龍の国 日本   作:揚物

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36.パーパルディア皇国とパールネウス国

 第三文明圏

 フィルアデス大陸では国家が二分するという事態に陥った。

 これはルディアス皇帝と他の皇族の意見の相違によるものであったのだが、具体的に割れる結果となったのは皇国民の意思でもあった。

 

「新たな皇帝を!」

「我らに食事を! 生活を与えてくれる皇帝を!!」

 

 奪うのではなく育てて上等な上澄みを得る。それが新たな皇族がとった手法であったが、それが今までの国家方針と大きく違った。

 

《誇りがあれば食い物が少なくても生きられる。 誇りがほとんどなくても食べ物が十分なら生きられる》

 

 だからこそそれなりに誇りを保てる属領法の下、食べ物を優先して生産させる。そしてそれを実行するために魔道実験都市で得られた知識と技術を大いに活用する、魔石を使った蒸気機関車による大量かつ迅速な輸送、計算された農業計画、農機具の安価な貸し出しなど、食料を優先しつつも外征を使用しない国富を優先した結果であった。

 搾り上げれば疲弊しますます搾れる量と食うところは減る。しかし肥えるまでは行かないものの手間暇をかけて適切に育てれば搾れる量も食う所は増える上に忠誠心まで付く。

 安定して搾れる量が増えれば兵士も貴族も楽が出来る。どちらが長期的に見ても利が大きいかは深く考えるまでもない。それが理性的搾取国家というものだ。

 正式に皇族は声明を出し、魔道都市によって実験が行われていた属領とともにパールネウス国の設立を発表した。

 

「新たな女帝レミール様に忠誠を!」

 

 ほぼ同等の文明、変わらぬ軍事力、しかし確たる戦力差、されど拮抗する程度の兵力。何よりも最新鋭の竜母ヴェロニアとワイバーンオーバーロードは工廠都市デュロに配備され、その軍はレミール派の皇族に忠誠を誓っている。ルディアスとておいそれと手を出せるわけもない。

 勝てないが負ける事はない戦力、日本は密かに助力する為ムーを介することで、食料と魔石資源をアルタラス王国及びクワ・トイネ公国から買い付け、輸送する手はずになっている。

 元よりアルタラスにクワ・トイネとクイラからは資源を膨大に買い付け国内貯蔵する予定だが、それを一部前倒しにすることで、レミール派に物資を融通する。該当国の産業を少々荒らしてしまうが、売る品物から情報まで困る事はない。

 

 

 

 

 クワ・トイネ公国

 

「ムーから連絡があり、文明国家から兵器売却と食料購入の打診が入っております」

 

 ムーからではないが、ムーを介して文明国家が一部技術を売ってくれるという喜ばしい情報であった。

 

「ワイバーンロードを20頭、固定式魔導砲を10門、戦列艦を20隻。 弾薬や砲弾などは別途購入するようにとのことです」

 

 日本がムーを介して第二文明圏文明国家から入手した物資ではあるのだが、文明圏外地域の文明圏外国家であるクワ・トイネ公国では超兵器であるだろう。

 

「しかし、食料は2000万トンを要求されており、ムーの輸送列車の協力を得られないと難しいかと」

 

 対価は食料、それもかなりの量の買い付けであるが、ムーが敷設した列車を利用すれば不可能な量ではない。輸送に借り受ける費用は掛かっても、国防を考えれば比較にならないほど重要なものが得られる。

 

「ムーの外交官殿に話し合いの場を明後日以降に設けたいと連絡を。 各担当官には2000万トンの用立てする方法と兵器輸入について緊急会議を行うと通達をするように」

 

 

 

 

 アルタラス王国

 

「さらに魔石を5万トンだと!?」

 

 近年発注量が増えているミリシアルを介し、伝えられたさらなる取引量、膨大だが日本の本来の貿易量から考えれば微々たるもの。

 

「はい。 そのような連絡が来ており、東方にある文明国家からの発注とのことです。 ミリシアルからの依頼である為、断るのは少々難しいかと」

 

 不可能ではないものの難しい発注量、しかし断るのは難しい先からの依頼となれば悩みは深い。

 

「……他国や商人への売却量を減らすと通達と交渉を。 発注先へ優先するように根回しするのだ」

 

 王は頭を抱えてはいるのだが、第四列強のパーパルディアでさえ第一列強には逆らえず、第一列強からの命令とあれば横暴な事をアルタラス側に言う事などできず、嫌がらせくらいはしてくるだろうが、そのような事に構って発注量を減らせる相手ではない。

 

 

 

 

 一月後、工廠都市デュロに大量の物資が未知の鉄の輸送船によって届き、何事かと輸送責任者を呼び出したところ、差し出された書面には、聞いた事もない名前の文明国家からの支援物資はレミール宛であり。

 

≪民の平穏な暮らしを愛する女帝へ≫

 

 などと書面が添えられ、物資支援と魔道都市の技術の一部の譲渡が条件付きで書かれていた。

 A・リンドヴルムや3銃身マスケット銃など元々魔道都市の防備に使われていたものであったが、魔導馬車に使われていた動力を利用した列車など革新的と言えるものを製造できるようになるのは力となる。

 とはいえ情報と技術が使用できると言っても、運用するのも生産するのも時間が掛かる、出来る限りにらみ合いの状況のうちに用意が出来なければ押し切られるだろう。

 だからこそ急がねばならないし、公式に支援者が居るために手出しが難しい事を皇帝ルディアスに理解してもらはなくてはならないのだから。

 

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