龍の国 日本   作:揚物

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57.戦争がもたらす世界各地への影響

 第一文明圏

 現在国内の発展が著しい中ムーへの支援の為に軍艦の建造や戦闘機の製造で凄まじく景気が良い、新たに生まれる機械や道具を買うための給料を得られるため不満など一部しか発生していなかった。

 

「もう家に帰らせてくれぇぇぇ!」

「もう嫌ですぅ! これ以上の納期短縮は無理ですって!!」

「20日後の納期品を5日後に割り込みなんて無茶です! もう17連勤ですよ!」

 

 科学文明に造詣が深い魔導工場は日本から託されたライセンス兵器の製造と量産に激務の状況が続いており、追加作業報酬や特別残業手当を付けていても、連日泊まり込みの作業に誰しもが帰宅したいと悲鳴を上げていた。

 

「すまない。 しかし上からさらに追加手当と人員補充は取ってきたから、なんとか皆頼む」

 

 工場長も痛む胃を抑えながら、目の下に酷い隈を作りながら作業を続けていた。弾薬などの消耗品の大量備蓄は必須であるため、余裕のある他工場や民間商取引と異なり激務となっていた。

 しかし生産されている兵器はミリシアルにとってもムーにとっても唯一武器弾薬を共用でき、現状では大量生産し余ったとしても両国に備蓄し非常時は使用が出来る。無理をしてでも量産するのはミリシアルにとって必要な事ではあった。

 

 

 

 ムー大陸

 空洞山脈以西がグラ・バルカス帝国の勢力下に落ちたことがムー全土に伝わった。その結果ムー大陸内にある小国がグラ・バルカス帝国に恭順の意を示し、戦わずしてその勢力下に落ちた。

 一方でムー国に対し支援を要請しつつ徹底抗戦をマギカライヒ共同体及びニグラート連合は選んだ。幸いな事はムーとの戦争を最優先としている為、ソナル王国とレイフォル国境線での小規模な交戦程度で済んでいる。小規模と言っても国境線は徐々にグラ・バルカス帝国に侵され、両国によって改良されたワイバーン、空色のワイバーンロードと飛行強化装備によるワイバーンでもアンタレス相手には不利であった。

 

「誰か助けてくれ!」

「強化ワイバーンアーマーでは対応不可能!」

「ちくしょぉぉぉお!」

 

 魔信から悲鳴のような報告が上がる中、国境線では少数のアンタレス相手に制空権を奪われ、シリウス型爆撃機から投下される爆弾によって陸軍は大地ごと耕されてしまっていた。

 グラ・バルカス帝国側が本腰ではないがゆえに徐々に侵攻及び占領されている程度である、そう認識できる程度には両国は理解しているが手があるわけでもなかった。

 

「竜騎士団後退! ムーの支援航空機が来たぞ!!」

 

 ムーからは支援機として隼の部隊が国外に配備されていた。野戦滑走路を各地に設営しなければならないが、ムーの隼とグラ・バルカス帝国のアンタレスの性能はほぼ同等、訓練程度は格下相手を相手にするつもりのグラ・バルカス帝国の中で新兵や問題児を集めた部隊、ムー側はジェット戦闘機への転換を嫌ったレシプロ航空パイロットと地方の二線級部隊。

 

「ムーの戦闘機がきたぞ!」

「上への報告もある。 見かけだけの小競り合いの後下がるぞ」

 

 命令を下されている故に後方の取り合いによる航空優勢を取る威嚇のみ、グラ・バルカス帝国とはいえムー大陸全域の戦線に主戦力を送る力はない。

 

「全機グラ・バルカス帝国の戦闘機を追い払う。 残念だが本格的戦争になれば、こちらまで戦力を回す余裕はムーにもない。 警戒しつつ追い返すのに徹せよ」

 

