龍の国 日本   作:揚物

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41.1639年末 実験

 パーパルディア皇国の海軍はアルタラスの船団に向かっていた。

 

「魔信から、アルタラスの船団になぜ接近するのかと、名も知らぬ国家から通信が来ておりますが」

 

「放っておけ! それよりも今は目の前の物資を回収するのだ!!」

 

 気にかけてもなお、戦争を継続するには物資を得なければならない。名も知らぬ国家からの警告の魔信など無視して当然であった。

 列強であるという事が名も知らぬ文明国を軽んじてしまった。

 

 

 

 

 返答がないままアルタラスの船団に近付いていくことから、警告は何の意味もなかったようだ。とはいえそれだけパーパルディアが予定通り疲弊しているということでもある。

 

「汎用チープ誘導弾MK3用意」

 

「設定は艦船、20機は飛行物体に設定」

 

 MK3誘導弾は扶桑の後部にある甲板に手作業で並べられ、次々と海面に出ると旋回しパーパルディア皇国の海軍へと向かっていく。統制機のみ情報が入力されており、海面から50cmの高さを飛行。20機のみすでに飛行状態にあるワイバーンロードに向かい高度を上げていった。

 十数分後、統制機に装着されている安価なセンサーが標的を感知、同時に統制機同士で連携し標的を各スレイブ機に振り分ける。

 いくらか魔道マスケット銃を持つ兵士も居た、だが海面近くを飛行する物体に気付いたものは少なく、なおかつそれが敵性物体であると認識できる者はいなかった。

 1000円程度のカメラ、1500円程度の小型マイコンボード、10万円のガソリン飛行機、800円のBT装置、30万円の爆薬、安価な兵器は制御され海面ぎりぎりの船腹に接触し自爆。開いた大穴に海水が流れ込み船が次々と傾き沈んでいく。

 

「何が起きている!?」

「わかりません! 次々と船腹で爆発が起こり沈んでいます!!」

 

 ワイバーンロードに搭乗し、空から周囲を確認していた竜騎士達は状況を理解できず、そもそも拿捕が目的だったためワイバーンロードは数体が飛行しているだけで、そのほとんどは竜母と共に沈んでしまった。

 

「隊長! 何か飛んでき」

 

 爆発音が鳴り響きその続き言うことなくその竜騎士はばらばらになりワイバーンと共に海面に落ちていった。視線を周囲に向けると小型の竜のようなものが迫ってくるのが見えた。

 

「小型の鳥爆弾か!? 全員よけろ!!」

 

 動きは遅く十分に振り切れるだろうと考え、ワイバーンロードに命じ降下しながら速度を上げる。

 ワイバーンロードは個体差があれど最大350km、汎用チープ誘導弾は最大で180km、しかし決定的な差があった。

 

「くそ! どこまでも付いてきやがる!!」

「振り切れ! 速度は遅いんだ!」

 

 相手は疲れた様子を見せず動きに迷いがないのだ。降下し速度を上げても、翼で態勢を整え直し羽ばたき加速する以上、急加速急減速に急な方向転換が出来る以外、常に効率的飛行を続けられる飛行機械に対しては勝機はない。

 ひたらすらセンサーが検知する標的を追跡し、接触の衝撃で爆発する。羽ばたく故に飛行速度が安定しないワイバーンロード、導力火炎弾を撃ち合うしか存在しない航空機動、それで逃げ切れるほど1500円のマイコンボードAIによって操作されるレシプロ小型飛行機の運動性は悪くない。

 何よりもセンサーの感知範囲が広い統制機によって、位置情報を伝えられたスレイブ機は追跡を続ける。

 

「この! 落ちろ!!」

 

 竜騎士は接近してきた物体を斬ろうと腰に下げていた剣を振り下ろしてしまった。その直後設定を超える衝撃を受けた飛行機は爆発し竜騎士とワイバーンロードは爆発に飲まれ、体をバラバラにしながら海面に落ちていった。

 

「だめだ! 攻撃せずに距離を取れ!!」

 

 必死に逃げ回るもあくまで生物、飛行機械を引き離す生物的な航空機動が出来ても、無理をすればするだけ早く疲れてしまう。

 警戒に当たる事で残っていたワイバーンロード14体、その全てが逃げ回るも10分もしたころに全てが海面へと没した。

 その日、パーパルディア皇国の海軍の過半数が沈んだ。鹵獲し物資を補充するつもりが、唯一確実な優勢をとれるはずだった海軍にとって、この損害は致命的と言え、ここから徐々に国力を落としながらパールネウス国によって力と領地を失っていった。

 

 

 

 

 

 日本

 長らくおとなしくしていた日本に移住を決めた外国人の中で、露西亜から来た人たちは特に少なく、軍事企業もライセンス管理をするための小規模な合併会社が一つのみ。

 露西亜というよりスラブ人として念のため血を繋ぐためだったのだが、他企業が大きく活動する中彼らも動き出した。

 しかし自前の工場はなく小規模の研究施設があるのみ、そこで放映され人気を博した戦車であり歴史と実績のある KV-2とObj.279 が選定された。事実クラウドファンディングでは相応に資金提供も受けた。

 各部品の製造を委託せねばならないなど苦渋の選択もしなければならないが、街道の悪魔を多目的無人戦車としてその大きさを利用する事、それがもっとも実用性があるとして、障害物除去・偵察部隊補給・緊急補給物資輸送・無人運用と他企業とは大きく異なる。

 

 各企業に問い合わせ必要な部品の調達

 保守用130mm滑腔砲の選定

 155mm榴弾砲の短砲身への改造

 装甲材の選定及び委託製造

 基礎車体の発注

 無人運用に向けたAIの開発

 

 世界初の無人自律戦車を開発した国家として、新たな運用方法の模索が始まっていた。

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