がっこうぐらし!称号「自宅警備員」獲得ルート(完結) 作:島国住み
部室までやってきました。通常プレイでは親の部屋より出入りする部屋です。
「みんな!大変!起きて!」
「う~ん……若狭さん?いったいどうしたんですか?」
「飛真君が!来たの!」
「「「「えっ!?」」」」
「えっと……こんな夜遅くにすみません。でもこれには訳があって……」
「飛真君?……誰?」
「ああ、圭はまだ会ったことなかったね。彼はね……」
「暗くてわかんない……明かり……明かり……」
「あ、明かりはちょっと待ってください!どうしましょう。私、パジャマだわ……」
「わんっ!わんっ!」
カオスだ……
まさかみんなが寝てる時刻にやってくるとは思わないよな。しかも圭ちゃんに至っては完全に面識がないし。
これは場が落ち着くのを待って自己紹介から始めたほうがいいか……?
~~皆さんが静かになるまで5分かかりました~~
「さっきは取り乱してしまってごめんなさい。突然でビックリしちゃって……でも、やっと来てくれたんですね。これで
「……今日は、助けてほしくて、来たんです」
「まさか……妹さんの容体が悪化したんですか!?確かにここには一般的な市販薬のストックがあります。保健室に行けばもっと……」
「違うんです。妹が、感染、したんです……」
水を打ったように静かになってしまった……
「……薬、ですね。分かりました。行きましょう!場所はもう頭の中に入ってます」
さすがめぐねえ!通常なら戸惑う判断を的確にさばいてみせるッ!そこにシビれる!憧れるゥ!
マジで決定が早くて助かる。惚れそう。
パジャマ姿で言ってるから勇ましさは半減ですけど(かわいい)。
「あたしも行くぜ」
「わ、私もっ!」
「あの」
「人数は少ないほうがいいです。なので私と恵飛須沢さん、そして飛真君の三人で行きましょう。そうすれば薬を入手次第、すぐ妹さんの元へ戻れるはずです」
「たしかに、そうですね……」
「あの!」
ん?みーくんがなんだかもの言いたげだな。もう出発する流れだったから正直茶々を入れては欲しくないのだが。
「その……飛真君は
「今までそんな素振りなんて全くなかったのに、今日になって急に『感染してるかも』って……知ったのは、夜だ。自暴自棄になりかけた妹をなだめて、それからすぐここに向かった」
「噛まれた、ってことですか?でも妹さんは寝込んでて外に出てなかったんですよね……?」
「実は、外でみんなとばったり会った日に妹は僕を探しに一回外に出てるんだ。でもその時は感染した様子はなかった。確認した限りではかすり傷もなかった。でも実際に感染した。原因があるとすればあの時しかない……」
「……私はゾンビ化までのタイムリミットは分かりません。それでも、もしあの日から感染してたとしたら、その、言いにくいんですけど……」
「まだ咲良は意識がある!見た目
「みーくん?今はお話をしてる場合じゃないよ。そういうのはあとでにしようよ!」
そうだぞ(便乗)。やっぱゆきちゃんは先輩なんですね。組織にストッパーは必要ですけど今はその時じゃないはずです。
「……最後に一つだけ。その傷は
「傷……?あっ」
めぐねえが何かを察してしまったようです。慌ただしさのおかげで指摘されてなかったけど、この傷のせいで『妹はまだ過渡期にいるから助かる余地がある』っていう主張が弱くなっちゃうんだよなぁ……
「こ、これは……自分で、やったんだ」
嘘じゃないデス。実行犯は私ですから。計画犯はいません(大嘘)。
自傷癖があるって思われちゃいますけど、まさかホントの事言うわけにはいかないですからねぇ……もっとも、嘘だってすぐばれるでしょうけど。
「……妹さんのために、ですよね?」
何で分かんだよォ……
もし噛まれてたら飛真君はここにはたどり着けないし、となるとその結論にたどり着くのは自然ではありますけどね。みーくんが冷静なせいで「知力」にデバフがかかってない。本調子のみーくんを詭弁でどうこうするのは無理ですね。
「それ、ほんとなの……?」
「どうしてもって言われたから仕方なく……向こうから
さすがにこれがここに辿り着くための条件だったとは言えません。
「血をせがむなんて……まともじゃないわ……」
りーさんが顔真っ青になってしまった。風向きが悪くなってきたぞ……
『お前の妹もうゾンビなんじゃね?』って空気が醸成されつつある。
……みーくんが何を懸念してるか分かった。飛真君の正気を疑ってるんだ。
