グラ・バルカス帝国本土にて、外交の為に三日ほど駐機してるのだが、日に日に情報収集する技術官が増え続けていた。
「何かわかったか?」
「さっぱりだ、どうやって動いているのだろうか」
「上はどうするつもりなのだろうか。 一つでも手に入れられれば色々分かるのだが」
見ただけで構造が分かるはずもなく、大よそラジオコントロールであるくらいしか理解は出来なかった。技術官はその差に恐れるものの、軍人達にとっては例え操作されていようが小型の兵器だと見下していた。
グラ・バルカス帝国が誇る2号戦車ハウンドIIや2号戦車シェイファーIIの方が優れていると言うが、警護向けの小型でそもそも装甲車両を相手にすることを目的としていない。
三日間ほど待たされている間、グラ・バルカス帝国側では連日連夜に渡るスパイ探しと外交策に奔走していたが、スパイが見つからない事に手が出せず、いたずらに時間を消耗しているだけであった。
「では、スパイの確認は出来なかったと?」
「はい。 全員身の潔白が証明できており、盗聴器どころか写真機さえ確認できておりません」
グラ・ルークス皇帝に仕える者達の身辺を徹底的に洗ったものの、誰一人怪しいものなど居らず、スパイ探しはすぐに暗礁に乗り上げた。元々スパイが存在しないのだから見つけようもなく、無駄に時間を浪費しただけに終わるのも当然であった。
「もうよい。 下がれ」
会議場では担当官だけではなく、外交から軍部に監察まで相応の責任者が集まってた。
「諜報力は我々以上とは」
「今以上の身辺調査となると、時間はさらにかかる」
「今回は外交を受け入れるのはよいだろう。 ではどうする」
外交としてどこまでを行うのか。世界に宣戦布告をする以上、その範囲が重要になってくる。領事館の設営とまでとするか、何かしらの交易に条約とそう簡単に済ませられる問題ではない。
「相手の軍事力を知りたい。 双方に領事館設営までを求めたい」
「本土に領事館を設営を許せというのか! そのような事をすれば軍事技術を盗まれかねんぞ!!」
各部署からいまだかつてない事態に責任者の面々も苦労し、五日目にはグラ・バルカス帝国本土の中でも東岸領にある空港に隣接する形でのみ、領事館の設営と外交特権について認めるに至った。
領事館設営はグラ・バルカス帝国にとって異常な速度で進められた。
二度目の飛行船の到着と共に組み立て式のユニット住宅及び3Dプリンターによって5日と掛からず建設、自動化された建設作業機械や小型機械によって融通された上下水道にもスムーズに接続された。
完成した領事館には荷物に紛れ込ませ、各種小型兵器も運び込まれてはいるが、グラ・バルカス側では余りにも未来的過ぎて持ち込み品を簡易チェックする監査官では判別する事が出来なかった。
「では、まずは一般的な食品等から始めましょうか」
「こちらとしては、その自動機械というのを輸入したいのだが、まずはそんなところだろう」
グラ・バルカス帝国として、何度も見た自動作業機械などを求めてはいたが、日本として許可するつもりなどなかった。今後の取引で検討するとオブラートに包んで言う事で断りつつ、交易が開始された。
数々の交易を兼ねた食料品の一部に、こっそりと日本はある代物を混ぜた。国家に多大なダメージを与えてしまうのだが、戦争を継続させない事にも繋がり、さらにこちらの都合がよい人材を得る事にも繋がる。
危険な合法缶飲料 モンスターゼロ・ストロングガード
500ml
アルコール度15%
カフェイン含有量40mg
アルギニン150mg
各種旨さと依存性を感じる添加物
狂ったパンチ力と廃人さえ納得してしまう劇物。飲み口は非常に良くアルコール感はあるものの癖は弱く、疲れと共に理性が吹っ飛ぶ強烈な効果。某合法ドラックと言われるドリンクさえ超える凄まじい依存性と、企業に依頼して作った戦意ではなく国家を滅ぼし兼ねない代物。
日本国法では問題なく合法の範囲内ではあるが、倫理観から考えれば非常に宜しくない代物。日本国内で販売は決してできないのだが、戦争物資として許可製造がおこなわれていた。