龍の国 日本 作:揚物
商取引許可書を受け取り、荷受をする為港で止められている荷降ろし場に向う。
「持ち込み禁止物がないか調べさせてもらう」
一応の検査もあるようだ。
「大したものは入っておりません。 監査官様のお力でお早く終わらせて頂けないでしょうか」
外務局担当官と同じように、しかし荷の量が多いので500gの延べ棒が入った封筒をそっと担当官に渡す。
中身を確認すると兵士に合図を送り検査を終了しろと命令が降りたようだ。
「問題なし。 行っていいぞ」
この国の潜入や物資搬入は金さえあれば容易そうだ。
量があるため港で荷車を借り、目当てを付けていた商店へと向った。
パーパルディア皇国 アマロッテ商店
客の入りが殆どなく、閑散とした店の前に荷車を止める。
「いらっしゃいませ」
少々疲れているような店主が座るテーブルの前に移動し、皮袋を取り出し、テーブルの上で開いてみせる。
「我々はパーパルディア皇国では新参な商人でして、大手では買い叩かれるのではないかとおもいましてね」
パーパルディア皇国の商人は、極めて上質で雪のように真っ白な砂糖が、多額の金を産み出すことはすぐにわかったようだ。
客足が鈍い店にとっても渡りに船のようなものだ。
「我々と取引を優遇し取り計らって頂けるなら、貴店のみに卸そうかと考えております」
「なるほど、それでは当店が全て買い上げた上で、その一部をお支払いするという形でいかがでしょうか?」
少し欲を出したようだ。ここで甘い顔や弱みを見せれば、都合が悪くなる。道化とまではいかないが、こちらの都合がよいように動いてもらわなくては困る。
「そうですか、その内容ではお取引はお断りし、他の店に頼むとしましょう」
砂糖の入った皮袋を閉じて店の出口に向う為背を向ける。
「いや、すまなかった! そちらの代理店としてこちらが販売するようにしよう! それでどうだろうか!」
パーパルディア皇国の帝都では税金が高い。少しでも払えなければ立ち退く事になり、属領に飛ばされてしまう。体裁など構っている余裕などアマロッテ商店にはなかった。
振り返り、再びテーブルの上に砂糖が入った皮袋を置く。
「居住可能な倉庫があればよいのですが、都合出来ますか?」
商店の主は少し考えながら口を開いた。
「当店が所有している倉庫があります。 一部は従業員の住宅にもしていましたので、今でも使えます」
店主に案内された倉庫兼住居は立派なものではないが、それでもここを基点として商取引をしながら情報収集が可能となる。
「これはいい場所ですね。 我々も安心して貴店と取引が出来そうです」
満足した表情を浮かべアマロッテ商店の店長に対して頷く。
「まずは輸送してきました、砂糖1000kgを卸させていただきます。 他にも輸送してきた物も紹介いたしましょう」
倉庫のテーブルの上に新しい皮袋を置く。中身は人工調味料 うま味の素。
「こちらは我が国で調合された特殊な香辛料です。 これを少量混ぜるだけで大抵の料理がとても美味しくなります」
店主は少し手に取り、それを口に含むと驚きの表情を浮かべた。
「信じがたいですが、塩でも砂糖でもなく、とても美味いですな」
「こちらをまず100kgを無料で提供いたしますので、販路を拡大していただけると助かります。 ですが、少量以上を入れると体調を崩すことがあるので、注意してください」
古来から作られる製法を護って作られた養殖真珠。
養殖といっても品質や耐久性は天然と大差がなく、じっくり2年もかけて小さな核から丁寧に丁寧に育て上げ、過去本物と差がないと鑑定結果を受けたものを持ち込んでいた。
「こちらは300珠あります。 100珠は貴族との伝手を作るために使ってください。 我々は業界に食い込むために手段は選びません」
綺麗な真円に等しく、美しく輝く真珠に息を飲みながら
とてつもなく大きな取引相手が出来たと店主は神に感謝していた。
だが諜報のため、そして非常時は内部から操るため権力者を味方に付ける。
物理的に戦争を行うのは数兆円の金がかかる。だが中から侵食するのは時間こそかかれども数十億円程度に済む。
それが腐敗している政治体制ならなおさらだ。