龍の国 日本 作:揚物
神聖ミリシアル帝国はパニックに陥っていた。
「我々は太陽神の使い。 ラヴァーナル帝国復活が近付き、神の導きによりこの地に転移してきました」
突如伝説の中で語られていた太陽神の使いが、艦隊を引き連れカルトアルパス港に現れたのだ。最新型のゴールド級戦艦を遥かに超える船も確認され、一目で技術的に隔絶したものであると認識できた。
国家の混乱と真偽の確認を終え、そして急遽重要会議が開かれたが、そこで太陽神の使いは衝撃的事実を話した。
「我々はこれより、ラヴァーナル帝国に従うアニュンリール皇国を滅ぼします。 観戦を望むのなら武官を1週間以内に用立てする様に」
皇帝であるミリシアル8世にまで情報は即座に上がり、軍務大臣と情報局長に観戦武官として同行を命じた。
見たこともない巨大な飛行船に搭乗し、偵察機から映し出される映像を会議室で閲覧することになったのだが、未知の技術の山にめまいを覚えていた。
「これからの映像はリアルタイムで現場から送られてくるものです」
太陽神の使いの言葉に、飛行船の内部を見回していた観戦武官の視線が画面へと向けられる。
映し出されるミリシアル帝国よりはるかに発展した都市群の航空映像、まだ衛星群の打ち上げが出来ていないため、偵察機による映像であった。むろん三基だけだがGPS衛星は打ち上げられており、最低限弾道弾を撃ちこむ程度の精度はある。
残されていた電子励起弾道弾によって、アニュンリール皇国本土及び所有する島々の重要軍事拠点を吹き飛ばされる。地下軍事施設なども全て判明している為、わざわざ調べる必要もなくパルカオンやパルキマイラ、主力兵器も根こそぎ消失させて既に軍事力はない。
それでもなおアニュンリール皇国は、降伏するつもりはないらしく残された兵団をかき集めている様子が映し出されていた。
日本としても弾道弾はもうなく、広いアニュンリール皇国を占領する人的戦力もなかった。
しかし自律兵器の大量投入による侵攻、そしてごく少数の兵による国家の中核人物の拉致、それだけで国としての体裁は失われる。
「これが、太陽神の使いの力……」
「もはや……、戦いにすらならないではないか」
唖然としているミシリアルの面々だが、その間にも刻一刻と戦況は変化していく。
戦争が開始して36時間、航空爆撃と共に首都周辺に自律兵器であるAI搭載ドローン戦車群と少数の空挺部隊が降下、アニュンリール皇国皇族を捕える為、無慈悲な侵攻を開始。
ほとんどの兵士を沿岸地帯に集め、敵の本土上陸作戦に備えていたため、無防備に近い首都は皇族護衛隊以外は出払っており、アニュンリール側に多数の死傷者を出しながらも、中枢施設群の破壊と皇族の捕縛に無事成功。
軍務大臣など各部署の責任者は国に残ってはいるが、突如現れた正体不明の部隊によって皇族が攫われたことで、敵の仕業なのか内部の仕業なのか疑心暗鬼になっていた。
戦争開始から72時間、重要施設をすべて失っただけではなく、皇族である光翼人も全て捕えられ、アニュンリール皇国は国家としての体裁を失った。
各地に残された工場や小規模な軍施設が、かろうじて生き残った軍人や民間人を集めているにとどまる。あとの始末は神聖ミリシアル帝国及び自律機械に任せておけばよい。
「ラヴァーナルに関わる技術も幾らか残されているでしょう。 ミリシアル帝国で確保できるように残しておきますので、確保するなり有翼人を捕縛するなり自由にするのがいいでしょう」
太陽神の使いの言葉に、ミリシアル帝国の軍務大臣と情報技術官はすでに考えるのをやめ、状況をただ青ざめた表情で見ながら、報告する為にメモを書き取っていた。
日本国内でも行われている魔法技術の開発、所詮は発電や電気や動力の代替がほとんどで、実用性に関してはそれほど高くはない。
科学の補助として利用できるが不安定性もあり、まだまだ魔石技術の発展が必要であった。その為アニュンリール皇国の技術者が持つ情報は有用ではあるが、発想に柔軟性が失われる危険性もある為独自に発展させていく方針をとっていた。