龍の国 日本   作:揚物

121 / 157
24.対魔王

 日本が派遣した空挺部隊と無人兵器はトーパ王国と魔王殿の間に設置された広場に投下され、休むことなく魔王殿へ向かっていた。

 トリガーのみを自衛隊員が預かる自律した兵器 ケーニクスティーガー・EML

 そしてBAEシステムズによって改良が施された エクスカリバー戦車MkⅡ

 急遽の派遣により十分とは言えないものの、魔王程度であるならば十分と考えられ、念のため空中投下できる兵器も用意されていた。

 

 

 

 

 

 魔王殿

 マラストラスが一か八か自らの魔力を注ぎ込んだクリスタルは、強烈な爆発と共に砕け散り魔王は目覚めた。

 アニュンリール皇国が前世界で解除できたように、すでに封印は長い時間の経過と共に綻びが生じており、その身が枯れかけるほど魔力を放出したものの、マラストラスの全力の魔力は封印を砕くことに成功した。

 

「ふむ、随分と長い時が流れたようだな」

 

 強大な魔力を持つ魔王、まだ目覚めたばかりで万全ではないとはいえ、魔族のマラストラスを遥かに超える魔力を持っていた。そんな存在が、太陽神の使いと思われる軍が迫って居る事をマラストラスから伝えられる。

 太陽神の使いと聞き、即座にオーガに命じて魔王殿の周囲で迎え撃つ準備をさせる。一方でマラストラスは戦えぬ身であるため、とある場所に向かうよう命じられていた。

 

 

 

 

 その頃エスペラント王国側は外部に国家がある事に驚き、また太陽神の使いの再来には大きく乱れた。連合軍の外務を司る者達は、エスペラント王国の国家承認や国交開設に向けて奔走しているが、連合軍は補給をすませ魔王抹殺へと再び動き始めた。

 森を伐採し荒れ地を整え道を敷き、一週間の行軍の後伝説の4勇者が魔王を封じ込めたという、エスペラント王国からさらに北西に存在する魔王殿が見えてきた。

 伝説の場所だと兵士達が僅かに観光気分になっている、そんな思いを一瞬で吹き飛ばす存在が姿を現した。

 魔王殿の入り口に設置された玉座で連合軍を待っていた。

 

「魔王だ!」

「なんだと!?」

 

 前世界で記録してあった映像から隊長以上の兵士は全て魔王の姿を確認しており、動揺している間に襲い掛かってくる二体のオーガと魔物の群れ。

 

「退け退け! 銃器の間合いを維持しろ!!」

「戦車隊前へ!」

 

 前線に出ていた歩兵は全力で走りながら迫ってくる魔物の群れから逃れ、戦車や駆逐戦車の横に並び銃を撃ち始めた。

 しかしオークやゴブリンは銃撃によって倒れるものの、オーガは左右に分かれ構わず突っ込んでくる。オーガは恐れていた、太陽神の使いの鉄の獣を、だからこそ魔王の言った通り戦車の攻撃が及ばないよう一心不乱に突撃した、そのため対応が間に合わず最悪な事に左右の部隊は白兵戦に陥ってしまった。

 

「オーガに銃が効かない!」

「戦車だ! 戦車を回せ!!」

「車体機銃でもいいから撃って止めろ!!」

 

 オーガの振り回す巨大なこん棒によって人間が木の葉のように飛び、被害はどんどん広がっていく。オーガとて撃ち込まれる銃弾は無痛と言うわけではないが、それよりも鉄の地竜獣 戦車による攻撃を恐れていた。

 そんな混戦の中に後方から一台、その鈍足が故に行軍が遅れていた戦車 TOGの砲身が右翼をかき乱しているオーガに合わせられた。

 

「伏せろ!!」

 

 通信機から響く命令。その直後信管を外された砲弾がオーガを貫き、吹き飛ばされていく。魔物の群れは何が起きたのか理解できず、ただ胴体に大穴が開かれ絶命しているオーガを見ていた。

 そして続く砲撃によって左翼で暴れていたオーガも撃ち倒され、オークやゴブリンは統率を失い歩兵によって一方的に討伐され始める。

 戦車砲弾でなければ魔王は倒せない。いや、戦車砲弾でも簡単に倒せるとは限らないと伝えられている。だからこそ全ての戦車と駆逐戦車は魔王に砲身を向けた。

 

「攻撃開始!」

 

 集中的に行われる全戦車からの砲撃、太陽神の使いとして認識した魔王は防御態勢に入るが、いくら魔王と言えど、絶え間なく撃ち込まれる戦車砲弾を無傷とはいかず、防御結界を張り巡らせ状況を見極めようとしていた。

 

「効いてないぞ!?」

「撃ち続けろと命令が来ている! 全車攻撃を続けろ!!」

「歩兵も攻撃を継続!」

「魔導砲魔石充填完了!」

 

 装填・照準・発砲、すべての戦車でひたすら繰り返される作業、それでもなお魔王は衝撃で徐々に後方に押し下げられる程度で効果は見られない。

 とはいえ魔王もまた、防いでいるだけでは状況が変わるとは考えておらず、一方で脅威ともとれる空を飛ぶ敵、そして強力な空からの攻撃はないと理解し、魔王は一旦身を翻した。

