龍の国 日本   作:揚物

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3.神聖ミリシアル帝国・ムー国

 太陽神の使いが現れたことによる混乱、そしてアニュンリール皇国の殲滅、ラヴァーナル帝国技術の回収、そして来るべきラヴァーナル帝国に対しての備えとして、国内は大混乱に陥るはずであったが、ラヴァーナル帝国復活に関しては厳しく緘口令が敷かれたことで、最悪の状況だけは回避できていた。

 

「まさかラヴァーナル帝国に連なる国があったとは……」

 

 皇帝であるミリシアル8世は軽く怒りを抑えながら、各部門の報告を聞いていた。

 軍務大臣と情報局長は、かき集められた情報を纏め準備を進める事に疲れ果て、目の下に深い隈を作りながら言葉を続ける。

 

「現在艦隊を派遣し、制圧と技術回収を行っています。 国土が広い為長くかかるとは思われますが、太陽神の使いの言う通り、国家体制はすでに失われております」

 

 報告を聞きながらミリシアル8世は太陽神の使いの事を考えていた。

 好意により小型であるが映像端末に記録されたものが貸し出され、それに残されていた戦争の映像、大国を三日間で壊滅させてしまったその力が、ラヴァーナル帝国にだけ向けられることに安堵し、また間違って敵対してしまうことを恐れていた。

 

「アニュンリール皇国の皇族である光翼人は現在魔封じの枷によって拘束され、厳重に管理されております」

 

 これからアニュンリール皇国の皇族、つまり光翼人からラヴァーナル帝国の情報を聞き出さなくてはならない。

 兵士を送り込みアニュンリール皇国の完全な解体と制圧、残されている設備などから技術解析などすることは非常に多い。

 捕えた有翼人から魔帝と技術情報の取得、当面の間ミリシアル帝国は慌ただしいことになるだろう。

 

「エモール王国、彼らにアニュンリール皇国の光翼人について、世界会議までに情報を纏めて出すように伝えるのだ。 穏便にな」

 

 ミシリアルの兵団は、順調にアニュンリール皇国が支配していた領域の占領を進め、その中で抵抗を続ける工業区や小さな軍事拠点に攻勢をかけていた。

 

 

 

 

 

1629年中頃

 現在の日本は、元の世界に戻った時の魔法技術などによって、多くの権利や資源を得る事に成功はしたが、世界中が疲弊している状況では現物交換なども多くあり、日本も現物での受け取りによって技術情報の公開なども行ったが、やはりそれを良しとせず軍事的に圧力もかけられた。

 汚染された世界では清浄さこそなによりも価値があり、科学と魔法による放射能の遮蔽と除去技術の開発を現在は何よりも注力している。

 未開の地で危険を晒しながら手に入れた技術と情報、それを世界中から狙われた日本は、日本人だけではなく日本に住む在住外国人もまた、世界を、母国を中々信頼できないようになっていた。

 徹底管理され増強された食料自給率、国内の核融合炉や自然エネルギーの開発、バイオ燃料。

 少量の鉱物資源さえあれば、日本は十分に自活が出来る。

 

 だが、何よりも問題は、減ってしまった海空の自衛隊。

 海上自衛隊は残念ながら一個艦隊は隣国との防衛戦で失われ、電磁加速砲搭載の超広域防空戦艦大和も現在修理中と、防衛能力が低下している。英国から1隻のQE級空母を融通されたものの、失われた人員やイージス護衛艦は戻らない。

 航空自衛隊はF-2戦闘機が全機稼働不能状態であり、F-15シリーズも過半数が修理状態にある。F-3の生産とF-35の米国からの購入である程度は戻っているものの、全体の稼働率は60%を切っている。

 陸上自衛隊は対馬奪還戦によって1師団を失い、ある程度は補充されたと言っても万全とは言えない。

 

 日本は確実に弱っている。それゆえにアニュンリール皇国を完全に仕留めきる事までは出来ず、技術回収の名目で後の事をミリシアル帝国に任せるしかなかった。

 電子励起のMIRV弾道弾も尽きてしまっている。この世界の猶予はおよそ30年、来るべき日に備えなければならない。

 まずは膨大な鉱物資源を確保しなければならない。しかし直接クワ・トイネやクイラに関わるわけにもいかない。

 

 

 

 

1629年中頃 ほぼ同時期

 ムー国 オタハイト港

 大艦隊を連れず、人知れず気付かれないように配慮をするべきと考えられたが、ミリシアルに行ったように、正規に圧力を掛けることが最終的に決定がなされた。

 その為現在も無事な長門及び伊勢型超広域防空イージス艦を基本とした艦隊を派遣。

 