 僅かな間小競り合いともいえる銃撃を問わない航空戦が行われ、すでに交戦していたグラ・バルカス帝国の航空隊は先に撤退していく。グラ・バルカス帝国は無理に戦線を広げる必要はなく、あくまで主力部隊である竜騎士団を標的としていた。ムー国との戦争が優勢となるまでは攻め込まれない程度の圧力を行う方針を軍の上層部は決定し、現場レベルでは徐々に国境線を押し込み、前線と本営との相違が徐々に広がっていく。

 

 

 

 

 ムー国 交易都市マイカル

 ようやく編成の終わったミリシアル帝国の陸軍及び空軍の一部が到着、アルファ4制空機にベータ4爆撃機、ガンマ3型戦車に歩兵、最新の魔道ライフルに魔道機関銃、二線級ではなくアニュンリール皇国制圧戦で経験を積んだ一線級の部隊を最大で20万ほど送りこむ予定であった。

 一方で大規模な派兵であるゆえに物資輸送に手間取り、完全編成が完了するにはまだ一月ほど時間を要するが故に、今はマギカライヒ共同体戦力の輸送とムー国国境線防衛に当たる。

 

「我々はソナル王国戦線を担当する。 全隊列車への乗り込み及び物資移動を」

 

 ミリシアル陸軍はムーの用意した列車への物資積み込み、ミリシアル空軍は自らの航空機に乗り割り当てられた航空基地へと向かう準備を進めていく、

 科学的分析解析や思考によって実戦を食み改良の施されたミリシアルの魔道兵器群。本国ではパル・キマイラの分析も進み、原理こそいまだ完全解析は出来ていないものの、アトラタテス砲の完全コピー生産にも成功し現在最新鋭戦艦オリハルコン級及びミスリル級空母へ換装が行われている最中、それも終わり次第ムー大陸南部地域に艦隊が展開されることになっている。

 

 

 

 

 

 第三文明圏 フィルアディス大陸

 リーム王国

 戦争中に多くの属領を手に入れたリーム王国の力は増大し、パーパルディア皇国属領にあった製造工場から魔道牽引砲に魔道マスケット銃、ワイバーンロードの運用など国力は増大し、属領では苛酷な暮らしで人口が急激に減り荒れ果て始めているが、リーム王国は発展し立派な建物が立ち並び繁栄を謳歌していた。

 そしてパールネウスを狙い軍備の増強に力を入れていた。

 

 

 諸国家群

 独立した国家はリーム王国がいつ攻めてくるから怯えながらも、対応できるのが元は覇権主義で自国を属国扱いしていたパーパルディア皇国と兄弟国家ともいえるパールネウス国だけであり、救援など求められるわけもなく防衛の為必死に軍を錬成するなど努力を行っていた。

 

 

 パールネウス国(パーパルディア皇国)

 動きが鈍い第三文明圏ではあるのだが、そもそも対グラ・バルカス帝国へ戦力になりえるだけの力がないこともあり、パールネウス国は第三文明圏のフィルアディス大陸でリーム王国との小競り合いが発生していた。

 内政に力を入れている中で旧貴族と新貴族の間での調整が上手くいかない事も発生し、発展こそできているものの軋轢は広がっている。

 レミール派である新進気鋭の貴族は難題に近い発展計画に従い苦労しながらも領地は発展し、またたった2州ではあるが領民からの支持もある為、そのまま州の責任者であり代表としてパールネウス国に所属する州として半独立し州旗を掲げている。

 一方でパーパルディア皇国ではなくパールネウス国に故あって従った旧貴族はそこまで領地運営は上手くいかず、徐々に領地運営に失敗し財産没収による取り潰しで数を減らしていた。

 世界的に見れば戦争が起きる中グラ・バルカス帝国相手に、列強統合空母打撃群が戦果を挙げたことに参加を申し出るものの、余りにも技術力差が大きい為に断られていた。だがその考えは大事な事である事から、第二群として過酷な規律に従い訓練を受け、さらに統帥権の放棄を条件に一年後結成を目途とし、列強打撃艦隊の結成及びミリシアルとムーから技術供与を受ける事が決定された。

