がっこうぐらし!称号「自宅警備員」獲得ルート(完結) 作:島国住み
2020/8/29追記
これ以降、飛真君含めキャラの発言は「」を付けて区別していこうと思います。
表現方法が若干変わってしまいます。ご了承ください。
お、目が覚めた。
時間を確認したいけどこの位置からじゃ分からないな
起き……あれ?起きれないぞ?目は覚めてるのになぁ……
そういや飛真君壁側で寝たんだっけ。妹が起きてくれないと動こうにも動けないのか。
だからこんな狭い所で寝るべきじゃないんだよ……
「ホラ。起きて起きて!」
「…………………………ん~~?」
「…………………………すぅすぅ……」
えぇ……(困惑)
飛真君とほぼ同時刻に寝たんだから睡眠時間は十分でしょ
惰眠を貪っていらっしゃる。規定時間以上寝てもメリットは何もないんですけど。
「動けないから早く起きて!」
「もう朝なの…………?」
「そうだよ(早朝)」
「…………………………わかったよ、起きるよ……」
やっと動ける。時間は……別に遅くも早くもない。
寝た時刻から逆算しても睡眠時間は十分だなぁ
「悪い夢でも見たのか?」
「……そうじゃ、ないけど……なんか寝付けなくて……」
「やっぱり狭いからじゃないのか?そろそろ別々で寝たほうが……」
「……寝苦しいとは、一言も言ってないじゃない」
飛真君は確実に寝苦しいって思ってますけどね。快速並みの速さで眠りに落ちてたのに最近じゃ鈍行ですから。
心なしか不機嫌に見えるな……
まぁぐっすり寝てた中起こされて機嫌が悪いんだろうな。熟睡のさなか起こされれば仏でさえ顔をしかめるはず。
とりあえずご飯にしよう。なんか食べれば気持ちも落ち着くはず
ご飯の支度といっても朝は本当に軽く保存食を食べて終わりですけどね。
消費期限との戦いはもう終わったのであとは賞味期限が短いものから順次食べていく感じですね。
正気度がかなり安定しているから回復ソースを料理に求めずとも規則正しい生活さえしていれば大丈夫。
食糧、水の備蓄は称号獲得までは足りそうです。
「お兄ちゃん、今日は何もないよね?」
「そうだね」
外に出てスコップマスターに向けて経験値稼ぎをしたいけど、これは用事のうちに入らないよな……
先日の雨の日は何事も起こらなかったけど、次の雨の日もそうだとは限らない。その日を耐えればクリアになるわけだから絶対
お前がくるみちゃんになるんだよぉ!!
強力な分、必要なポイントが多いしスコップを使ってかれらを一定数処理しないと取得条件を満たせないからなぁ……
ちょくちょく外に出ていたとはいえそれくらいの外出じゃ数は稼げないんですよ
学校ルートだったらしんがりを務めていればこれくらいの時期には取れたりするけど、この縛りじゃ意図的に外に繰り出さないとダメか……
「じゃあ私寝るね……ふわぁ……お昼になったら起こして……ねむ……」
食っちゃ寝。マジか。完全にこの世界に順応してるッ……!
動くとお腹が減るし、大人しくするっていうのは実際合理的ではある。
本当に寝不足だったんだな。無理に起こす必要はなかったかも。いや、起こさないと飛真君起きれなかったし……
妹と一緒に
一人でやるなら路地は危ないからしらせ号に乗って広い道路に出ないとな。
あと返り血対策に使い捨て前提のカッパとかも必要だな。
行く前に妹に一声かけて……ってもう寝てる。
当然のように飛真君のベッドで寝てるんですけど……寝ぼけて入っちゃったのかな?(希望的観測)
……すぐに帰ってくるつもりだし、この調子じゃ結構な時間寝てそうだから別に何も言わずに出かけてもいいか
外に行くとか言うとまたガミガミ言われそうだし。
水と軽食を一応持って……イクゾー!
気兼ねなく自転車を繰れるのは楽しいですね!
あっという間に道路に着いちゃった。早速殺っちゃいましょう!