「暇だなぁ」

 

 ムー国は中立宣言によって平和な状況であり、日本では約160年前に存在した戦艦、三笠に酷似したラ・カサミ級戦艦を設計している技術的段階にあった。

 そんな国家であるために、他の地域の文明圏国家から稀に戦争を挑まれることもあるが、ここ数年はそのような事もなく安全な年月を過ごしていた。

 

「おい……なんだあれ」

「ん? 何がみえたんだ?」

 

 監視員の視線の先には見たこともない艦隊がいた。

 急いで書類に目を通すが、今日は艦隊の寄港予定はない。

 

「……おいおい、ミリシアル帝国の艦隊か!?」

 

 監視員たちが慌てている中、日本の艦隊はオタハイト港に向かっていた。

 日本の艦隊による圧力は、ムー国が科学文明国であるため、技術移転にしろ技術指導にしろ都合が良い。だからこそ惜しみもなく全力で圧力を掛けに出ていた。

 海軍事関係者だけではなく住民たちにも騒ぎが広がる中、港の間近で集まっていた艦隊の中から一隻が港に着岸。梯子が下ろされ中から人が降りてくる。

 

「我々は太陽神の使い。 国家元首及び軍事・技術・情報責任者と面会を望みます」

 

 突然の訪問に大慌てになり、他国の外交官や商人達は太陽神の使いが現れたと本国に連絡取ろうと動き始める。

 

 

 

 

 

 多くの混乱と共に各部門の責任者が集められ、緊急会議が行われた。

 

「それでは、我々に技術を託して頂けると?」

 

「条件を飲めるならですが。 貴国の今の技術から半世紀程度は進んだものを与えましょう」

 

 一時停滞したとはいえ2060年の日本にとっては100年前の骨董品の技術、別に惜しくもない。これで必要なモノが得られ、日本が直接介入する必要がなくなるなら十分すぎる。

 太陽神の使いとしての要求は以下になる

 

1.クイラの鉱山及び油田の整備

2.クワ・トイネに蒸気線路の敷設

3.クイラから鉱物資源および油田の輸出

4.クワ・トイネから食料の輸出

5.マイカル南部、山岳地帯に囲まれた港湾部の基地化

6.基地化に伴う人員の融通

7.基地周辺の陸海空域の完全封鎖

 

等、とんでもない要求であった。

 

「食料や鉱物資源については、なんとかできるかと思いますが、基地や人員については……」

 

 ムーの各部門の代表者達が話し合いながらも、余りにも重い条件に難色を示していた。

 

「スパイが国内に入り込んでいる事を知っているでしょう。 少しでも流出すれば戦乱を巻き起こしますよ?」

 

 はるかに発展した技術、それに伴う弊害、第五列強レイフォルも虎視眈々とムーを狙っており、スパイなど当然入り込んでいる。

 

「……お時間を頂けないかと」

 

「半年は待ちます。ですが」

 

 太陽神の使いの手に持っている端末から映像として流している平行未来のムー国の、カルトアルパス港での大敗、アルーの大虐殺、これは起こりうる高い可能性の一つである。

 

「これはあなた達が我々の力を借りなかった場合に起こりうる未来です、それをお忘れなく」

 

 退室していく太陽神の使いを見ながら、ムーの代表者達は頭を抱えた。

 翌日から重要機密として連日の会議を行い、会議の参加者達が疲弊していく中、ミリシアル帝国の使者が公式にムーを訪れ、太陽神の使いの来訪とそれに伴う人員の供出について話し合いが行われた。 

 ミリシアルにも同じように人員の供出を求められ、むろんそれは技術の向上を対価としているため、ミリシアルは受ける事にしたので第二列強であるムーへの通達に訪れていた。

 ミリシアルの決定にムーも国内の調整を行い、一年後を目途に人員の用意をすることを決定した。

 

 

 

 

 国内では南東部海岸線沿いの山岳地帯の一部地域が封鎖され、一切の立ち入りと接近が禁止された。法的な問題や国民向けの説明全てが追い付いているわけではないが、少なくとも第一列強との共同での技術開発を行うとして、表向きは纏められている。

 

 

 

 

 海上油田構造を起点に、メガフロートを接続し大規模な人工島の建設を進めている。日本本土は完全に鎖国、そのための準備を進めていた。

 交易は以前と同じように日本本土には来させない。ただし今回は軍事拠点の面も持たせ、早期に獣人傭兵団の結成を考えている。

 

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