 

 

 

 陸戦力

 A・リンドヴルムは順調に強化アーマーの改良が進み、頭部から関節部まで覆う事が可能となった。このためマスケット銃程度までなら完全に防ぐことが可能になり、装甲車両に近い運用が可能となった。上陸作戦時にパーパルディア製牽引式魔導砲や対空魔導砲の輸送など多目的に利用される。

 何よりも雑食かつ沼地や海などをものともしない故に、調教さえしっかりと出来れば軍用でなくとも利用価値は非常に高かった。

 一般歩兵の装備に関しては、新兵装への切り替えで廃棄予定になっていたミリシアルの予備保管行きにさえならない旧式化した連発銃が主兵装、それでも前込め式に比べて高性能であることは間違いない。

 

 

 航空戦力

 対ワイバーンロード及びオーバーロード用の飛空強化機械の開発、ワイバーンの品種改良や情報は得ていたが、ロード種となるとそのようなことはなく、パーパルディア皇国のワイバーン飼育担当技術者や竜騎士などに飛行実験や生体確認を確認したなか、ワイバーンロードそのものが高風圧に目と耳が耐えられず、自己意志を持って飛行速度を落としていたことが判明した。

 さすがのワイバーンも生物である以上350kmを超える速度には呼吸は難しく目や耳にかかる負担は大きい。

 その為目と耳と呼吸をカバーするフルフェイスヘルムをミリシアルの指示の下、マギカライヒ共同体の飛行強化機の追加改装が行われ、ヘルムのみ輸出用としてワイバーンロード用に改良と改造が進められることになる。

 

 対艦能力不足

 導力火炎弾が対象となりえるものの、威力上昇だけではどうしようもない。粘性の燃焼液を対象にぶつけるだけでは、どれだけ圧縮や巨大化しようとも装甲物体にはほとんど効果が無い。そもそも粘性である以上いくら風魔法で保護をしても形状維持が難しく射程が短すぎる。

 ミリシアル及びムーの技術研究者達は、不要となった約5kgのガエタン工業製70mm歩兵砲の砲弾を改造、ライフリングを刻み安定翼を追加、導力火炎弾のコアとして使用する方針と共に使えるよう訓練が始まる。

 

「導力魔装弾用意!」

 

 フルフェイスマスクの下に装着されている砲弾が、風魔法によって砲弾が口部の前に移動し急速に回転していく。

 

「発射!」

 

 本来は纏わせることで利用していた可燃性粘液、それを粘液と空気が混合することで射出炸薬とした爆発によって打ち出された砲弾は、安定翼の影響か不気味な雄たけびのような音を発しながら飛翔、廃艦予定であり標的の戦列艦に突き刺さると容易く対魔弾鉄鋼式装甲を突き破り、中で爆発すると大穴を開けて沈没していった。

 射程はほんの6km、しかし導力火炎弾に比べればはるかに長射程高威力である。

 

 対航空能力不足

 対竜大型散弾銃の改良を進めつつ、ミリシアルで不要となった旧式のイクシオン型対空魔光砲と充填機の提供。それでもなおグラ・バルカス帝国相手には相手にはならず、第一第二列強の敵とはなりえない。

 

 

 対地攻撃力不足

 大型ヒクイドリにミリシアルの魔導砲弾を改造した爆弾を持たせることで解決をはかり、個体差はあるものの最大平均積載量は騎手を含め200kg。そのため110kg爆弾を搭載し対空能力を失った標的への陸海を問わぬ攻撃力などを求めた。

 

 

 

 

 まだまだ結果が出るのは時間が掛かるが、アジ・ダハーカの自力復活など最初の転移とは世界の事情が異なり始めていることから、予期せぬことに対応する為第三文明圏にも小さな非常事態への対策を施し始めていた。

