東雲くんは気付かない   作:レンリ

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 迷宮内での出来事


黒幕に気付かない

 □迷宮シルド 十階層

 

 カーンカーンカーンカーン……………

 

 迷宮では無く、どちらかというと炭鉱で聞く音が、迷宮シルドの十階層でテンポよく鳴り響く。

 本来ならば、沢山の魔物(モンスター)が迷宮中を蔓延っているのだが一匹もいない、ただ一人の少年がひたすらにつるはしを振り下ろして採掘している、『安全第一』と書かれたヘルメットを着用して。

 そう、東雲だ、不満そうな顔をしてかれこれ三時間ほど同じ作業を繰り返していた、その様子から肉体的な疲れより精神的な疲れが見て取れる。

 

「……………魔物が一体もいない。今回は特にひどいな…はぁ」

 

 言葉通り、東雲はこの階層どころか迷宮に入って一体も魔物に遭遇していない、踏破階層を更新するなら喜ぶべきだが、生憎今回は稼ぎに来ているのでアンラッキーである。

 そもそも東雲が魔物に全く遭遇しないのは今に始まったことではない、この世界に来てからずっとであった、それに遭遇したとしても妙に強い個体であったり、目的とは違う魔物であったりということがよくあるのだ。

 ゲームをしたことのある人なら一度は経験したことがあるだろう、

 

「『物欲センサー』か、本当に厄介だなこの『能力』」

 

 ガチャ、ドロップアイテム、エンカウントなどで目的のものが手に入らないといったもので、苦しめられた人は多いだろう……………特にガチャは許せない、東雲の場合はそれが『能力』によって起きている……………まあ、『能力』と合わさっているが正確かもしれないが。

 東雲の『能力』は『物欲センサー』、しかも常時発動型の『能力』、運などに作用するレアな効果ではあるがこれほど使い勝手が悪いものは滅多に無い、更にはリソース(容量のようなもの)を多く使うので他の『能力』がまず発現しないらしい、時々連絡を取るサポート系の仕事の見習いをしている神様的な存在『ミコト』に確認したから間違いないだろう、なんせわざわざマニュアルを確認しながら説明してくれたのだから。

 ただ全てがデメリットになる訳ではない、今必要としているものが中々でないだけで将来的に必要なものが逆にかなり出てくるというケースもあるので一概には使えないとも言えない『能力』だ、皆も経験があると思う、ノーマルドロップ狙っているのに何でこんな時にレアドロップが良く出るんだ……………とか、そういう事だ。

 実際に……………

 

「あ、またレア鉱石。いや、高く売れるけど、今日は魔物を狩りたい気分だったのだけど」

 

 採掘では絶好調、目標としていた金額を優に超える稼ぎができただろう、まあ、東雲は魔物のドロップアイテムで稼ぎたかったので本人としては不服だろうが。

 

「あ、宝箱」

 

 こんな時、東雲は迷宮でそんなに見つからない宝箱をよく見つける、宝箱は特定のものを除いて中身は完全ランダムで、大外れから大当たりまで揃っている。

 一説には、宝箱の中身は一定のルールがあるらしいが、なんせ数が集めにくく中身を一々覚えていないので証明されていないが、高位探索者の中にはこの説を信じる者は多い。

 

「中身は……………変な石、ハズレか」

「宝箱、……………またこの石」

「今度こそ、こい!……………また石」

「こい!……………またか」

「流石に石は……………あーはいはい」

「……………」

 

 ……………一流の探索者でもこんなに連続で宝箱を発見しないし、同じ中身を引き当てたりしない、流石は『物欲センサー』、その名に恥じない仕事ぶりである。

 

「……………さっさと帰ろう」

 

 これには東雲もしょんぼりして帰路に着く、内心帰りは大量の魔物に遭遇するのではないかと期待していたが、見事に『物欲センサー』に引っ掛かり、今日は結局一体も魔物に出会うことさえなく迷宮探索は終わった、普通ならば良い結果なのだが気分的には良いとは言えなかった。

 そもそも何故東雲は魔物と戦いたがっていたのかと言うと、稼ぎの効率もそうだが戦闘経験が著しく偏っていたからだ、それが原因で委員長たちと同じ魔物と戦ったとき、その魔物との戦闘に慣れていないため倒すのが遅かったり、討伐数が少なかったりする。

 察しの良い方はお分かりの通り、委員長たちから東雲が足手纏いとされた原因の一つ、というよりほぼ全ての原因には『物欲センサー』が絡んでいる、そう『物欲センサー』(こいつ)が黒幕なのだ。

 ……………そう、そうなのだ!自分の『能力』が『物欲センサー』であることに気付いていながら、全ての諸悪の根源(黒幕)が『物欲センサー』だと気付かない、いや、悪意に気付いていないので、東雲にとって悲劇も何もないのだが。

 その後、迷宮探索で得たレア鉱石を売って金にしたがこれがまた別な勘違いを呼ぶことになるのだが、まだ誰も気付かない、きっと東雲はずっと気付かないだろう。

結構稼いだ東雲は、夕暮れ時の街に買い物に行くと妙に街の人達に心配されたが、今朝の鍛冶屋のお爺さんに話した内容が色々と曲解されてシルド中に広まっていることに東雲はやはりというか気付かなかった。

 あれもこれも全て『物欲センサー』が最終的な原因であると言っても過言ではない。

 

 

 

 

 

 

 

 『物欲センサー』という黒幕に気付かない東雲であった。

 

 

 

 

 

 

 

 




 東雲くんは槍、短剣、大剣と武器は結構持っている、自分の好みの武器を探すのと、どうしても魔物によっては武器によって相性が生まれるからだ。


 自分が思っているより好評でちょっとビビッています。これから年末年始は忙しく不定期更新になると思いますが、『東雲くんは気付かない』の応援をよろしくお願いします。



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