龍の国 日本 作:揚物
グラ・バルカス帝国、ムー国占領にとって重要なバルクルス前線基地、最新の機材に2個機甲師団に機械化部隊、2個航空団と大規模な部隊が配備され、砲兵がアルーに向け重砲を向け攻撃の準備を進めていた。
いまだ準備が整っているとは言い切れず、本土で砲兵の育成も並行している為、重砲の数こそ揃っているもののいまだ攻撃が可能とは言えなかった。とはいえ後数か月によって陸上侵攻が可能な段階になるとの見込みであった。
「ムーの奴ら、それなりにやるそうだがこれだけの戦力には勝てないだろう」
「精鋭の機甲師団もさらに増強されるそうだ。 オレ達も訓練が終われば歩兵から新設される機甲師団入りだな」
兵士の士気は高く次々とレイフォル総司令部から送られてくる戦車や戦闘機、侵略戦争の始まりが近い事を兵士達は感じていた。そして戦功をあげて出世する夢が近い事を。
ムー国側 アルー
アルーの住民の退避は進み、5000人ほど残っているのはどうしても先祖代々の土地から離れない人々と、その人たちを説得し続ける町の有力者、そして国境を守る為に決死の戦いを望む1000人ほどの兵士達だった。
「家々への爆弾設置よし」
「半地下格納庫への兵器の運び込み完了」
ムー国軍は都市そのものを罠として利用するために、退避し空いた家々には爆弾を、複数ある半地下格納庫にはとっておきの兵器、日本から融通された使い捨て兵器を用意していた。
「順調か。 次は各自作戦書を頭に叩きんでおけ」
「「「了解!!」」」
住民の撤退が完了するまで、そして生き残るつもりのない防衛隊は自爆的な戦術であると分かっていても、グラ・バルカス帝国を足止めする為の準備を進める。
最後までアルーから離れないという住民たちが、土壇場の状況で逃げると言ったとき、その時間を稼ぐために。
ドーソン基地周辺 防空塔群
ドーソン基地も重要な物資はすでに運び出され、残されているのはしんがりを務める為の少数の戦闘機 隼と、人員輸送のための装甲車のみ。防空レーダー等も技術が奪われぬよう爆弾が仕掛けられ、いざと言う時完全に破壊できるよう入念に準備されている。
「敵の侵攻は近い。 各自入念に設備の再チェックを行うように」
防空塔群の責任者である司令官は、誰も生き残れないだろう防空塔群に配属されている部下達を見て、なんとも言えない気持ちだったが、誰も文句ひとつ言わず準備を整えていた。
防空塔群は前線に確実に孤立し支援も得られない。しかし市民の避難や部隊の撤退には必ず必要であり、敵航空戦力を受け止め、陸上部隊を足止めしなければならないのだから。
空洞山脈内基地
空洞山脈内に作られた軍事基地には、キールセキまで直通の線路が敷設され、数多くの戦車や装甲車両が配備されている。
陸上侵攻するなら機甲戦力は確実に空洞山脈内を通らなければ、大戦力を一度に送る事は出来ない。
それ故に確実に侵攻する敵軍に対応する為、M4A3E8中戦車にクロムウェル中戦車、M4駆逐戦車に装甲車を配備し、山脈内での防衛戦を行う腹積もりであった。
一方で他の国境線において数か所は大規模でなければ侵攻が可能なため、それほど多くを送る事は出来ずに、日本から供給されたARL44も持ち込んでいた。
潜伏する為に偽装が多岐にわたって施され、空洞山脈内に生えている植物を載せたり石を積んだり、輪郭を誤魔化すために薄暗い景色と同色の網までかけている。
キールセキ・リュウセイ基地
最も戦場に近い都市であり大規模な基地では現在大量の物資や人員が鉄道によって運び込まれ、部隊の編制が行われていた。
「またきたぞ。 あれは第二軍の機甲師団だな」
「あぁ、新型のクロムウェルを配備されているとこだ。 俺らのM4とはやはり違うな」
兵士達はリュウセイ基地に各地から集まってくる。みな戦意は高く、隣接する飛行場には最新鋭のジェット戦闘機 トゥナンが次々と着陸し集まっていた。