見晴らしがいい所なら周りにさえ気を付けていれば各個撃破は余裕です
返り血を浴びないようにカッパを着てるからある程度派手に動いても大丈夫!
~~~~~~~~~♪
お掃除楽しい(潔癖症)
なんか最近家にいても息が詰まるっていうか……家族との距離感って言えばいいんですかね……噛み合ってない感じがして……別に嫌われてるわけではないと思うんですけど……正直、外にいた方が気楽なんですよ……(1X歳、警備職)
軽い愚痴のはずだったのにちょっと深刻な感じになってしまった
実際、悠々自適の自宅警備員ライフを期待してた部分はある。
妹が協力的なのは良いんだけどちょっと近い気がするんですよね。急に怒り出したりするし。
家にずっといるのは良くないですよね。少しは外に出て気分転換しないと(自粛生活で得た教訓)
殺戮ショーを見てても正気度が減るだけだし。一人の時間が欲しいとかそういうことは全く考えてないデス。はい。
そんなこと言ってる間に規定量までもうすぐですね。筋力ゴリラにはなれなくても技巧派オランウータンにはなれる……!
でも、もう周りに獲物がいないな……そろそろ潮時かな。妹に昼になったら起こせって言われてるし今戻れば昼には全然間に合うな。
ブロロロロロロロロロロロロ……
ん?なんか聞こえた……?気のせい?
……あ。車が走ってる……
新しい生存者かも!まだ生きてる人いたんだ!
今日は運がいいな。……とはいっても生存者と会ってどうするんだって話ですよね。
ヘンに接触するとまた学園生活部みたいにズルズルいきそう……
そっとしときますか。車を持ってるなら助けは必要なさそうですしおすし
ブロロロロロロ……!
こっちに来てる。気づかれたか。こっちから見えるってことは向こうからも見えて当然か。
友好的な村人だといいんですけど果たして……
あれは、ミニクーパー?
まっすぐ向かってくるぞ……これってもしかしなくても……
「飛真君!」
てゅわあああ!忘れてたああああ!
完全に油断してた…………やべぇよ、やべぇよ……
車がこんな状況で走ってる時点でフラグビンビンだったじゃん。やっぱたるんでるなぁ………
めぐねえ、飛真君が血みどろじゃなかったら抱きつかんばかりの勢いでしたね。
「無事だったんですね!でもどうしてこんなところに?……とにかく
いやまって。テンション高っ……
帰る場所は我が家なんで、それはむりむりかたつむりですね。
「いや、それはちょっと……まず家に帰らなくちゃ……」
「……あ。そうですよね。ごめんなさい……」
シュンとしてるめぐねえかわいい。
みんなぞろぞろ降りてきたぞ……あ、乗ってるのはめぐねえとりーさん、それとみーくんか。全員じゃないんだ……
「あの。飛真君はこんなところで何をしてるんですか……?」
みーくんが不審な目でこっちを見てくる。おじさん怪しい人じゃないよ?(with血みどろのカッパ+スコップ)
「ちょっとした運動です。」キリッ
「……そうですか」
「他の人たちは?」
「昨日、直樹さんの友人の祠堂さんを救出したんです。やっぱり
ヘーソンナンデスカー
ナチュラルに飛真君がいなかったことを詰ってる。それにしてもすごいな。駅はかれらが非常に多くて厄介なんだけど……
「それなら皆さんはどうしてここに……?」
きっと疲れてるはず。連日車で外に出る理由はないと思うんだが
「飛真君のお迎えに行こうと……でも、外で会えるなんて……ひょっとして私たちが来るのが待ちきれなかったんですか?」
「別にそういうわけでは……」
「ふふふっ。冗談ですよ。……ちょっと待っててくださいね。武器を取ってきますから……」
デスヨネー。手紙にちゃんと『迎えに来ますから』って書いてあったし
ヤバい。このまま家に凸る気だ。住宅地は狭いから車は通るのが難しいからな。どこかで徒歩に切り替えるとなると、この辺の広い道路が候補地になるのか。
そう考えるとここでかれら狩りをしたのは悪手だったなぁ……なまじ家から近いから……