 

 

 

 

 

 グラ・バルカス帝国本土

 日本の手によって軽戦車シェイファーⅡの情報を元に設計図に改良を加え、装甲と火力が若干強化されたシェイファーⅢとして九八式軽戦車ケニの生産が始まったが、ハウンドシリーズを超える戦車をムーが持つという情報に、リヒテル発動機も陸軍から解析のための技術者の派遣と、ハウンドシリーズを超える戦車の仕様書提出を命じられていた。

 擱座したムー製M4中戦車を回収し本土に輸送され、そのうち一台がリヒテル発動機の工場に運び込まれていた。技術者達は工具を片手に隅々まで調べながら、前線から纏められたレポートを聞いていた。

 

「ハウンドⅡの47mmでは至近以外で貫通は不可能とのことです」

「ムーで大量生産されているとのことだが、これを量産できるとは。 これは難しい問題になる」

「70mm以上の大口径新砲が完成するまでは、57mm新砲を使用するしかない」

 

 一部の技術者はそう簡単に設計できない事を理解しながらも、国の為と早期戦力化をまずは優先し、判明していたハウンドの欠点でもある一部採用されているリベット構造を全て取りやめ、平面ボルトと溶接に変更し砲塔は少々装甲を改良したハウンドの47mmの砲塔を搭載。

 砲は開発されたものの新型戦車の必要性に疑問が持たれ、製造されていなかった新57mm戦車砲を搭載する事でまとめ上げ、製造コストはハウンドⅡを上回る結果となるが、外見に大きな差こそないもののハウンドⅢと命名されたった3か月で戦力化が行われた。

 従来の戦車に操作感覚も似ておりも重量増加も抑えられている事から、新戦車への転換訓練も順調に進められており、各工場でも生産ラインの切り替えが行われている。

 

 一方で新型戦車に関しては、ハウンドやシェイファーなど車両系を主に設計製造しているリヒテル発動機とカマー重工、種類によっては国家が性能要求ではなく概略設計したものを詳細図に直し製造もしているのだが、遅々として進んでいなかった。

 相手となるのはムー国製M4中戦車、調べ上げたのちに軍部が出した要求スペックは

 

1.砲口径は最低でも75mm

2.400m以上の距離で64-76mmの正面装甲を貫通可能

3.最低50mmの正面装甲厚

4.走行速度30km以上

 

 と難題であるために各企業はモックアップの段階にさえ進めず、完全に停止していた重戦車ワルダーの開発も再開されるなど迷走していた。

 

 リヒテル発動機ではカマー重工に先んじる為、出世し事業部長となったシツミヤは上から命令を受け技術的協力を受けられないかと訪れていた。

 日本として要求スペックを超えるものは間違いなく3式中戦車チヌにあたる。一方でこの性能はM4中戦車と間違いなく正面から対処できるものの、その設計図をおいそれと提供してしまえばムーの戦域が不安定化するのは間違いがない。

 一方でグラ・バルカス帝国の技術力と工業力を考えれば、本土で生産しムー大陸まで十分な数を輸送できるかも疑問である。1式中戦車と3式中戦車では製造難易度はかなり開きがあり、部分的な改装や製造工程変更で出来る程度の差ではない。

 グラ・バルカス帝国の日本大使館会議室では、数日に一度はリヒテル発動機の役員や事業部長が訪れていた。

 

「新戦車設計と言われましても」

 

「協力企業からも様々な支援などを取り付けております。 こちらをご確認ください」

 

 事業部長として他企業に接触し、日本が輸入している鉱石や価値の分からない石などを使った製品の製造数を増やし価格を下げるよう説得、それを対価として設計協力を得られるよう尽力していた。書面には各企業から生産数や価格などの変更が記載されていた。

 グラ・バルカス帝国としても必死であり、陸軍から各企業に対してかなりの圧力をかけられていた。

 

