がっこうぐらし!称号「自宅警備員」獲得ルート(完結)   作:島国住み

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はぁはぁはぁ……危うく失踪するところだった。


救出作戦 帰り

 

はい。まぁ、始めていきましょう。

 

兎にも角にもりーさんを宥めなくてはなりません。

しかし、どうしよう。自暴自棄になってるので脳死で慰めテンプレートを打ってると逆効果になってしまいます。

正気を失ってるわけではないんですよ。だからきちんとツボを付く必要があります。

ツボを正確に付ければ短時間で決着が付きますし、頓珍漢なことを言えばいつまでも続きます。

 

こうなった原因としては、「役割の不在」が大きいでしょうかね。妹もこれが理由で正気度をぶっ飛ばしてましたし。ここから攻めてみましょう。

あの時どうやって機嫌直したんだっけな……ええっと、抱き寄せて頭撫でてましたね。

 

ハイ却下。

 

そんなことをしたら(社会的に)死んでしまいます。ここには当事者以外に3人も証人がいます。満場一致で武器もない丸腰の状態で外に放り出されるのがオチです。

 

他にはなかったか……あ、その前に色々言って宥めてましたね。妹は結構手伝いとかしてくれてたんで、無理にひねり出した感がなくてホッとしたのを覚えてます。

今回の場合に当てはめてみますと……ダメみたいですね(貢献)

りーさん助けられてばっかじゃないですかやだー

学園生活部員からすれば、りーさんは家計簿作ったり裏方で活躍しているって言えるのでしょうけど、飛真君は幽霊部員ですからね。そんなこと知りません。

飛真君目線から見れば、りーさんは助けねばならないか弱き乙女です。活躍を強調したくても材料を持ち合わせていません。

 

うーん。想像以上に分が悪いぞ……

 

とりあえずなんか言わないと。間が空きすぎてなんかりーさんの無能を肯定しているみたいになってしまう。

 

「僕は大丈夫です。まだまだ動けます。だから、僕のことは心配しなくていいですよ」

 

「さっきまであんなに苦しそうだったのに、大丈夫なはずがない。代わって。私が、私が外を見ておくから……」

 

こんな狭い車内で席を入れ替えるのはめんどくさいので嫌っす。

第一、発狂空けかつ絶賛ヒステリー中の人が冷静に外を警戒できるとは思えない。

 

「い、いや、僕がやりますから。休むのも仕事というか、席を代わるのは無理がある──」

 

「無理?」

 

「あっ、その、そういう意味じゃなくて、現実的じゃないって意味です」

 

「どうして? そんなことない。私にだって……」

 

ただでさえ後部座席はぎゅうぎゅうなんですよ。窓に張り付いていないとりーさんと飛真君はどこかしら触れます。

そんな中、無理やり席を代ろうと迫ったらどうなるか。

カメラワークを工夫すればとんでもないシーンに見えます。位置関係が逆だったら完全に犯罪ですよ。

これは止めねばならない!(風紀委員)

 

「大丈夫です。大丈夫ですから!」

 

ここでりーさんの肩を抑えるのは、仕方ないね(レ)

 

「私には何も任せてくれないの? 役に、立ちたいだけなのに……」

 

「で、でも、今の若狭先輩はすごく体調が悪そうです。活躍できるときは学校に帰ってからでもあるはずです。だから今は休みましょうよ」

 

ポロポロ涙を流しててなんだか調子狂いますね。この調子だと水掛け論で終わっちゃいそうです。

まだまだこれ続くのぉ!? ハァ……(クソでかため息)

 

「でも飛真君、家に帰るんだよね? それだと私、何も返せないまま。だから、今しかないじゃない!」

 

「ぼ、僕は別に、見返りを求めて助けたわけじゃ……」

 

「二度も助けられたのに、私は何もできずに飛真君を苦しめるだけ。私なんて、助かるべきじゃな────」

 

おっとお? これは看過できませんね。

もうなんか相手するのめんどくさくなってきちゃったんで、飛真君にはちょっとキレてもらいましょう。

向こうのペースに飲まれてしまっているんで、糸口を見つけるためにも感情を出します。

好感度下がっても学校で暮らさないからヘーキヘーキ!

