龍の国 日本   作:揚物

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12.表と裏の工作

 パンの缶詰の発注量が徐々に増えていき、需要に対して供給が間に合わなくつつあるため、神聖ミリシアル帝国に新たな提案として

 

・火も水も使わない防災食(カレーライス、牛丼、シチュー&ライス、和風ハンバーグライス、中華丼)

・濃縮野菜ジュース

・野菜シチュー缶

・インスタント麺(カップめん・カップスパ)

・フリーズドライ果物

 

上記の試食会を開いたところ、どれも好評であった。

 どうやら缶詰や保存食というものはあっても、やはりまだ味を向上させるという段階には達していないようで、全品の発注とミリシアルの酒肴に合わせた新開発依頼が入った。

 以上の事から神聖ミリシアル帝国の艦船は長期航海には多くの補給艦を必要としている事も、そしてその際には食による士気の不安定さも判明した。

 これならばお互い友好的に振舞う事も可能であり、我々は彼らが必要としない鉱石資源を、彼らには必要とする加工食品の提供と相互に利が在る。

 浮島には神聖ミリシアル帝国の商船が常駐するようになり、他国も一目置き高圧的な交渉を押してくる国家は減ってきている。

 我々を攻撃すれば、少なくとも取引のあるミリシアルやパーパルディアが怒る事だろう。予想通り、戦って武力を証明せず、さらに情報を流出させずに国威を上げることが出来た。

 

 占領して富を奪うのは下策、いつ寝首をかかれるか、反乱を起こされるか考えなければならない。交易で利を得ればその心配はしなくていい。無論平和的交渉という心労はあるが、殺される心配よりは負担も少なくコストもかからない。

 

 

 

  パーパルディア皇国 レミール邸

 

「レミール様、申し訳御座いません」

 

 潜入工作員である日本の商人はレミールの前に深々と頭を下げる。

 

「ロウリア国のクワ・トイネ侵攻に伴い、クワ・トイネを経由しての輸送が困難になっておりまして、献上が一週間遅れてしまいました」

 

 表向きは大した船も持たず、航続距離が短いためクワ・トイネを経由して物資を輸送している事になっている。ロウリア軍の動きが活発となり、船が困難になっていると表向き伝える。

 

「また、クワ・トイネ公国がレミール様に食料20万トンを献上したいと、書状を持ってまいりました」

 

 メイドに手渡し、その書状がレミールへと渡る。

 その書状には良き取り計らってもらえるよう、個人的に献上する量と国家に献上する量が書かれている。むろんこの書状は日本の口添えであり、食料による交渉を日本に任せてもらえるよう話していた。

 

「足りぬな」

 

 レミールは数字に×を入れ新たに書き直し、メイドに渡すと日本の商人へと戻される。

 

「これだけの量を献上するよう伝えよ」

 

 そこにはレミール個人に40万トン、国家に対して100万トン献上するように訂正されている。

 

「レミール様のお言葉、確かにお伝えいたします」

 

 クワ・トイネは日本によって物流インフラが整備された事で、食料の生産量はますます増えており、日本に対して5000万トン輸出しても、まだ1000万トン以上の輸出余剰が出ていた。

 

「しかしレミール様、クワ・トイネは現在ロウリア王国から攻撃を受けています。 いつまでクワ・トイネが献上出来るかどうか」

 

「蛮族共など、黙らせる事は容易い。 お前達は言われたとおり献上しておればよい」

 

「失礼致しました。 それではこちらが今回の献上品で御座います」

 

 メイドが運び込んできた台車の上には、様々な色に染色された高級絹の反物と、食料や砂糖などの目録が記録された用紙が置かれている。

 

「もう下がってよいぞ」

 

 丁寧に頭を下げ、そのまま部屋を出て邸宅を離れた。

 

 

 半月後、大量の食料をパーパルディア皇国に献上する為、多くの船舶がクワ・トイネから出航、献上を見届けるためにパーパルディア皇国、第三外務局の船が派遣され、盛大にもてなしを受けたあと、献上品を積んだクワ・トイネの船と共に帰国の途についた。

 しかしその事を知らず、ロウリア海軍はクワ・トイネの輸送船を攻撃してしまった。

 ロウリア国海軍は意図せず〈パーパルディア皇国〉への〈献上品〉が載った船を〈偶然〉襲い沈めてしまったのだ。献上品の確認をしていたパーパルディア皇国の職員の報告により、ロウリア国の行為が伝えられ、その事を知ったパーパルディア皇国は気分を害し、第三外務局の懲罰軍が送り込まれ、ロウリア海軍は4000隻もの大軍であったが、その1000隻近くが沈められた。

 むろん献上できなかった分の食料はもう一度クワ・トイネに献上させている。

 直接戦わずして〈偶然〉に〈タイミング〉よく食料を献上することで、船数隻と少数人員を失っただけでロウリア国海軍は大打撃を受けた。

 すでに建前上クワ・トイネは、パーパルディア皇国のレミールの管轄する従属国家であり、パーパルディアの非公式保護国である。その国を攻めるという事は、パーパルディアに牙を剝くのと同じとなった。

 管轄官や管理官など送られない様に、従順に従っているようにみせ、不必要なほど下手にでる。命令など下されなくても指示された量より多く食料を献上し、ただただ平にレミールに恭順の意を示す。

 皇族に属し、第一外務局責任者であるレミールの下であるならば、皇帝ルディアスを除いて意見できるものは居ない。

 食料以外価値のない文明圏外国家のクワ・トイネに望んで赴くものなど居らず、管理するものが不要なほど従順であればよい。

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