龍の国 日本 作:揚物
やはり強く帰郷を望むものも居り、さすがに5年は長すぎたとして、第一次帰郷としてムー国200名 ミリシアル50名が軍事基地を出る。その代わりに新たな物資と5倍の人員を補給されることになっているのだが、それは帰郷する人たちには知らされていない。
メモ紙一枚さえ一切の持ち出しを禁ずる代わりに、記憶したものは技術的に関するのなら、口外しても構わないとした。詳細に覚えているのは難しく、せいぜい概念程度であることと、人の口に戸は立てられぬからだ。
そして自国に戻った人々は、得た知識や技術をもとに様々な物を生み出し、そして不要となった都市内部で使用されていた改造工作機械、改造品ではなく新しく作り直したため、不要となったものは帰郷と共にムー国に売却された。
「これが、新技術の工作機械か」
オロセンガに運び込まれた元ムー国製の工作機械、無茶な改造を施されていると言っても、工作精度はムー国の最新式よりも高く、工作速度もずっと早かった。
日本の求める工作精度と工作速度を出すために、原型が変わるほど手を加えられ改造されたのだが、改造品をベースに一から工作機械も作った為、不要になっていた。
「これが不要とは、まったく都市では何が使われているのやら」
イルーレ兵器工業の幹部は驚きながら、テスト稼働で制作された精密な部材を見てため息をついていた。
「技術者達も素晴らしい知識を得ており、ガエタン工業とも取り合いになっております」
「出来る限り当社で確保するように」
ムー国の発展も予定より進んでいく。これが日本の思惑通りに、自衛できる程度の力となるように。
パーパルディア皇国 租借地 技術開発都市
リンドヴルムに装着する為の鎧が完成した。といっても全身を覆う木製装甲に関節部を考慮したに過ぎない。
その木製装甲の上に、日本では廃案となっている 冷却小豆バー装甲 を装着している。技術的に流出しても何も問題はないため採用された。
そして準備が整ったとしてパーパルディア皇国分割を始める。パーパルディアの皇族を招き、パーパルディア皇国が誇るリンドヴルムと戦うこととなった。
演習地域には皇族の観客席が作られ、皇族の中にはまだ若いレミールもいた。
軍務大臣や軍人の視線の先には2匹のリンドヴルムに相対する装甲を施された1匹のアーマード・リンドヴルム。
リンドヴルムの使役をしたことでパーパルディアは大国になったと言うが、日本からしてみればそこそこ知性がある程度の生物にすぎず、動物の調教と大差など何もなかった。
狂暴性も軍用犬とかわりなく、むしろ飢えさえなければ歩行速度も遅く脅威度は低い。
「我ら兵団の誇るリンドヴルム、列強に認められた国とはいえ、操れるはずがありません」
軍務大臣が自信をもって不可能だと皇族に伝える中、合図の旗が振られ戦いが始まる。
パーパルディア兵の角笛の命令を受け獣としての本能が強く、パーパルディア皇国のリンドヴルムは雄たけびを上げた。戦獣としては正しいかもしれない。
しかし軍用獣としては宜しくない。徹底的に教育を受けたA・リンドヴルムは雄たけび一つ上げず、小さな笛の命令に従い動こうとはしない。
始まったばかりだというのにパーパルディア皇国側のリンドヴルムは走り出し、無駄に体力を消耗している。
「我らのリンドヴルムと違って、臆病なようだ」
「所詮列強に認められてると言っても、リンドヴルムを扱えるわけがない」
パーパルディア皇国の面々はくすくすと笑いながら、演習場を眺めている。
一方で命令に従いA・リンドヴルムは、体力を無駄に消費しないようにじっと待ち構える体制を取っていた。
たどり着いた一匹目のリンドヴルムは、身を半分起こして前足を振り下ろすが、小豆バー装甲にひびを入れたが、足を滑らせ転倒してしまう。A・リンドヴルムは大きく口を開き、起き上がろうとしているその首、強化された牙で一頭目の首を噛み千切り血しぶきが舞い上がる。
遅れてたどり着いたもう一頭のリンドヴルムは口部に炎を宿らせ、火炎放射をA・リンドヴルムに浴びせかける。
「何か甘い匂いが?」
「甘ったるい…??」
周囲には溶けた小豆バーの匂いが漂いはじめる。
火炎放射をその身に受けるが全身を覆う小豆バー装甲は溶けながら耐え、氷の魔石が仕込まれている為A・リンドヴルムへの影響もほとんどない。
火炎放射が消えると同時にA・リンドヴルムは襲い掛かり、体当たりで転がすと同時に首に噛みつきそのまま引き千切ってしまった。
「そんな……馬鹿な」
少し体表にやけどを負ったA・リンドヴルムであるが、二頭を相手に勝利を収めた。
パーパルディア皇国の軍務大臣は青ざめ、角笛で命令を出していた兵士は責任の重さに気絶してしまった。
「さて、余興も終わりましたし、開発都市の見学会へと参りましょうか」
文明として一段階以上魔道技術によって発展した魔道技術開発都市にそのまま招き、やんわりと別荘を建てて暮らすことを勧め、一部ではあるが発展した都市を見て別荘を建てる皇族は居た。
その中には若きレミールも居り、日本側の意図通り別荘を建てる事を選んだ。あとは懐柔していくだけとなる。