龍の国 日本   作:揚物

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52.ムー初の対潜攻撃 入り込む術

 先行してムー海域の威圧行動としてグラ・バルカス帝国の潜水艦2隻が北部周りに侵入していた。

 グラ・バルカス帝国の情報網ではムー国やミリシアル帝国では潜水艦は存在しないとしており、それ故に対潜装備などについてはほとんど知られていなかった。

 むろんスパイとしては手を変え品を変え情報を得ていたが、二線級はともかくとして一線級は常に外洋で訓練をしているか、船渠で厳重な管理の元整備が行われている上に、搭載されている装備はほとんどが機密として作業員もほとんど知らなかった。

 それ故に対潜装備はない可能性が高いと報告してしまっていた。

 実際にはサイズと耐久性に問題があるがアクティブソナーも、ムー国製が実用化出来ている上に、潜水艦ラ・ダマスカスも運用されている。

 何よりもミリシアルもムーも、資源を引き換えに日本では旧式となった訓練用無人潜水標的への攻撃など、経験の積み上げと兵器の習熟に勤めていた。

 

 

 

 

 

 ムー大陸 ムー国北部領海

 

「確かなのか?」

 

 警戒していたラ・ネート級巡洋艦では、CICで冷や汗を流しながらソナー要員はソナー画面と聴音機に意識を集中していた。

 報告を聞いた艦長は同じようにソナー画面を眺めている。

 

「この音は水棲生物ではなく機械で間違いありません。 これはグラ・バルカス帝国の潜水艦であるかと」

 

 初の敵性潜水艦の発見、ムー国で初の対潜戦闘となる。このことに艦長や参謀は嫌な汗を流すものの、覚悟を決め命令を出す。

 

「よし、対潜迫撃砲用意! 装填済みのモノを全て使用し撃退する!!」

 

 艦に搭載されている24連装の小型爆雷を投射する対潜迫撃砲が4基、艦長の命令によって初の実戦運用に艦内は慌ただしく準備が進められる。

 

 

 

 

 

 

 グラ・バルカス帝国 シータス級潜水艦

 潜望鏡深度まで浮上し、航行中のムー国艦艇を視認していた。

 

「間抜けな奴らだ。 我々が狙っている事も知らず」

 

 潜望鏡を覗いてムーの艦船を見ていたが、余りにもゆったりとした動きに、潜水艦を知らぬのだろうとグラ・バルカス帝国の兵士は嘲笑っていた。

 

「魚雷用意。 どうせ奴らにはわからん、ゆっくりとやれ」

 

 何もできない相手を嗤いながら雷撃の準備が船内で進められる中、潜望鏡を覗いていた水兵が、ムーの艦から何かが複数射出されたのを確認した。

 

「……まさか、爆雷か!?」

 

 焦りが言葉と共に出た時、海面に落ちた物体が爆発し、爆発音と衝撃が船体を叩きつけ浸水が発生し艦に被害をもたらしていく。

 

「浸水報告あり!」

「機関不調!」

 

「浸水区域を閉鎖しろ! 各部の報告急げ!」

 

 幸いなのが小型の爆雷であり、狙いが若干ずれた事で当たったのがたった二発のことから致命的な損傷を与える事が出来ず、各部の浸水と推進器の不調程度であった。

 船内では慌ただしく浸水へ対応しつつ、艦長は報告を受けながら報復する判断を下したが。

 

「魚雷発射用意!」

 

「ダメです! 敵艦航路より外れました!!」

 

 グラ・バルカス帝国の魚雷は無誘導、発射角によってある程度広がり当たり易いようにされているとはいえ、大きく艦首より離れてしまえば意味はない。

 

「仕方ない。 急速潜航!」

 

 ムーの艦船の航行速度は不明ながら、シータス級の速度では逃げ切れないと判断し、艦長は隠れる事を選んだ。可能な限り身を隠し、その後浮上しての船の修理と海域離脱、ムー国には対潜装備があるとの情報を持ち帰る事が最適であるとの考えだった。

