龍の国 日本   作:揚物

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44.静かな侵略 訓練という名の

 食品の交易によって美味いという評価がグラ・バルカス帝国内で広がり、二か月に一度の交易では大幅に供給量を増やしている。

 安価に、美味しく、大量に、グラ・バルカス帝国内に流れ込み、産業にダメージを与え始めていた。そして静かに広がる合法缶飲料、グラ・バルカス帝国の酒よりも安く、何よりも非常に良く酔える。高価な類の酒を買うことが出来ない一般兵士に広まり、そこから民間へと広まっていった。

 一度飲んだら忘れられず、仕事終わりに飲めば疲れもストレスも吹き飛びご機嫌に過ごせる。そんな酒が安く手に入るのなら、少々無理をする者が出るのも仕方ない事、監視任務や交易物資の受け渡しの際に、いくらか優先的に融通してもらえるよう接触をしてくる者が少なからず出始めていた。

 その中から使えそうな立場の者達には個人的に融通する代わりに、領事館敷地内から出る事がほとんど出来ない為、情報を対価として求めた。

 個人感覚では特に問題がないと情報と考えても、多方面から情報を少しずつ集めてしまえば、それは十分な裏付けと国家機密となりえる。

 

 正面切っての戦いが戦争だけではない。国民は商品で、外交官ならば言葉で、国家間なら国力で、それが戦争でもある。

 だからこそ、法外な値段で裏取引されるクスリの様に、正規ルートを外れて販売される合法飲料缶は時に非常に高価になり、手に入れる為情報は多く入ってきている。

 一方でグラ・バルカス帝国側では保存技術が優れていない為、飛行船で運ぶにしろ長期保存できない為限られたものしかない。時計や飲料などを一応輸出しているが、そもそもあまり人気もないため購入する必要性もなかった。前世界において種子など植物の輸入も完了しており、必要としているものなど何も無いに等しい。

 それ故に硬貨の流出を危惧するグラ・バルカス帝国は手を尽くそうとするも、貿易赤字など対策を取ったこともなく、気付かれぬようその間にレアメタルを使った装飾品や調理道具の製造をグラ・バルカス帝国の企業に依頼し、購入する事で少しずつグラ・バルカス帝国から持ち出していた。

 

「それでは、今回の取引はこれで」

 

 グラ・バルカス帝国にとっても価値のあるレアメタルから、まったく価値を理解できないレアメタルを使った調理道具や装飾品を、正規のルートをもって堂々と飛行船に運び込む。

 むろん対価としてグラ・バルカス帝国側が求める多く求める合法飲料缶や食料を下ろし売却。

 

「確かに。 それで、これは?」

 

 グラ・バルカス帝国側の担当官は納入品目録を確認し、記載にない合法飲料缶が50個ほど木箱に入れられているのが目に入った。

 

「人気だと聞きましてね。 少しだけおすそわけです」

 

 そして広がる汚染、徐々にだが確実に飲料によってアルコール中毒者が増えつつあり、兵士の規律や工場の生産力はミスによって低下しつつある。気付かないほどほんの少しずつ、気付いた時には手遅れである様に。

 

 

 

 

 ムー大陸

 時が近いとしてアルーでは住民の退避が推奨され、空洞山脈に近いリュウセイ基地に物資が運び込まれていた。

 戦車や航空機の優先配備、M4中戦車やM4駆逐戦車にM4自走砲にM4対空自走砲はもちろん、隼とD-21を優先的に輸送している。あくまでジェット戦闘機は主要都市及び重要工業群が優先配備されている最中、ムーの工業力ではいまだ万全とまでは行かなかった。

 優先配備されている中には日本から融通されたARL-44戦車 5両、そしてコンテナに納められたチープ兵器群があった。コンテナを開いてボタンを押せば稼働する簡単なチープ兵器に限られるが、操作も簡単であり用意されていた。むろん入り込んでいるスパイから隠すため、布や板などで隠し輸送されているが。

 

「本当に、奴らは来るのだろうか」

「レイフォルを見ただろう。 ムーに侵攻してくる可能性は高い」

 

 部隊の到着を待ち、そろそろ到着の方を聞きリュウセイ基地の駅にて兵士達は整列している。現場の兵達も状況の変化に反応し、厳しくなっていく訓練や増強されていく軍備に、日常が終わり非日常が迫って居る事を感じ始めていた。

 

「休暇取れっかなぁ」

「当分は無理だろうよ。 なにせ」

 

「第二教導団が到着したぞ!」

 

