東雲くんは気付かない 作:レンリ
クラスメイトに捨てられたのに気付かない
□とある街外れ
「東雲、悪いがここでお別れだ」
四十人ほどの少年少女の中で、リーダー格と思われる少年が、東雲と呼んだ少年に言い放つ。
その言葉にはハッキリとした意思をその場にいた誰もが感じた。
「本気なの?田中君?」
「若葉さん。理由は分かるだろう?」
「……………」
若葉と呼ばれた少女は、リーダー格の田中君にそう返されると、黙ってしまった。
彼女も本気で止めようとは思っていない、ただポーズとしてそうしただけ、心の中では割と田中君の意見に賛成しているが、ある程度の良心からそう言っただけである、まあ、それでも何も言わない人よりは優しいのだろう。
「他に誰か何か言うことはないかな?」
田中君は、皆にそう問いかけるがどんよりとしたこの空気で、何か発言しようとするには物凄い勇気がいるだろう、心の中で誰もが誰も何も言わないと思っていた。
田中君が次の言葉を発しようとしたその時、
「次も同じようなことがあったら、同じことをするつもりか?孝太郎?」
「祐弥、東雲は弱くはないが、俺たちほど強くはない。それにモンスターを倒すのも傷つくのを嫌ってか時間がかかる。金をかけて装備を強くするという手もあるが効率が悪い。しかも……………」
「俺だって分かっている!このままじゃ攻略が遅れて、帰るのに時間がかかるは分かっているんだ!」
「……………」
「確かに東雲を置いていくことが合理的だ。でもなあ!このまま切り捨ててしまったら、次に似たようなことがあったら同じようにするのか?なあ、孝太郎俺は怖いよ、もし同じような立場に自分がなったとしたら、帰れたとしてもその場に東雲がいなかったら東雲の家族に言えばいいんだよ!?」
「祐弥ちょっと落ち着いて!」
「……………悪い、孝太郎、由美。熱くなり過ぎた」
「祐弥、お前のいうことも最もだ。一応考えもある」
そう言うと、どこからか袋を足りだして東雲に渡す。
その際、東雲はそれを少し慌てた感じで受け取ったが誰も気にしていない。
「三ヶ月はそれで生活できるはずだ。拠点も好きにしていい」
「……………」
「…行くぞ、皆」
田中孝太郎がそう言うと、魔術師のようなフードで顔を隠した誰かが何か唱えると全員どこかへ消えてしまった。
「■■■■■■■■」
その際に、東雲が何か言っていたのを何人かが見たが、誰も聞き取れなかった。
東雲以外誰もいなくなった街外れで、東雲はというと……………
「よし、拠点に帰ったら掃除するか!」
凄い元気だった。
一体どういうことか?東雲sideではこうなっていた。
東雲side
「東雲、悪いが(俺たちはこれから遠征に行くから一旦)ここでお別れだ」
田中君の言葉は、東雲にはこう聞こえていた。
(ああ、なんかこの前、誰かがここら辺にはもうほとんど何も手掛かりがないから遠征する必要があるって言ってたなあ)
本気かこいつ、ポジティブ過ぎるというか、頭が残念というか、もしこれを言葉にしていたら皆口がふさがらないだろう。
続いて次の会話は、
「(東雲君が拠点で一人暮らしって)本気なの?田中君?」
「若葉さん。理由は分かるだろう?」
「……………」
(え?皆、まさか今までこっそりと料理とか家事スキルを磨いていたことが気づかれていたのか?!)
この通り、どういうことか分からないが奇跡的にこうなってしまった。
更に、東雲はこの重苦しい雰囲気に気付かないほど空気が読めなかった、いや、読めないのである。
「他に誰か何か言うことはないかな?」
沈黙、それは東雲の中では拠点で一人暮らしが許可されたということだ。
勘違いした東雲の思考は止まらない。
(そうかそうか、皆も賛成なのか!いやー恥ずかしいな、最初は野菜炒めとか練習して作っては自分で味見して頑張ったんだよな。街の人料理できる人に聞いて、レシピとか料理のコツとか教えて貰ったよな。他にも……………)
この思考によって、クラスの委員長、田中孝太郎とその親友の桂祐弥の討論に全く気付かない、いや、何か言い合っていることは分かっていたが内容は聞こえていなかった。
「他に誰か何か言うことはないかな?」
その言葉で意識が現実に戻る。
そして渡される袋、重さと音からお金であることくらいは流石に東雲には理解できた。
「三ヶ月はそれで生活できるはずだ。拠点も好きにしていい」
「……………」
「…行くぞ、皆」
これには東雲は驚き固まった。
(三ヶ月分のおこずかいに、街ある拠点を自由に使っていい?!どれだけいい奴なんだ委員長たちは!しかも、俺を信頼して拠点を自由に使って言いだなんて。それにしても、三ヶ月分のということは結構な遠征なんだな)
やはり、とんでもない勘違いをしていた。
東雲が勘違いしている中、着々と準備は進んでいく。
「いってらっしゃい」
東雲は皆無事で帰って来てね、という思いを込めてみんなを送り出す。
そして、いつ帰ってきても大丈夫なように、
「よし、拠点に帰ったら掃除するか!」
声にだして、街にある拠点に戻るのであった。
クラスメイトに捨てられたのに気付かない東雲であった。
東雲くん、約二か月の練習のおかげか意外と家事スキルは高い。
掃除の際、細かい汚れにも気が付いて綺麗にしたが、その洞察力はもっと別の場所で活かした方がいいぞ!
続きは評価と感想と気分次第です。