 

「逃がすな!」

「追撃! 追撃!」

 

 声が上がるも、魔王は空に浮かび上がるとさすがに戦車の砲は届かない。そしていまだ開発中の対空自走砲はこの場にはない。

 一般兵の持つ小銃が魔王に向け発砲されるものの、オーガにさえ効果が薄いため何も変化は見られない。

 魔王は17mはある巨大なゴーレムを大地から作り出し、最も近くにいた後退中のムーのM4中戦車が蹴り飛ばされ十数メートル転がっていく。

 同じく蹴りつけられたTOGは少し滑るだけで止まった。そして予期せぬ抵抗感にゴーレムは体勢を崩し前のめりに転倒。

 M4中戦車に勝つ為、狂ったように装甲を強化し重量が増加した結果、どうやら余りの重量に巨大なゴーレムとはいえ軽く蹴ったくらいでは力不足だったようだ。

 

「下がれ!」

 

 TOGに搭乗している車長は叫ぶが、ゴーレムは身を起こしながらTOGを踏みつけ逃がそうとはしない。それでもなお、M4A3E8の76mm戦車砲に耐える為に作られた装甲と構造は、駆動部が砕け履帯が破損し歪みながらも耐えてみせた。

 日本としても予測と見立てが甘かった。まさか自力で魔王を復活させるとは、想定している範囲内にそれはなかった。

 だがそれでも連合軍は戦いを続け、魔王からゴーレムに標的が変更され撃ち込まれる砲弾は偶然ゴーレムのコアともとれる部分を貫き崩れ落ちていく。

 ムーにとっても、ミリシアルにとっても偶然の出来事だが、ゴーレムを倒せたという結果は何も変わらない。

 

 

 

 

 偵察及び監視ドローンから送られてくる映像には魔王と戦っている連合軍が映し出されていた。

 

「現在対象と交戦中の模様」

 

 ミリシアルとムーの連合軍に対空兵器はない。それゆえに魔王が飛行状態にあるのは非常に不味く、そして上空から行われるだろう一方的な攻撃、入力された指令に従い、ミストラル汎用誘導弾Mk4の軌道を一部再設定し、状況を認識した人工知能のRANAは最適な攻撃を選定、承認を自衛官へと求める。

 承認であるトリガーが引かれるとともにミストラル汎用誘導弾Mk4は上空に一度上がり、魔王に向け降下していく。

 

 

 

 

 ゴーレムが倒され歓声が上がる中、魔王は唖然としながら地上を見下ろしていたが、突如起きた爆発によって地面に叩きつけられる。

 防御障壁を体表に張り巡らせていたおかげで、怪我こそないものの何が起こったか理解できず動きが一時止まっていた。

 状況が読めないとはいえ即座に連合軍の攻撃が始まり、小銃を持つ歩兵まで攻撃に加わると、徐々にそして確実に魔王の魔力を削っていく。

 

「仮帽付徹甲弾(APBC)弾込めます!!」

 

 まだ機械量産が出来ておらず、徹甲榴弾(APHE)が主力生産されている中、特に高価な砲弾として手作業で制作されていた。

 むろんその高い製造コストの代わりに、威力は十分に確認され少数ながら各車に搭載されていた。撃ちだされた砲弾は魔王の防御魔王を打ち破り体を引き裂いた。

 大きな歓声と共に、伝説の魔王討伐に合同軍は喜び、そして一部の将校は恐れていた。魔王さえ倒す事が出来る軍事技術、そのようなものを旧式だとあっさりと明かす太陽神の使いに。

 もし敵になったとしたら勝つ事はおろか抗う事すら出来ないのではないかと。

 

 

 この時、太陽神の使いから貸し出されていた映像記録装置から、魔王討伐の歴史映像として残され、それは一部着色され映画や本など創作に長らく使われるようになっていった。

 今回の功績によりミリシアルのガンマ試製戦車は改良を進められることが決定し、ムーではTOGは記念博物館に送られ開発は停止された。

 

 そして鬼の国との外交終結や封じられている邪龍との戦いに備え、ミリシアル及びムーはさらなる軍備拡張を。

 しかしマラストラスがまだ生きている事、そして密かに動いている事を知らなかった。

 

 

 日本

 同志を集め、進められてたマウスの改修が完了間際になっていた。

 マウスをベースにするため似た戦車が選ばれ、元々あった車体構造に傾斜装甲を追加し固定砲塔化、車体後部に移設し開発が終わったばかりの40口径203mm榴弾砲を搭載している。

 

・40口径203mm榴弾砲

・超重戦車マウスの車体

・後方固定砲室

・楔増加装甲

 

 沿岸線防衛にでも使用するのかと問いかけたくなるような巨砲と巨体、運用方法に問題が発生する重量、ただし威圧と言う効果は確かに絶大であった。

 知識が無い者が見たとしても、確実に暴力的な存在であると認識でき、空冷式サーマルジャケットの付けられた巨大な砲身からの視覚的圧力はかなりの物だった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。