 整列しながらも無駄口を叩いていた兵士達は、連絡と共に口を閉じ少々乱れていた隊列を整え直す。

 リュウセイ基地に直接乗り入れ可能な線路から、2連結蒸気機関車が牽引する車両に乗せられた戦車が現れる。

 第一教導団が各地で訓練を行い、各基地から選別した者達でムーで製造しているM4中戦車を改造したもの、日本で改造したスーパーシャーマンを参考に、燃費を犠牲にしたエンジン出力の強化や、砲塔装甲と砲身長を犠牲にしてイルーレ105mmカノン砲Mk2を搭載するなど、ムーなりに近付けようと試行錯誤したもの。残された時間は限られ、各地では厳しい訓練が行われ軍事力の強化が行われていた。

 特に厳しく訓練が行われているのは。

 

「15ノット標的まで30mもずれているぞ! 初弾でも10m以内に入る様に落ち着いて計算をするように!!」

 

 艦橋ではなく現代には程遠いもののCICがあり、指揮そのものはここで行われている。

 

「全力稼働はこれ以上は主機が持ちません! 出力下がります!!」

「次砲弾装填まで530秒!」

 

 各部から上がってくる報告、巡洋艦で訓練を積んだ者達を選び抜いた人員と言えど、過剰な負荷を意図的にかけられている現状では各部署から悲鳴のような報告が続出した。

 

「機関部! 訓練終了までのあと10分持たせろ!!」

「弾頭と装薬の装填遅いぞ! 気合入れて運べ!!」

 

 機関室では60分の全力稼働によって過熱し、激しい音を立てているディーゼルエンジンに技師達はなんとか保たせようと苦労し、46センチ砲弾と装薬の輸送に主砲担当は余りの重量に滝のような汗を流していた。

 ほぼ同じ構造とはいえ様々な問題点に対して手が入れられており、ムー国超弩級戦艦ラ・マトヤ、1番2番砲塔や艦橋は同じだが、ディーゼル機関であり排煙塔は小さく、第三砲塔のあるはずの場所にはムー製の対空砲が大量に搭載されている。

 そして日本から融通されている特別な対艦誘導弾が2基だけ乗せられていた。もちろん日本側が実戦テストをしたい目論見もあり、ムーとしては後に対艦誘導弾の載せ替えも考えていた。

 

 

 

 封鎖軍事都市

 陸軍区

「準備良ーし!」

 

 開発の進んでいた90mm戦車砲、素材と技術の問題から計画を変更し参考情報を元に新開発された84mm戦車砲となった。その先行量産品が重戦車BPの76mm砲と換装され試験場に居た。

 

「最終試験開始!」

 

 BP重戦車は合図とともに広い試験場を比較相手であるM4中戦車と共に走り始める。

 速度は劣るものの複数の塹壕や小さな川で少々苦戦するM4中戦車とは異なり、軽々と乗り越え標的前の傾斜地を砂を巻き上げながら駆け上がる。

 

「さすが我が国で開発した戦車だ!!」

「大分予算も食われているが、なるほど素晴らしい!」

 

 上級将校達が満足げに自国が自力で開発した戦車を眺めている。

 停車し砲身を標的のM4中戦車へと向けた。製造中の不具合が発生し、不要となった為何度も標的と利用されては、溶接で穴などが塞がれ使用されていた。

 砲身から発せられる大きな光と轟音、一撃で装甲を貫通し中に確認用に搭載されている爆薬に到達、わかりやすく爆炎を上げ想定通りの威力を発揮したことを示した。

 

「「「おぉぉぉぉ!!」」」

 

 開発に成功した新たな転輪や駆動系を採用し、中戦車の機動力と重戦車に近い装甲を持ち合わせた新規開発中の戦車も順調であった。

 

 

 空軍区

 

「また、失敗だったか」

 

 空対空誘導弾、ムー製38式誘導弾を元にトゥナンに搭載しようとしていたが、ジェットエンジンのような強い熱源を持たないレシプロ航空機相手には命中精度が酷く低下し、実用に達するものではなかった。

 熱源誘導式の初期段階である為、いまだレシプロ航空機を誘導できるだけの性能ではなかった。

 

 

 

 

 日本国内 自律兵器部隊

 各種自律兵器による統合運用、しかしどれだけ性能が高いと言っても、陸戦兵器であるため対空及び偵察に難がある。偵察こそドローンと連携は当然しているのだが。

 だからこそ自律兵器による対空および防空戦闘が可能なものが求められるのも当然であった。しかし航空自衛隊には航空隊と共に自律飛行する無人戦闘機は存在するが、陸上自衛隊に関すればそれはない。

 

[システム連携問題なし 対空レーダー及び各種センサー連動中]

 

 牽引車両に搭載されているドローンを制御し、新たに開発された自律型自走砲の運用試験が始まっていた。

 

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