龍の国 日本   作:揚物

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21.1636年 9月 準備完了まで

 前世界では扶桑は手ひどくやられた。非常時であり相手は想定以上の戦力を持っていた。ただそれだけではあるが、戦艦とはつまり戦略兵器であり、見せつける暴力の象徴でもある。そして 扶桑 とは伝説で太陽が昇るとされた大木の名前。その名前を冠する艦が弱いというのは非常に良くない。

 といっても日本は国民と共にある国、無駄に予算を使うわけにも行かず、アレコレとアンケートを取ったり民意の確認に時間を要したものの、一部の熱烈な層が広報やCMにコラボなど活動。

 

「日本の名を冠する以上、改修は続けるべきである」

「唯一残る実砲搭載の超弩級戦艦! さらなる力を持ってこそ戦艦だ!」

「大艦巨砲は戦艦にあるべき姿です、そして新たなる戦艦は女性艦長こそふさわしいと思いませんか!!」

「日本で初めて設計建造された超弩級戦艦! 扶桑を改修して再び初の戦艦に!!」

「扶桑は姉キャラ」

 

 少々脱線することもあったものの、総意として大規模改修は決定した。

 

 戦艦扶桑 大規模近代化改修

 扶桑に搭載されている35.6センチ連装砲は全て改良されているが、新造する41センチ連装砲の搭載に伴い、船体や特徴的な艦橋にまで手が加えられる。

 

・410mm連装艦載砲 6基

 各社の協力を経て強水冷+高速自動装てん装置

 前世界ではパルカオンに事実上敗北した。ならば今度は負けぬと殴り合いに勝てる力を求め、最適な威力と射程に連射速度のバランスから判断された。

 

・Р-ЦИWС(R-CIWS) 10基

 ロシアのパーンツィリを参考に、2個の独立レーダーと2連ファランクスと24連迎撃誘導弾。

 二度と対空戦で苦労しないように、輸入した兵器を徹底的に調べ上げこれが最適と判断された。

 

・短魚雷 30発

 

・全周囲防護フィールド

 第二艦橋に搭載された新たなる戦艦の基準たる防護フィールドシステム。

 戦艦とは古来の戦略兵器ではあるが、強力な大口径の艦砲と堅牢な装甲とを備える殴られても耐えきり、相手を容赦なく殴り殺す海上における暴力の権化として抑止力でなければならない。

 だからこそ砲や誘導弾の発展により装甲が意味を無くした防御力が必要である。大出力ともなると第二艦橋をまるまるシステムにしなければならないが、改良によって防護力も燃費も大幅に改善されている。

 

 

 ある種計画されている戦艦の試験的要素も含まれている。もし作る事にならなかったとしても、今後は扶桑を改修していくし、建造すればよいデータにもなる。

 二度と負けてはならない、それは海上自衛官の殉職ということにつながる。

 

 

 

 

 封鎖軍事都市

 現在教導団の訓練が行われている。

 

「走行! 停車! 砲塔旋回! 砲撃! 走行! それを途切れなく行うように!!」

 

 まだ数が少ないM4中戦車に乗るムー国教導団の戦車兵、無線から飛ぶ難題の命令に車内では冷汗を流しながら各種操作に当たっていた。

 訓練は実戦よりも厳しく、実戦では予期せぬ事態や緊張から100%訓練の結果を発揮できるわけもない、だからこそ何よりも厳しく、そして殉職しないよう接する。

 それが日本の、帝国時代からの伝統を引き継ぐ自衛官なりの、そして対馬奪還戦で同胞を失った優しさでもあった。

 

 

 陸軍区

 次々と考案される戦車案、試行錯誤の末に生み出される銃器、どれもまだまだとはいえ、基本となるモノが生み出されたのでどんどん発展している。

 むろん今は爆発的な種類の増加によってろくでもないものも多いが、利点欠点を理解すれば自然と完成度は上がり、失敗作を作る為に得た技術が他の完成度を高める事もある。

 上方給弾式 ブレン軽機関銃 らしいものも作り上げつつある、これは日本が特務部隊向けに提供したオーウェン・マシンカービンを参考にしつつ、ムー国機関銃を改良して制作された。

 上方給弾は欠陥もあるが給弾誤作動がしにくく製造もしやすいため、現在のムーでも性能を維持しつつ大量生産が可能であった。

 

 

 

 海軍区

 

「……もういっそ」

 

 憂鬱な顔で訓練を受けている海兵たちだが。

 

「全員整列!」

 

