大魔女とドラゴン 作:ディアナ
今日も私は日光浴をしながら魔道書を読みふけっていた。なにも変わらない、たった1人の孤高のゆったりとした時間の流れはドアを叩く大きな音にかき消された。
「お久しぶりです。お元気そうで何よりです。ゼラさん。本日はどういったご用件で?」
私は数ヶ月ぶりに友人が訪ねてきた喜びで少し舞い上がっていた。感情をあまり表に出す方ではないので、素っ気なく対応するが内心では飛び跳ねたいほど嬉しかった。
「リーちゃんおひさ!実はさ、すっごい面白そうな魔法書を見つけてね!遠くからわざわざ1週間もかけて来たのよ!」
私は人里離れた孤島に住んでいる。孤島というよりは無人島、もっと言えば人っ子1人寄り付かない絶島に住んでいる。昔は村で暮らしていたが、もともと人付き合いが苦手だった。その上魔法を使えることであるものからは忌み嫌われ、あるものからは利用され、私を魔女としてしか見てもらえず人と関わるのが嫌になって辿り着いた場所がここだった。それでも友人が全くいなかったわけではなかった。目の前にいる彼女は私の数少ない友人だ。
「遠方よりご足労頂きありがとうございます。それで?どういったご用件でしょうか?」
「連れないなぁ……。せっかく会いに来てあげたんだかさ、お茶の1つでも出したらー?いきなり本題とかそんなだからリーちゃんは友達いないんだよー!」
「忘れてました。すぐにお茶を用意しますね。あと、友人なら目の前にいるではありませんか?」
「ほんとに友人と思ってるー?いつまで経っても敬語だしさー、さんづけだしさー?」
「はい、お茶です。」
「ありがと。それで、リーちゃんはずーっと1人でいつもなにしてんの?」
「そうですね……。普段はのんびり魔道書を読み込んだり、庭の野菜にお水をあげたり、たまに浜辺で釣りをしたりしています。」
「それってさー、退屈じゃないのー?あたしは毎日色々いそがしいよー!」
「色々とは例えば何でしょう?」
「ごはん食べたりー、お酒のんだりー、男共をからかってみたりっ!」
「はぁ……そうですか。それで?そろそろ本題に入って頂けませんか?あまり人と雑談をするのが苦手でして……。」
「んもぉ!仕方ない。実は面白い話を噂で聞いてね。」
「面白い話ですか……。それは私に会いに来てまで話したいことだったのですか?」
「そうだったから会いに来たの!リーちゃんずっとこんなところにいたら退屈でしょ?」
「余計なお世話です。それに、退屈というわけではなっ」
「退屈でしょ!」
「いえ、そんなことは。毎日することもありますし、魔道書で学んだの魔法を練習することなんて日々の楽しみですよ。」
「はぁ……。いい?魔法は使うためにあるの!それに、同じ日々の繰り返しほどつまらないものはないでしょ!」
「同じ日々は2度はありませんよ?少しちが……っ。」
「そーゆー日常を退屈というのっ!で!今日会いに来たのはリーちゃんに新しい刺激をあげようとおもって来たのよっ!」
「ゼラさん、申し訳ないですが1人でのんびり過ごしたいので刺激は結構です。」
「ふぅーん?そうかしら?いきなりあたしが訪ねてきたとき舞い上がって喜んでたのはどこのどなたかしら?」
「……いえ、そんなことは。」
「はいはい、変わんないねー。全く内容に興味ない?」
「えぇ、刺激は……。」
「それが魔法のことでも?」
「そ、それは……。」
「そっかぁー、魔法も興味ないかぁー、なら今日は帰ろっかなー?」
「ま、待って下さい!……その、話だけ……。」
「話だけ……?」
「……聞かせてください。」
「良くできました♪」
彼女は机の上に鞄の中にしまっていた魔道書を1冊置いた。彼女は魔道書をぱらぱらめくり、ある魔方陣の描かれたページで本を開いた。
「なんだと思う?」
彼女は得意気に私の顔を覗き込んだ。かなり古い魔道書のようで、解読にとても時間がかかりそうだ。所々読める文字があるが、全てが読める訳ではない。しかし、ある程度文字が読め、さらに様々な魔方陣や魔法を学んできたからこそ、どのような魔法の説明がなされているのか大方予測できた。
「……転生魔法?」
「大正解!さっすがリーちゃん!初見でこの文字を読んでさらに魔法まで当てちゃうなんてお見事!」
私がそう答えると彼女は嬉しそうに跳び跳ねた。そして、私の手を取ってじっと見つめてきた。
「……ねぇ、ゼラさん。」
「なーに?」
「転生なんて……」
「馬鹿げてる、そんな神の神業がただの人間にできるわけがないって?」
「その通りです。それに、ここに書かれている魔術は他にも蘇生や生命創造です。これは太古の大魔法使いが記したものなのではないのですか?こんなものをどこで手に入れたのですか?」
太古の魔道書など、現代の魔法を忌み嫌う教会主導の世の中では見つかり次第燃やされている。そして、魔女は見つけ次第魔女裁判に掛けられ、あることないことを言われ拷問されたあげく殺される時代だ。そんな世の中にこれ程の大魔術が記された本をお目にかかれることは滅多にない。
「実はね、最近知り合った変わり者のロリっ子がくれたのよ!」
「なるほど。是非お会いしてみたいですね。このようなものを持っているということは、たいした方なのでしょう。」
「そんなことより!退屈で退屈で仕方ないお酒を飲むことだけが楽しみのこの世界から転生して、刺激のある生活をしようではないかー!」
彼女は大声で叫んだので、庭に止まっていた鳥たちは慌てて空に羽ばたいていった。転生魔法なんてできるわけがないし、さらには魔道書を完璧に解読できていないので成功確率はさらに低いものになる。だが、知ってしまった魔法を使ってみたくなるのは魔法使いの性だ。
「仮に、ここにかいてあることが正しいとして、解読
はどうするの?」
「ふふーん。それに関してはお任せあれ!古代魔法を研究しているマドゥという方を見つけたの!そして、その方が言うにはこうらしいわ。」
マドゥという魔法使いがが言うには、火、水、木、光、闇の5属性の魔法使いがそれぞれ魔方陣の5つの頂点に立って、中央に自らの魔法を放ち、5つの属性が均等に保たれたとき祈りを捧げると魔方陣を起動することが出来るとのことだ。
「5人ですか……。しかも、5属性……。」
「5属性なんて集められる訳がないと思った?実はね。もう4人目までは目星をつけてるのよ。」
「ほんとですかっ?!」
「もちろん!木はもちろんあたし、水はリーちゃん、リーちゃんは正確には氷だけど、古代魔法では氷は水属性扱いだしね!それに、マドゥさんは火属性を操れるようで、変わったロリっ子は闇の魔法を使えるそうよ。」
「あとは光ですね……。」
「光は、マドゥさんの知り合いで1人優秀な方がいるみたいで掛け合ってみると言ってたわ。」
「なら……っ」
「興味を持ってくれた?」
「えぇ、それは、まぁ……。」
「降りてもいいのよ?もともと聞かせるだけの約束だったしね。水の魔法使いなんて村に行けば見つかるしね。」
「わ、私も!」
「私も?」
「……私も……、参加したいです……。」
「良くできました。」
彼女はそう私にいじわるをしてから旅の手配を進めてくれた。1か月後に彼女の住む街で合流することとなった。