 

 

 

 ムー軍事開発都市

 各種技術開発が行われている中、グラ・バルカス帝国のスパイは軍事開発都市内部に入り込もうと周辺都市や村を訪れるが、いまだ許可が無い者は入る事が出来ないために周辺都市で情報収集を行うに留まっていた。

 外見的差異はさほどないとはいえ、手慣れたスパイにとってもさすがにムー国人が訪れられない場所にいけるわけもなく、戦時体制であるがゆえに移動もそれなりに制限されていた。

 幸いなのがムー国は温厚な気質であるがゆえに諸外国人を邪険に扱うことはなく、注意する程度で立ち入り禁止区域などに近付かないよう伝える程度であった。

 現在港では大型クレーンによって大量の物資の陸揚げ作業が行われていた。ムーの輸送船もオタハイト港やマイカル港に物資を輸送しているが、日本は自分達が使用する分は別として輸送していることから、巨大輸送船を見られることもなく各種装備を運び込んでいる。

 

 

 前線リュウセイ基地 新設第六法務軍駐屯地

 巨大な飛行船、ML86X 3隻がムー リュウセイ基地に到着、一台の戦車が格納庫から自走し滑走路へと出てきた。

 203超重戦車 通称サンダーマウス

 弾種はあくまで40口径203mm榴弾砲と同じではあるが、分厚い装甲と203mmの各種砲弾を分間6発という狂った速度で撃てる、むろん車内装弾数が24発しかない為最大速度で連射をすれば4分しかもたないが、203mm自走砲の弾薬補給車を使えばそれには当てはまらない。

 開発が続けられた203mmGPS滑空誘導弾によって180km先の標的を狙え、少々お高い推進砲弾を使用すれば250kmまで射程となり 事実上沿岸防衛も可能な長射程と火力を有する。

 問題は材質や構造の発展によって防弾性能に走破性、203mm主砲の破砕力はけた外れに良くなったが、大口径砲を積んだ影響で120トンまで重量が激増し運用に問題が発生している。その極大まで肥大化しマウス重戦車を僅かに上回る巨体とほぼ同等の重量は運用に困難をもたらしてしまった。

 しかし利点だけを問うなら、90式の120mmさえ600m圏内に入らなければ装甲を貫くことは出来ず、戦車と言う枠組みを超えた長距離砲撃が可能でもある。むろん燃費の悪さや重量による渡河の難しさなど欠点を上げればきりはないが、何よりも40口径203mmという砲身は見る者を圧倒し、ムーのリュウセイ基地配属の兵士達は唖然とした目で眺めていた。

 

「重203特化連隊、第六法務駐屯地へと移動せよ」

 

 サンダーマウスの役目は重203特化連隊よりも10km以上前線に単機で座し、偵察部隊などへの囮となること。

 203mm自走榴弾砲 通称サンダーボルトⅡもしくは203榴2式

 正式に量産され、二発撃っては移動するために3発のみの限定的自動装てん装置を持ち装甲化もされていない、サンダーマウスと同じ180kmから250kmの射程を持つ自走砲。155mm榴弾砲では弾薬サイズの問題から最大射程180kmが限界であるが故に、重量と射程を等価交換した兵器でもあった。

 

 リュウセイ基地への配備については、戦争法に関してムーからの依頼としてムーやミリシアル兵士が法を犯した場合に第三者、第三機関として裁くために戦力派遣と言う形になっている。

 地球で言う所のハーグ陸戦条約をムーとミリシアルは正式に締結しその順守の為と言う形で、グラ・バルカス帝国側にも大使館を通じて話を通し、締結した条約によりムーに部隊を派遣したことを通達していた。

 

 

 

 

 

 

 

