がっこうぐらし!称号「自宅警備員」獲得ルート(完結)   作:島国住み

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ヤンデレなんていなかったんや……


It is akin to love

「う~~ん…………?」

 

あれ、ここは……?私は、私は……

 

一瞬ここがどこなのか分からなかった。頭がどうにか今と過去との接続を取り戻そうと躍起になっている中、私はただ茫然自失としているしかなかった。

 

そうだ、私はお兄ちゃんに()()()を打ってもらってそのまま寝ちゃったんだ……

 

やっと私というものを取り戻した。とはいえ、これは眠りにつく前の状況の話だ。あの時は真っ暗だったのに今は明るい。一体私はどれくらい寝ていたのかな……?

とりあえず起きよう

 

「えっ!?な、なにこれっ!?」

 

う、動けない……腕は後ろで縛られてて、足はなわとびがめちゃくちゃに絡まってる。

なんで私こんな風になっちゃってるの!?どんなにもがいても外せそうにない。そもそも妙に消耗していて体に力が入らない。

 

相変わらず動けないままだったけど、()()()()縛られたのかは周りの様子から察することができた。

ドアがぶち破られている。そのせいで木片がそこらじゅうに散らばってる。そしてその奥にはお兄ちゃんの姿。なぜかお兄ちゃんも倒れてる。

木片が私の部屋に向かって散らばってるってことは私の部屋に侵入した何物かがこれをしでかしたということになる。どう考えても私だ。反抗期ってレベルじゃない。本物の暴力がそこにはあったんだろうな……

 

でも、治療は成功したようだ。あの、自分とは相いれない、なのに狂おしいまでに強い人間の肉(お兄ちゃん)への渇望がきれいさっぱりなくなってる。濃霧の中にいるみたいな脳内も随分とクリアになった。

デジタル時計を確認したら私が治療薬を打たれてから丸一日以上経っていた。それだけの空白期間があれば()()起こっていたとしてもおかしくない。

 

記憶がないから何とも言えないけど、何かの拍子に半覚醒状態に私がなっちゃったんだろうな。向こうの部屋でお兄ちゃんを襲おうとした後、ここに逃げ込んだお兄ちゃんを追ってドアを破ってここに来た……

 

ま、まぁ……とにかく治ったんだ。その間に何があったかは後で聞くとして、今はお兄ちゃんを起こさないと。

 

木片を避けながら這いつくばって移動する。まるでイモムシになった気分。全然進まないし、節々が痛くなってくる。何も、こんなに縛らなくたっていいじゃない!

お兄ちゃんを責めるのは筋違いだとは分かっているけど、どうしても不満がふつふつと湧き上がってくる。

 

やっとお兄ちゃんの近くにこれた。なんか顔が白い。大丈夫なのかな……?

 

「お兄ちゃん!お兄ちゃん!!」

 

「た、食べないでくださいっ……!!…………ってあれ?生きてる?」

 

「うん」

 

なんとも間抜けなやり取りだ。でも、顔色の割には元気で安心した。

私は治ったことが分かったとたんお兄ちゃんは泣きだしてしまった。

 

「あっちょっ……泣かないで!泣く前に、私を助けて!なんで私縛られてるの?これじゃ身動きがっ……取れないよ!」

 

「あ、ああ……それはな……色々あって……」

 

何か含みのある表現だ。これは追求しないといけないよねぇ……

 

()()……?」

 

「い、いや、違うぞ!?暴れたもんだから仕方なく……な、何もしてないからな……?」

 

……お兄ちゃんは自分でどんどん疑念の根を深くしてしまってる。別に私は何も疑ってないのに。もし()()あれば他ならぬ私自身が気づくのだから。

毅然と否定すればそれで済む話だと思うのだけど、やっぱり私を縛ったことに罪悪感を抱いてるのかな?

