大魔女とドラゴン 作:ディアナ
私はゼラさんと約束した街に来ていた。人に顔を見られることは今でも抵抗があるので、ベールを被って顔を隠していた。こんな格好でもこの街なら怪しまれることもない。修道女と言うことにしておけば大抵の人間は納得する。しかし、街に来るのなど数年ぶりなので人の多さと賑わいに耐えきれなくなっていた。店も物価も大分変わっており、迷子になると困るので大人しくゼラさんの言っていた店で時間を潰すことにした。
半刻ほど待っているとゼラさんが小さい女の子を連れて店に入ってきた。その女の子は小さい見た目と紫で統一された衣装をしていることから、先日言っていた闇の魔女と言うことが予測できた。
「リーちゃんお待たせー!」
「お久しぶりです。」
「こんにちは。」
闇の魔女は小さな声でそう挨拶するとゼラさんの横に座った。
「紹介するね。この子はヴェロアちゃんというの。なかなかすごいのよ。詳しくはここで話すことは出来ないけどね。」
ゼラさんが紹介すると、ヴェロアさんは私を見て小さく頭を下げた。愛想は良くないがなんとなく私と同じ雰囲気がして居心地がよかった。
「もう少ししたら、マドゥさんと、その連れのサレーネさんが来るはずだからもう少し待つとしよ。」
ゼラさんがそう言うと2人とも黙ってうなずいた。初対面の人と自分から話すのは私にはまだ無理そうだった。
それから間もなくマドゥさんとサレーネさんが姿を現した。私たちは軽く雑談をしたあと店を後にした。道中、ゼラさんがこれからする段取りを簡単に説明してくれた。
これからゼラさんの家に行き、5人で魔道書を解読してからそれぞれの魔法を見せあって、力の大きさを合わせられるようにしてから魔方陣を起動させるようだ。魔方陣はゼラさんが既に水銀で設置しているようだ。
ゼラさんは一歩前に出てみんなの方を向いて笑みを溢した。
「いやー、みんなのこと集めるのは骨が折れたよー。疲れたー。無理かと思ったし魔女なんて気まぐれだから来るかも心配で……。」
「そうですか?私にはとっても楽しそうに見えますよ?お力になれれば良いのですが。」
マドゥさんは大人の女性だなと感心していた。雰囲気も他の4人に比べて風格があるし、歳上であることは明らかだった。そんな風に感心しながら雑談しているみんなの一歩後ろを歩いていると、突然ゼラさんが私の方に寄ってきてベールをいきなり剥がした。
「特に!この、リーちゃん!昔っからの友達なんだけどね。もう全く人に関わろうとしないの!だから今日も私以外がいると知ったらそそくさと逃げ出しちゃうかとっても心配だったの!」
「や、やめてくださいよゼラさん。……私も一応ゼラさんの友人なんですか、約束を反故にしたりしませんよ……。」
「どーだか!また会いに行くねと言ったきり、私のところに遊びに来てくれたことなんて会ったかしら~?」
「……すみません。」
確かに昔に街を出るときそんな約束をした気もする。しかし、街を離れて以来街を訪れるというのがとても憂鬱で島から離れようと思えなかったのだ。
そうこうしているうちにゼラさんの家に着いた。魔女にしては珍しく普通の家のように見えた。特に代わりのない周りと同じような形の家だ。ただ、普通の家に見えたのは外からだけだった。中にはいると玄関と応接間以外なく、他の一切の部屋は地下室にあった。
「都会で魔法を使うなら地上では危ないのよ。見つかれば首ちょんぱだし、それ以上にいじめぬかれちゃうもの。」
「たしかにそうですね。ゼラさんも案外賢いのですね。」
「ん?リーちゃんなんか聞こえたんだけど。」
「いえ、なにも。」
地下室にたどり着くとそこには水銀で描かれたとても正確な魔方陣があった。ただ、それは見たことのない術式のものだった。他の3人もそれを見て色々思考を巡らせているようだった。私たちがそれに見とれていると、ゼラさんが詳しい手順を説明しだした。
「ここに集まった5人は力の差はあれども、ただの魔女の端くれではなく立派な大魔女だよ。だからこの術式を起動させるのも容易いはず。そこで、私たちがそれぞれの頂点に立って、そこに魔力を少しずつ流して欲しいの。流した所が自分の属性色に光はず。そうしてそれぞれの魔力が中央に集まったとき、5色は混ざって輝き空間の切れ目が生じるはずなの。そうなったらみんなでレッツゴーよ!」
はずって……、と思いながらも私は魔方陣に早速行こうとすると、マドゥさんがそれを止めた。
「たしかにゼラさんは有能な魔女ですけど、私たちにももう一度魔道書を解読させてください。サレーネもそうしたがっております。」
「あ、おっけ、どうぞー。」
5人が数時間解読した結果、5属性が互いにぶつかり合ったときにそれぞれが同じ祈り、言わば詠唱を唱える必要があるようだ。そして、空間が歪めば1人ずつその穴に飛び込むことで空間移動が出来るようになるらしい。一人ずつ出ないと魔方陣が耐えきれなくなり誤作動を起こすようだ。
「よし!じゃあ!みんな準備おっけ?いくよ!」
ゼラさんが言うとみんな起動し始めた。そして、5人の魔力が中央に集まったとき、魔方陣が剥がれ初めてそこには本当に穴が開いた。
「やった!やったやったやった!成功よ!」
ゼラさんは大喜びしながら飛び跳ねている。しかし、他の3人は私と同じく怖じ気づいたのか足が動かないでいた。
「ほらほらリーちゃん!いくよ!」
ゼラさんは呆然としていた私の手を取ってそのまま穴に飛び込んでいった。
「1人ずつじゃないと危ないって!」
「なら早く来てねー!おさきー!」
ゼラさんのあとを慌てて追いかけた。もうどうにでもなれと諦めて目をつむり空間の穴に飛び込んだ。