龍の国 日本   作:揚物

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33.攻撃

 ムーはミリシアルに話を通したうえで行動を開始した。

 死んだ人員の死体の回収だけではなく、破壊され奪われた物資の補填の為、そして武装中立であるが故に、被害を受けた明確な反撃の為に。

 実戦訓練を兼ねた空母打撃艦隊をロウリアに、復興の為に物資を積んだ小規模な艦隊がクワ・トイネに向かっている。

 ロウリアとて退くに退けるわけもなく、兵士を集め大急ぎで本国に帰還し防衛体制を整えようと慌て始めた。

 全てのロウリア兵が引き上げ、侵入者に荒らされ破壊されたクワ・トイネの港町は酷い有様であったが、全住民を移動させていたため人的被害だけはなかった。

 正確には、ほぼ、全てのロウリア兵であり、一部は勝手に軍を抜けて港町に居座り野盗まがいの事をしようと考え集まり始めていた。

 クワ・トイネ公国からは守護騎士団団長イーネが責任者として、ムーからは特別編成の一個中隊と共に討伐に当たる。

 クワ・トイネ側としても観戦武官としての側面もあるが、仮にも自国内である為騎士を派遣しないわけには行かなかった。

 

「抵抗する者は射殺して問題はない。 民間人に手を出す犯罪者を一人たりとも逃がさぬように!」

 

「「「了解!」」」

 

 訓練の終わっている歩兵ではあるのだが、特務部隊と違って練度は期待できない。それ故にムー国陸軍と空軍の中から選りすぐった対都市侵攻部隊が頼りだ。

 M1ガーランドなど自動小銃を持っていると言っても、狭い都市部で奇襲を受ければ剣に対して絶対的に優位とは言えない。

 銃器を持っていながらも、突如家々や室内から飛び出してくる相手に、少なくない死傷者を出しながら港町に潜んでいたロウリア兵たちは駆除された。

 

 

 

 

 一月後、ロウリア沖にはかき集めた400隻の帆船艦隊、そして対するはムー国空母打撃艦隊。

 

 改装軽空母ヨージュン 1隻

 防空巡洋艦ラ・トーネ級 6隻

 

 視界に入ったたった7隻にロウリア軍の海兵はその少なさに嘲ったが、船長など将軍職の者は少なからずパーパルディア皇国のガレオン船と魔道砲を知っており、勝てるとは思わなかった。

 

「今すぐワイバーンの支援を求めろ! ありったけだ!!」

「オールを出せ! 全速で接舷し白兵戦を開始せよ!!」

 

 出来る事は接舷し白兵戦に持ち込むか、ワイバーンによる火炎攻撃しかない。

 ロウリア海軍の総司令官シャークンは出来る限りの命令を下すが、背を流れる冷汗と震える手を必死で隠していた。

 

 

 

 

「ロウリア海軍、接舷を試みるようです」

 

「各艦砲撃を開始せよ。 魔信で30分ごとに降伏勧告を忘れぬように」

 

 艦橋から状況を確認していた士官から情報を伝えられ、ロウリア軍の支援であるワイバーンが到着するまで20分、その間に始まったムー国海軍による砲撃は、ロウリア軍の弓では届かない距離から甲板機銃による銃撃、そして対艦対空両用の30mm連装砲による砲撃によって、オールで速度を増し接舷を試みる帆船は一隻たりとも接舷に成功していない。

 それどころか弓矢の射程にさえ入れず次々と攻撃を受け沈没していた。それとてムー国海軍にとっては射撃及び砲撃訓練にしかなりえない。

 

「レーダーに反応あり。 接敵までおよそ30。 ワイバーンのようです」

 

 CICはまだない為、艦橋で情報を収集し即座に司令官へとあげる。

 

「航空隊発艦開始。 他の艦は防空戦準備」

 

 旗艦である空母ヨージュンから命令を待っていたD21艦載機が次々と発艦、直掩機だけではなく全機がワイバーンの迎撃へと向かった。あくまで艦載機の性能、されどワイバーンなど相手にならないのだが、しかし400騎という数の暴力に抗うのは難しい。

 

「甲板員は至急船内に移動せよ。 繰り返す甲板員は至急船内に移動せよ」

 

 艦が慌ただしくなる中、航空戦を繰り広げ圧倒的差で撃墜していく。とはいえ相手は400に対してこちらは34,100近くのワイバーンがムー艦隊に迫っていた。

 

「対空戦用意」

「対空砲及び対空機銃員は最終確認せよ」

 

 射程範囲内に近づいた事がレーダーでわかるとともに、対空攻撃が開始。

 突如始まった攻撃にワイバーンの竜騎士達は対処できず、魔信で指示を乞う事さえできず体をワイバーンごと撃ち抜かれ海面に落ちていく。

 

「なんだこれは!?」

「爆裂魔法か!! 全騎最高高度に逃れろ!!」

「手前の船に攻撃を集中させろ! 高空に逃げてもやられるぞ!!」

 

 ムー国でも近接信管はまだ開発中であり搭載されていない。しかし時限式信管はすでに作られており、防空圏内に入ったワイバーンは導力火炎弾を口部に発生させる事も出来ず、爆発する対空砲弾によって体を砕かれるか対空機銃によってミンチになっていく。

 

「だめだ……。 第二列強相手には手も足も……」

 

