権力者の女性達は魔道都市に住まい、夫たちは通うか住まいを変えるしかなかった。しかし妻が美しく成れば同僚に自慢し、娘が美しく成ればより良い縁談が得られる。
貴族達は権力に大きく響くために妻や娘を止められるわけもなく、別々で暮らすか本宅を移すしかなかった。
「次の予約は……二週間後か。 なんとかならないものか?」
レミールはため息を付く。皇室待遇として特別な時間帯に予約を入れられているのだが、レミールだけが皇室の女性ではない。
皇室の女性陣も皆美しさを求め、今まで最も美しいと自負していた自信も揺らぎ始めている。
「優待頂けているレミール様には、特別なプランをご利用いただけますが、如何致しますか?」
理由など特になく、レミールを懐柔するために用意されていたモノ、食事から運動までトータルに管理する美容プラン。
つまり美しくなれる代わりに日々を管理されることになるのだが、もちろん肌の張りから体系までトータルに管理することで美は増すことは嘘ではない。
サロンの受付で差し出された内容は、朝から夕方まで内容が書かれており、一か月先まで予約が取れない薬膳美容料理が朝昼夜と入っていた。
「考えさせてもらおう」
「お早めにお願いします。 空きは一枠しかありませんので、他のお客様がご希望された場合枠がなくなってしまいます」
むろん虚偽であるが、同じ美容プランを専属モデルやミリシアル帝国の婦人が5人ほど受けているのも事実、レミール専用に一枠を開けているだけで、本来は競争倍率1000倍以上の大人気美容プランである。
「そ、そうか。 明日にでも回答しよう」
魔道都市の別邸に戻るため外に出る、元は属領であったはずが帝都よりも発展した都市。皇都に比べ全てが比べものにならず、凹凸もなく一枚岩で作られた地面に街道を照らす光、古い建物こそ残っているものの何もかもが此方が優っている。
皇都との余りの違いに嫉妬も起こらず彼我の違いにため息まで出てしまいそうに。
「レミール様 迎えが参りました」
側仕えの声に視線を向けると、魔道都市でのみ使われている 魔導車 が走ってきた。
御者席の前に馬はおらず、代わりに馬車の後ろに魔道機械というものが動力となっている。これもパーパルディアにもあった魔道技術を参考に作られたと言われている。
なにによってここまで差を付けられてしまうのか、もしこの魔道都市を作り上げた国の皇族であったなら、今よりもさらに発展した生活が出来る事だろう。
ほんの僅かに、レミールの心に間隙が生まれ始めていた。
日本
防衛省 第二兵器研究室
戦意破壊兵器 強臭気タイプ S
日本に残ったスウェーデンの人達が考案し、素晴らしい栄養を持つシュールストレミングの身とは別に出来る原液、本来は捨てるものだがそれを科学的処理を施してさらに濃縮、元々8070 Au程度だったものが20000 Auを超えるまでに達した。
例え大量に撒いたとしても周辺地域に一切害が無く自然環境に影響もなく、その上後処理も必要とせず自然に還る。
吸気した生物が激しく嘔吐してしまうという欠点や、もし原液を浴びた場合数日間は決して匂いが落ちない危険性もあるが、戦意を破壊するという目的は十分に発揮すると考えられた。
問題は製造するのも輸送するのも劇物扱いに準拠する扱いの必要性が生じてしまったことだが。
人員がほとんど居ない物資中継メガフロート、ムーの輸送船から日本の輸送船に物資が詰め替えられるだけであり、ほとんど無人化している為人はほとんどいない。
周辺地域は水竜の地域ではあるのだが、日本との取り決めで定期的に海産物 主に蛸海魔のトレードが行われ、チョコ飼料が好まれるので等価重量で交換している。そんな中日本が非常に気になるモノが持ち込まれた。
「これは……、 カニ ですかね」
むろんこの世界でも蟹は確認されている。ただしそのサイズが問題であった。
地球でも確認されているタカアシガニでも足が細長いので3.8m、それが甲羅が巨大な直径2mかつ足も爪も非常に太い。
それが水竜に捕獲されメガフロートに持ち込まれていた。
「水竜の方々の話では、これも交換できないかと提案されています」
少し対話に時間が掛かるものの、日本側と話は出来ている。新たな提案は考慮すべきものかもしれないため、一時生態調査等が行われることになった。
カニはいいぞ!
アレは素晴らしいものだ!!
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〃゚Д゚ヾ"ミ"゙ミッイーヽ
ヾ"ッ"゙"ッ゙"゙ミッ"" ̄ ̄
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