龍の国 日本   作:カキフライW

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28.1639年初頭 ムー生粋の奇人と変人

 日本では徹底して資源の備蓄と産業の再生に手を尽くしていたため、ようやく万全と言える状態に戻りつつあり、国外への戦力派遣はいまだに控えているものの、ようやく戦力の補充から拡充へと体制を切り替えることが出来た。

 抑えらえていた研究開発も各分野で活発になり、平和的技術発展と共に恐ろしい兵器が偶然生れた。元々は医療用のものであったのだが、余りの危険性から多くの署名や意見から化学兵器として登録され、厳重に管理されることになる。

 

 

・CCA脱毛液ガス状噴霧兵器

 吸い込んでも無害であり、目的の箇所に霧状に噴霧するだけで絶大な脱毛効果が認められ、あらゆる毛が一日後には抜け落ちる。それは ムダ毛 から 頭髪 に至るまですべてである。

 その非人道性は余りにも高く、戦意破壊兵器として運用するにも細心の注意を必要とするべきであると、一部の人達は署名を集めて訴えるなど酷い物だった。

 脱毛なので再度生えてくるのだが、やはり薄い方々など一本一本を大事にする人たちにとっては残酷らしい。

 

 

・ハリアーⅡACV

 続けられた改良によって、F-35シリーズは素晴らしい性能を持っている。問題はその調達価格であり、高価なF-3と合わせてF-35を調達するのは日本防衛に関しては何も問題ないが、国外で運用するとなるとさすがに高価かつ過剰な性能を持つ機体を消耗するつもりはなかった。だからこそ安価な機体でありながら、F-35に近い運用ができる機体が求められ必然としてハリアーが選定された。

 一番の目的は低価格化であり、民生品で代用できるものは躊躇なく採用し、システムボードも代用品となっている。

 総じてACV(Advanced・Cheap・Version)と命名されたが、長らく改良が行われず、40年以上手が付けられていなかった理論と技術の向上から、調達価格はF-35の10分の1以下でありながら性能は原型機の2割弱程度向上することができた。

 これならば気にすることもなく運用する事が可能であり、信頼できるのならムー国のアグレッサーや特殊部隊向けに供与する事も出来るだろう。

 訓練や海外供与向けに月産5機程度で生産が開始された。

 

 

 

 ムー国の封鎖軍事都市ではSAAB29の試作に失敗し続けていた。

 エンジンの破損に悩み、対策を取ろうにも着陸するころには全損してしまうため、原因究明が出来ていないのだ。

 むろん原因究明のための技術が不足しているのもあるのだが、そんな状況であるため変人と言われる技術者は一つの案を出した。

 まず橘花改の翼下エンジンをSAAB29のエンジンを素のまま搭載。

 剥離しやすい塗装を何重にも塗り重ね、はく離した度合いや枚数にヒビの状況から負担や風を知る。

 そしてあろう事か、増槽を改良した翼下位置に寝転がる席を作ってエンジンを見るという。

 正気ではないと止められるも、他に案がない以上強行し、飛行中にじっとエンジンを見続けた。

 

「エンジン停止! エンジン停止せよ!!」

 

 高高度飛行中、エンジンの負荷が上がると僅かな異常の発生を見逃さず、その直後に両エンジンを停止させ滑空降下させるという余りにも無茶な行為だった。

 しかし無事に着陸に成功し、解体分析したエンジンからはフィンブレード等の破損が確認された。高高度状態でのみ発生するため地上試験では見つからず、最終的には強度不足であると判明。

 そのおかげもあり、SAAB29のエンジンは問題なく完成、剥離塗装の箇所から負担がかかる場所が明確になり、SAAB29のテストにも利用され遅れていた機体は無事に量産に入る事に案った。

 ようやく封鎖軍事都市に置いて量産体制に移行しつつある。

 新たに得た知見をもとに、テストエンジンは翼下式である橘花で高高度試験し、機体は試験的に後退翼のテストや尾翼のテストなど原形を徐々に失っていくことになるが、どこか橘花に近い血統を持つメッサーシュミット Me262に近付きつつあった。

 

 

 実験区域の滑走路では、地面に設置された発射装置から標的として、車両にけん引されている熱源を出しているグライダーに照準が合う。

 

「照準良し。 試射開始します」

 

 噴煙を上げて撃ちだされた物体は熱源を放ち続けるグライダーを追尾し着弾、爆発しグライダーは粉みじんになる。

 試験で10発中命中したのはわずか6発、それでもなおムー発の誘導弾、といってもまだ初歩的なもので信頼性も低く生産効率も決して良くない。

 しかしムー国発として 38式誘導弾として生産が開始され、SAAB29 トゥナンや艦に対空兵器として搭載されることになる。

 

 

 

 

 

 グラ・バルカス帝国の艦隊がパルス王国に赴き、そこからパガンタ王国に向かう事が予想されている。

 燃料の問題か、それともある程度は配慮しているのか、軽巡洋艦三隻である。

 パガンダ王国に入り込むのも情報を得るのもさほど難しいことはなかった。パーパルディア皇国を遥かに超える酷い汚職状況であり、賄賂ですんなりと王国内での倉庫に物資と人員を隠す事に成功、情報や立場など全ては賄賂次第。なんとも諜報活動のし甲斐がない有様であった。


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