そもそも家族が感染してショックを受けてるのに、妹がドン引きムーブをかましたせいで飛真君の正気度は風前の灯です。
ぶっちゃけ過冷却の水というか、「こらえる」で1耐えたときというか、ほぼ正気じゃないです。薬という藁に一筋の光を見出すことでギリギリ正気を保ってる状態です。
ふとしたきっかけでマジで折れます。
空気感染を知らないってことは感染進度の早い交差感染で感染を考えてることになる。だとしたら、感染時期からみて今頃はもうゾンビになってておかしくないんですよ。そもそも妹がまだ人間かどうかが疑わしいのに、飛真君が発狂寸前ときた。
本当は、妹はもうゾンビになっちゃってて、それを見て発狂した飛真君が現状を受け入れられずこうやって
蓋然性も高いです。みーくんはここら辺をハッキリさせたかったんでしょう。
酔ったやつの『酔ってない』と一緒で狂人の『狂ってない』も信ぴょう性ゼロだからなぁ……
自分の正気ってどうやって証明すりゃいいんだよ……
「それでも、私たちがやるべきことは一つです!飛真君を信じましょう!……助ける方法はそれしか、ないんですから!」
「そう、ですね……ごめんなさい。私、どうしても気になっちゃって……」
めぐねえが力技でまとめてくれた。惚れそう(二回目)。
説得に時間がかかると間に合うか分からなかったから本当にありがたい。
「よいしょ…っと。準備できました。あと、飛真君。これを」
これは……ケミカルライトですね。そういや急いでて持ってくるの忘れてた。ありがたい
めぐねえは金属バットで武装してるみたいですね。それを振り回してる様子が想像できない。各種誘導用の道具をポーチにしまってるから様にはなってますね。
「あたしはいつでも大丈夫だぜ」
くるみちゃんはいつものようにスコップですね。さすがに似合ってる。こうやって並んでるとやっぱ金属バットが浮いてるなぁ……
「それでは、いってきます」
「いってらっしゃーい!」
イクゾー!!
遂に出発です。
地下まで直行……といきたいところですが、安全なうちに水筒に水を補充したいと思います。
ここに来た裏目的がこれですからね。ここは抜かりなく済ませなくては
「どうした?のど渇いたのか?」
「……そんなところ。もう大丈夫。行こう」
無事採取できました。パッチェ冷えてます。
二階まではもうセーフゾーンなので一瞬です。問題はここからです
「こっちから降りましょう。私が行き先を指示するので飛真君、前衛をお願いできますか?」
「もちろんです」
「なら、あたしは後衛だな」
一階に戻ってきました。はやる気持ちを抑えて慎重に行きます。
廊下ならケミカルライトで戦闘は回避できますね。
「えっと、ここに入ってその後機械室に……む。鍵がかかってる。ちょっと待ててくださいね……」ゴソゴソ
鍵掛かってるのか……こりゃ中はゾンピパーティですかね。一階で籠城はいくら購買部倉庫があっても感染者が簡単に混ざるから厳しそうだな……
「開きました。行きましょう」
ごくり
「どうだ?」
「……結構な数がいる。あの、佐倉先生」
「
「あたしにはダメって言ってるのに……」
「……機械室、ですよね?学食及び購買部倉庫にいるやつらは僕がどうにかします。だから恵比須沢さんとめ、めぐねえは先に行って薬をお願いします」
「あたしもくるみでいいぜ。……確かにそれが早そうだが、どうする?」
「そうね……飛真君は大丈夫なの?」
「伊達に今まで生きてないです。これくらい、どうってことないです」
けっこう無理をします。三人ならともかく、一人でこの量はラッシュを髣髴とさせますね……
妹のためです。一肌も二肌も脱ぎましょう!(足ガクガク)
「頼みます。……恵飛須沢さん」
「おうよ。……頼んだぜ」
……行きましたね。
さぁ、こっちにはこっちの仕事があります。そのための分担です。
アアアアアアアアアアッッ……!!
とっさの判断でここに逃げた生徒・教師の成れ果てです。
今までは明かりを絞ってましたが、今はとにかく視界が欲しい。全開でいきます。
自分がなすべきことは全滅ではなく、時間稼ぎです。二人が後ろを気にせず薬の捜索に専念してもらうためにここにいます。
部屋の広さは教室より広いですが倉庫である関係上、身動きは取りづらいです。
止まっていたらすぐに食い散らかされます。引き付けて、動いて、殺します。
束になられるとマズイ。早速行動します!
グサッ!
