龍の国 日本   作:揚物

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60.攻勢開始

 長期にわたってムーは戦線の防衛及び戦力保持に勤めていた。

 兵器武器弾薬に燃料に食料と練成に部隊編成、航空アグレッサーを半数に減らし特務部隊の編制、第2装甲教導団に最新鋭の戦車を回し中央機甲師団の中核とするなど、着実に軍備増強に勤め続けた。

 そして十全になったと判断し北部・南部・中央部、全ての戦線に置いてムーの反攻作戦が始まった。

 

 

 

 空洞山脈以西、ドーソン基地周辺

 

「ムー軍の侵攻! 繰り返すムー軍の侵攻! 支援を求む! 支……」

 

 降り注ぐ榴弾は前線全てを耕すほどの勢いであり、通信を行っていた野戦塹壕は吹き飛び、前線にほど近い野戦基地には第一次状況報告が多数飛び込んでくる。

 

「砲兵隊はどうした!」

 

「すでに壊滅しております!」

「敵戦車接近! 敵戦車接近しております!」

 

 慌てて双眼鏡を手に確認したものは、見慣れたM4中戦車ではなくムー国新鋭のクロムウェル中戦車であった。機動速度はM4中戦車を上回り火力と装甲はほぼ据え置き、だからこそ全戦線での攻勢に対処しきれず簡単に飽和していた。

 

「だめだ! 52mm砲が弾かれた!」

「47mm新砲なら、しかし数が多すぎる!」

 

 ハウンドⅠの52mm砲では装甲貫徹力が足りず、何よりも戦車の数を秘匿し、榴弾砲による一斉射の後の攻撃、それも制空権を確保するために全戦域の空をトウナンが舞う。墜落したアンタレスが野戦基地へと墜落し、甲高い音をたてながらプロペラの存在しない航空機が上空を抜けていく様はグラ・バルカス帝国に恐怖を与えた。

 

「だめだ! アンタレスでは対処できん!」

 

 必死に操縦桿を握りアンタレスを操るもついていけず、背後を取られ機銃によって機体と共に体を撃ち抜かれ墜落していく。

 ムー国 トゥナンによる戦闘機部隊。ずっと秘匿しながら量産と錬成をし続け、この一大攻勢に全力出撃を実行、全戦域でアンタレスの撃墜によって制空権を奪い取る。

 制空権さえ得れば航空偵察から航空支援攻撃も可能となり、さらなる兵器の投入が行われた。

 

 対地支援攻撃機 ラ・カオスⅡ世。

 機体下部に防弾装甲と20mm機関砲のみを3基搭載し対地攻撃を目的とした改修、1機なら大した効果がなくとも5機の編隊で一度に地上掃射を行えばそれは脅威となる。

 

「効力射を開始する。 巻き込まれないように注意せよ」

 

 陸上部隊に通信が入り低空侵入した5基のラ・カオスⅡ対地支援機は下方の機関砲の掃射が開始される。土煙を上げ人体ごと大地を耕し戦線に辛うじてハウンドなどの戦車は残っている。一度の低空侵入で搭載されている全ての弾丸を吐きだせるわけもなく、複数回の低空侵入によって20mm掃射は弾が続くまで繰り返された。

 

「オールクリア、補給に帰還する」

 

 総数が多くないために程度は限られるも、それでも強固な防衛陣地を構成しているグラ・バルカスの防衛網を寸断し反攻作戦第一歩は成功した。

 

 

 

 

 

 北部戦線

 小さい街道しかないことから戦車などの侵攻は限られ、両軍ともに守りに容易く侵攻が難しい地域。他の地域同様に侵攻を開始するのだが、ムー国であるならば榴弾砲やロケットによる第一次攻撃を行ってからである。しかしムーではなく日本が主導していた。

 そんな場所の前線をラムティーガー5台が砲撃を受けながら時速70kmで走り、突進してくる質量の塊はグラ・バルカス帝国の土嚢や鉄条網ごと全てを破壊し、体当たりと共に乗り上げたハウンドを横に転倒させる。

 日本の無人機による防衛ライン突破、人間が存在せず死を恐れない攻勢はグラ・バルカス帝国にとって恐怖であり、追随するSD-T002 デフォルメ小型化された無人戦車が装備する40mm自動てき弾銃と9mm短機関銃が生存している歩兵を仕留める。

 

「止めろ! 敵の数は少数だぞ!」

「ハウンドではひっくり返されてしまう! 47mmもだめだ!」

 

「来るな! くるなぁぁぁ!」

 

 大型のチェーンソーのようなものを回転させながら突貫してきたラムティーガーは、コンクリートと土嚢で出来た最終防壁に食い込むと甲高い音を立てて削り破壊していく。

 恐怖をまき散らすコンクリートと鉄筋が抉られる音、視覚で与えられる噴煙と防壁を貫き削りとる巨大な物体、精神的に最後まで持ちこたえていた兵士達が逃げ出すには十分であった。

 転倒したハウンドや塹壕や土塁からグラ・バルカス兵が這い出してきたところ、SSD-T002によって射殺され突破後に残された兵士は片付けられていく。

 突破され壊乱してもいまだ兵士が残る戦線の後詰をムー陸軍の機甲・歩兵部隊が行い、捕縛や後方輸送を担当する。

 それもレイフォルに到達するまでの間、用意されていた戦力はレイフォルまで一気に目指している。ムー大陸内での戦争を終わらせるため。

 

