龍の国 日本 作:揚物
戦車や航空機の生産は行われているものの、どうしても数の優勢をとる事が出来ず、少数の部隊ならば行軍可能な狭い街道の国境地帯には少数を配備、僅か二個小隊 8両のM4中戦車を送る事しかできなかった。
そしてグラ・バルカス帝国は新設した機甲師団を投入し突破を図り、過半数が築かれた塹壕へと到達。
「相手はたった8両だ! 突貫せよ!!」
エンジンが悲鳴を上げサスペンションが軋んでも、グラ・バルカス帝国の戦車ハウンド2は前進砲撃を続ける。2台が防衛陣からの砲撃によって擱座するも、砲撃を突破しムーの塹壕及び防衛陣にグラ・バルカス帝国の戦車が到達、砲撃によって周辺の砲座を攻撃する事で牽制し、ついで装甲車や歩兵が突入し制圧していく。
「いけいけ! 止まらず突き進め!」
「ムーの弱兵を恐れるな!」
侵攻を続ける2台のハウンド2戦車が吹き飛ぶと同時に塹壕から上半身を出していたグラ・バルカス兵が消し飛んだ。
それは轟音と噴煙と共に撃ちだされた砲弾、伏せていた車載型105mm無反動砲6台による一斉攻撃であったが、即座に反撃を受け後退する前に1台の無反動砲と共にムーの兵士が榴弾によって爆発に飲まれた。
「早く退け! 早く!」
装甲のないムー製トラックの荷台に設置しているだけであることから、真正面から戦えるわけもなく一発撃っては移動が必要であった。
戦線は混乱し激しい交戦でいくつものムーの部隊が取り残された。そんな場所に前線まで到達した戦車隊が回収に向かい、重戦車TOGⅡの砲塔ハッチが開かれ内部から人が出てくると砲塔ハッチ据え付けの機関銃を握る。
「怪我人を運び込め! 無事な奴はこいつを盾にして下がれ!」
「しかし」
「こいつなら下がれる! 引きずり込め!!」
重傷を負った歩兵を後部ドアまで引きずり、中に入れる最中に砲弾が何発も当たり57mm砲は装甲に弾かれ、何度も激しい音が響きながら衛生兵は治療を続けTOGⅡは徐々に後退を始める。
「必死についてこい! こいつは最良の盾」
鼓舞しながら機銃を撃っていたムーの戦車兵が頭を撃ち抜かれだらりと倒れる。それでも後方へと下がる最中反撃へと転じる為ムーのD-21航空戦力による対地支援攻撃が開始され、戦線は再構築するために苛烈な攻撃によってグラ・バルカス帝国の機甲及び歩兵部隊は追い散らされていく。
地方戦線にアンタレスを張り付ける余裕もないことから、D-21が現れたとの通信後に急遽向かうも、最前線の急造野戦航空基地の野戦滑走路にさえ配備できる固定脚のD-21は地方部隊にとって重要な戦力かつ運用できる、何度も対地射撃や投下された爆弾の衝撃を受け土煙りが舞い上がり、敵部隊を撤退させるため何度も往復し徹底してグラ・バルカス帝国の歩兵部隊を叩く。
戦線が片付いたのちにアンタレスは到着するも、その頃にはムーの前線基地から到達した橘花改が制空を維持する為に巡回し何もできずに撤退する事しかできなかった。
「……なんとか生き残れたな」
「すまん……すまん……。 俺達が残ったために」
傷だらけのTOGⅡであったが、盾とした歩兵部隊の面々も無事でありなんとか戦線は維持された。
ムー軍事都市
リュウセイ基地から帰還したシュヴァルベを調べたところ、技術者もパイロットも余りの状態に絶句していた。
音速を越えたことで機体全体に歪みと微細なヒビが走り、後退翼は主翼尾翼共にねじりと本体との接合部にヒビ、エンジンを強化してもこれ以上は機体が耐えられず、例え強化しても重量が増加による推力低下は避けられないのは明確であった。
鬼才変人と呼ばれるムーの航空技術者。寝ても覚めても夢の中でも航空技術を考え続け、シュヴァルベを産みだしたが彼はそれでも満足しなかった。
音速を超える戦闘機を産みだすべく、最適な形状を求めるとともにさらなる大出力エンジンの研究開発、あらゆる技術が劣る現在では同じ後退翼なだけでは今のムーでは追い付けないと考え、鳥にワイバーンに銃弾、あらゆるものを調べ、それでもなんとか参考に出来るものはないかと子供の落書きや神話まで調べ、他の技術者達にとってそのような事に何の意味があるのかと白い目見られ呆れられるなか、それでも狂ったと言われながら彼が目を付けたのは矢であった。
殺傷向き形状の鏃ではなくではなく、風を切り安定し長距離を狙うための形状、大まかに出来上がったところで、日本はデザイン画と言う程度でサーブ35 ドラケンの絵を提供した。
そのことをきっかけに戦闘機そのものを鏃とし、初期設計と10分の1風洞実験着はデルタ翼に近く、風洞試験結果をもとにダブルデルタ翼化、正規量産には不可能なレアメタルを潤沢に使用し、トゥナンのエンジン出力21.6kN 2基搭載よりもさらに大出力56.89kN、かつアフターバーナー時には3基分を超える79.5kNとなる単発エンジンを搭載。
MF-002X 偽竜 ドラッケンが産まれた。
5式中戦車チリは現在ムーで訓練に使われている。これまでの仮想的戦車はM4中戦車かクロムウェル中戦車、それを日本が提供したチリに変更となりその難易度は増した。
機動力に勝り、照準精度は圧倒的差、簡易的自動装てん装置とはいえ3連射までは可能、過酷な訓練を乗り越えた教導団が使用する以上、連携をとれなければ“見敵必殺”ともとれる3連射される演習砲弾によって撃破判定を受けてしまう。
「今回のざまは何だ! お前達がやられると歩兵が敵戦車の獲物になってしまうんだぞ!」
教官達の命令に訓練兵は泣き言を上げる暇もなく、徹底的に鍛え上げることで前線で戦えるよう鍛え上げていく。その中でクロムウェル中戦車は速度で優れる事から各方面で大量配備され主力であるため、訓練は主にクロムウェルでおおこなわれている。
グラ・バルカス帝国 本国
日本は手を引くとして即日に全てをの物資及び人員と共に撤収を行った。
「軍部が貴国の飛行船や人員を接収しようとしてる動きがあります」
接収に向けた動きがあると友好的関係にある政府要人と外交官からの連絡があった為だ。なりふり構っていられる余裕を失い、長距離輸送が可能な超大型飛行船などによる爆撃を思考し、強制技術協力による兵器開発などを考えたのだ。
ムーだけでも苦戦している中、確実に技術が上回る国家まで敵に回すような行為は現実的な考えではないと、グラ・バルカス帝国の一部の外交官による国家を思っての判断であった。
原因を明確にした国交断絶の通達はグラ・バルカス帝国の政府から軍部への苦情はあったが、すでに国交断絶は決定事項であり国家非常事態宣言が下された為に問題にはならなかった。