まずは一体。勢いさえあれば現状でも十分
身動きの取りづらさは向こうも同じです。側面から襲われることはないので気を付けるべきは後ろです。
突出!突出!長方形の部屋なので縦深してできるだけこっちに引き寄せます。
グサッ!
正面での一対一は絶対に負けません。リーチ的にこっちに分があるから先手を打てます。飛真君の「筋力」は人並以上くらいにはあるので一発で仕留められます(くるみちゃんのほうが筋力値が高いのは内緒)
グサッ!
三体目。……ここで規定量に達しました。「スコップマスター」が取れます。
なんでこんな無謀とも見える突撃を敢行したのかと言うとこのためなんですよ。あとちょっとだったんで。
取得すれば通常の攻撃のダメージが増え、消費スタミナが減少します。
これがくるみちゃんの強さの秘訣です。デフォで持ってるっておかしいだろ……
さらに「薙ぎ払い」も使えるようになります。上手く使えば二体同時に首を刎ねることができます。高威力かつ範囲攻撃!なので囲まれた時に重宝します。これがあるとないとでは事故率に大きな差ができます。
コツコツ使わずに貯めてたポイントを全部使って……はい、取得!
ちとスタミナがきつかったけどこれで余裕ができました。
後ろには光と音につられてやってきたかれらが列をなしてるはずです。
棚を挟んで向こう側のスペースに移動して一体一体相手をしていきます。
十分縦深したので間合いを取るための余裕もあります。背中が壁にくっつくころには前には敵がいなくなってるはずです。
ザシュ!
お。音が違う。明らかに威力上がってるな
ザシュ!ザシュ!ザシュ!!
まだまだぁ!甘い当たりでも捌けちゃうのすごいな。これまでは安全を取るなら足狙い→首っていう二段階が必要だったけど一発でも安全に仕留められるな
ザシュ!ザシュ!ザシュ!グサッ!
はぁ…はぁ……
やべぇ、疲れてきた。いくらスタミナ消費が減るとはいえこれだけスコップを振るってれば疲れもたまるか。狙いも散漫になってきたし、何より力が入らない。
まずいな……数を減らせば自ずと立ち回りやすくなると思っていたが、数が予想以上で消耗が激しい。このままじゃジリ貧は必至だ……
そんなことお構いなしにかれらはこっちにやってくるからなぁ……間合いが足りない。後ろに一旦下がって……
アアアアッ!
後ろっ!?ヤベ、ノーマークだった!引き付けが足りなかったか!
ああ!南無三!
ドスッ!!
「大丈夫ですか!?」
め、めぐねえだ……金属バットで殺ったのか……助かった……
戻ってきたんですね。タイミングばっちりです
「あれ全部殺ったのか……すごいな」
「さすがに疲れました……薬は!?」
「あります。でもその前に、返り血が凄いです。拭かないと……」ゴソゴソ
オイオイ。あるんならさっさとよこせよ!(ゴブリン並感)
「そんなことより……」
「そんなことじゃないです!あなたが感染したらどうするんですか!もっと自分の事を気にかけてください!」
「めぐねえの言う通りだぜ。ここで一呼吸おいておかないと帰りが危ないぜ?……あたしが残党狩りをするからさ」
たしかにスタミナがもうないから自然回復を待つのが賢明だな……
血から感染したらこっちの身も危ないし、2人の言い分が正しいですね
幸いにもさっきの掃討でこの部屋はだいぶ安全になりました。
少しくらいゆっくりしてもバレへんやろ……
「ごめんなさい。周りが、見えてなかったです」
「いいのよ。そのための部活なんだから。助け合わないとね。……あぁ、顔にも血が……服もべったり……」フキフキ
「服は脱げば大丈夫です。羽織ってきたので」
まぁ下はパジャマなんですけどね。ある程度汚れることは覚悟してました。
……『自分でできます』って言うタイミング逃しちゃったな。
めぐねえに体を拭かれるのすっごい恥ずかしいんですけど。ウエットティッシュを持ってるなんて本当に用意が良いですね。
「はい。大分綺麗になりました。汚れた上着はここに置いていきましょう」
「ありがとうございます」
「どういたしまして。それで、これが薬ね……試作品らしいから効果は、保証できないけど……鎮静薬もありましたのでそれも渡しておきます。」
治療薬? を手に入れた!