 ロウリア海軍総司令官はシャークンはでに勝敗が分かっているが、それでも王命を違えるわけにも行かず、防衛戦故に撤退命令を出せるわけもなかった。

 二時間もかからぬうちにロウリア海軍は壊滅し、海上に浮く多くの兵士はムー国の船に救助された。

 日本式に習い一応の救助活動は行うものの、すでにムー国の兵士は殺されているのだ、丁寧に扱えるわけもなく、殺されたり暴力を振るわれないだけマシな扱いをされることになる。

 

 

 

 

 数日後、ムー艦隊はロウリア王国には到着しておらず、近海で補給を行いながらある兵器の準備を行っていた。

 それは日本としても使うかどうか会議が為されていたため、輸送が大幅に遅れていたことが原因だ。

 

 大規模戦意破壊兵器 強臭気タイプ S

 

 正式に戦争をするには手間がかかり過ぎるし、何もしないのは武装中立を保つことなどできない。少なくとも十分過ぎるほど後悔させなければならない。それ故に選ばれた戦意破壊兵器。

 ラ・カオス二世 爆撃型 がD21に護衛されながら連日 王都上空から散布し徹底して戦意をへし折る。

 すでに防空の為のワイバーンなど全滅しており、防空などないに等しい状況、吐き気を催す悪臭漂う王都。

 魔導士総出て洗い流しても匂いは残り、そして翌日にはまた散布されてしまう。

 勇敢に戦って勇敢に死ぬ。そんなロマンも何もなく抵抗できずにただ悪臭が漂う、何をどうして戦意を保てばよいというのだろうか。

 

「くそ、なんでこんなに」

「うるせぇ。 黙ってろ。 臭くてイライラしてんだ」

「蝿と鼠が、畜生が」

 

 寝ても覚めても飯を食っても酒を飲んでも女を抱いても、ひどい悪臭が漂う王都では精神を追い詰められるだけで、武勲も何もない。

 虫は集り鼠は集まり、誰も戦死しておらず、城門を破られたわけでもない。それでも手も足も出す事が出来ない上空から投下される吐き気を催す液体、そして井戸の水を一切使用する事が出来ないので喉が乾き、戦いになる前に心を徹底してへし折られてしまった。

 

「屈辱だ。 だが、これ以上兵の戦意を保つ事は出来ん」

 

 将軍とて兵の戦意の低下を防ぐ事などできず、眠る事さえ妨げられる悪臭に精神的に参り始めていた。

 それでもなおムーは攻撃の手を緩めず、ロウリア王国の求心力は落ち王都を出ていく住民は増えてゆく。

 

 

 

 戦意破壊兵器を投入されて2週間、凄まじい悪臭から食欲を失い、睡眠は妨げられ、精神的に参り切ったことからロウリア王国は降伏を決定した。

 

「……申し訳ございません」

 

 ロウリア王国の竜騎士団団長 近衛兵団長 王国騎士団団長 魔道騎士団団長 その全てが王の前に跪き、許しを請いつつも元々勝ち目のない戦いを理解していた。

 

「ムー国に謝罪をせねばならん。 ムーの施設を襲った者を一人残らず調べ上げ、捕えるのだ」

 

 手も足も出せず、それどころか姿さえ見せず王都の戦意を徹底的に砕かれた。王が好む湯浴みさえ悪臭の前では意味をなさず、川も井戸水も余りの悪臭から飲む事さえ厳しい。

 家畜も馬も、そしてワイバーンさえももはや弱り切り、戦う力など残っていなかった。

 

「心得ております。 現在厳しく追及し、襲った者達を探しております」

 

 ロウリア王国はムーに謝罪する為に襲撃した犯人を捜し出し、責任者である小隊長や中隊長と共にその首を差し出すという手を選んだ。

 戦にすらさせてもらえず、戦う力を徹底して削がれるという屈辱、奇襲以外では同じ土俵にさえ立てさせてもらえないと差を見せつけられることに、ロウリア王国は列強と言う存在をはっきりと知る事になった。

 ムーの賠償要求こそいまだ不明なものの、悪臭に耐えられず王都を出ていく国民は多く、抑え込む兵士さえもはや士気は無いに等しい。あと数日続けられるだけで戦わずして国家が崩壊してしまう事態、抵抗などできるはずもない。

 

 

 

 

 

 クワ・トイネ公国やクイラ王国は戦争の終結に一安心こそしたが、ムーの庇護下に入ったわけではない。再び攻めてくるのは明白ではあるのだが、身を守れる力はいまだなく、ムーに対してなんとか支援を受けられないかと外交交渉を行っていくことになる。

 それでもなお、ムーは武装中立であり属国を持たない国家、技術支援という考えもなく植民地でもないクワ・トイネやクイラに対して出来る事は限られる。

 

 

 

 

 ムー国 軍事都市

 ムーの戦車技術者は中戦車開発において、そもそも転輪が間違いではないかと発想に至った。

 重量を支え安定した走行の為に転輪を増やした結果、構造が複雑になり重量増加と速度が落ちているのではないかと考え、重量を支えるのには適しても速度を上げるには不適切であると。

 その為車体を支える転輪を大きくして数を減らし、車体を短くして駆動輪の位置を変更、新たな懸架方式を試みるなど新たな可能性を模索し始めている。

 懸架方式や駆動輪についてムーの技術者達は研究熱心であり、あと一歩で日本が教えていないタイプの中戦車が産まれそうであった。

 

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