龍の国 日本   作:揚物

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39.国家から州へ

「栄誉あるレイフォルの戦士よ! 我らに逆らう蛮族の首を取りに行くぞ!!」

 

 確実なる勝利を得る為グラ・バルカス帝国の艦隊討伐へと、船員たちは声を上げ、建造されたばかりの新鋭装甲艦レイフォルを筆頭に大艦隊は西へと向かう。

 100隻の戦列艦と20隻の竜母、列強第五位であることを示す大戦力であった。

 大艦隊が出港して丸一日後、見えてきたのはたった一隻の戦艦、たった9門の砲、僅かでも先進的知識があれば必死に逃げた事だろう。

 現在のムーならば、地方艦隊の艦長でさえ戦う事を択ばず、本隊の救援が来るまで機関が壊れようとも全力で逃げまわる事を選ぶ。

 グラ・バルカス帝国最強にして最大の戦艦 グレードアトラスター、ムーでも相対するには空母打撃艦隊もしくは習熟訓練中の最後にして最大の超弩級戦艦が必要だろう。

 

「蛮族どもに我らの力を見せるのだ!!」

「敵艦発砲!」

 

「この距離で届くものか! それよりもワイバーンを全て攻撃させろ!!」

 

 ムーの戦艦によく似ている、だからこそ少しでも知識がある総司令官は油断をする部下と異なり、たった一隻の敵艦に艦もワイバーンも全てを消耗する覚悟をしていた。

 列強第四位のパーパルディアでさえ、列強第二位のムーには手も足も出ないのだ。眼前の、恐らくムーと同等と思われる相手に、旗艦である運用実績もない装甲艦1隻に戦列艦の群れ、勝てるはずもない。

 魔信によって総攻撃と司令官の声が伝えられ、風神の涙によって艦隊は加速する。彼らは勇猛であった。果敢であった。しかしそれだけであった。

 グレードアトラスターは主砲を使う事もなく、副砲及び艦サイドの機銃で艦隊は沈んでいく。戦いにすらならない。狩りですらない。ただ寄ってくる虫を振り払うため無造作に出した手が生命を奪う、そんな行為によって戦列艦は沈み、ワイバーンロードは撃ち落とされる。

 そんな中最後の一隻の戦列艦が降伏旗を上げ、グレイドアトラスターは攻撃を停止、ほぼ接舷するほどの距離に近付いたその時、片舷すべての砲が撃ちだされた。連続した砲撃音と噴煙は一時帆船を隠してしまうほどすさまじい物であった。

 2分ほどして海風によって煙が晴れたとき、グレイドアトラスターは傷一つなく佇んでいた。

 艦長や船員が唖然とする中、片舷すべての機銃掃射によって戦列艦は微塵になるまで砕かれ、卑劣な行為への報復としてレイフォルはグレードアトラスターの対地砲撃によって陥落。

 軍事拠点や皇城などが砲撃によって徹底的に破壊されたものの、市街地はそれほど被害はなく、むしろ激しい砲撃によって住民は逃げ出していたため国民の人的被害はそれほど多くはなかった。

 レイフォル内でも遠方の基地や属領の兵団は空爆によって戦力を削られた後に到着した陸軍によって壊滅。そう言った戦いがあったのも最初の一ヵ月程度であり、三か月もすれば抵抗勢力は消え去った。

 

 軍艦と共に多くのグラ・バルカス帝国の兵士が到着し、市民は集められ財産は没収されていった。

 

「貴様らはこれからレイフォル民ではなく、グラ・バルカス帝国人となる。 蛮族の身でありながらグラ・バルカス帝国民になれるという名誉に感謝し、身を粉にして働くがいい!」

 

 そして順次グラ・バルカスから輸送船が到着し、移住のために元居た住民は都市の隅に追いやられ労働に駆り出される。次々と運び込まれる工作機械や工業製品、工廠が作られムー大陸制圧に向けた準備が始められた。

 もはや名前でしか残っておらず、グラ・バルカス帝国領レイフォル州として第五列強は失われ、運よく生き残っていた皇族や貴族などは悉く処刑され全てが終わりを告げた。

 

 

 

 グラ・バルカス帝国 レイフォル州仮設司令部

 グラ・バルカス帝国外務省はレイフォルが従えていた従属国家への対応を始める。威圧によって従うなら管理官を送りこみ傀儡化し、従わないのなら兵を送り制圧し国家を消滅させる。

 過激ともいえる手法ではあるが、迅速にレイフォル陥落に伴う混乱は収束しまとめ上げた。外務省の現場責任者であるゲスタの手腕とも言われているが、実際には陸軍及び空軍の的確な威圧や攻撃によるものだ。

 頻繁に派遣依頼の書面が送られてくるためため息を付きながら陸軍司令官であるファンターレは内容を確認する。

 

「またか。 一個師団を派遣する準備をしろ」

 

 一方で対応している陸軍及び空軍はその度に駆り出される為、嫌気がさし始めていた。外交を司るモノがしっかりとしたことをせず、手軽に武力という手段を講じる為任務が多いことから物資の集積や錬成が中々進んでいないのだ。

 

「それで、列強第二位 ムーの軍事情報は手に入れられたか?」

 

 諜報に出ていた部下からの報告を受け、書類に目を通す。

 

「入国そのものは成功しております。 しかし情報は地方部隊だけではありますが」

 

 白黒写真にはムーの主力機でもある隼とD-21が写されていた

 

「単翼機があるのか。 見た目はアンタレスと似ているが、性能はどうだ」

 

「アンタレスに似ているものは大よそ530kmかと。 武装は口径は不明ですが本体に二基のみ確認されております」

 

 実際には軽く550kmを超える速度が出るのだが、都市上空や速度よりも近接航空機動による訓練を優先していたため知られていなかった。

 むろん報告された速度が限界とは考えてはいないが、大よその推測の役には立つ。

 

「アンタレスとほぼ同等とはな。 もう一機は、固定脚か。 こいつはどうだ」

 

 帝国では水偵以外ではもはや見る事のない固定脚機。

 

「400km程度を確認されております。 しかし短く劣悪な滑走路でも離着陸が可能らしく、各地に配備されている事が判明しております」

 

「400kmとはいえ、そのような戦闘機とは厄介な。 小さな航空基地でも運用できるとなると、全てを排除するのは相当な労力を要するぞ。 スパイには配備数や拠点の割り出しにも注力するように連絡をしろ」

 

 D-21、ムー国では機体の生産が終了し保守部品のみ作られているのだが、やはり場所を選ばない離着陸能力は敵対する予定であるグラ・バルカス帝国の現場指揮官は高く評価した。

 判明している航空基地ではなく、小規模だが隠蔽しやすい多数の航空基地から都度攻撃を受けていては、兵士の疲労は積み重なってしまう。

 例えアンタレスより性能が劣るだろう機体といっても400km以上ともなれば、数が相手となれば油断は出来ないのだから。




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   / づΦ
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