龍の国 日本   作:揚物

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47.カルトアルパス会議 グラ・バルカス帝国本土

 世界会議にてグラ・バルカス帝国の宣戦布告と共に外交官は退出、グレードアトラスターに乗り込むとカルトアルパス港を離れていった。

 その間にも会議は進められ、これ以上グラ・バルカス帝国が侵攻を行うのならば、ミリシアル及びムーによって対応する事を決定。

 とはいえ神聖ミリシアル帝国はアニュンリール皇国第二大陸の制圧が完了したばかり、兵士の休養や訓練スケジュールの問題から第二線級の部隊派遣と物資集積から始められる。

 

「それでは、各国は自衛する為の連携を密に、巻き込まれないよう交易ルートに注意をするように通達を」

 

「ムーは戦時体制になります。 今後は安全の為に交易路を指定し、レイフォルに近い地域については外国人は近付くことを制限します」

 

 連日の会議とはいえ、昼食をはさんで夕刻には終わる為、委細を知るミリシアルとムーとは個別に会談も行っていた。

 

「では、念のため陸上戦力の派遣をしてほしいと?」

 

 ムーの外交官は頷き、ムーの現有戦力を纏められた書類を取り出す。

 

「ムーでも海空軍については十分な戦力を用意しております。 ですが陸軍だけはいまだ十分な数とはいえず、戦車の数もまだ十分とは言えないのです」

 

 記載されている戦車の数は約400両、それに追随する装甲車や補給車に自走砲などを考えると随分と頑張っているのだが戦時体制ではないうえ、やはり技術の発展と共に量産しているため数は多くない。ムー国の規模と国境線から考えれば1000から1500両は欲しい所だろうか。

 

「ミリシアルでは燃料と砲弾の種類が異なる。 部隊の派遣は出来るのだが物資補給は出来ない」

 

「ムーだけではおそらく、負けはしませんが被害が多く出ると思われます。 対価の支払いは致しますので何卒お願いいたします」

 

 ミリシアルはあくまで魔導文明、科学文明とは食事を除けば物資の共有はほぼできないに等しい。国民を守る為にムーは十分な戦力を欲していた。

 

「わかりました。 話はしておきましょう」

 

 日本としてもムーから技術協力の対価の支払い量が増えるのは、国内の産業や国民の生活の向上に非常時の備蓄と助かる。

 ムーに貸し出せるモノは限られるが、単純に戦力を送り出し別行動で対応するのならば問題もなく、何よりも供与できるように開発されたチープ兵器群は、ムーやミリシアルの軍人が使っても問題ないように性能を限定し、価格を徹底して落としているのだから。

 会談が終わった夜には防衛省に連絡が届き、各種チープ兵器の備蓄向け低率生産を取りやめ通常生産に変更するよう各企業に連絡、チープシリーズの各種製品はムー向けに正式量産が開始された。

 

 ムー軍に供与する為

・民生規格範囲内で製造されたC(cheap)装甲板

・民生規格範囲内で製造された防弾ガラス

・汎用C(cheap)誘導弾Mk4

・博物館と富士演習場倉庫行きになっていた20両の5式中戦車 チリ の再整備と改造

・生成済み各種燃料

・ULCC級タンカーの派遣

・災害派遣用海上燃料精製船の派遣

・各種C(cheap)銃

 

 ムーに派遣する自衛隊の護衛の為

・遠距離液体放射器

・自律歩行自爆兵器ボンバーソルジャー

・自律巡回兵器 SD

・自律巡回兵器 SS

・陸上自衛隊自律兵器群

 

 など、支援と言う形で即応できる物資も部隊も限られるものの、全て低率生産ではあったが製造設備の維持を兼ねており、備蓄を徐々に増やしていたのもある。

 ムーからは感謝の言葉と共に、さらなる売却資源についての話と、以前から提案されていた旅団規模ではあるがムー軍の指揮権の譲渡、つまり独立混成旅団をムー本土内で活動を許すと言う事であった。

