龍の国 日本 作:揚物
皇族や貴族の女性陣はほとんど魔道都市に住んでおり、日本側も意図して滞在費は安くしていた。
もちろん赤字ではないがほとんど利益が出ないほどに落とす事で、一年のほとんどを魔道都市に住み、園遊会や夜会も魔道都市で開くほどであった。
そしてレミールも、元の素体が良かったこともあり、磨き上げられた美貌はミリシアルなどの高級官僚の夫人や他国王族と比べても秀でていた。
「レミール様、本日はムー国大使が面会の約束をしたいと連絡がありましたが」
放っておいても列強の高級官僚から贈り物をもって面会を求めてくる。
「空いている日に入れておけ。 私はこれからサロンに行く」
美容サロンでは、ミリシアルやムー国の高級官僚の夫人が入れ替わり立ち代わりエステを受けている間、雑談をしていると得られる知識、それは遥かに発展している理由が談話のうちに語られ、パーパルディア皇国の政策に疑問を持ち始めていた。
第一第二列強の夫人とはいえ、みなパーパルディア皇国の皇女であるレミールより遥かに高度な教養を持っていた。
「レミールさん、ミリシアルとムーが魔王討伐に軍を派遣する事を知っていて?」
美容処置を受けている間の雑談。
「そのようなことが?」
「えぇ、夫も参加するようで心配しているのよ。 太陽神の使いから場所を知らされたらしくて」
「私の夫も言ってましたわね。 太陽神の使いから、もう魔王に勝てる段階に来たので、完全復活する前に滅ぼすようにと」
まるで聞いた事もない大事な情報、しかし列強の婦人たちにとっては至って秘匿性のない雑談程度の事であった。
特に秘匿しておく必要などなく、ミリシアルやムー国内では普通に新聞などで出兵がなされることが三日前に知らされていた。
いまだレミールの耳に届いていないのに過ぎない。
急ぎ屋敷に戻り、他の皇族や貴族に尋ねるも誰一人としてパーパルディア皇国が兵士を出すという話などないということだった。
レミールが動かせるのはほんの少数、それでも列強第一位と第二位が動く以上、パーパルディア皇国もどのような状態であろうとも戦力を出すべきこと。しかしパーパルディア皇国が動くという話は聞こえてこない。
レミールは他の皇族とも話し合い、ルディアスを通す事なく一軍をトーパ王国へと出兵を決定させた。
1637年6月
封鎖軍事都市からの帰還者によってムー国内でも戦争の準備が静かに始められた。
ようやく稼働時間と品質に満足の至るレベルに各種兵器は達し、オロセンガ市によって秘密裏に製造が始められた。
そしてラ・トーネ、つまり利根型重巡洋艦の設計図と知識と技術を得た技術者によって各艦の建造も開始された。ラ・カサミさえ旧式となる第二次大戦主力艦となる艦船群。
建造中のGA級は難しいとしても、せめて金剛級高速戦艦は主力化してほしいというのが日本の考えであった。あと数年、製造・運用・訓練の事を考えると時間的猶予は少ない。
トーパ王国 世界の門
いまだ封印されている魔王を滅する為、編成されたミリシアル・ムー国の合同軍、グラ・バルカス帝国出現まであと一年、ようやく諸所の準備が整った。
ミリシアル陸軍
ガンマ型試製戦車10台、ミリシアルが製造した対空砲を搭載した戦車。
出力の関係で魔道装甲は備えず、鋼材で耐えるという機関と砲以外は並みの戦車と変わらない。70mm対空魔道砲 33t、ムーのM4戦車に大分似ているのは、参考にしていることもある。それでも少なからずムーが数年前に試作していたひし形戦車よりは大分出来が良い。
残りは装甲車と歩兵のみ、さすがに空母を使用した航空支援までは考えていなかった。
ムー陸軍 教導団
M4中戦車6台、ガンキャリア10台、TOG1台とムー国教導団は本格的な戦闘訓練を兼ねている。
残りはミリシアルと同じく装甲車と歩兵のみ、ミリシアルも同じことだが違う点を上げるとすれば、十分すぎるほど保守部品を持ってきたことだろうか。
パーパルディア皇国 銃兵士部隊
寒冷地域の為ワイバーンもリンドヴルムも使用できず、フリントロック式マスケット魔銃のみを持つ部隊。
パーパルディアの兵士達は自信をもって参加したが、持っている銃だけでも隔絶した差があり、先頭に立つどころか後方支援や物資輸送の護衛、トーパ王国と共に雑用程度しか出来る事はなかった。
太陽神の使い(日本陸上自衛隊
日本は兵力を供出していない。いつでも非常時は航空機から無人機を投下できることもあり、非常時通信機を渡すだけで済ませていた。
合同軍は森を切り開き、魔物と呼ばれる生物を打ち倒し北西に向け進軍していく。最新兵器の運用実戦でもあるが、もちろん故障などの問題も起こしているものの、魔物や魔獣などまったく相手にならず順調に侵攻していった。
侵攻に気づいた魔王の側近であるマラストス、いまだ封印されている魔王の代わりに魔王軍を率い、迎撃に向かうもトーパ王国までの事しか知らず、トーパ王国程度の文明程度しか恐れを知らなかった。
恐れるは太陽神の使いのみ、だからこそムー国が操る戦車を見て血相を変えた。再び太陽神の使いが現れたと。
急ぎ2体のオーガと共に魔王殿まで引き上げたのだが、時間稼ぎをされている事を気付けず合同軍はオークキングなどと戦い続けていた。