 

 たった一機、すでにレイフォル上空に入り甲高い音を立てて威圧飛行を続けていた。

 40機を超えるアンタレスを相手に無謀ともいえる行為、しかし訓練が不十分なトゥナンやシュヴァルベの被害を少しでも減らすために、突出した囮でありグラ・バルカス帝国空軍を少しでも疲弊させるため、自ら提案しさらに自薦し任務にあたっている。

 

 MF-002X 偽竜 ドラッケンは低空でレイフォル上空を抜けるどころか、超低空で大通りの間を抜けるようにアンタレスと共に侵入、アンタレスの最高速度で追跡をしていた2機が操作を誤り建物や地面に激突し隊長機は叫びをあげる。

 

「狂ってるのかあいつは!?」

 

 アンタレスを遥かに超える速度、そんな速さで超低空侵入など正気では行えない。それでもなお体当たりや空中分解さえ厭わない過剰な機動と速度で追尾を試みるアンタレス数機。

 ドラッケンは灼熱の排煙と共に急激に上昇し左へ転回、横からの攻撃を試みていたアンタレスの機銃を避けるとグラ・バルカス帝国のレイフォル防空網へと突入、狂ったように打ち上げられる対空砲の中を抜けていく。

 

「早すぎて近接信管の反応が間に合わない!」

「だめだ! 来るぞ!」

 

 ドラッケンからの20mm機銃の掃射が対空陣地に降り注ぎグラ・バルカス兵を薙ぎ払う。パイロットは過剰なGに血反吐をすでに吐いており、それでもなお操縦を続け20分もの間レイフォルに恐怖をまき散らし続け撤退していった。

 このことによってグラ・バルカス帝国においてもジェット戦闘機に必要性が求められることになった。日本の提供していた大出力レシプロエンジンへ研究リソースを割いていた為、ジェットエンジン開発命令に研究部門は頭を抱える事になる。

 

 

 

 

 レイフォル奪還に向けたもっとも重要な中央ルート。

 奪われたドーソン基地を破壊し尽くし、アルーを奪還しレイフォルに最大戦力を送り奪還、そして補給地としてレイフォル攻撃への起点とする。

 すでにドーソン基地は破壊が済んでいる為、陸上部隊による攻勢が予定されており、空洞山脈基地内においてずっと秘匿していた供与されていた虎の子の戦車、ARL44・5式チリ戦車の侵攻が始まっていた。

 それでも訓練が不十分、ほんの不運によって数機のトゥナンが撃墜され、グラ・バルカス帝国に回収されている事は判明しているからこそ対応される前に奪還を急がなければならなかった。

 集め訓練を施した部隊を編成し、制空権を完全に奪いラ・カオス爆撃機が大量にレイフォルに向け飛行している。

 

 

 

 

 

 

 海上作戦

 陸上作戦が実施される。むろん海軍も攻勢に出ており、グラ・バルカス帝国とレイフォルの間にある点在する小島の小国家群、防衛ラインを引くには余りにも小さく価値も低い。

 その為グラ・バルカス帝国は海上防衛ラインを制定し編成された艦隊は新造されたばかりの新型空母および防空巡洋艦群、決して敗れてはならぬため訓練も十分な兵士を施している。

 そして第一第二列強はその艦隊を撃滅する作戦を実行された。

 

 神聖ミリシアル帝国

 オリハルコン級戦艦を旗艦とした第零号艦隊。

 オリハルコン級戦艦1

 ミスリル級空母3

  アルファ5制空機 100機

  ベータ5爆撃機 50機

 ゴールド級改装防空対潜艦9

 

 十全に訓練を積み軍事技術を高めた精鋭であり、新生第零号艦隊であった。

 

 ムー

 何度となく損害を負い、それでもさらに叩き上げた兵と最新鋭の

 ラ・マトヤ級戦艦1

 ラ・ヨージュン級空母3

  艦載型トウゥナン 140機

 ラ・ 級防空対潜巡洋艦9

 

 第一文明及び第二文明の世界放送で発表される大艦隊。

 

「ご覧ください ミリシアル帝国が誇る第零号艦隊の出航です」

「これがムーが誇る新鋭艦隊の出航であり、グラ・バルカス帝国打倒に向けた力です」

 

 第一第二文明圏の総力を挙げた艦隊によるグラ・バルカス帝国本土攻撃艦隊。国民の戦意を高め兵士は世界平和を破壊した者達への懲罰に向かうと放送される。

 統合軍司令部は何度も交戦していては切りがないと判断し、海上防衛ラインを一度に打通しグラ・バルカス帝国本土へと打撃を与える作戦を立てた。本土から戦力を出していれば安全であると認識させないために、ありったけの戦力をもって攻撃を行う作戦。グラ・バルカス帝国本土攻勢前の威圧行為であった。

 

 日本の手を離れた戦線はこの世界の住民によって行われる。本来の世界のあるべき存在達の自衛および戦争犯罪への判断はそちらによるが、この世界の事はこの世界が片付ければよい。

 問題は前世界では発生しなかった南方文明の北伐ともとれる行動であった。




更新お終い
次はまたいつかでクルセイリース編から
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