!」

「そのままいってくれ!!」

 

 技術者たちの願いを背負い、隼試作一号機は高度を上げ特定基地の上空を舞う。そして5分ほどの飛行時間を終え、無事に滑走路へと着陸をした。

 まずはワンオフでもよい。あとはこれを量産する為に必要な手順や工作機械の作成、そして問題個所の修正が必要となる。

 しかしワンオフで作れてしまえば、逆牽きで必要なモノを割り出すのは難しくはない。

 

「上出来です。 まずは二か月しっかりと休んでください。 それからは量産できる体制を整えましょう」

 

 安堵して力尽きたのかバタバタと倒れていく技術者達。たとえそれが短い飛行時間だとしても、それだけでも十分過ぎる成果を出していた。

 

 

 

 陸軍区

 こちらは予定通りには行かなかった。

 不格好ながら車体と砲塔部と砲は出来たが、重量に耐えられる駆動系を作る事が出来ず、エンジンについても稼働時間や燃費を犠牲にしても満足が行く物を作る事が出来なかった。

 これは鋼材に関しての知識が余りにも不足している事が原因であり、一時試作製造を停止し、共通開発区による鋼材の制作に注力することになる。

 しかし砲塔と搭載砲は完成しているため台車に乗せられ、外部油圧駆動で砲塔が旋回、試射場に置かれている標的のムーの車両に向けられる。

 多くの技術者が見守る中、現地で製造された対戦車砲弾、それを使用し砲撃を行う。

 

「砲撃開始!」

 

 号令の下撃ちだされた砲弾はムーの車両を一撃で破壊し、技術者やムー国陸軍幹部が驚く中、続けて榴弾が装填された第二射目が行われ、鉄で作られた小屋が吹き飛ぶ。

 

「おぉぉぉ!」

「やったぞ! 製造したとおりだ!!」

 

 技術者達は喜び、軍幹部たちは初の戦車と言うカテゴリーに大きく驚いていた。むろんこの情報を国に伝えたいものの第一次帰郷は5年後、それまでは特定基地から出る事も情報も出す事は出来ない。

 

 

 

 海軍区

 重要な鋼材の研究が完了するまで、船体も砲身も製造する事は出来ないため、いまだ建造は出来ず、溶接の仕方や大型旋盤の製造など基本的な作業に従事しながらではあるが、順調に準備は進んでいた。

 

 

 

 

 試験区

 半年ではあるが、ようやく一つ目の実用品が出来上がった。

 民生用学習ロボットキット、これをベースに改造、寸胴で短足な二頭身による歩行、どこから見ても爆弾とわかる黒くてまぁるい頭部兼胴体、導火線風の無線アンテナ、ねじ巻風増設バッテリー、識別するカメラアイ。

 

 自律徘徊型爆破兵器、第1号 通称ボンバーソルジャー

 ほんの6万円程度で作れる玩具をベースに、C-4爆薬を乗っけただけの代物。極めて安価で軽量、スペックアップも容易で、ちょっとした段差程度なら跳躍で乗り越え、問題となったのは版権だけであった。

 

 試験場に建てられた二階建ての住居、設定した通り入口から徒歩で入り、空いているとはいえ扉をくぐり、階段を上って目標の人形を発見し自爆、家を爆破することに成功する。

 通信システムによってカメラアイの映像は常時送られ、行動に問題がないことを確認、正式に採用されることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 世界会議

 世界会議は大きな混乱を巻き起こした。

 太陽神の使いの現れ、アニュンリール皇国の本性、ラヴァーナル帝国復活が近い事、各国は伝えられた情報を、自国へ魔信で伝えるも、混乱は広がっていく。

 その中でも大きな衝撃を受けたのは通告を受けたパーパルディア皇国であった。

 日本側が把握しているのはルディアスとレミールの二人が、主に執政者として才を発揮していたこと。ならばどちらかを国から引きはがしてしまえばよい。ミシリアル及びムーから得たパーパルディアの現状、そこから一部地域を租借地として占領する方針とした。その地域で基本的魔石技術開発とワイバーンおよびリンドブルムの生物研究を行うとした。

 その趣旨をミリシアルに伝え、神聖ミリシアル帝国及びムー国の連名の命令書、その書類がミリシアルの外交官によってパーパルディア皇国に渡される。

 

「そんな、ミリシアルとはいえ、こんな一方的な」

 

 当時の第一外務局責任者は余りの内容に唖然とするも、世界の頂点の2国からの命令書には逆らえるわけもなく、苦言を言う程度しかできない。

 

「あなた達が普段している事でしょう。 これはラヴァーナル帝国に備える為、必要な事です」

 

 力関係を盾にされれば拒否できるわけもなく、デュロからさらに東北東に面する地域を租借地として、旧属領の一部をパーパルディア皇国は提供することになる。

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