 

「助けるのに理由が必要なんですか!? さっきから返すとか役に立つとかそればっかりです。なんでそんな風にしか考えられないんですか!?」

 

「わ、私は、」

 

「僕は助けたいから助けたんです。先輩が危ないと思ったら、身体が勝手に……」

 

「…………」

 

「助かるべきじゃないとか言わないでください。僕は先輩が助かって心底ホッとしたんです」

 

「本当……?」

 

「当然じゃないですか。誰も死んでほしくないですよ」

 

「それは、その通り、だけど……」

 

目には目を。ヒステリーには怒号を。ひとまず上手くいったようです。

おかげで何となく的が見えてきました。

これは、成長欲求(Growth)人間関係の欲求(Relatedness)の二兎追うスタイルですね。どちらかというと人間関係の欲求の比重が重いと見た!

助けられるばかりは自分が居てはいけないみたいで嫌。だから成長したい。でも、今は何よりも肯定が欲しい……といったところでしょうか。

苦境をバネに変えられないタイプ、分かります。

人はパンのみにて生きるにあらず。一番の特効薬はめぐねえホールドです。でも、本人は運転中で手が離せない状況です。

ペラペラと出来あいの言葉と態度を繰り出すのは好きではありませんが、仕方ない。そうでもしなければこの状況を打開できそうもない。道義心で助けましたって言っても立ち直ってくれないでしょうね。

寄り添う感じで進めていきましょう。

 

「それに、先輩にはなんだか運命っぽいものを感じますから」

 

「え?」

 

「この前も間一髪でしたよね。先輩がピンチの時に、ちょうど助けられる位置に僕がいた。偶然と言えばそれまでですけど、それがなければ僕たちはこうやって話すこともできなかったと思うと、ものすごい偶然だなって」

 

「………………」

 

「明日の命も分からない世界に急に放り込まれて。そんな中で妹とどうやって暮らしていこうって、悩んだし、心細かったんです。だから先輩に会えて嬉しかった」

 

「私は何も」

 

「そんなことないです。さっきの取り乱した先輩を見て、僕と同じように、先輩もどうすればいいのか分からなくて、ずっと不安だったのかなって思ったんです」

 

「ごめんなさい。迷惑、だったよね……」

 

「そうじゃなくて、全然達観できてない所が安心できるんです。だって、みんなゾンビになっちゃいました。誰もこんなことを経験したことはない。それなのに少しの失敗が命に関わる。こんなの、耐えられないですよ」

 

さっきのヒステりーさんは息を潜めて、じっと飛真君の話を聞いてます。

目に涙をためて、今にも泣き出しそうです。

これは効いてますね。あともう一押し!

 

「ピンチだったら助けてって言えばいいし、辛かったら泣いていいんですよ。そのために僕たちは一緒にいるんですから。僕たちは奇跡的にあの災厄を生き抜いた()()です。仲間のためにできることがあったら、僕はそれをしたい。この世界で共に生きていきたいんです」

 

「一緒……? 運命……?」

 

「へ?」

 

なんや。急に眼がキラキラしだしたぞ。涙で濡れてるせいかな。

頑張って言葉を選びました。()()って言葉を使ったらそれを半ば認めることになりますからね。

あくまでも同じ被災者として、です。

阿る感じになったのはしょうがない。ヒステりーさんの対応してると正気度が微妙に削れていくから。

早く終わらせるために彼には軽薄になってもらいます。

 

「そっか、そうだったんだ……思い込みなんかじゃ、なかったのね……!」

 

「えっと」

 

「うっ……ごめんね、嬉しくて……涙が、勝手に……」

 

そのまま泣いちゃいました。本当はハンカチとかを渡すべきなんでしょうけど、持ち合わせがないです。

一応、場は収まったかな?

だからといってほっとくのもなんか薄情ですし、窓の外をチェックしながらチラチラりーさんの方も気に掛けます。

ほぼほぼくっついてるような距離感なのでどっちの方向いてるとか気配でわかっちゃうでしょうし、こういう配慮は大事です。たぶん。

 

愁嘆場があったせいで車内はすげー空気です。倍速でいいかな? いいよね。

本当は家の近くで降ろしてもらいたいんですけど、あんなこと言っといてそれはできないですね。

今の学園生活部は戦力に不安がありすぎるのでセーブスポットまで連れていかないとダメですね。

そもそも武器もチャリもない。学校で代替品を調達しないと帰宅すらままならない。

ちゃんと水筒は持ってきているのでガバにはなりません。

学校の浄化水を飲んでおいて感染予防するのはむしろ正しい動きかもしれない。

自宅警備員は身体が資本ですからね!