「第8航空隊も来たようだな」
「第1から第7までは主要都市防空で動けないのは仕方ない」
「それより明日には軍事都市から精鋭部隊が到着するそうだ。 期待していた方がいいぞ」
ムー国陸軍や空軍の兵士達は集まってくる同胞達と友好を深めながら、精鋭部隊の到着を心待ちにしていた。
翌日、蒸気機関車ではなくディーゼル機関車にけん引された一軍が現れる。軍事開発都市から長い線路を走り、最新鋭の装備を整えた部隊である。客車から降りてくるムーの兵士達も、無駄口一つ叩かず素早く降車し荷物を整え離れていく。
「ありゃなんだよ。 同じムー軍だよな?」
「そうだが……、戦車もあまりみたことない兵器が多いな」
最新鋭の対戦車駆逐戦車チャリオティアにM4A自走対空砲、イルーレ105mm榴弾砲Mk2を搭載したM40自走榴弾砲に、重戦車BPに重戦車TOGⅡ、量産が始められたばかりの最新鋭装甲車や輸送車まで満載されていた。
それらは戦車兵等が乗り込み直接荷台から乗り降りできるキールセキ駅から順次降車、予定されている待機場へと移動していった。
「俺らとは、なにか違うような。 ムー国人であるのは確かなんだが」
「精鋭部隊だし何か違うんじゃないか?」
「知らないのか? 陸海空の教導団の母体となっていたのが奴らだぞ。 それが出張ってくるってことは、オレらも気合を入れてないと死んじまうぞ」
精鋭が出てくるという意味を分からないものなどほとんどいない。1人の兵士の言葉に聞いていた皆はゾッとした。
続いてムー国製のディーゼル機関車が移動し、ムー国製ではないディーゼル機関車に牽引される車両群の部隊が駅へと入る。
大量のコンテナに台車の無人兵器群、日本から派遣された支援部隊の到着であった。人の姿が見えないながら全てが自動で動き、小型の作業機によって固定も外され無人クレーン車が物資の積まれたコンテナや車両を下ろしていく。
人の姿が見えないのに作業が進んでいくことにムーの軍人たちが恐怖している中、客車から100人ほどの自衛官が降りてくるとほっとした表情を浮かべる。
それでも車両の数に比べると遥かに人数が少なく、操作するのにも困難ではないかと戦車兵であるムー国兵士は疑問に思ったが、太陽神の使いによるものあるため何か手段があるのではないかと考え口に出す事はなかった。
全ての車両や装備には赤水晶 (Red Crystal) が描かれている。
表向きには太陽神の使いとしてムーへの支援ではなく、戦争犯罪を防ぐ為の派遣。グラ・バルカス帝国にはまだ話してはいないものの、ハーグ陸戦条約など戦争中でも守るべき人道、いまだ発行及び共通化されていない”交戦法規”の策定を目指しての事でもある。
伝統的赤十字はグラ・バルカス帝国の国旗に近い事から印象が悪いとして、最新の国際表記である赤水晶 (Red Crystal) を掲げ、戦争地域での人道支援と戦争犯罪への対処に赴く。この行為についてはミリシアル帝国及びムー国も了解し、正式に戦時国際条約を締結した事によってもしミリシアルやムーの兵士が戦争犯罪を起こした場合処罰を一任するとされていた。そして。
『無人機統括システム異常なし。 衛星通信リンクよし。 全システム良好』
カメラと液晶画面を車体側面に取り付けられたヤークトティーガーEML、名称 RANA が台車を降りる。
無人機部隊を統括管理する日本初のAI士官、最終承認トリガーこそ人間の自衛官であるが、無人機群を統括運用し、衛星通信によってリアルタイムに情報が本国に送られる。
判断の難しい人道支援と戦争犯罪への対処をするために、現場だけではなく後方から法務官によるリアルタイムの判断が必要とされたことに起因し今回運用が決定づけられていた。
一方で一つ間違えれば人工知能は危険であるとして、学習及び人格構築に関しては平和主義者でも過激思考者でもない人物によって丁寧に行われている。まるで自らの大切な子供に接するように。