……いや。これはむしろチャンスかもしれない。ここで学校行きを数日延期することができたら学園生活部は妹とエンカウントせずにすむ。強硬派の妹と会うと話がこじれそうだからここでケリをつければ安泰が約束される。
適当に理由をでっちあげればきっと信じてくれるハズ。
まずは家に行こうとするのを止めないと
「動いてたから疲れちゃって……少し休憩してからでもいいですか?」
「そうですね。周りは安全そうですし……ちょっと休憩してから行きますか」
「あ、じゃあ私かれらが来ないか見張ってます」
許された。みーくんが見張りしてくれるので安心ですね。もう用は済んだし返り血対策のカッパは脱いじゃいますか。結構汚れてるから再利用は難しいかな……
「すごい汗ですよ!そのままにしてたらカゼひいちゃいます!えっと……タオルタオル……」
晴れてる中カッパ着て運動してれば汗もかいちゃうか。でもそんな大げさな……
水分補給さえしていれば問題はないはず。
「ちょっと小さいですけど、タオルハンカチなので大丈夫だと思います。どうぞ使ってください!」
「いや、そんな……悪いですよ……」
「私は一応持ってただけで使わないので大丈夫です。だから飛真君が持っててください」
そこまで言われたら受け取るしかないっすね
女子力が高い。きっとポケットティッシュと絆創膏も持ってるんだろうなぁ(偏見)
くれる、というか学校に戻ったら洗濯するから飛真君が持ってても構わないってことですね。
こんな中、学校に行かないなんて言うと思うと胃が痛くなってしまう……
でもまぁ言わなきゃダメだしな。
「わざわざ来てもらってこんなこと言うのは大変心苦しいんですけど、その……実は、僕
空気がっ……重いっ……!
めぐねえスマイルが消えた……スマイルください(懇願)
りーさんも『信じられない』って顔してるし……
「まだ父の安否が不明で。帰ってくる可能性があるからあと少し家で待ってようってことになって……」
「置手紙を置いていけば大丈夫です。行ったことがない人でも学校なら比較的近いですし、目立つのですぐに来れるはずです」
「
やっぱこれじゃ理由として弱いよな……
二人して速攻で反論するからなんか怖い。他に理由……でっちあげればないこともないが……
よし!ここは『妹は病弱作戦』でいくしかないな!(今考えた)
学園生活部の面々は妹と会ったことがないのでこれがホラだと気づかないはず。バレさえしなければ嘘は真実の仮面を付け続けられるッ……
学校に行けない理由としてこれが最も妥当かつ信ぴょう性があると思う。
「それに、昔から妹は体があまり丈夫じゃなくて……だから今も寝込んでて……先日薬を取ってきたんできっと数日もしたら治ると思います。でもそれまでは安静にしてあげたいんです。そのことを連絡しようにも通信手段がありませんからどうしようもなくって……すいません。」
どうだ?それっぽいのでは?
今も妹は寝込んでるのはウソじゃない。ウソをつくときには真実をすこし混ぜたほうが良いってじっちゃんが言ってた。
「そう、だったのね……」
「それなら確かにしょうがないですね……」
お。効果てきめん。ええぞ!ええぞ!
「事情は分かりました。何か困ってることはありませんか?私たちにもお手伝いできることがあるかもしれません」
「大丈夫です。自分ひとりでなんとかなります。」
「そうですか。……でも今日はどうして外に?さっきは運動だって行ってましたけど、事情を聞けば家にいた方が良いような気がします……」
「えっと、それは……」
お前の作戦ガバガバじゃねぇか(呆れ)
不意を突かれて上手い言い訳が思いつかないゾ……
「妹さんと何かあったんですか?」
「……別に何も」
「本当ですか?本当に妹さんとは
なんや。疑り深いな。まぁ、傍から見たら誤解されそうなことは少しあるけど実際何もおきてないしセーフ!
「……たまたま今日は外に出たい気分だっただけです。妹とケンカしたとかそういうのじゃないです」
「目が泳いでますよ?……本当は妹さんにべったりされてちょっと迷惑に思っているんですよね?」
なぜ分かるんだ?女の勘ってやつ?それとも直感が高いと人の心を読めるようになるのか?
