龍の国 日本   作:揚物

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46.外交判断

 連絡用として85インチの薄型4K液晶ディスプレイが設置された、コンテナハウスが置かれる事となった。屋根にはソーラーパネルとアンテナが設置され、衛星通信で繋がれている。

 簡単な操作で、コンテナハウスからタブレットに対して通話が可能な事を見せる。実際にはタブレット端末単体では不可能なため、衛星通信機器を日本側が持っているのだが。

 

「簡単な娯楽として、我々の国では100年ほど前の映画などを流しましょう。 見るのはあなた方の自由ですが」

 

 簡単な娯楽として、兵器や科学技術の発展につながるものを排除した、第一次大戦までを題材とした十数の映画を視聴可能であり、音響も充実しかなり迫力かつ臨場感がある。

 裏はもちろんあり、懐柔と戦意を下げる事にあり、兵士が好むだろうアダルティな作品は意欲を下げるサブリミナルを流していた。

 

「それでは二か月以内の回答をお待ちしております」

 

 三日間の会談後、ML86Xに乗って離れていく太陽神の使いを見届け、シエリアは出来る限りの情報を纏め、本国にいる上司に直接報告する為、三日後本国行きの航空機に飛び乗った。

 

 

 

 グラ・バルカス帝国本土 帝都ラグナ 行政地区

 写真に写っている巨大な飛行船、超重戦車オイ車、砲戦車ホリ、これらは少なくともグラ・バルカス帝国では製造不可能なものであり、何よりもタブレット端末による動画や写真の映像に頭を抱えていた。

 先進技術開発局に持ち込むも、分解は不可能という点を除いても、まったく構造を理解できないという事であった。

 グラ・バルカス帝国ではセルテープ映画、大きな白黒真空管テレビ、そして大きな機械式カメラが当然である中、板一枚で写真・動画・再生と出来る機器など考え及ばない。

 そして記録されている銃器の映像、そこには責任者であるランボール大佐が映っており、欺瞞情報でないことは明白であった。

 

「すぐ、会議にかける。 君は結果が出るまでラグナに留まるように」

 

 外務省東部方面異界担当部長ゲスタは、さすがに無視できない情報であるとしてすぐに上に情報を上げた。

 数日後、将校が集まり会議が行われていた。

 

「……ランボール大佐、これは間違いない事なのかね?」

 

 ランボール大佐もまた帝都ラグナに戻っており、集められた情報を元に行われている会議に、参考人として参加していた。

 

「はっ! 彼らが持ち込んだ銃器は、我々の物と隔絶した性能を持っております。 戦車もまた、そちらの たぶれっとたんまつ なるものに表示されている通り、巨大であり砲も大きく」

 

 ランボール大佐によって調べられた情報が星付き将校に伝えられる。

 

「航空機の能力は大したことはないのだろう? 敵国として相手にはなるまい」

 

「いえ、航空機も2万5千キロを無補給で往復するため、鈍重な飛行船を使ったと申しておりました」

 

「それが真実であると仮定するならば、例え飛行船だろうと、そのような飛行船を作る技術など我々にはない。 その巨大な戦車を二台も抱えて飛ぶなど、搭載量から考えても航空技術を想像も出来ん」

 

 情報局員からの報告がなされる中、各将校が意見を述べていく。

 

「海軍については不明ですが、ミリシアル帝国に寄港した日本という属国の戦艦は、オリオン級に近い物です。 属国にもそのクラスを供与したとなると、ヘルクレス級相当は配備している可能性が高いと」

 

 オリオン級を属国に提供するなど、少なくともグラ・バルカス帝国なら属国に提供するのは型落ち品、つまりオリオン級が型落ちとなる軍事体系を持っているという認識になる。

 

「陸軍では苦戦も……必須かと」

 

 すでに征服へと準備が進められていく中、世界最強を自負する以上これが最大限の表現となる。

 

「はっきりとは言えんが、飛行船だけならどうにでもなる。 しかしあんな巨大なものが作れる以上、油断できる相手とは言えん」

 

「海軍としては数次第となるが、情報がないのではなんともな」

 

 正確に陸海空の軍事を計る情報はない、しかし陸だけに限定すれば劣る事は明確であった。

 

「情報局は何をしていた!」

 

 陸軍将校から大きな声が上がり、情報局の面々の表情が悪い。

 東の果てであり、情報封鎖も厳しい為何一つ調べられず、せいぜいミリシアル帝国が気にかけている国家程度の認識であった。

 

「そいつを解析して技術を計れんのか」

 

 一人の空将がタブレット端末に指をさす。

 

「これは借り受けたものであり、さらに分解すると大爆発します。 試供品が爆発したのを確認しており、分解解析は不可能かと。 もちろん返却せずということもできますが、敵対と取られた場合」

 

「空爆される可能性があるわけか」

 

 夜間空撮された帝都ラグナの写真もみなが確認しており、いつ撮られたのかそれさえ判断できていなかった。

 前代未聞ともとれる帝都ラグナの空撮写真、ケイン神王国とも異なる技術力を持っているのは確かであった。

 

 

 

「相手の言い分は平和的外交か、戦争ということだが、現状では判断が難しい。 だが、少なくとも防空体制が完全になるまで、手出しは控えるべきだろう」

 

「陸軍では重戦車の開発、帝都防空体制の強化、以上が整うまでは彼ら望む平和的外交とやらを結び、諜報員を送り込むべきだ」

 

「レイフォルに潜り込んでいる諜報員の排除、これも重要となる」

 

 軍部の最上級会議の決定事項として、皇帝の決定した世界征服に関して反対意見を出すわけにはいかず、太陽神の使いに関しては一旦様子を見るべきとの判断に至る。

 

 

 

「これは、少し離れた議題となりますが、輸出品として、軍用飲料の試供品を受けており、お持ちしております」

 

 缶ではなく瓶に封入された物が机の上に置かれる。

 

「検査は完了しております。 主成分は不明なものが多く、分析できなかったですが、無害であることは人体で確認しております。 摂取すると一時的に疲れが激減し、眠気が抑えられ、集中力が増したという結果が出ています。 我々でも生産できないかと解析を試みているのですが」

 

 実際はカフェインを大量に含んだただのエナジードリンクなのだが、医学や栄養学、化学技術で劣るグラ・バルカス帝国では製造も分析も不可能なものであった。

 エナジードリンクは科学と化学、そして医学と栄養学等によって作られている。先進技術がない国家で作れるようなものではない。

 

「輸入するしかないというわけか。 技術の程度が読めんな」

 

「魔法などというふざけた物もあるのだ。 苦労もするだろう」

 

「しかし、そんなものを服用され、戦場に立たれては困る。 我々も入手しておかなくては」

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