 

 

 

 

 ムー艦艇では、連続した射出の後、数秒の間をおいて海面に落ちた対潜迫撃砲弾の爆発が水柱を立てるのを確認。時限式ではなく接触式爆雷の為、確実に目標に当たった事を表していた。

 

「発射装置確認……問題なし! 次弾装填!」

 

 海兵は慎重に弾の装填を作業を行っていく。訓練こそ十分に行っているが仮にも実戦、その作業速度はお世辞にも早いとは言えない。

 それでも装填が終わり早急に離れる。

 

「次弾装填良し!」

 

 報告が上がり、艦長はソナー要員に目を向ける。一斉射目を終え、その効果の確認を待っていた。

 ソナー要員は聴音機に耳を当て、ソナー画面をじっと見つめている。

 

「……対象より注水音らしきものを確認、ソナー画面からも敵潜水艦の航行を確認できず、相応の被害をもたらしたと思われますが、再度攻撃を上申します」

 

「よし! 対潜迫撃砲の再攻撃を行う! 次で仕留めるぞ!」

 

 再度の攻撃命令に各員が作業に当たり、対潜迫撃砲の射出角度と着弾地点の計算が始められ、出された結果に基づき航路と照準の修正が行われた。

 

「迫撃砲着弾地点の修正……よし」

「発射準備よし」

 

「全弾発射!」

 

 射出された対潜迫撃砲弾は計算された着弾地点から僅かにずれた海面へと落下。数秒して爆発による水柱と共に大量の泡が発生したことから、目視で爆沈したと判断、ソナーと聴音機からも撃沈したと判断を下した。

 

「情報を整理し上に報告。 現海域はグラ・バルカス帝国の侵攻が確認された。 厳戒態勢が必要と上申を行う」

 

 戦闘体制を終了し、緊張が解けた艦長は席に深く座ると息を吐いた。訓練こそしていたもののムーでは初の対潜戦闘、対潜迫撃砲の狙いも正確ではなくばらまく様に大量に使用してしまった。これからしなければならない報告書の山や状況に頭と胃が痛い思いをしていた。

 

 

 

 

 攻撃を行わず、機関を停止させ隠密に徹していたシータス級の一隻は、ムーの対潜能力を把握した。慎重を期し情報収集に徹していたことが幸いだったが、何よりも下された命令を冷静に判断し、潜入であって攻撃ではない事から無駄な攻撃をすることも、功を焦ることもなかった。

 相手に気付かれぬように通信も控え、ムー国領海からレイフォル領海まで航行してから本土へと連絡を行った。ムーには対潜装備が存在し、それは脅威に値するものであると。

 

 

 

 

 

 グラ・バルカス帝国 ゲールズ社

 現在輸入した3000馬力級エンジンを元に機体の開発と、秘密裏に許可を得ずにエンジンの解析を行っていたのだが、技術者達は会議室で頭を抱えていた。

 恐ろしいまでの工作精度に解析の不能な素材、生産できるようにとのことで輸入したうちの一台を解体分析しているのだが、まったくもって生産できる見通しが立っていなかった。

 何度エンジンの複製を試みても工作精度の問題で稼働が安定せず、似たような材質で代替してみても耐久性がまったく足りずにすぐに摩耗もしくは破断してしまう。

 

「……なぜだ。 リヒテル発動機ではライセンスで木炭エンジンが作れているというのに」

「リヒテル発動機は設計図や製造方法を正式に得ているそうです。 我々もそうすれば製造は出来ると思いますが」

 

 正式に許可を取らずに解体分析をしている以上、そんなものを得られるわけもなく、そもそもライセンス許可は交渉時の段階で拒否されていた。

 

「これからも複製は試みる。 機体の方の進捗はどうだ?」

 