「距離感に辟易して外の空気を吸いに来たってことですよね?」
「いや、あの、その……」
「一人で背負わないでください。私たちも妹さんが
「若狭さんの言う通りです。ずっとべったりされてたら飛真君のほうまで参ってしまいますよ」
あれれ~おかしいぞ~
状況がむしろ悪化してる~どうしてだろ~?
このまま袂を分かつ流れだったジャン!このままじゃウソがばれてしまう!
「ここまで移動できればあとは車で学校に行けます。みんなで協力すればきっと大丈夫ですよ。ね?」
ね?って言いながら手を掴むのはよくない。家に行く気満々じゃん。
(手を振りほどく勇気は)ないです。
「そろそろ行きましょうよ。今のところかれらは見当たりませんけどいつ現れるかわかりませ……って何してるんですか」
みーくんが戻ってきた。先生が生徒の手をがっちりホールドしてるのを見たらそりゃ目が点になるよな。
そうだ!理性的なみーくんなら事情を話せばわかってくれるはず……!あの二人ちょっと変だよ……
かくかくしかじか
「……なるほど。それなら私たちはここで別れた方がよさそうですね」
おお!わかってくれた!これで勝つる!
「飛真君一人で妹さんの面倒を見るのは大変です。学校の方が環境もいいですし、一緒に来てもらったほうがいいんじゃないかしら?」
「体調が悪い人を学校に移動させるのは車で移動できるとしてもリスクが高いです。体調が万全になってから来てもらったほうが安全です」
「でも……」
「元々私は今日の外出には賛成じゃなかったんです。みんな疲れているのに先生がどうしてもって言うので……飛真君の安否をこの目で確かめられただけで十分じゃないですか。私たちの力だけで圭を救出できました。上手くかれらを誘導できれば私たちでも対処可能なんです。だから合流を急がなくても平気だと思います」
ええぞ!ええぞ!
思わぬ援軍ですね。これで形勢はひっくり返る!圭だけに。
「……そうですね。確かに病人を保護しながら学校に運ぶのは現実的じゃないです。残念ですが別行動になるしかないですね……」
「…………」
どうやら助かったみたいです。
一時はどうなることかと思いましたよ……
「妹の体調が回復したら絶対に学校に行きますから。じゃあ、また……」
「あ。最後にちょっと」
「……?」
「もし何かあったら迷わず学校に来てください。まだ探索できていませんが、学校には地下に非常避難区域があるらしくて、そこには抗生物質まであるらしいです」
「
「それって………」
「詳しい話はここでは無理ですが、あの学校は明らかにこの事態を想定してました。……分からないこと、考えなくちゃいけないことがまだまだたくさんあります。私たちも飛真君の力が必要なんです。だから……
「………わかり、ました。」
めっちゃ戦力として期待されてんじゃん。ここまであてにされると罪悪感が……
いやでも当然か。
でもごめんなさい。これも称号の為なんです……
■■■
すぐに帰るつもりだったのに学園生活部につかまっちゃったせいで遅くなってしまった……
もうお天道様が真上にきてるよ……早く帰らなきゃ
家に着いたけど、なんか戻るのが怖いな。
妹がまだ寝てれば何食わぬ顔で帰れるのだが……果たして?
「ただいまー」(小声)
音がしないってことはまだ寝てるんだな。セーフ!!
それじゃ起こしにかかりますか。
「おーい。もう昼だぞー起きろー」
あれ?いないぞ。確か飛真君のベッドで寝てたはずじゃ……?
自分のベッドに移ったのかな。
……………どこにも妹の姿がないんだが。
一階も二階もくまなく探したし声もかけた。でも誰もいない。
妹の自転車はあった。
外には……ってあり得る可能性は外しかないよな。
多分自分で目が覚めて、飛真君がいないことに気づいたから外に探しに行ったんだ。
絶対そうだ。
置手紙の一つでも残しておくべきだった……いや、そもそも無断で外に出るべきじゃなかった。
自分のガバで家族を死なせることになってしまう………
どう言い訳しよう。ありのままを伝えるべき?それとも……
いやいやそんなこと言ってる場合じゃない!