 ミリシアルからは陸軍の派遣と共に、兵器をいくらか供与を受けられないかとの話も出るが、そもそも機械文明と魔導文明では違いが大きく、そう簡単な物ではないとしてムーと同じく旅団を任せるくらいではないと無理であると断る事になった。

 

 

 連日の会議も滞りなく進められていく中、カルトアルパス港へと向かっていると思われるグラ・バルカス帝国の艦隊を発見、近隣を警戒していたミリシアルの地方艦隊は戦力差をよく理解し、沿岸警備程度の旧式艦隊では対処不能と判断、即座に情報を上にあげるも、現在主力艦隊は遠洋で訓練中の為海軍上層部は頭を抱えた。

 

「即応できる艦は記載のモノのみとなります」

 

 ミスリル級戦艦2隻

 ゴールド級戦艦6隻

 ゴールド級改装空母2隻

 アルファ3制空機30機

 ベータ3爆撃機20期

 

 どれも二線級に落ちるために訓練計画に組み込まれず本土に残っていたものばかり。兵士についても退役予定であったりけがや病気で帰還した者、残りは本土に残っていた訓練中の新兵がほとんどで、攻めてくる国家などいないという慢心であった。

 

「……外交官達には非常時に備え移動を、ムーには協定に基づき戦力支援を求めるように」

 

 苦渋とまでは行かないが、第一列強としては出来る限り選択したくはない。だがもし主要施設の一つであるカルトアルパス港に損害が出てしまえば、それは歴史に名を刻む敗北となるだろう。それだけはなんとしても避けねばならなかった。

 

 退避理由を説明するも、自国自慢の最新鋭の軍船で訪れている他の文明国家の国々は、グラ・バルカス帝国相手に戦うと言い始めるのを宥め、カルトアルパス港を出ないように通達を出した。

 

 そしてかき集められた二線級の軍艦に型落ちになった制空機と爆撃機、とてもではないが大艦隊相手に太刀打ちできるものではない。

 連絡を受けたムーの超弩級戦艦ラ・マトヤと対潜防空艦ラ・ネート級2隻、外交官の護衛とはいえ最低限の戦力しかないことに違いはなかった。

 

 極東諸国代表の文明国家として訪れている立場上、日本は参戦する必要はない。静かに港を離れようとした所、念のためと港の防衛を行えないかとミリシアルから内密に依頼されたのだが、偽装が判明してしまうために民間人保護の武力行使はするものの別の手段を取るとして離脱。日本もグラ・バルカス帝国が攻撃を仕掛ける事を理解しており、ちょうど入れ替わりで列強統合空母打撃群は補給と休息を兼ねて寄港する訓練予定を立ててあった故に、特に不安に思ってなど居なかった。

 何よりも合同訓練終了時に、在庫処分を兼ねてまずは1000発ほど汎用C(cheap)誘導弾Mk3を融通したばかり。製造ラインがMk4に切り替わったことで、旧式を廃棄リサイクルする手間もある為、低率生産していた国内在庫の4000発も後日ムーに有償援助で送り付ける予定である。

 

 

 

 

 グラ・バルカス帝国本土

 合法缶飲料の委託製造はできない、しかしアルコール中毒者が広がる中、日本からの輸出では間に合わなくなるのは明白、供給不足し過ぎては目的が果たせなくなるとして、OEMとまではいかないものの、グラ・バルカス帝国の技術でも安価に製造でき、近い味を再現する事が可能なように、グラ・バルカス帝国の飲料企業と何度か会議を行った。

 日本側が優位な会議と交渉ではあったが、製造可能な成分を全て提示させ、そこから配合バランスのみを指定する事で生まれたのが、 ドリンク・ゼロ・カスバル 強めのアルコールと多めのカフェインに体を熱くする生薬、日本が製造工程で混ぜる粉末として依存性を発揮する配合の合成甘味料等の輸出。