 

 

学校が見えてきました。倍速にすると、あっという間だぁ(げっそり)

相変わらずグラウンドにはゾンビがちらほらいます。

屋上には……くるみちゃんがいます。帰りを待っていたようですね。

 

「祠堂さん、もうすぐ学校です。階段は、登れそうですか?」

 

「ゆっくりなら、たぶん……」

 

「私がついていきます。飛真君は私のバットを使って後ろを守ってもらってもいいですか? 前は直樹さん、お願いします」

 

「「わかりました」」

 

「二階に恵飛須沢さんが来てくれることになってます。何とか一階をやり過ごしましょう!」

 

ゴr……彼女の助けがあれば楽勝ですね。

バットは慣れてないですが、役目を仰せつかった以上、弘法筆を選ばずということを見せつけてやりますか!

 

一階は外から入り放題なので長居してても一向に安全になりません。逃げるが勝ちです。

前にいるゾンビたちは音やケミカルライトで対処できますけど、こちらに気付いて迫って来るゾンビは倒さねばなりません。圭ちゃんに速度を合わせているので撒けない。

だから、飛真君は後ろを守る必要があったんですね。

 

役割を指定されず、武器もないりーさんは……飛真君のちょっと前をうろちょろしてます。

課題発見力を身に着けてほしいというめぐねえの願いでしょうね。たぶん。

またさっきのが再発したらたまったもんじゃないので、横を警戒するように伝えておきます。

 

幸い一体づつ処理できたので慣れない武器でも余裕でした。二階にいる間はくるみちゃんがいるおかげで何もせずに済みました。

ボロボロのバリケードを超えれば……セーフエリアだぁ!!

 

「みんなおかえり!」

 

「ただいま。ちゃんとお留守番してましたか?」

 

「してたよ!」

 

「どうですか?」

 

「ああ、ちゃんと大人しくしてたぜ。あたしが保証する」

 

「もー! なんで信用してないのー!」

 

賑やかになりましたね。ゆきちゃんの場を和ませる力は絶大です。

りーさんも笑ってるし、車内とはえらい違いだ。

これにて一件落着ですね。

長居はムヨウラ! ということで水筒に水を補給してさっさとずらかりましょう。

 

生徒会室からは一旦離れて手近の蛇口に行きます。

身に着けているポーチの中は水筒を除くとせいぜい携帯用の応急セットくらいしか入ってないです。

容量の半分以上を空の水筒が占めているのですから違和感がすごいです。

ツッコまれたら上手く答えられないのであまり見られたくはないですね。

 

トポポポポポ……

 

「飛真くん」

 

ヌッ! りーさんか。早速バレてしまいました。

 

「あっ……何ですか?」

 

()()()そろったことだしお昼にしようと思うんだけど、何か希望はある?」

 

え、お昼食べるの既定路線なの。たしかにお腹は空いてますね。

でも疲れているし早く帰りたい。うーむ……

 

「あ、無理に考えなくてもいいよ。たしか、アレルギーとかはなかったよね?」

 

「はい。だけど家に妹────」

 

「いけない! そういえば飛真くんは部員になってから初めてここに来たんだよね。飲み物を置いてる場所とか、わかんないよね。ちょっと待ってて。祠堂さんも呼んで、学校の案内するから!」

 

行っちゃった……

たしかに、水以外にも武器も持っておかないとダメだな。あわよくば自転車も。

別に今すぐ家に帰らないといけない訳ではないですしね。少しここで休憩してからでも大丈夫でしょ。

 

まずは水筒の中身を一杯にして、自らも水を飲みましょう。

はい! これで感染予防ができました!

