龍の国 日本 作:揚物
第三文明圏外 ロデニウス大陸
ロウリア王国は動きを始めた。いままで蓄えた戦力をもって、クワ・トイネ公国とクイラ王国を占領、統一を果たすつもりなのは明白であった。
列強に対する認識も甘く、数の力さえあれば勝てるとさえ妄信している面も見られていた。総兵力50万の大軍勢、確かに小局面であるならば数の暴力を持って押しきる事さえ可能だろう。
ムーとしてはクワ・トイネとクイラは契約の地であり、高度化しつつあるムー国の資源地でもある。
永世中立の名の下に表立って動く事は出来ないが、資源採取及び生産輸送基地を守る程度の兵力だけは送っていた。
「何卒、国家を守る為に援軍を」
「我々は中立であり、軍事協力は行いません」
クワ・トイネ公国は自国の為に必死に交渉を重ねるも、ムーは自衛以外はしないとしてダイダル平原に訓練展開するだけにとどまった。
日本も正規戦力を派遣しない。戦いに関与する必要性もないのだが、レイダークラヴ族を100杯派遣。訓練と称してムーの特務部隊と共に危険地域で巡回をし、非常時は容赦なく敵対者を排除する。
道具の扱いを覚えたのはクラヴは20杯、それ以外は肉弾戦になるのだが、それとて弱い関節部分は防弾防刃装甲、目などは防弾ガラスのアイガードで覆われている。
飽くまで報酬と引き換えの傭兵活動ではあるのだが、魔物であると当初は警戒していたクワ・トイネ公国の騎士団であったが、規律ある行動は騎士団さえも舌を巻くほどであった。
来る日、ロウリア軍の東伐軍はギム防衛陣が見える距離まで軍を進めていた。
「ワイバーンだ!」
「くそ! 数十体はいるぞ!!」
クワ・トイネ公国のギム防衛陣地を任されているモイジ将軍は、余りの数に冷や汗を流している中、ギム防衛陣地内には巡回中のクラヴ族と特務軍が 偶然 を装って展開していた。
「開シ」
器用に大きな爪でスイッチを入れると、専用の対空機関銃の狙いを空へと向ける。
ムーで製造されるようになった30mm対空砲、現在M4 2連装30mm自走対空砲及び 4連装対空30mm対空砲として生産が為されているが、余りにも遅れていいたために、日本で急遽簡易に生産できる対空機銃を少数生産した。
しかし日本国内で生産が開始されたときにはムーでも生産が始まり、持て余したためにチープ兵器群の一つとして登録された。
M45機関銃架MK2
12.7mm重機関銃を4基
サーマルジャケット
大型ボックスマガジン
レイダークラヴ族用操作装置
お世辞にもレイダークラヴ族の視力は良くないのだが、20杯は特別な視力矯正ゴーグルを装着しているのでそれは当てはまらない。
ワイバーンの群れ、本来なら水中生物であるレイダークラヴにも対空攻撃能力はない。だからこそ、道具の使い方を覚えた特に知性が高い20杯は苦手とする事を率先して覚えた。力強く自ら牽引しながら爪に付けられた照準器とトリガーで狙いを定めて撃ち落としていく。
所詮は12.7mm機銃4基 10門、されど2km程度の射程を持つ12.7mmの大口径弾丸、ワイバーンは鴨打のように次々と落ちていく。
視力は悪いが海中を素早く泳ぐ魚を捕まえる関係上、動体視力はずっと良い。最高に状態が良い状態で235km、旋回や騎士が搭乗中でベストではない状況のワイバーンなど、止まっているようなものであった。
「何が、何が起きている!? 一体何をしているのだ!!」
唖然としているクワ・トイネの騎士達など気に留めず、運悪くというべきか、運よくワイバーンごと撃ち抜かれずに済んだ騎乗騎士も、高高度から落下という地獄の恐怖を味わい、地面にぶつかり砕け散る。
ギム防壁の上では必死に梯子をかけようとするロウリア兵達を弓で倒していたが、さすがに飽和し始め白兵戦が始まっている。
そんな状況では破城槌を止められず、木製で作られた分厚い門が激しく軋み音を上げていた。
「城門が破られるぞ!」
「抜剣! 槍兵は集まれ!!」
城門の危機に慌ただしく兵士が動く。
ロウリア軍が城門を破砕しようとする中、レイダークラヴは門に集まり整然と並び、大きな爪を掲げ戦いに備えている。
城門が砕けロウリア兵が飛び込んできたところを爪で掴み、鎧事軽々と真っ二つに圧縮切断してしまう。
「魔物だと!?」
「なんでクワ・トイネ公国に!!」
ロウリア兵の持つ槍に剣、そして少数が持つ斧などでは浅い傷を甲殻に付けるだけで、たやすく爪に挟まれ命を失っていく。
なだれ込むように大量に襲ってきても、甲殻に阻まれ何一つ効果がない。
いずれ疲れるかもしれない。いずれは倒せるかもしれない。でもそれはいつか分からない状況で、爪に捕まれば死しかない相手に飛び込んでいく兵士はほとんどいない。
砕かれた城門前は渋滞を起こし、そんな状況に一際大きなレイダークラヴが城門を抜ける。片側の爪が小さいのは水竜に襲われたときに食われ、時間をかけて再生した証。
それでも生き延びた力はクラヴ族の中でも一際強く、右の巨大な爪で騎士を三人纏めて掴むと、鎧ごと真っ二つにねじり切った。
噴き出す鮮血の雨に兵士達は怖気づき、城門を次々と抜けて出てくるレイダークラヴに押し返され始めた。
先遣隊に配備されていたワイバーンは全て戦死、防衛陣内で激しい白兵戦が進むもクワ・トイネ兵は次々と討ち取られていくが、レイダークラヴによって無残にロウリア兵は殺され、3万の軍勢されどあくまで3万の騎兵と歩兵であり有限、勇敢な者も居れば臆病な者もいる。勇猛果敢に挑んでもすべて殺されてしまえば、強奪も出来ず報酬も得られない相手に戦意は保てない。
防衛陣地は少々焼かれたものの夜まで続いた襲撃はクワ・トイネ側の辛勝で終わった。
撃ち落とされたワイバーンはレイダークラヴが集め、食事として貪り始めているがこれ以上陣が持つことはない。
あくまで国境警備を兼ねた防衛陣であり、本格的な侵攻に対応できる機能など有していなかった。