東雲くんは気付かない   作:レンリ

3 / 5
 クラスメイトに捨てられた翌日の話


知り合いの反応に気付かない

 □シルド

 

 シルド、そこは古の賢者が神の力を借りて作成したと言われる大迷宮シルドによって栄える迷宮都市、冒険者、商人、職人など多種多様な人達が集まる。

 そのシルドに現在東雲は住んでいる、拠点としている建物はクラスメイトが何人かが協力して元々在った建物を改装したものでそれなりに大きく広い、それでは目立つのではないかと思われるが案外周辺に大きな建物は多くあんまり目立っていない、改装もどちらかというと内装に手を入れていたのも大きいだろう。

 

 朝、東雲が起床する。

 

「夢の中で寝るのは慣れたけど、誰もいないのはちょっと寂しいな」

 

 意外と早起きである東雲、電車とかの関係で早起きの習慣が身に付いているのだ、ただ元の世界にいた時はゲームとか課題とかで夜更かしするのも多かったので昼休み中はよく寝ていた。

 そして、二か月ほど経っても未だに現実だと気付かない東雲、自分の身体は机にうつ伏せになって寝ているのだと思っている……………強ち間違っていないのだから訂正しづらい。

 朝食を用意し食べた後片付けを行い、仕事の為に準備をする、迷宮探索である。

 

「ソロだしこれからは十階層から二十階層辺りがメインの狩場になるのかな」

 

 東雲は呟くが、全くピンとこないだろうソロで攻略するなら優秀な探索者に分類される、補足すると委員長たちは安全マージンを取って、最も戦闘能力が高い生徒で、ソロで百階層以上、東雲を除く生徒で最も戦闘能力が低い生徒で三十階層辺り、東雲がクラスメイトに捨てられた理由の一つがこの戦闘能力の相対的な低さである。

 

「稼げるといいなあ」

 

 が、全く気にしていない、まあ、視方次第でやる気が無いとも取れるし自己分析がしっかりと出来ているとも取れる、クラスメイトにはやる気が無いと取られたが。

 実のところ、委員長たちの方がやる気があり過ぎたということによるギャップが原因だったりするが東雲も含めて誰も気が付かなかった。

 東雲は戸締りを確認して迷宮に出発する、武装は基本アイテムバックに閉まって迷宮に向かう、途中顔見知りがいたので挨拶していく。

 

「シノノメの坊主じゃねえか」

「あ、鍛冶屋のお爺さん、これから仕事?」

「おうよ、お前さんこそ一人でどうした?」

「迷宮探索、他は遠征してしばらくここには帰って来ないよ」

 

 鍛冶屋のお爺さん、東雲の武器防具から調理器具までお世話になっている、御年七十一歳の未だに現役大ベテランである。

 すると、顔色を変えるお爺さん。

 

「…シルドにいるのはお前さん一人か?」

「?そうだけど」

「他に何か渡さなかったか?」

「委員長からこれで三ヶ月は生活できるだろうとお金を結構な額を渡されたけど」

「(手切れ金として)三ヶ月分の生活費()だと!?それだけか?!」

「あと拠点も自由にしていいよって」

「(ものは言いようだな、処分に面倒なものを押し付けたな)……………お前さんはそれでいいんだな」

「大丈夫、心配いらないよ」

「…そうか、色々と大変だろうが困ったら頼りな」

「ありがとう爺さん。面白い素材とかあったらまた持ってくるよ。行ってきます!」

「おう、頑張れよ!」

 

 迷宮探索へと向かう東雲、それを見送る鍛冶屋のお爺さん、あっという間に東雲の後ろ姿が見えなくなったのを確認すると、

 

「そうか、あいつらはシノノメの坊主を置いていきやがったか」

 

 苛立ちと落胆などを含んだ独り言を呟く、お爺さんはちゃんと東雲が捨てられたことに気付いていた。

 何故か?それはさっきの会話もそうだが、物資の動きと噂などもそれを補強した。

 大迷宮シルドは公式では百五十階層の世界有数の大規模迷宮、それをたった約二か月程度で破竹の勢いで攻略する団体を注目しない訳がない、当然色々とあったが関係ないので省略する。

 東雲はその集団の中では異端であった、最初から鍛冶、調薬、錬金などを全て仲間の元へではなくシルドの職人に頼み込んできたのだ。

 最初は喧嘩でも売られたのかと思った、自分たちより優れたものを作れる職人(仲間)がいるのに何故かわざわざ自分たちのところに持って来るのか?笑うためか?憐みか?などと思い込み、在庫切れと言って売らなかったり、相場の倍で売ったりしたが、東雲は在庫切れのときは、また来ます!と言って次は素材を持ち込んで交渉しに来た、相場の倍で売られたときは文句も言わずに金を払い、それどころか感謝の言葉まで相手に送った。

 その他にも必死に努力する(料理を習う)姿を見たりと、徐々に信頼を築いてきた、その過程で冷遇されていることも気付いていて、遠回しに独立を促したりしたが断られたりもした。

 まあ、二か月程度だが、東雲はシルドの住人と確かな繋がりを持ったのだ。

 鍛冶屋のお爺さんもその一人である。

 

「街のみんなに伝えないとな」

 

 彼はもうシルドの住人と言っても過言ではないのだから。

 

 

 

 

 なんかいい感じになっているが、実際のところ東雲はこう聞こえていた。

 

 

 

 

東雲side

 

 

「委員長からこれで三ヶ月は生活できるだろうとおこずかい(お金)を結構な額を渡されたけど」

「三ヶ月分の金だと!?」

 

 そのお爺さんの反応に東雲は、

 

(あ、やっぱりお爺さんも驚いている、三ヶ月分のおこずかいだもんな)

 

 やはり見当違いの理解を示す、というかどうしてまた聞きの他人の方が正確に理解できているんだよ。

 

「あと拠点も自由にしていいよって」

「(いきなり一人暮らしは大変だが)……………お前さんはそれでいいんだな」

「(料理や掃除とかできるし)大丈夫、心配いらないよ」

 

 確かに心配しているがそこじゃない。

 

(相変わらず顔は厳ついけど優しいお爺さんだな)

 

 そうだよ!東雲が思っている以上に優しいよ、気付けよ!

 

「…そうか、(迷宮探索は)色々と大変だろうが(武器や防具、調理器具で)困ったら頼りな」

「ありがとう爺さん。面白い素材とかあったらまた持ってくるよ。行ってきます!」

「おう、頑張れよ!」

 

 

 

 

 

 鍛冶屋のお爺さんが東雲の後ろ姿が見えなくなったのとほぼ同じタイミングで、

 

「今日は狩りまくるぞ!」

 

 迷宮で魔物(モンスター)を狩りまくることを思い浮かべていた。

 

 

 

 

 知り合いの反応に気付かない東雲であった。

 

 

 

 

 

 




 意外とコミュニケーション能力が高い東雲くん、元の世界でも同年代よりも上の年代の人と仲が良かったりする。



 昨日見たら思いのほか評価が高く、驚いています。これから、不定期になるかもしれませんが投稿していきたい思いますのでよろしくお願いいたします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。