龍の国 日本 作:揚物
グラ・ハイラス グラ・バルカス帝国皇帝の弟君。
パガンダ王国に付くと、そうそうに外交の為に部下を連れて王城に向かっている姿が確認できた。
職員に金を積んで仕掛けた盗聴器からは、過大過ぎる賄賂の要求と、それを嗜めるような言葉が聞こえてきたところで。
「不敬な! 即刻処刑せよ!!」
盗聴器から聞こえてくる怒鳴り声。騒ぎと共に殴打する音が聞こえ、静かになると何かが引きずられていく様子が確認できた。
処刑場に移送されている中、先回りをし処刑場の責任者である男に用意していた金塊30kgを渡す。前もって話をしていたため、スムーズに処刑場責任者と取引する事が出来た。
「ではご約束通り、金塊をお渡しいたします」
「そうかそうか、それならば奴隷として融通しようではないか」
下卑た笑み浮かべて金塊を見た後、部下に言いつけて処刑を中止し枷を付けて連れてくるように命じた。
普段から処刑予定の人間を奴隷として売り渡していたことから、あっさりと処刑したことにしてグラ・ハイラスと外交官達を引き渡す事を了承した。
呆気なさすぎる事に、強襲強奪するためオスプレイを賄賂を積み上げて輸送したことが無駄になってしまった。
引き渡されたハイラスや外交官は殴打され青あざもある。
「まずはお怪我を治療いたしますので、ご安静に」
処刑場に送られてきたグラ・ハイラスと外交官達は大分暴力を振るわれ、服さえも高価故にはぎ取られていたが、命の別状はなくまずは痛み止めを含めた遅効性睡眠薬で眠ってもらっている。
いくらなんでも人道に外れ過ぎた行為に隊員達はパガンダ王国に怒りを覚えていた。
限られた範囲内とはいえ簡易的な手当てを行い、早急にムー国を経由し帰還する予定となっている。
しかし経過を観測する必要もあり、望遠鏡で状況を見守っていた自衛官の目には、パガンダ王国の兵士がグラ・バルカスの船に向かい、処刑しワイバーンの餌にしたとぼろ切れとなった布を叩きつけた姿が見えていた。
烈火のごとく怒り狂っているグラ・バルカス帝国の兵と、それでもまずは報告を優先と怒りを抑えながら船に乗り込んでいく様子がわかる。
今はまだ薬で眠っているグラ・ハイラス皇弟、生きている事を伝えたとしても、暴行を受けた事は変わらず戦争は避けられないだろう。
それならば国益が優先され、戦後を見据えた平和への知識という名の洗脳を行うのが適切と判断されるのも仕方ない。
数日後、大騒ぎの中オスプレイによってパガンダ王国を出発、睡眠薬の連続投与によって寝ている最中であるため、グラ・ハイラス一行は気付いていないが目が覚めた時にはムーの最新空母の医務室であった。
そのまま治療と説明を受け、
「これが、列強か」
グラ・ハイラスの視界に映っているのはムー国、といっても急速に発展中であり建設中のビルなどが多いのだが、首都オタハイトと商業都市マイカルの文明程度はすでにグラ・バルカス帝国を越えている。
「ここから首都に向かいます」
マイカル港に接岸し、飛行場に移動するとムーによって製造された、レシプロながら大型4基のエンジンを搭載し与圧式キャビンを持つ ラ・カオス二世 に搭乗する。
その性能はグラ・バルカス帝国の皇族が利用するアヴィオール双発機を超えるが、あくまで豪華な商業機であり、専用機として改造を受けた物とは異なる。
現在王族や政府専用のジェットエンジン搭載型を試作製造中であるため、今は新造されたばかりのラ・カオス二世が主となる。
あらゆる事が考慮され、日本では戦艦の建造は中止された。使い道が余りに限られる事と、いくら技術と兵器が優れていても、人口には限度があり多くの人員を融通するわけには行かなかったからだ。
その代わりにB-52P型の追加生産と改修が決定された。100年爆撃機と言われていたが、とうとう100年を突破し、さらなる推力向上によるペイロードは増え全て50倍率電子励起爆弾に炸薬換装されたE50-Mk.82爆弾(227kg爆薬の50倍、約MOABを満載)が満載された大地を焼き尽くす空の怪物。
しかし開発を進めていくと、もはや戦争の為ではなく大地を消滅させる兵器となっていくのではないかと、日本政府および技術者達は恐怖していくこととなる。