 

これ以上揚げ足を取ると拗ねられてしまいそうだから、ほどほどにして拘束を解いてもらった。

 

「ふー、自由!……私どれくらいの間意識失ってたの?」

 

私は半日ほど気を失っていたらしい。ということは丸一日の空白の間に暴れていた期間も当然存在するわけだ。でも、どうしてもその時のことが思い出せない。そうとう色々なことがあったはずなんだけど……

 

グゥー

 

先にお腹が音を上げちゃった。

 

お互い腹ペコなんだ。一度それを意識したら急激に何かを口にしたくなった。ここで頭に持ち上がってくるのが健全な食べ物ばかりで私はちょっと感動した。

 

カップラーメンを食べようということになったけど、私はそれすら待てずに

 

「お腹ペコペコだからさ、もう食べちゃってていい?」

 

と言ってしまった。

お兄ちゃんはいいよって言ってくれたけど、なんだか度外れたいやしんぼみたいに思えてきちゃって思いなおした。

それに、私は今服はヨレヨレだし身だしなみを整える必要がある。

 

食べようと思って持ってきた物は一旦置いて、着替える。ついでに体も拭いた。これだけで随分とさっぱりした気分になる。

 

そんなことをしてたらご飯の時間がやってきた。

2人でご飯を食べるのは久しぶりの気がした。昔はこれが普通だったのにね。

 

「いただきまーす!」

 

食べ物の匂いに触発されて2人とも黙々と食べ物を胃に入れる。

味覚もちゃんと戻ってる。

 

「あ~お腹いっぱい!ごちそうさま」

 

食べることに集中してたからあっという間に全部食べてしまった。食べた後に、これじゃ夕飯までお腹が減らないなぁと思ったけど後の祭りだ。

 

お腹が膨れたから他のことを考える余裕ができた。お兄ちゃんも随分と血色がよくなったように感じる。

やっぱり空白期間のことが知りたい。自分が何をしたのかあずかり知らない期間があるっていうのは予想以上に恐ろしいことだ。見たところ相当大暴れしたっぽいけど、私はこれっぽっちも覚えてないなんて……

 

聞いてみたら案の定大暴れしたようだ。でも知性は少し残っていたようでお兄ちゃんの名前を呼ぶくらいのことはできたらしい。たしかにこれは厄介だ。油断させるつもりでわざとしたわけではないだろうから簡単に気を許してしまいそう。

 

「結構私、浸食されてたんだね……」

 

「怖かったのはそこからだよ。『おにいちゃん大好き……』なんて急に言うもんだからさ、ポカンとしてると万力みたいな力で押し倒してくるs「まままままま待って!」

 

「あ、あの……私、そんなこと言ってたの?その、大好きって……」

 

「うん。あと『私のおにいちゃん』とも言ってたっk「分かった!分かったから!この話はおしまい!」

 

顔から火が出てしまいそう。こんなの心の中身を覗かれたようなものだ。ゾンビは本能に付き従って行動する理性なき生命体だから、そんな状態でしゃべれるってことは人間の頃に理性で覆い隠していた部分がすっかり現れちゃうってことじゃない!

どうしよう、バレちゃった。いやまぁ別に嘘じゃないからそれはそれでいいんだけど、面と向かってそんなこと、言ったことなかったしタイミングが最悪だしゾンビの時にこんなことを口走ったってことはつまりどういうことなのか(私の頭の中はピンク色ということ)をお兄ちゃんだって理解したはずだし自分だけなんてフェアじゃないしそれにそれにそれに……

 

「そ、そんなことよりさ、この先のことだよ!どうしよう。確かに私は生き返ったけどさ、私たちを取り巻く状況は相変わらずだし……」

 

多少強引でも話題を変える。私は今混乱しきっている。恥ずかしさの炎で焼け死んでしまいそうだ。下手にしゃべると絶対ぼろが出る。ちょっとでもいいから、クールダウンする時間が必要だ。

 

「……学校に行くしかないだろうな。あの人たちには随分と助けてもらったし。あと行ってみると予想以上に自給のための設備が揃ってた。みんなと協力して生活すればきっと何とかなるよ」

 

なんだか現実を突きつけられた気がしてぽわぽわしていた頭が急にシャキッとした。私は、彼女たちに助けられたのだ。きっと、というか絶対お兄ちゃんが頼み込んだからに決まってるけど、それでも私が助けられたのは事実だ。このことには感謝しなくちゃいけないし、学校に行くのが最適解だろうと思う。

 

「学校……でも、そうだね。私たちだけで生活するのも限界があるし、なにかアクシデントが起こったときに対処が難しくなっちゃうし。本当は……」

 

