龍の国 日本 作:揚物
ミリシアルの失敗があった。アニュンリール皇国本土の制圧は完了した。だが隣接する大陸には大規模な都市や軍事基地がない為、二線級の戦力を持って制圧を進めていたのだが、魔物の軍勢による襲撃を受け部隊は損害を被った。
第二大陸には魔物の研究所があり、小規模ながら多数の基地もあった所を見くびり過ぎていた為なのだが、徹底した抵抗に苦戦を強いられていた。
「現在第二大陸の制圧が遅れています。増援の要求も来ております」
国防省長官であるアグラ・ブリンストンは、新しく就任したばかりで前任者の失策に苦労していた。
「第二師団から抽出し増援をだすように、兵器に関しては試作機のテストを兼ねて送るように。……太陽神の使いから何か連絡はないか」
担当官は暗い表情を隠すことはない。
「いえ、何も連絡はありません」
日本にとって関わる必要もなく、第二大陸でのミリシアルの苦戦も油断に過ぎない。グラ・バルカス帝国との戦争が起きる時間的猶予の中に集中的に戦力を投入すればよいだけのこと。
例え遅れたとしてもあまり手を貸し過ぎるのも良くない。せいぜい頑張ってもらうだけであった。
「それで、研究は進んでおるのか?」
ムーの封鎖軍事都市にミリシアルの技術者もいるため、ムーが誘導弾の製造を成功したことを知っており、同じく概念を知っていたミリシアルの技術者も長らく研究開発を続けていた。
アニュンリール皇国から回収した誘導魔光弾もあるにはあるのだが、ただ生産する事は出来ても内部のプログラムを理解にするにはまだまだ時間を要することがわかっている。
自国生産したものの方が改造するにも理解するにも事が良く、対艦用ウルティマ1、対空用クウ・ウルティマ1が製造されている。
性能こそムー製の物よりも少々上回る程度ではあるのだが、対艦用を持っているのはミリシアルだけである。
「価格こそ難がありますが、実用に足る物は出来上がっております。 アルファ3を標的にしたのですが、命中率は8割を越え、現在量産体制に入っておりますが、やはり大量に生産するには希少魔金属を使いますので」
「構わぬ。財源を確保し新造艦には優先配備できるよう取り計らうように」
「新鋭艦のオリハルコン級についてですが、建造はやはり2隻まででよろしいのでしょうか」
軍務大臣が恐る恐るミリシアル皇帝に伺いをたてる。
「誘導弾を見たであろう。時代が砲から誘導弾へと変わる以上、国威となるモノは2隻でよい。 航空母艦に防空艦に注力をするようにせよ。それよりも例の人員は選別してあろうな?」
「はっ! 現在各軍から信頼できる者達の選別を進めております!!」
ミリシアルは第一列強であり、だからこそ理解しても居た。
強権を振るえるのも、多くの文明圏があまり戦争をしない事も、ミリシアルの威圧による強権があってこそ。
それが崩れてしまえば文明国家同士は新たな列強になろうと大規模な戦争を始めかねない。
パーパルディア皇国
皇族たちが秘密裏に準備を続けている中、ルディアスが気付いてしまった。
すでに魔道都市に移動し戦力があるとはいえ全体の3割程度、それでも外征と属領への威圧を考慮すると鎮圧するには危険な戦力で、何よりもワイバーンオーバーロード部隊と新鋭竜母の艦隊までも離反しているのが致命的であった。
日本では会議が行われ、どのようにして秘密裏にレミール派を優勢にするのか議論がなされていた。大義や意思はあっても戦力や物資に関しては、予想よりも状況は良くないというのが現在の判断となる。
だからこそどうするのか。魔道技術は上回り幸い兵器工廠のデュロは配下にあるが、資源については属領である程度は補えるものの、アルタラス王国から魔石を大量に得るしかない。
余りにもかかわりを限定し過ぎた事から、直接手を下せる方法が限られている。その為少し手を広げなくてはいけない事態に陥ってしまった。
日本
ある技術者が発想を359度転換した上に斜め88度に視点を変え、チープ戦車に積む砲がないなら、砲を積まなければいいじゃないかと考えに至った。
ラムアタックを主とし、速度と前面強度を重視すればよいと主張。高速で前進し、装甲車両を含めた障害物をラムで破壊し侵攻するのみ。そして各種掲示板や情報を集めて議論を重ね、歴史の中に埋もれ発見された計画し試作された戦車。
つまり ラムティーガー である。
元は工兵用であるが、体当たりするのは危険とはいえ無人戦車であるなら何も問題はない。
しかし戦車とはCFE条約第二講で大まかに決められ、それに当てはめると砲塔も砲もないので該当外になる。ただし製造国が正式に戦車であると認めてしまえば、戦車になってしまうという曖昧さもある。CFE条約を順守するならそのような不利になる事を言うなどあり得ないが。
クラウドファンディングによって順調に資金を集め、いざ製造に入る為の最終仕様決定となったところで、ラム、つまり衝角部分の決定について大いに揉めた。
ドリルを主張する者や傾斜装甲のドーザーブレードを薦める者、大型の射出式杭や大型回転のこぎりなど、衝角攻撃を好んでも多様な考えがありまとまりが無くなりつつあった。
第三文明圏外
レイダークラブ族、日本からしてみれば兵役に協力してくれる友人であり、彼らにとっては圧倒的捕食者である水竜族やシーサーペント達から逃れる術である。
相互契約ではあるのだが彼らにとっては安全の対価であり、人手が不足している日本にとってはありがたい存在であった。しかし移動に難があり彼らは単独では車両を動かせず、陸上の長距離を移動するのも困難、遠隔操作による車両運搬を頻繁にするわけにも行かない。
そして安全を得られると言う事で集まるレイダークラブも増え、クワ・トイネ公国とクイラ王国に出稼ぎと言う形で傭兵に出てもらっている。
クワ・トイネ公国ではかなり驚きと警戒があるものの、ギム防衛に手段を選んでいる余裕などなく僅かでも戦力を求めていた。
ロウリアの休戦は一時的なもので戦力が整えば再侵攻を行うのは目に見えている。しかしムーは中立であり軍事的協力はせず、兵器の販売もしないと通達している。列強どころか文明圏国家との繋がりもほとんどないことから手詰まりと言えた。だからこそ見た目はカニそのものであるレイダークラブ族でさえ、クイラからの傭兵を除けば数少ない協力カニであることに違いはなかった。
状況をどうにかしようと、クワ・トイネ公国とクイラ王国は外交官や将軍を積極的に文明圏国家に外交に向かわせることになった。