ん?確かに治療薬って書いてありますけど
まぁ試作品やし。そんなもんか。
こいつには何度もお世話になってますからね。試作品でも効果はバッチリなのは分かってます。
「……!これが、薬……ありがとうございます!これで、これで妹は助かる……」
「………………。」
急にめぐねえが辺りを気にしだしたんだが……
くるみちゃんは向こうで
「飛真君……」ギュッ
「へっ?」
〇※△★×!?!?(判読不能)
えっ……?佐倉、さん……?な、なにをしていらっしゃるのですの?
今飛真君は本家本元めぐねえホールドをされています。何を言ってるか分からねーとおもうが、(以下略
うらやま……じゃない、妹の命がかかってるんだ。こんなけしからん行為はいますぐやめるんだ!
「……少しだけお話をさせてください。今、あなたは相当無理をしています。分かってます。妹さんの、大事な家族のためですよね?その気持ちは、行動から痛いほどわかります。でも、傍から見ていると……とても、とても危なっかしいです。今にも泣きそうな顔なのに目だけは燃えんばかりに煌めいていて……」
「せ、先生……?」
「めぐねえでいいんですよ?……ひとりでしょい込まないでください。先生はあなたが心配です。このままだとあなたまで壊れてしまいます。これからも、何かあったら遠慮なく私を頼ってください。私を含め学園生活一同はあなたの帰りを待っています。あなたを必要としている人、あなたが助けを求めることができる人がここにはいます。だから、そんなに思いつめないでください。私は、いつだって飛真君、あなたの味方ですから……」
なるほど!わかったぞ!
飛真君の正気度がヤバヤバだってことを察してケアをしてくれたのか。
何体もゾンビの死体(重複表現)を築きましたからね。慣れてるとは言え正気度がそこで0を下回っちゃったんでしょう。そこでつかさずめぐねえがフォローを入れてくれたんですね。惚れそう(三回目)
めぐねえホールドは異性の場合、相当好感度が高くないと発動しないって記憶してましたけどいつ好感度稼いでたんでしょうかね?
それとも正気度がヤバければ誰彼構わず発動するんでしょうか?要検証ですね。
二人ともパジャマだから誤解を生みそうな絵面ではありますが……まぁ医療行為だしセーフ!セ、セーフだよな…?
何はともあれ発狂の危機は回避できました。
やわらか……オッホン!(厳粛な雰囲気)、ありがたいですね。
「あ、あの……ありがとう、ございます…」
「少しは落ち着きましたか?……ふふっ、顔に赤みが戻ってきましたね」
そうですね。飛真君は元気になりましたので爆速で帰れます!
「そろそろ行ったほうがいいんじゃ……って、なんか今抱き合ってなかったか?」
「そんなことないですよ、ね?飛馬君?」
「え、あ、ハイ」
「ま、何でもいいけどよ」
「もう大丈夫です。行けます。本当に今日はありがとうございます」
「オイオイ。お礼を言われることは何もしてないぜ?」
「そうです。私たちは当然のことをしたまでです」
入部します(突然の裏切り)。やっぱいい人達やなぁ……
入部するする詐欺をした人にここまで優しくしてくれるなんて……涙が出、でますよ……
今涙ぐんでいる暇はないです。薬を持ち帰りましょう!
自転車はちゃんと乗りやすい所に無断駐輪してあります。
ここは一階ですので自転車まではすぐです。じゃまする障害たちは威力の上がったスコップの餌食になってもらいます。
外が少し明るいですね。日の出が近いのかもしれないです。
ある程度視界があるのでスピード重視で音を立てていきます。とにかく最速を目指します
ここだけRTAですね……
~3.34倍速~
はい、到着!帰宅部RTAの時より早いっすね。必要はタイム短縮の母ですね。
なんか家がすごく久しぶりに感じるわ
感慨にふけってる場合じゃないですね。急ぎましょう。
「あったぞ!」
飛馬君の部屋には……いないか。てっきりそこにいるものだと思ってたけど。
妹の部屋かな?
「ホントにあったんだね……よかった……」
どうやらまだ人間みたいです。見た目は……すごく体調が悪そうです。目も充血しててもはや秒読みって感じです。
「大丈夫か?」
「うん、なんとか……お兄ちゃんの匂いが刺激的だったからこっちに移ったの。油断してると意識が飛んで……戻れなくなりそうだったから。今も衝動を押さえつけるのに、結構、精いっぱい……」
暗に臭いって言われてるぞ飛馬君。まぁヒトの匂いが自分の中のゾンビの部分を刺激して危ないってことでしょうけど。
早速薬を使いましょう。薬と言っても注射なので肉薄しないといけないのですが……
「これだ。痛いかもしれないが我慢してくれ」
「うん。お願い」
資格持ってないから注射をするのは違法行為なんですけどね。そんなこと言ってらんないので躊躇せず打ちます。
おりゃ!