向こうには行きたくない。

お兄ちゃんが学校から戻ってきたときにメスの匂いがした。そのことは妙にちゃんと覚えてる。ゾンビ化が進行して鼻が利いている状態だったから感知できたんだと思うけど……にしてもあんなにしっかり匂うのはちょっとおかしい。そもそも、あの時は基準がゾンビだから人間の匂いはどんな人由来のものであろうと全部いい匂いになるはずだ。でも……それは、馥郁たる香りとはとてもじゃないけど言えない匂いだった。むしろなんだか嫌な臭いだった。なんて言えばいいんだろう、フェロモン?みたいな……

いかに学校がいい所であろうとも、どうしても不安が拭えない。お兄ちゃんはみんなのことを『いい人たち』と評してたけど、男の前で猫被ってただけってこともあり得るし……

 

「……ううん。そんなこと言ってちゃダメよね。できるだけ早く支度して行かないとね」

 

少し前の私だったらどうにかしてお兄ちゃんを引き留めようとしていただろう。だけど、今ならきちんと()()()()()()()()()()()()を考えることができる。

 

いつからなのかはわからない。そのことに気づいた時には既に感染していたから。それが感染したことによって作られた偽物の(食べちゃいたいくらい好きという)感情だったのか、それとも元々持っていたものだったのか、私は判別できなかった。でも、今なら分かる。私は治って感染の影響はなくなった。

もうお兄ちゃんを見ても食欲は湧かないのに、それでも見てしまうのはどうして?

これまでも十分近くで生活してきたのに、それでもまだそばにいたいのはどうして?

答えはもう私の中にある。

 

私は、お兄ちゃんのことが、好きなんだ。

 

「……あ!お兄ちゃん、見て!虹が出てるよ!」

 

「ほんとだ!」

 

「………………」

 

今思えば、私はお兄ちゃんにたくさんの迷惑をかけてきた。世界がゾンビでいっぱいになった。そのことを現実として受け入れることすら私には困難を極めることだった。ましてや生きる術を見つけていかないといけない。お兄ちゃんは、日常が壊れたショックに立ち直れずにいた私とは対照的だった。まるで()()()()()()()()()かのように立ち回って私を助けてくれた。

とにかく不安だった。自信がなかった。なんで生きてるのか分からなかった。

私以外にはお兄ちゃんしかいなくて。私一人じゃ生きていくことは不可能だった。あの夜、それを知った。兄妹だから。家族だから。私がお兄ちゃんなしじゃ生きられないように、お兄ちゃんも私なしじゃ生きられないようになってほしかったから。怖がりで寂しがり屋の私はお兄ちゃんを閉じ込めることを選んだ。

……単に自分の心に芽生えたものを信用できなくて、過剰に反応しただけとも言える。

 

「よく見たらダブルレインボーだぞ!すげぇ……」

 

お兄ちゃんは私の事なんかお構いなしに虹に見入ってる。もしかしたら、ゾンビだった私が口走ったことをうわ言程度にしか思ってないのかもしれない。こんなに能天気なのだからその可能性が高い。

それなら分かってもらうしかないよね?もう昔の私じゃないってことを鈍いお兄ちゃんにも理解できるようにしないとダメだよね?

 

「お兄ちゃん」

 

私はお兄ちゃんのことが好き。自信を持って言えることはそれだけで、それで十分だ。この先何があるかなんて誰にも分からない。でも私のこの気持ちが消えることはない。自分を見失うこともなくなるはずだ。だって、これ以上に確かなことなんてないんだから。

 

でも黙ったままだと伝わらないから、だから……

 

チュッ

 

「………………へ!?」

 

「その……こういうことだから。これからもよろしくね、お兄ちゃん♪」

 

これで分かってくれたかな?えへへ。

 

お兄ちゃんは石のように固まっていたけど、やがて私にしなだれかかってきた。

 

「えっちょっ……」

 

一を聞いて十を知るとはまさにこのことだ。普段のお兄ちゃんでは想像できない理解力を発揮している。でも飛びすぎだ。一の後には二があって、そのあとには……と段階を踏むべきだと思う。きゅ、急すぎてまだ、その、何の準備も……

 

「そ、そういうのはまだ……あれ?」

 

もしかして、気を失ってる?

