バルチスタ海域では世界連合の艦隊とグラ・バルカス帝国艦隊と引き分けに終わった。
日本としては世界連合がかなり健闘したという評価であったのだが、実質的にはラヴァーナル帝国の兵器によるものだと言うことははっきりしていた。
引き渡したパルキマイラが飛行物体との認識がなかったため、ラヴァーナル帝国に対して、さらなる情報収集の必要性がある。
少なくとも、あれだけの物体が飛行する以上、何かしら未確認の技術があると考えられ、グラメウス大陸の再調査とラヴァーナル遺跡の発掘と解析をさらに進める事とした。
防衛省
「ムー国 対魔帝部隊 海軍・空軍の第一次訓練が終わりましたので、入れ替えを行います」
訓練が終わったから入れ替える、ただそれだけの事である。
対魔帝部隊を、グラ・バルカス帝国に対して利用したところで、日本の知るところではない。むしろ実戦経験を積むという貴重な経験が得られる事だろう。
「我々が手を貸せる範囲はあと少しだけだ。 念のため空洞山脈基地にケーニクスティーガーのテストを兼ねて派遣するように」
現在ケーニクスティーガーはFoster-Miller TALONを参考に完成し、基礎試験は完了している。可能であれば実戦試験を行いたいところであった。
日本としては戦力を整え、ラヴァーナル帝国と戦っている最中、自衛出来ればそれでよし、それ以外については平和・融和主義のムー国に干渉する理由はない。
ラ・カサミ及びラ・カーニャはオタハイト港に、そしてXF5Uの航空部隊はキールセキ航空基地及び首都オタハイト防衛に回される。
「次の議題です。 鬼姫の場所が判りました」
太陽神の使いとして戦況を静観、そんな中、ようやくアニュンリール皇国内における、鬼姫が囚われれていると思われる場所の特定ができた。
外交官達から情報を抽出した結果ではあるが、その位置はブランシェル大陸の砂漠の中にある 先進生物研究所にいるという。
「これは、困ったな。 場所が余りにも悪い」
地図や研究所の大まかな構造ラフ図を見て各責任者が眉間にしわを寄せた。
特殊部隊を投入しようにも、少し離れた場所には非常時に備えてか軍事基地もあり、砂漠である以上視界も良い。
さらに魔物と呼ばれる特殊生物を扱う場所であり、いまは丁重に扱われていると言っても、もし魔物達を放たれてしまえば簡単な救出とはならない。
静かに潜入し、周辺エリアを陽動攻撃したうえで迅速に救助し離脱、それをしなければ囲まれてしまう。
「救出には空挺及びTALOSを投入し、近い基地には弾道弾を撃ちこみます。 それでもどれだけ誤魔化せるかはわかりませんが」
「早めに奪還しなくてはな。 戦力の集中投入も考慮し作戦立案をしよう」
レイフォル領
「資源購入をしたいのです」
通信機を利用し、シエリアは太陽神の使いに対して資源を求めていた。
購入目録は天然ゴム・石油・鉄・アルミニウム、つまり資源が困窮をしはじめたという意味でもある。
バルチスタ海戦で艦船と航空機を予定よりも消耗し、生産率をあげようにも大量の物資を即座に用意するのは難しい。
ある程度処理の終わった加工資源を輸入した方が、生産するのに非常に都合が良い。
「輸送とお支払いはどうしますか?」
国内であれば国債でどうにでもなる。しかし為替取引をしていない外国と国債が使えるわけもなく、金の支払いは国庫に直撃する。
「可能であれば、金ではなく戦時国債でお支払いをしたいのですが」
「戦時国債ですか。 それだけの価値はあるのですかね?」
金ではなく戦時国債での支払いの打診、そろそろ頃合いとなる。事故を装って原油貯蔵施設の一部を破壊すれば、戦争継続するには国力を大幅に失うことになるだろう。
「バルチスタ海戦では痛み分けと情報があります。 戦時国債を買ったところで勝てるのですか?」
負ければ紙くずとなる戦時国債を買うのはリスクが伴う。そもそもグラ・バルカス帝国を勝たせるつもりなどない。
「グラ・バルカス帝国が負けることなどありません。 戦時国債も十分な価値になります」
「残念ですが、戦時国債でのお支払いはお断りします。 中立の立場である以上、戦時国債を購入するのは適切ではありません。 金とそうですね、レイフォル領等で産出していた魔石で支払ってもらいましょうか」
日本としても魔石に価値はほとんどないが、安く大量に買い叩けるならそれも悪くはない。グラ・バルカス帝国としても、科学文明である以上持て余している物を売り払うのなら、二束三文でも大量に売り払うと予測できる。
結局グラ・バルカス帝国はアルタラス価格に比べて、十分の一未満の価格で大量に魔石を、代金とする取り決めを行った。
それ相応の購入要求量であったが、代金の7割以上を魔石で支払うとし、金の割合は多くなかった。
金についても国内の保有量が減っているのだろう。