とにかく、探さないと!!
────────────────────────
「本当に行くのか?」
「昨日みたいに救出に行くわけではありません。今日は車も使うのですぐ帰ってこれます」
「でもよー、めぐねえも疲れてるんじゃない?ゆきなんて疲れすぎてまだ寝てるぞ………別に明日とかでもいいんじゃないか?」
「……そういうわけにはいきません」
「?………まぁいいや。とにかく、気を付けてなー」
「はい。行ってきます」
本当は昨日にでも行きたかったのだけど………急用が入って行けなかったわ。飛真君がいない中、私たちだけで救出ができるか不安だったけど………何とかなって良かった。
でも、それには運の要素が大きかった。
私たちがかれらの対処の仕方を心得ていた上、駅はかれらの数が多い一方で開けていて誘導さえしっかりできれば不意打ちの危険は少ない。
祠堂さんは疲労困憊といった様子だったけど、私たちの指示をよく理解して行動してくれたおかげでスムーズに撤退できた。
そう、イレギュラーが起きなかった。それだけだった。
かれらを避けることはできても立ち向かう力が私たちにはない。大人は私しかいない。部員の命を守るのは私の責任だ。なのに………
私はこんなことになる前にあのマニュアルを貰っていた。真っ先に気づいてみんなを助けるべきだったのに、できなかった。
皆を指導しなきゃいけない立場なのにみんなに支えられっぱなしだ。学校にある非常避難区域についてだって自分ひとりじゃ方針を決められなかった。
………いけない。またこうやってマイナスに考えちゃう。私は、私にできることをするだけ。
部員が
飛真君はのっぴきならない事情で学校に来れずにいる。その事情というのは……たぶん、いや絶対妹が関係している。
家庭訪問した時に分かったのは飛真君の身が危ないということだ。私たちの写真を破るなんて気が狂ってるわ。不安定な人間は時としてめちゃくちゃな方法でバランスを保とうとする。危ないわ。
なぜ妹がこんなに会ってもいない私たちに対して敵愾心を抱いてるのか分からない。
……いや。推測はできる。きっと自分の
外の人間に対して警戒するのは当然のことで、それについては何も非難するつもりはない。でもこの反応は明らかに過剰、アレルギーじみてるわ。
それに距離が近すぎるのも問題ね。一緒に寝るなんて、ありとあらゆる情状酌量の余地を勘定に入れても看過できるものではないわ!
飛真君は私を待ってる。このままだと第三者が存在しない狭い家で飛真君は押しつぶされてしまう……
「先生!前見て!前!」
「へっ?」
ふと我に返ると乗り捨てられた車が道をふさいでいた。
あわててブレーキを踏む。
キキーッ!
「先生………大丈夫ですか?やっぱり疲れがたまってるんじゃ………」
「平気です。ちょっと反応が遅れてしまっただけです」
「それが命取りになってしまうんです。悠里先p……りーさんも疲れた顔をしてます。今の私たちは万全じゃないです。今からでも引き返しましょうよ」
「……困ってる人を見捨てるわけにはいきません」
「それはそう、ですけど………」
直樹さんの言っていることはたしかにもっともだ。でも日を重ねるごとに不安が増してしまう。飛真君と直接会ったのはもう5日も前だ。状況からして今も家にいるのは確実だけど百聞は一見に如かず、だ。
今日の命すら危うい世界で、5日というのはあまりにも長すぎる。
早く迎えに行ってあげなきゃ……
「め、めぐねえ!あれ!!」
「私はめぐねえじゃなくて……え!?」
若狭さんは私のことを『先生』と呼んでくれていたのになんで急にと訝しむ暇もなく予想だにしていなかった人の姿が見えた。
飛真君だ!!
見間違いじゃない。あのスコップは私たちを助けてくれた時に持っていたものだ。
飛真君はなぜかカッパを着ていた。そのカッパには返り血がべっとりついている。
ちょっとした運動だと言ってたけど本当かな?