 日本

 民間では国内の小さな島々を回る旅行開発や産業技術、地下設備拡張や地下倉庫の拡大など、あらゆる資源の備蓄の為に八丈島ほどの容積を持つ地下貯蔵庫が次々と作られては物資の運び込み、技術開発などどんどん進めれらていた。海外に出られないがゆえに、国内で出来る事への開発には余念がなかった。

 

 仮初ともいえる限定的な平和の中、防衛省は供与向けチープ兵器群の見直しと追加に迫られていた。ムー各戦域での戦闘情報を得てはいるのだが、多連装ロケット砲システム代わりのコンテナ式多連装発射機、先進誘導弾代わりの汎用C誘導弾MK4、不要となったモノをワンパッケージ化した兵器、それらは陸軍歩兵向けで装甲部隊に空軍及び海軍への武装は無いに等しい。対装甲兵器・対空兵器・対艦兵器、それはどうしても電子技術がないとならなかった。

 

 対装甲兵器

 会議の中で米国兵器企業統合グループからの提案に、英国兵器企業統合グループからもL6ウォンバット120mm無反動砲を提案、日本では61式自走無反動砲に米国では実績のあるM50オントス自走無反動砲という実例があり、M50オントス自走無反動砲は限定された状況ではあったが、強奪された軽戦車の撃破の実績もある。

 

「米国製106mm無反動砲、これのライセンス生産が最適と提案する」

 

「英国製120mm無反動砲を当方は提案させてもらう。 口径も大きく射程も上回り、搭載用としては十分となる」

 

 防衛省や各軍事企業が繰り返し会議を行うことで、対装甲目標に関してはM40 106mm無反動砲ならばミリシアル帝国やムー国でも完全なライセンス生産が可能、グラ・バルカス帝国程度ならば十分に対装甲・対歩兵と汎用性が利く。

 搭載車両そのものはミリシアルやムーの4輪装甲車でも装軌車両でも利用しやすく、量産性も運用性も優れるとして対戦車兵器であった、ライセンス生産による収益は日本政府との折半になるものの、その収益は企業と日本に留まる事を選んだ米国系へと配分される。

 そして現在ミリシアルでは105mm自走無反動砲の大量生産が行われ、とある企業は従業員の休みと言うものが消滅するほどの激務が続いていた。

 

 

 対空兵装

 誘導弾など当然供与やライセンス生産などできるはずもなく、不要となった旧式CIWS 1A及び1Bをワンパッケージ化したものを条件付き供与する結論に至る。一切の分解及び解析の禁止、破った場合は全ての兵器を保有する部隊への攻撃及び製造設備の破壊、その条件下でムーへの一時供与許可が下りた。

 

「勝手に解析するなだと! 第二列強たるムーを何だと思っているのだ!」

 

 ある種屈辱的な条件であった為幾らか軍部や技術者達から不満の怒りの声が上がっていた。しかし。

 

「何を言っているんですか。 栄えある第二列強ムーが友好国の技術を無断で調べる? そのような恥知らずな事出来るはずないでしょう」

「そもそもこちらから供与を願っている。 外観的な要素や性能からこちらでも参考になるだろう」

 

 他国の技術を許可もなく解析する方が蛮族及び低文明的考えではないかと、先進技術都市上がりの軍人や技術者達から言われてしまえば黙るしかなかった。

 

 

 対艦兵装

 即座に供与は廃案となった。対艦装備などワンパッケージ化しても性能が隔絶し過ぎており、少数を供与するだけでも圧倒する事が出来てしまう。

 試験的にラ・マトヤに供与したものの、これ以上は過ぎたるものになるとして供与はするもののラ・マトヤ以外には拒否する方針となった。

 大型対艦誘導弾、P-1000重対艦誘導弾は日本でも徐々に備蓄が始まり必要な時に備え始めている。

 

 

 

