龍の国 日本 作:揚物
グラ・バルカス帝国との外交
領事館設営による情報収集と内部かく乱、少しでも戦時費用を下げ最悪回収ができる資源の選定でもある。戦後に国家から得られる情報よりも、通常時に隠す事が出来ない所まで調べ上げ、賠償として得るつもりであった。
巨大飛行船ML86X、運用・保守・訓練・予備を含めて4隻、無理な運用をすれば一度に2000トンの物資を輸送可能であり、十分実用性があるとして性能の向上への研究と2年に1隻のペースで製造されている。
現在2隻を持ってグラ・バルカス帝国 本土に向かっていた。レイフォルなどではなく、すでに場所も判明していることから態々手間をかけるつもりはない。増槽タンクを装着し、最悪な事態を想定していた。
グラ・バルカス帝国 本土が地平線の果てに見えてきた地点、いまだグラ・バルカス帝国側は気付いていないようだが、こちらから判明しているグラ・バルカス帝国の通信回線に割り込む。
「こちらは太陽神の使い。 外交に訪れた故に250m級飛行船が離着陸可能な地点への誘導を求める」
通信と共にアンタレスなどの警戒機が近海に配備されている空母から上がり、飛行船の周りを飛び回る。即座に攻撃を仕掛けてこないだけの理性はあるようだ。
通信機及びアンタレスからの誘導を受け空港に着陸、空港ではタラップから外交官が降りるがしかし一名しか降りない。
全ては用意された5頭身のG及びZシリーズの自律遠隔操作ロボット、なんであれここは敵性国家、SDタイプの自律操作兵器による護衛を受ける。
外交官は1人のみだが、護衛兵器であるG及びZは腕に9mm短機銃が直接マウントされ、肩にはカールグスタフが積まれている。物々しい様ではあるが、全高が1.2m程度しかないので少々アンバランスなのは否めない。
ただし恐怖も何もなく外交官の安全を最優先で行動し、最悪な事態では交戦による強硬手段を行う。
「おい、あれはなんだ?」
「人 には見えないが、わからん」
異形の物体にグラ・バルカス帝国の兵士や空港管理官は困惑していたが、後部ハッチが開かれ、大量の徘徊型自律兵器タイプSDが下ろされると驚き動きが止まった。
最悪な事態を発生させないよう、相応の威圧効果と共に兵力の移送を行っていた。
その頃、外交を行う為外務局へと案内されたものの、1人の外交官に対してグラ・バルカス帝国側は不快な感情を隠す事はなかった。
「我が国に外交に直接訪れるとは不敬ではないか!」
「前もって連絡もなしとは、蛮族な事だ」
高圧的に出てくる外交官、これだけ軍事力を見せてもいまだ差が分からないらしい。とはいえ軍部は大慌てであった。秘匿していたはずの本土へと、直接外交に現れたのだ。それも本土を任されている軍部にとっては致命的であり、責任問題及び防空や防海についての再確認など内部をひっくり返す勢いであった。
「ふむ。 あなた達が秘匿している本土の場所が判明していながら、良き外交をできないようですね」
太陽神の使いとして複数の写真を取り出してテーブルの上に広げた。
「直接帝都に赴き、グラ・ルークス皇帝陛下と謁見を申し込んだほうがよいでしょうか?」
それは帝都の航空写真と、皇帝グラ・ルークスの近影写真であった。
「「……!」」
グラ・バルカス帝国の外交官達は何かを言いたくとも、驚きとその事実によって言葉が出なかった。帝都内、それも皇帝の側近近くまでスパイが入り込んでいると理解するには十分であった。
実際には前世界で得られたもので、スパイが入り込んでいるわけではない。これはただの脅しに過ぎない。
「さて、対等な外交を致しますか? それとも他の方法を選びますか?」
テーブル席の向かいでにこやかに話す太陽神の使いに対し、高圧的に出ていた外交官達も黙り写真を見ながら考え込んでいた。
まずは皇帝近くにいるスパイを排除しなければ、下手な事をすれば身の危険が伴う。この場でも慎重に発言を選び、可能であればどこまでスパイが入り込んでいるのか知らねばならない。
高圧的な外交から一転して慎重な外交が求められ、全員が冷や汗を流し始めていた。
着陸している空港内の許可された範囲内とはいえ、飛行船を守る様に徘徊型自律兵器SD 50機が完全に動きを同調・連携している。乱れもなく警戒している動きは見事なもので、空港では別の軍部の者達が慌てていた。
「情報技官! あれがなんなのかわからんのか!!」
「アレはなんだ。 なぜあの大きさで稼働できる」
遅れてきた情報技官が遠巻きに写真を撮る事で記録したり、メモを取ったりとしているのだがわかるはずもなく、非常に小型とは言え見た目は戦車であり、搭載されている機銃は紛れもなく銃器、ラジコン操作されているかもしれないということくらいしか理解は出来なかった。
外交に来ている為に目立った行動も出来ず、分解解析も出来ない為その程度しか分からないというのもあるが、何よりも外務局から慌てて送られてきた職員から、敵対行動ととられない事の一切を辞めるよう止められたのが理由であった。