 

……気を失ってた()()だった。ずっしりとした重みを感じながらベッドに移す。なんで突然意識が飛んだのだろう?それにしても満ち足りた表情をしてる。まるで()()()()()()()()()()()()()()()()すがすがしさに溢れている。

このまま起きないままなんじゃないかと思ったけど、数分もしたらひとりでに目を覚ましてた。

 

「……ここは?」

 

「ここはお兄ちゃんの部屋だよ。さっき気を失ってたけど、大丈夫?」

 

「僕の部屋か。そうだ。ゾンビが現れて、学校から逃げて、それから……」

 

「ほんとうに大丈夫?」

 

お兄ちゃんの顔には新鮮な驚きが浮かんでいた。いまさら何を驚いてるんだろう?

 

「………………え?ああ、うん。ちょっと記憶があいまいになってただけ。多分疲れてるんだろうな。平気平気」

 

「今日いっぱいはここにいた方がよさそうね。ゆっくり休んでから明日にでm「ちょちょちょちょちょっと!!」

 

「?」

 

()()()()は一体、なんだよ……?」

 

「さっきの?……ああ。」

 

やっと私たちがキスしたことに思い至ったらしい。どうして今になって顔を真っ赤にして反応してるのかはよくわかんないけど。

 

「もう一回したいの?」

 

「ち が い ま す ! ! ……もういいよ。僕はもう昼寝するから。おやすみ!」

 

「じゃあ私も昼寝しよ」

 

「だからなんで一緒に寝ようと……いやまぁ別にいいか。これまではそうしてきたし。……なんで自分は()()()()()許可してたんだろう……?」

 

「変なお兄ちゃん。早く寝ようよ」

 

「はいはい。ひと眠りすれば記憶もはっきりするか……」

 

 

 

「………………」

 

「………………ふふっ」

 

心地よい眠気にまどろみながら自然と笑みがこぼれる。

ああ、私は今、幸せだ。

お兄ちゃんの匂いに包まれて、虹が煌めく陽光の下で昼寝をする。安心がどんどん瞼を重くさせる。

 

これからも、ずっと、ずっと一緒なんだから……

 

お兄ちゃんの立てる規則正しい寝息に誘われて、私もすぐに眠りに落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~取得実績一覧~

 

・帰宅部 

アウトブレイク後すぐにどこにも寄らずに帰宅する

 

・自宅警備員

自宅を拠点とし14日間非感染状態を維持する

 

・生存者

14日間生存する

 

・名もなきヒーロー

主要キャラ以外のNPCを救助する

 

・だが断る

学園生活部員の勧誘を断る

 

・スコップマスター

スキル「スコップマスター」を取得する

 

・なかよし!

1人以上のNPCの好感度を最大値にする

 

・私だけって言ったよね?

異性関係が原因でNPCが発狂する

 




これにて、完結です。気が付いたら20万字を超えてしまい自分でも驚いています。
飛馬君一人だけじゃ2週間とてもじゃないけど持たせられないから深い意味もなく妹を生やしましたけど、まさかこんなになるとはね。……ウソです最初から病ませる気満々でしたごめんなさいなんでもしますから!(何でもするとはry)
でも、書いてて予想以上に楽しくてつい盛っちゃったのは事実です。学校生活部を登場させた辺りからは完全にオリチャーでした。普通のめぐねえを書きたかったんですけどね。どこで間違えちゃったんだろう……?(すっとぼけ)

「思ったのと違う……」と感じた方もいるとは思いますが、個人的には結構いい経験ができました。一年かければこれくらいの分量書けるもんなんですね。

書いていて思ったのが自分があんまりヤンデレに詳しくなかったってことですね。テンプレみたいなのがいまいち蓄積できてなくて所々の描写で頭を悩ませました……
なので「ヤンデレと言えばコレ!」みたいなのがあったら教えていただけると嬉しいです。次書く時(もしあったらですが)の参考にしたいです。

とても長かったと思います。それでも最後まで読んでくださってありがとうございます!

オマケとして1話だけ書こうかなって思ってます。(アンケート機能の存在を知って使ってみたくなった)一番多かったものを書こうと思ってます。投稿は早くても来年になる思います……

  • バットエンド(監禁エンド)
  • めぐねえ大勝利エンド(妹を助けられず)
  • その後(二人が無事部員に)
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