 傭兵としてレイダークラブ族の派遣

 彼等の体の構造の解析が進み、甲殻は従来の蟹類やヤドカリ類と同じタンパク質や炭酸カルシウムの多孔質の多重構造だけではなく、捻じりや引張が適切に掛かかった100を超える多層構造な上に薄くではあるが石灰化した層まであるため、長年生きた個体は9mm弾程度はなんなく弾き5.56mm弾でも貫通は難しいという複合装甲に近い物であった。

 彼等は海竜や水竜にシーサーペントなどの捕食者から生き残る為、地球とは比較にならない強度の甲殻を持つに至ったようだ。

 そしてムー国の前線に彼らは傭兵として200杯が赴く。派遣部隊参加は彼らの意志であり海岸線沿いの防衛にあたり、少数の部隊による上陸による後方破壊を防ぐ役割を果たす為だった。

 

 

 

 

 

 

 

 無人機部隊

 自衛官を危険にさらす事なく戦争や紛争に対処できる手段、現在ムーに追加派遣する最終試験段階に入っていた。

 

 SDやSSシリーズの発展後継機シリーズ。

 SD-S003 愛称ゴライアス

 6足という多脚ゆえに歩行速度こそ遅いものの安定して不整地踏破し、難民の保護から対象の狙撃まで可能なL25BM-30を搭載する蜘蛛型自律無人兵器。

 長距離狙撃専門ではあるが、6足による場所を選ばぬ不整地踏破能力と反動制御による高い命中精度、標的となる軍隊や組織の中枢人物を狙うのに最適な兵器でもあった。

 

 BM30mm対物ライフル L25BM-30

 5km先の標的を撃ち抜くためだけに改良された狙撃ライフル。

 30x173mm AP弾を使用し銃身だけでも2500mm、全長3900mmもある生身の人間には大きすぎる難物である。射程5kmという長射程を狙撃する為には、風向に気圧など様々な大気の解析及び判断システムなど多くの条件があるため、余剰な部品も多く配置や撤収にも時間を要し、大型のショックアブソーバーとマズルブレーキを付けても抑えきれず、バイポッドに伏せ撃ちのみと指定まである。

 しかし狙撃兵にとっては並の兵器では反撃不可能な距離から撃てるのは利点であり、通常の建物や並みの防弾車両であるならば意味をなさない弾丸は魅力的であったため、試験的意味合いが強いものの少数生産が行われている。

 そもそも開発経緯が自律無人兵器の狙撃タイプ搭載用に開発していたものを、有人向けに改良を加えたに過ぎない。

 

 

 SD-T002 愛称ミニタン

 96式40mm自動てき弾銃を主兵装、9mm短機関銃を補助兵装とした無人自律兵器。戦車を縦横高さ1mサイズまで小型デフォルメし諸外国で活動をする自衛隊員や外交官を守る目的で製造されている。

 

 

 ボンバーソルジャー三世

 見た目の可愛さから、青塗装の巡回警備用、黒塗装の索敵攻撃用、赤塗装のパラシュート投下攻撃用、3種が製造され無人機部隊に配備されているが、巡回警備用はムー国封鎖軍事都市ですでに運用されているが。

 市民の要望もあったので、ボンバーソルジャーの縫いぐるみが正規ライセンス生産が開始され、日本国内よりも販売数は伸びていた。

 

 

 

 自律無人救助兵器

 PD研究サークルによって提案され、何度もシミュレートし、製造された人命救助用捕食式ワーム型パンジャンドラム。

 通常時は円柱状の鋼鉄の物体として転がるだけであるが、けが人などを発見すると捕食するよう内部に収容し、回転せず全体を伸縮するワームの様に動かして救助部隊へと向かう。

 先端のドリル利用して残骸や建物も破壊し救助できる点も高く評価されたのだが、いかんせん見た目が余りにも不気味な点だけは払しょくできずにいた。

 なにせ直径4m 最大長10~15m、先端は障害物破砕用ドリル、全身は装甲板で覆われている物体、そんな物体が転がりながら移動するのだからどうしようもなかった。

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