龍の国 日本 作:揚物
パーパルディア、北東からリーム王国にも攻め込まれ、少ない属領統治軍では抵抗も出来ず次々と属領を奪われ、もはや戦争が出来る状況ではなかった。
兵士や属領に移っていたパーパルディア国民は殺され、軍の兵器を奪われ、属領民は支配された。パーパルディア時代よりももっと苛酷に、最低限活用される奴隷から、全て使い捨てられる家畜に。人々は下級国民から奴隷に。
「休戦の使者を出せ! 返答が来る前に兵力を引き抜いても構わん!!」
「拮抗する程度を残して総員は国境戦に送れすぐにだ!!」
状況を把握した皇族は大急ぎで兵をまとめ上げ、緊急の蒸気機関車を用意し人員の移動を始めた。あと少しで押し切れる最前線を、パーパルディア皇国との休戦を選んでまで。
パールネウス国の貴族からしても、守る義務も何もパーパルディア国の貴族と価値観に大差などないが、せっかく面倒な新たな皇族からの命令に従い、従わなかった馬鹿な貴族を蹴落とし策略にはめ、指示された雑多な方策を行うことで、食料の増産に成功し、鉱山の採掘効率も上がったのに、手間暇かけて大金を産むようにした領地を、隣国の馬鹿どもに荒らされるなど許せるわけもない。
しかし結果だけで言えば、領民からしてみれば守る為に兵力を集め、兵糧をばらまき必死に塹壕の防衛線を張ったことに変わりはない。
「戦えぬ者は平民も奴隷も全員城内に押し込め! 戦えるものは男でも女でも全員武器をとれ!!」
唯一の古式ゆかしい古城に領民を押し込め、防衛線を敷き領地軍で必死に防衛を行った。武器を持てるなら領民にでも魔道式フリントロックマスケット銃を渡し、塹壕を掘り自らも必死に戦った。
採掘をするのにも、すぐに使い潰すより何度も掘らせ経験を積ませた方が効率が良い。農業も使い潰すより自ら考えさせ何度も収穫させた方が効率が良い。使い続ければ手慣れてさらに一人当たりで儲けられる量が増える。そう理解すれば、領民1人、奴隷1人とて、無駄に消耗をしてしまえば得られる金銭が減ってしまう。
1人とて奪われ、1人とて殺されてしまえば、他の領地で稼ぎ権力争いをしている貴族に差を付けられてしまう。
今は新興国家となり多くの貴族の状況がほぼ横並びの現状、上に立つことも簡単だが下ってしまうことも簡単、だからこそ、売っていた恩に親族の伝手を使い必死に救援を求め、防衛の本隊が来るまで塹壕を掘り、三日間必死に持ちこたえた。
元々少ないワイバーンロードも徐々に数が減り、個人所有していたA・リンドヴルムまで駆り出し、疲れ果てそれでも古城に迫るリーム軍に必死に抵抗していた。領主である貴族はただの意地で、兵士や領民は生き残るために、必死に塹壕に籠り戦っていた。
パーパルディア皇国 属領軍から奪われた牽引魔道砲によって球形砲弾が塹壕近くに落ち土砂が降り注ぐ、
「退くな! ここを抜かれると城まで届いてしまうぞ!!」
領主であり貴族の男は浮足立つ兵士達を諫め、マスケット銃を握り塹壕から上半身を出すと近付いてきたリームの兵を射殺し再び籠る。
貴族の頭にあるのは金と権力、それを守る為に自らマスケット銃を握り、部下の反対を押し切り前線の塹壕に籠っていた。古城と国境線の間、領民にいくつもの鉱山や農地を放棄させて作った塹壕、さすがのリーム王国もパーパルディア皇国とパールネウス国の二面戦に、攻めてきている数はそれほど多くはない。
「リンドヴルムがやられました!」
「西方塹壕にリーム兵が突入!」
たった一頭、そして戦線の一部を支えていた重要な存在が倒され、一部の塹壕にリーム兵がなだれ込み始めた報告が上がる。
「くそっ、アレを購入するのにどれだけ私財を投じたか!」
領主の悪態と共に兵士達が絶望しかけた時、後方から大きな声が聞こえてきた。
「増援だ……。 増援がきたぞぉぉぉ!」
どこからか上がった声にを空を見上げると、100体のワイバーンロードの群れが現れ、リーム王国のワイバーンを竜騎士の対竜大型銃によって撃ち落とし、導力火炎弾によって地上の兵士が焼かれていく。
パールネウス国家に従う国家群に敷設されている線路、それによって早急な軍の展開が可能なので侵攻に対処、領民の犠牲は少なくほぼ完全な状況で国境での防衛に成功。
一方で所有していた属領を失い、兵力のほとんどを失ったパーパルディア皇国は、パールネウス国の軍門に下った。
25もの属領を得たリーム王国は巨大となり、属領から奪った魔導砲にフリントロック式マスケット銃の生産設備、それによって正式に第四列強はパーパルディアからパールネウス国となったが、二つの大国がせめぎ合う不安定な情勢となった。
ムーでは日本側が提供したARL-44によって、ある種の技術的ブレイクスルーが起きた。
ARL-44は他の復刻された戦車群とは異なり、砲口径を除いて忠実に再現されていることから、ムー国でもなんとか重整備も可能であり、多面的に戦車に関しての理解が深まるきっかけとなったのだ。
といっても生産効率の向上及び大口径砲への知識がついただけなのだが。