空気感染は完封、噛まれてもだいぶ保ちます。理屈は知らん。

 

丁度良く圭ちゃんがみーくんに付き添われて来ましたね。

ゆきちゃんがつられて寄ってきて、それを諫めるためにめぐねえが……

いや、結局全員集合じゃん。

 

「みんなついて来ちゃって……」

 

「先輩として、私が案内する!」

 

「ゆき先輩変なこと教えないでくださいよ」

 

「教えないよ! えー、まずここが教室で……それでこっちも教室!」

 

「……やっぱり私が案内するわ」

 

セーフエリアは3階だけみたいで、案内自体はすぐ終わりました。

尤も、みんなこの学校で学生なり先生をしてたんですから大して説明することもありません。

耳よりの情報としては職員用の更衣室にシャワーがあることですね。

まるでこうなることを予期してたみたいだぁ(白目)

 

「えっ、この学校って3階にもシャワーあったんですか!?」

 

ここの学校の生徒でも知らない人多いでしょうね。案の定圭ちゃんも知らなかったようです。

 

「な。珍しいよな。おかげで大助かりしてるよ」

 

「二人ともシャワー入ったら? 私たちはその間にお昼の準備をしておくから」

 

「いいんですか!?」 

 

「もちろんよ。飛真くんも遠慮しなくていいのよ。()()なんだから」

 

もちろん入りたい。清潔さは病気のリスクを減らすだけでなく正気度も改善してくれます。

シャワーは貴重なので効果も高いです。

しかし、こうあからさまに()()と言われちゃうと肯んじにくい。

それに、勝手にシャワーなんか入ったら絶対妹が怒る。

ズルい! 私も学校行く! ってなりかねん。

妹だけで行ってこいともなりませんからね。喧嘩は必定。敗北は目前。抵抗しましょう。

 

「いや、でも、服が……」

 

「服なら購買部にあるわ。上から下まで全部揃ってるはず」

 

そうなんですよね。ここの購買部、コンビニ以上に品ぞろえいいです。

なんでなんでしょうねぇ?(すっとぼけ)

 

「あたし取ってくるよ」

 

「タオルはこっちに。シャンプーとかは何種類か置いてあるから合うのを使って……あ、男子の方はまだ何も置いてなかったわ」

 

「じゃあ、飛真くんはコレ使って」

 

「用意早っ。でもいいのか? りーさんがいつも使ってるやつじゃん。ショッピングモールに行った時わざわざ持ってきて、もう在庫ないんだろ?」

 

「なくなったら他のを使えばいいわ。それに、戻すのもめんどくさいし……」

 

ここまでされたら入るしかないですね。しょうがねぇなぁ~^^

皆さんのご厚意を無下にはできませんねぇ!

妹には返り血がすごくて仕方なく身体を洗ったと言っておきましょう。

服が変わったのも説明できます。

 

お言葉に甘えて入ることにします。

さすがに下着は自分で選びたいのでくるみちゃんについていって服を調達します。

 

後はもう、更衣室に入って、蛇口捻って、身体洗いまくりですよ。

いやー、一週間以上シャワー浴びてないですから。ここまでくるとなんかワクワクしてきますね。

正気度がみるみる回復してます。久しぶりだとこんな感じで回復幅が大きいです。

 

ふぅ、ビール! ビール!

冷えてるか~?(発狂リスク)

パパッと着替えて、終わり! 閉廷!

ここに居ても暇なだけなので生徒会室にでも行きますかぁ

 

「あっ、飛真くん。もう上がったの?」

 

りーさん!? ビックリした。開けたらすぐいるんだもん。

(ドアの前に立つのは)やめようね!

 

「まぁ、烏の行水なので。シャワーありがとうございます。さっぱりしてすごく気分がいいです」

 

「ふふっ、お礼なんかいいのよ。洗濯どうしようと思ったんだけど、上着とかは血で汚れちゃってるよね……」

 

「はい……不衛生なので洗わず捨てた方がいいと思います」

 

「もったいないけど、仕方ないわね。じゃあ、血とかで汚れてない衣類は洗っちゃうからそのままにしておいて」

 

血が全くついてない服なんて、パンツくらいしかないんですがそれは……

指摘はしません。面白そうなので。

 

「お昼はもうすぐできるから、ちょっと待ってて。部室にはみんな集まってるけど、騒がしいかも。空き教室に寝袋とか一式あるからそこで……」

 

「いや、()()()()の方に行きます。賑やかな方がいいです」

 

「じゃあ()()はこっち……ってさっき案内したばっかりだったね。私はこっちでお昼を作ってるわ。できたら声をかけるね」

 