「……打ったぞ。これで、大丈夫なはずだ。のど渇いただろ。これ飲みな」
念には念をです。学校で採取した水も感染に対して有効なので万全を期すために飲んでもらいます。
「え、うん。んく、んく…………もういいや。確かにのどは渇いてるけど、何か口に入れたらそれがトリガーになっちゃいそうで怖い」
ありゃ、あんまり飲んでくれませんでしたね。でも妹の懸念も理解できるし、注射はもう済んだので別に無理強いはしません。飛馬君の分も残してもらわないといけませんしね。
「これで治るんだよね。お兄ちゃんありが……あれ?」スンスン
「な、なんだ?」
匂いを嗅がないで!確かに注射は打ったけども!すぐに治るわけじゃないから!この行為こそトリガーになるんじゃないか……?
「お兄ちゃんの体から……メスの匂いがする。どうしてこんなに露骨にするの?おかしいよね?」
「えっ!?ど、どうしてだろ…?」
予想してなかったからしどろもどろになってしまった……
てか何で分かるの?警察犬?しかもメス、って……そんな言い方はないでしょ
「なんか嫌なにおいがすると思ったら……お兄ちゃんはとっても美味しそうなにおいがするからね。すぐわかるよ。で、
ヒェッ……
あれですね。きっともう何割かはゾンビになってて、鼻が利くようになったんでしょうね。
『美味しそうなにおい』なんて言っちゃってますし……なんで飛馬君だけ美味そうなのかは分からないですけど。めぐねえも人間じゃん。ゾンビにも好みがあるんでしょうかね?
もっとも、詰問されるようなことはしてないデス。
あ、あれは医療行為だし……そもそも向こうからしてきたし……実際あれなかったら発狂してたかもしれないし……(震え声)
「き、気のせいだろ……それよりさ!お互いずっと寝てなくて疲れてるだろ?僕もヘトヘトなんだ。後で話はいくらでもできるからさ、今は休むことを優先すべきだと思うんだ……」
「あっ……う、うん!そうだね!お兄ちゃん疲れてるよね。別に責めてるわけじゃないの。ちょっと気になっちゃって……本当は涙が出ちゃいそうなくらい嬉しいけど、上手く表現できなくて……涙も、出てこないし……」
「涙?」
「そう。注射も特に痛くなかったし……もう私、ゾンビに片足突っ込んでたんだと思う。におい、なんて言われても困っちゃうよね……ごめんなさい。それでも意識を保っていられたのは、お兄ちゃんがきっと来てくれるって信じてたから。……私、もう寝るね。安心したらどっと眠気がきちゃった。正直まだ助かったって実感がないんだ。だから、感謝、というかなんていうか……お礼?……と、とにかく!そういうのはお兄ちゃん言う通り、お互い休んでからで……」
「感謝されることは別に何も……とにかく間に合って良かったよ。僕も寝るよ。おやすみ」
「お兄ちゃん目のクマがひどいし、顔色もすごい悪いもんね……引き留めてごめんね。おやすみなさい……」
顔色が悪いのは図星つかれたからじゃないですかね……
穏便に済んだ。思ったよりも妹に理性があって良かった。
鎮静剤を使うまでもなかったですね。
感染が進行する感覚を味わいながらいつ戻ってくるか分からない人を待って一人で意識を保つのは相当きつかったと思います。スリップダメージで正気度が減り続けるようなもんですからね。妹が耐えてくれなかったら注射も打てなかったです。感謝しないといけないのはこっちの方ですね。
飛馬君のほうも限界が来てます。寝てないし動き回ったし心理的なプレッシャーもありましたからね。今までもったのはひとえに家族の絆の賜物でしょうね。……称号への執念とも言えますケド。まぁそれはこっちの話なので飛馬君には関係ないですね。
おっと。忘れないうちに水筒に入れた水を飲みましょう。……これで飛馬君の感染リスクはなくなりました。さすがに噛まれたらちょっとわかんないですけどね。
寝ます。寝れば、すべて、すべてが元通りです……!
クリアまではゲーム時間であと丸一日と数時間といった所です。
峠はすべて乗り切った。ゴールは、すぐそこです!!
キリのいい所が上手く見つかりませんでした。とりあえず今回はここまでです。
次回は飛馬君以外の視点を入れたいと思ってます。
最終回の波動を感じますね。何とは言えませんが、『次回あたり』でしょうかねぇ……