 シリウス型爆撃機やアヴィオール双発機の実績はあるものの、戦闘機に関してはいまだ正式採用されたものを出せていない。カルスライン社が他社を圧倒し、アンタレス型艦上戦闘機は僅かな改修をされて陸でも使われているほどである。

 そのアンタレスにも勝る機体を上は期待していのだが。

 

「機体そのものは、エンジンの出力不足で停止していました。艦上爆撃機ミルザムをベースに完成し飛行試験に入っております。 試験は上々で陸軍海軍共に発注が来ておりますが」

 

 試作機まで製作されたものの、度重なる軍からの仕様追加要求による重量増加によってエンジンの出力不足が判明し、不採用となった機体設計を流用し制作していた。機体形状や逆ガル翼などどことなく 艦上爆撃機 流星 に似ていた。

 

「肝心のエンジンは輸入のみとは。 大量生産はできんか」

 

 責任者は苦い顔をしながら生類に目を通しながら報告を聞いている。輸入ではどうしても生産数が限られ保守整備の問題からは逃れられず、カルスライン社のシェアを奪えるとは考えられなかった。

 

「ですが、軍の要求はすべてクリアし、さらに最高速度はアンタレスさえも越えます。 これならばエンジンさえ製造できれば、主力機の座を奪えるかもしれません」

 

「予算の増額と増員を行う。 なんとしても製造できなくてはならん」

 

 ゲールズ社の方針は新型機の正式採用と生産に定まり、エンジンを複製しようと他部門への予算と人員配分を縮小する方針をとった。

 カルスライン社は軍から新機体の発注が近々ある事を裏取引で知り、要求仕様書を手に入れそれに向けた機体開発と共に、ゲールズ社の動きを知り、スパイを送りこんでいた。

 

 

 その頃リヒテル発動機では、工場の拡張が行われていた。さらなる影響力拡大を兼ね、日本でリヒテル発動機が持つ技術で生産が可能なように、彼らが生産している部品から再設計を行った三輪木炭自動車、具体的には木炭ガス専用設計されたサイドバルブ式キャブレターエンジン搭載車。何よりも出力が高くないのなら、車体を軽量化すればよいと小型化やサイドドアをなくすなどが低価格化にも功を奏していた。

 これをリヒテル発動機で新たに生産販売を始めたところ、グラ・バルカス帝国内では一気にシェアが拡大し忙しい日々であった。

 

「この度は時間を頂きありがとうございます」

 

 一方で技術差をリヒテル発動機の幹部や技術者達は良く理解し、十年や二十年では到底追いつけるようなものではないと。もし戦争になろうものなら何一つ出来ぬことをわかってしまうからこそ、上手く関われば大きな富を得られることも理解していた。

 その為たびたび領事館に訪れては、新たな製品や技術協力の交渉を試みていた。

 

「可能な範囲で良いので、またエンジンや車両の設計協力を頂けないかと、代理店販売でも構いません」

 

「そう言われましても、こちらとしては領事館外では隣接する飛行場を除いて動く許可がありませんので」

 

 リヒテル発動機の制作した車両やエンジンなど、その他もろもろのモノの設計図や技術情報を態々運び込み、それを領事館敷地内で確認と設計図を調べて再設計を行っていた。そのような状況では出来る事など限られる。

 

「それにつきましては、隣接する飛行場内に当社の整備工場があり、そこならば許可地域内なので問題はないかと外務省には確認をとっております」

 

 リヒテル発動機は伝手と賄賂によって、飛行場内にあるリヒテル発動機の整備工場ならばと許可を得ていた。

 

「そうですか。 それでは少しやってみましょう」

 

 リヒテル発動機製造の軽戦車シェイファーⅡは、大よそ95式軽戦車ハ号と酷似している。そこからほぼ発展させずに、98式軽戦車ケニを設計したとリヒテル発動機 シェイファーの情報を開示させた後に渡すつもりであった。

 

 

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