そんなカジュアルな理由で外に出れるほど今は安全じゃないと思うのだけど………
すぐにでも家に行きたかったけど飛真君の申し出で少し休むことになった。
直樹さんが見張りを買って出てくれたので当分は安全なはず。
カッパが返り血対策だっていうのは分かったけど、こんな日が出てる中蒸れやすいカッパを着て動くから汗がすごいわ……
このままじゃカゼをひいちゃうと思ってタオルハンカチ渡したのになんか恐縮してなかなか受け取ってくれない。
むぅ……私たちは同じ部活の仲間なのにどうしてそんなに他人行儀なのかしら?
なんかできるだけ貸しを作りたくないと思ってるようにも感じる。
でもすぐに理由は分かった。彼は
「どうしてですか?」
意味が分からない。私たちを拒む理由なんてないはずだ。だって飛真君は部員だから。でも合流するって言ったのにずっと来てくれなかった。家に行ってもいなくてやっとやっと会えたのにどうしてそんなことを言うのだろう?
ありえない言葉にどう反応すればいいのか分からない。いや、真っ先に自分の中から表れた感情に困惑したというべきだろうか。私は、自分の中に芽生えている黒い感情を意識せずにはいられなかった。
怒り?憎しみ?いったいこれはなんなのだろう?
屋上に避難したあの日から感情はどんどん薄れていくばかりだった。感覚は鋭くなっても感情が豊かではこの世界は生きづらい。不器用な私でも少しずつ鈍感になるように順応してきた。
そんな中で心に浮上してきた
それでもまだ冷静だったのは、元々私が血の気が多くない性格だったからだと思う。
飛真君の話では妹さんが病弱でその看病で今は手が離せないとのことだった。
………そんなことあの時は一言もしゃべってなかったのに。
でも、もしそうならしょうがないなと思った。確かに家族が病気がちなら生活の拠点を移すのには勇気がいるだろう。
先ほどの激情も急速に萎んでいった。
あれ?
「……でも今日はどうして外に?さっきは運動だって行ってましたけど、事情を聞けば家にいた方が良いような気がします……」
なんかヘンだ。普通よっぽどのことがない限り外には出ない。病人がいるなら猶更だ。
もしかして……?
ちょっと問い詰めてみる。するとすぐに
やっぱり。妹だ。妹が飛真君を苦しめていたんだわ!!
さっきの違和感はこれだったんだ。何かを隠しているような気がしたのだ。
今まで事情を隠していたのは彼なりの優しさだったのだろうけど、実際参ってるのだろう。でなければ特に用もなく外に出たりなんかしないわ!
今度は先生が助けてあげますからね?ふふふ………
「そろそろ行きましょうよ。今のところかれらは見当たりませんけどいつ現れるかわかりませ……って何してるんですか」
直樹さんが戻ってきた。
気が付いたら私は飛真君の手を握っていた。いけない、つい熱が入っちゃったわ。
飛真君は直樹さんにも事情を話し始めた。心なしかさっきよりも必死に見える。
「……なるほど。それなら私たちはここで別れた方がよさそうですね」
え?
そんなのダメだわ。
………でも直樹さんの言っていることは理にかなっていた。
飛真君を
車では路地に入れない。家から路地までを安全に護送できる確信が全くない。やはり妹さんの体調の回復を待つしかない。
彼の為に何もしてあげられないのが歯がゆい。私はまた、役立たずだ。
「詳しい話はここでは無理ですが、あの学校は明らかにこの事態を想定してました。……分からないこと、考えなくちゃいけないことがまだまだたくさんあります。私たちも飛真君の力が必要なんです。だから……
結局私は待つことしかできないのかしら……
学園生活部の顧問として今学校に残っている部員たちのことも考えなくちゃいけない。そのことを考慮すれば飛真君を信じて待つしかない。
でも、
彼に別れの挨拶をするとき、私はちゃんと笑えていただろうか……?
オンラインは楽だと思っていた時期が、私にもありました……
わずかな時間を見つけて書いた(別の作品に浮気したとは言ってない)のでパッチワーク感が否めないです。
次回の予定は……ナオキです……
余裕が出るとすぐ油断する走者の鑑