 程よい飲み心地と安価なために販売が開始されてからあっという間に広がり、提携企業の売れ行きはどんどん上がるとともに中毒者は加速度的に増える。

 もはやアルコール中毒者が増える事を止めるのは簡単な事ではなくなった。日本からの輸入を止めた程度では、自国生産される酒類に流れるだけで止まらない。

 簡単に売り切れたり製造中止になることが無い様、添加する為の粉末は大量に輸送し企業にはいくつもの一斗缶に封入された状態で備蓄されている。

 

 グラ・バルカス帝国東岸領 太陽神の使い領事館 応接室

 

「こちらリヒテル発動機で営業部長をしているシツミヤさんです」

 

 グラ・バルカスの軍事企業リヒテル発動機、他の軍事企業は接触を持つにはやや難しかったが、民需も取り扱っているがゆえに、飲料企業との関わりによって企業間の繋がりで取引の話を持ち掛ける事が出来た。

 といってもまずは営業の人間ではあるが、第一に部長クラスがくるのは好ましい。

 営業部長であるシツミヤ、かなり苦労しているのか頭髪も若干薄く恐らく40代だろう顔の割に全体的に老けてみえる。

 

「この度は噂に聞く方々とお会いできるとは光栄です。 良き取引のお話があるとか」

 

 合法飲料缶、そして協力し製造販売を委託したドリンク・ゼロ・カスバルがかなり売れている為、該当企業は大幅な売り上げ増加によって生産工場の規模を拡大している。

 今回は軍需品を下ろしている企業にまで食い込むつもりであった。元より発動機という話であったことから、グラ・バルカス帝国内では戦時体制であり、さらに燃料の重要性から木炭車が主流だからこそちょうど良かった。

 グラ・バルカス帝国内の木炭自動車産業を牛耳れるだけの技術、しかし日本では好事家達が趣味で研究を続けていたものを、昭和初期イベント協賛企業が協力しブラッシュアップした代物で日本ではなんら価値はない。

 

 可燃性ガスの濃度の高い木炭ガス発生炉、炭煙のゴミを除去するのみに最適な自己対流らせん式遠心分離方、グラ・バルカス帝国でも一応作る事は出来る、工作精度の問題から小型化は非常に難しいが。

 原理を教える事はないが、最適な構造として提供し、日本が売却益で得るのは清浄機に入れるフィルターの輸出益のみ。

 

「これは……、しかし」

 

 なかなかの好条件、そして営業部長とはいえ、最低限保守部品の販売や最低限の説明や保守などで掲示された技術の価値を理解していた。

 

「私の一存では決めかねます。一度わが社に持ち帰って検討させて頂ければと」

 

 営業部長だけあり表情はなんとか笑顔を保っているものの、ハンカチでしきりに汗をぬぐい事の大きさに重圧を感じていた。

 その日はこれで終いとなり、次の交易までにリヒテル発動機内では会議が繰り返された、次の交渉では営業部長と共に常務が訪れ、最終の条件の確認と正式な契約と共に正式な製造図面とフィルターの売却が行われた。

 ただし追加で一つの製品、木炭ガス発生炉・遠心分離機・濾過器・清浄機・冷却フィンをドラム缶サイズまで極めて小さくワンパッケージ化した特別生産品、湿式でそれなりの濃度の一酸化炭素と水素ガスを得られることから、グラ・バルカス製の物よりエンジンの出力を高く出せるものを、リヒテル発動機側が代理店として取り扱い、販売益の30%をリヒテル発動機が受け取る事で話を進めた。むろん一切電子化されておらず、アナログ機械制御装置のみ。それだけ基礎段階で技術格差があることを理解し、余計な事をさせないために釘を刺すためであった。

 

 

 

 

 邪龍アジ・ダハーカは現在海の上を東南に向かっている。グラメウス大陸からただ直線に、何かに惹かれるように日本本土へと。

 

 




汎用C(cheap)誘導弾Mk4
Mk1から使用していたマイコンボードが廃盤になった為、全ての部品を同価格の後継品へと切り替えられた。
マイコンボードの性能向上に伴い、統制機のAIがセンサーを十分に活用できるため、全体の性能が20~30%程度向上はしている。よりしつこく、より悪質に、スレイヴ機が標的に体当たり自爆が出来るように。
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