 良くない考えを持つ暇もないほど時間を管理され、精神的に参らせる余裕もないほど日々扱きあげ、その実力はムー国の一般的兵士とは比べものにならないほど高くなっている。

 そもそもムー国ではラ・カサミ級の運用が始まっている中、封鎖軍事都市では二世代以上先の艦を運用しており、同じ程度の知識や技能では扱えるものではない。

 だからこそ非常に厳しいのだが、今は何一つ気付いていない。扱っている操船技術も戦闘配備もムー国海軍の物とは比べものにならないほど洗練されている事を。

 利根型重巡洋艦 ムー国名 ラ・ネート重巡洋艦で訓練を受けている兵士、全ては現在建造の始まっているGA級戦艦及び空母に向けた訓練、主力でありムー国全ての海兵の指標となるべく、苛酷なものとなっていた。

 一方でGA級戦艦の建造も始められた。溶接技術や旋盤技術の向上もあるが、グラ・バルカス帝国の空母であるペガスス級の建造は中止された。

 日本の隼鷹型航空母艦を参考に再設計が行われ、量産性と共に一部問題個所の修正が為されている。

 

 しかし建造が遅れていることは問題視され、多くの都合上の問題から一隻のみ改装空母だが日本で建造し、先行して空母の運用訓練を行うとした。

 勇猛なムー国精鋭からさらに選り抜きが選びだされたものの、一身上の都合や退役願いが出るなどいささか混乱が起きてしまった。

 最新兵器を扱うため、月月火水木金金など生温く、いっそ拷問を受けた方がましだと言いたくなるほど、それほど厳しくすると通告されていたのが原因だったようだ。

 

 

 

 

 

 日本

 順調に各種兵器の開発が進んでいる中、古い兵器の再生産が決定された。

 203mm自走榴弾砲 通称サンダーボルト

 長い事日本国内で保管されていたが、ある砲弾の開発完了と共に実用性が見直された。“誘導砲弾”である。

 炸薬と弾の発展、それにともない150km程度の射程と共に命中率ほぼ100%を叩き出す。対艦及び対地誘導弾よりも安価にそして確実に対象を破壊できる兵器と変化した。

 

 

 長らくかかっていたチープ戦車の設計。

 マメタンを参考にしつつ、民生用のクローラーダンプをベース、3割ほど大きくなった60式自走無反動砲に酷似しているが無反動砲の代わりに、90式自動擲弾銃が搭載されている。

 出来る限り安価にそろえる事を目的にすすめたものの、戦闘装甲車両に関しては、砲と言う物を民生品から採用する事が出来ず、チープ戦車と言う枠組みは不可能であると結論に至り開発は停止された。

 そして日本に輸送されたM4中戦車 5台 ばらばらにしたうえで改造が始められる。

・民生品の硬質ゴム履帯 駆動輪の強化

 

・高出力の民生ディーゼルエンジン換装及びエンジン搭載後部の溶接延長とエアグリル追加

 

・短砲身105mm及びマズルブレーキ

 

・砲塔後部カウンターウェイトの溶接延長

 

・3連自動装てん装置搭載

 

・民間中小企業制作増加装甲

 

 ムーの特殊部隊に提供する以上制限はあるものの、許される範囲で強化が為されている。スーパーシャーマンとはいえないものの、安価にそれなりのものを用意した。

 技術的にもムー国の兵士でも扱えるだろう。

 

 

 また、長らく開発していた電磁加速砲搭載の戦車第一号が完成した。

 しかしようやくできたのだが、戦車に短射型とはいえ、仰角も限られるのに射程100kmの電磁加速砲を搭載してどうするのだ?と。どうしようもない問題が発生した。

 その為再度開発の進んでいたもう一基、50kmの短射程速射型に搭載が変更された。

 

 ケーニクスティーガー・EML

・105mmEML速射型

・地対空誘導弾 ミストラルM4 4基

・遠隔操作式銃塔 CROWS Ⅲ 12.7mm重機銃及び40mmグレネードランチャー

・人工知能RANA(Raid・Achieving・Nail・Autonomy)

 

 大きなペイロードを持つとはいえ、さすがに大電力を必要とする事から内部を圧迫し、これ以上の搭載は不可能であった。

 それでも最新のAIを搭載した上に各部も最新規格品を使用し、ムー国での人命救助によって人工知能としては初の紅綬褒章が与えられている。

 

 

 オイ車のプランは安価な物が採用された。あくまでオイ車はオイ車としてクラウドファンディングされたもので、民意はそのままの発展改良を選んだ。

 しかしGDRSの技術者は諦めず何か手がないか行動を続け、富士演習場の倉庫の片隅に眠っているソレを見つけた。

 超重戦車 マウス、前世界でムー国教導団に貸し出され、激戦の中損傷したことで返却されていた。しかし日本としても回収したものの、直すにもコストがかかる事とグラ・バルカスの商戦攻撃に後回しで有耶無耶になり放置されていた。

 大きなモノにロマンを感じる同志を集め、改修の為の予算を集め始めた。

 

 

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