ネームレスは世界を放浪しながら影で介入を続けるが彼の世界には名も無き女性がいた。
その名前はジェーンドゥ。彼女もまたネームレスと同じ世界で育ち、荒廃した世界を棄てて放浪の旅をしていた。
彼女が渡り歩いた世界もまた人の悪意により、無名の人々が理不尽な事件に巻き込まれる光景を観てきているが余所者の彼女は介入をしなかった。
その理由は世界の改変で起こることは未知数で迂闊にしたら未来が大きく変わるからだ。
特に戦闘を主題とした物語で仮に秘密裏に黒幕を殺害したとする。しかし後に黒幕をも上回る脅威に晒されるリスクが生じる。
主人公に相当する存在は本来なら物語の中で相応の力を身に付けて立ち向かう筈だ。しかし黒幕を先回りして潰したら物語が始まること無くその脅威を前に呆気なく散って世界が滅びる可能性もありうる。
それだけでなくこの行為が侵略行為に相当する物かつ異世界人は外来種に該当する存在だと考えられる。
外来種とはもともとその地域にいなかったのに、人為的に他の地域から入ってきた生物のことであり、その一部は生態系や経済に重大な影響を与える。環境問題のひとつとして扱われおり異世界転生も外来種の定義に当てはまると考えられる。
我々の世界でも問題視されているが作品によっては更に深刻な事態を引き起こしているといえる。例えば侵略宇宙人が地球に侵攻をすることも外来種の侵略である。
ネームレスの介入も同様で物語の静かな侵略行為と表現しても過言ではない。最も彼はそれを承知の上で行動しており隠密かつ最小限の犠牲に留めている。
更に未来予知で新たな脅威を観た上でそれの排除もする。脅威が消えたと判断したら直ぐにその世界から撤退しているだけマシと言えるだろう。
ジェーンは彼と異なり幾多の世界を放浪した後、元の世界に戻って細々と荒廃した世界を元通りにしようと行動をしているが今のところは成果が出ずに苦労しているようだ。
ネームレスは彼女の行動を知ること無く只管に己の任務を黙々と遂行する。ある世界でVR研究者の2名を開発着手前に暗殺。研究資料をミニブラックホールで破棄、VR技術の発展を未然に阻止した。
「始末した。次の任務を遂行する」
彼は次の行動に移行する。ある事故で亡くなる筈だったある子供の両親を気付かれないように救った。VR研究が消えたことで仮想世界で黒の剣士と呼ばれた英雄は誕生することなく平穏な暮らしをしている。
その次は何処かで強盗をしようとした犯罪者を狙撃銃で密かに葬り、遺体をブラックホールで痕跡を一切残さずに処理した。これによりある少女が発症する筈だったPTSDが起きること無く彼女も平穏な生活をすることができている。
「任務完了。次の世界に移動する」
彼は任務を終えてこの世界を後にした。