龍の国 日本 作:揚物
グラ・バルカス帝国に対して牽制を掛ける為、レイフォル領にML86Xで向かう。
内部に増槽タンクを装着し、往復に関して補給の必要性を除き長大な飛行となった。
旧レイフォル領に近付き、グラ・バルカス帝国の無線通信回線に強制的に割り込み、外交に来たと伝えると警戒機がいくつも上がってくる。
その警戒機に誘導され駐機出来る空港に降りるも、少しでも技術というものを理解できるのならと、四脚クローラ方式双腕型コンセプトマシンを持ち込んでいた。
これを利用し、格納庫から降ろされた物資をトラックの荷台に積み替える。
ほとんどが人力で、せいぜいブルドーザーやクレーンが最新建機であるグラ・バルカス帝国では、真似どころか理解することさえ難しいだろう。
4連履帯による自由自在な動き、双腕による複雑かつハイパワーで繊細な動作、電子光学と機械工学技術の塊である。
複雑な動作が可能なため、災害救助現場でも使用される最新鋭機。
周囲にはどんな機械なのか理解が出来ず監視していたものの、慌て始めたグラ・バルカス帝国の兵たちが集まりだしていた。
コンテナトラックでさえグラ・バルカス帝国製の物よりも遥かに大きく、兵士たちは何が訪ねてきたのかわからずただ光景を眺めていた。
曲がりなりにも理工学を嗜むものなら確固たる技術差を理解できるだろう。
最後に超重戦車オイ車及び砲戦車ホリ車が降りてくる。周囲を警戒し最悪な事態が発生した場合、それ相応の被害を与えるために用意されている。もちろんそんなことをが起きては困るのだが。
彼らにとって直感的に認識できるだろう文明の先にある兵器はこれしかなかった。
レイフォルの外交責任者であるシエリアとダラスが外務省で待ち、会議室に入ると同時に席に着かず太陽神の使いとして話を始める。
「シエリア・オウドウィン 20代後半 独身、趣味は映画鑑賞、外交官としては優秀ですが、最近はストレス性と思われる便秘気味」
「ダラス・クレイモンド 20代半ば 独身、熱狂的皇帝崇拝者であり、感情的な面が強く外交官としては一流とは言い難く、外務局内での評価は高くはない」
二人はゾッとした表情を浮かべる。
初めて会ったというのに詳細にプロフィールが淡々と語られる。
「グラ・バルカス帝国陸軍第8軍団長兼最前線基地バルクルス総司令者 ガオグゲル・キンリーバレッジ、上昇志向があり、軍人としては優秀なれど軍規に関して少々問題があり」
グラ・バルカス帝国の重要情報、情報の流出どころの話ではない。
話を続けながら小さな写真を2枚取り出し、テーブルの上に置いた。
そこには夜間の帝都ラグナの皇城と工業都市が空から映されていた。
衛星写真を拡大したものだが、彼らの常識から考えれば航空写真をいつの間にか撮られたと、認識するだろう。
「我々の目と耳はどこまでも届いています。 我々と平和的外交を行いますか? それとも 戦争 を致しますか?」
脅迫を含めた武力外交、技術力とそして急所を捕えていることを見せた。
諜報力は軍事力に関わるため理解できるはず、裏に手を回しつつ真っ向から武力と技術による圧力を掛ける外交。
時間がない以上これしか方法がなかった。
「レイフォル外務省出張所では、私の一存では判断は許されず、一旦本国への伺いを立てなければ回答は難しいと言わざる得ない」
シエリアは今この場で主導権を握られないよう、そして下手に煽らないよう慎重に言葉を選ぶ。
「届くのは目と耳だけとは限りません。 その事を理解していますね?」
日本として、暗に伏せているが、武力行使も可能だと伝える。
「きっ、貴様! 我がグラ・バルカス帝国に対して!」
シエリアは感情を露わにしかけているダラスを即座に手で制する。
「ダラス、黙るか下がっていなさい」
少なくとも、皇都を空撮できる技術を持つ国家であり、スパイを潜入させられる軍事力を持つ国家の外交官が目の前にいる。
これからの発言は全て、重要な事となり繊細な駆け引きとなり、僅かな弱みを見せる事も出来ない。
「先ほど申し上げましたが、この一件はレイフォル出張所では判断ができません。 本国への問い合わせが必要な案件であり、返答には数日かかると思います」
タブレットを二個取り出し、一方をシエリアに一方を外交官に向ける。20インチタブレット画面には、リアルタイムに双方の表情が映し出されている。
「リアルタイムに連絡できるよう、これよりも大型の設備を置いていきましょう」
隔絶し過ぎた技術に余計な言葉を一切出さず、驚く表情を出さないようシェリアは気を付けていた。
「ですが、解析しようとすれば」
説明をしようとしたところ、外から大きな爆発音が響き、シエリアとダラスが急いで窓の外を見ると、小さなコンテナが粉々に吹き飛んでいた。
「どうやら説明が遅かったようですね。 少々お行儀が悪い方々が居るようで、許可なく我々の物資を開封しようとしたようです」
危険性を伝えるために持ってきたコンテナなのだが、勝手に開けようとして吹き飛んでしまったようだ。
慌ててグラ・バルカス帝国の兵士たちが集まりだす。
「御覧の通り、少しでも開封・分解しようとすれば大爆発を起こします」
写真・録画・再生のみに機能制限したタブレット端末を渡す。
使用方法をシエリアに教えるが、爆発するという言葉に少し表情を引きつらせているが、それでも説明するために使用方法をメモしながら話を聞いている。