はははははは……

表情はにこやかなままだけど、なーんか凄みがありますねぇ

部屋の呼び方なんてどうでもいいとおもうの(震え声)

 

生徒会室には圭ちゃん以外は全員揃ってますね。これだけいると、確かに狭いかも。

 

「あっ、戻ってきた! ねーねー、大富豪やろうよ!」

 

ゆきちゃんは相変わらず元気いっぱいですね。

もちろんやります。

 

「はい、新しい人が入ったから役割は一旦リセット!」

 

「ゆき先輩最初からそれを狙って……」

 

「ズルいぞ!」

 

「ふふふ……でもくるみちゃん。リセットになれば貧民から抜け出せるよ?」

 

「ゆきの提案を強く支持します」

 

「口調変わってる……。飛真君は平民スタートでいいじゃないですか」

 

「みーくんは大富豪だからそんなことが言えるんだよ!」

 

「私はどっちでもいいけど……」

 

いいですねえ、この賑やかさ

まさにがっこうぐらしって感じです。

 

これはミニゲームの「大富豪」ですね。学園生活部の面々との関係が一定以上だと誘われることがあります。

一緒に遊ぶとさらに仲良くなれますし、正気度にもプラスの影響があります。

遊んでばかりいたら学校の開放が進まないのでやりすぎは禁物ですが、一粒で二度おいしい良イベントです。

ちなみに、りーさんとみーくんは強いです。虎視眈々と一抜けを目指してきます。

めぐねえと圭ちゃんは普通。くるみちゃんは浮き沈みが激しいです。

ゆきちゃんは弱いです。配役が強くても何故か負けてます。

 

今回はりーさんがいないのでみーくんの独壇場でしょうね。

 

 

~資本主義学習中~

 

 

「みんなー、できたわよー」

 

お。できたみたいですね。

初めは安定して富豪の地位を守ってましたけど、途中で圭ちゃんが入ってきて大荒れの展開になりました。

人数が増えたのにゆきちゃんが革命を起こして、やっぱツキは持ってるなと思いました(こなみ)

 

放送室兼キッチンダイニングにぞろぞろ移動します。

 

「わっ、これ……パンケーキ!?」

 

「なんかリンゴの匂いもするぞ!」

 

「新しい料理に挑戦してみたの。上手くできてるといいけど……」

 

「もう、二人とも棒立ちにならないで。後ろが詰まってるわ」

 

見た目は本当にパンケーキです。でも、卵とか牛乳がないと作れないはず……

どうなってるんだ??

 

と、とにかく、食べてみましょう。

 

「「「いただきまーす!!!」」」

 

「おいしい!」

 

「もぐもぐ……おいひい……もぐもぐもぐもぐ」

 

「ちょっと! お行儀が悪いですよ!」

 

「そうだぞ……もぐもぐ……食べてるときは……もぐ……しゃべっちゃダメなんだぞ……もぐもぐ」

 

「恵飛須沢さんもです!」

 

本当に美味しいみたいです。みんな幸せそうな顔をして頬張っています。

これは料理上手ですね。

 

トランプ遊びをした後、おいしいお昼。……最高か?

 

「飛真くんは……? どう、おいしい?」

 

「はい。フォークが止まらないです。でもこれ、卵も牛乳も使ってないですよね。どうやってこんなにふんわりおいしく仕上げたんですか?」

 

「気に入ってくれてよかった。それはね、りんごジュースを使ったの」

 

「りんごジュース?」

 

「そう。だけど、それだけじゃふっくらしないからサラダ油を────」

 

ほえー。すんごく丁寧に教えてくれました。

ジュースでも缶入りなら保存効きますよね。完全に盲点でした。

りーさんの料理に関する知識とアレンジ力は本物ですね。とても勉強になります。

 

「ねぇねぇ、りーさん!」

 

「ん? 何?」

 

「飛真君とばっかり話しててずるいよ!」

 

「ゆきは大富豪で遊んだんでしょ。私はその間、料理してたんだから」

 

「ぶー、そうだけどさー」

 

料理の話に夢中で周り見えてなかったわ。もう食べ終わってるし。他の人も既に平らげてますね。

 

「そういえば、青木は()()()来たのか?」

 

遂に聞いちゃいましたか。

そりゃ家に来てなかったんだから疑問に思いますよね。

 

「……一人で来た。妹はまだ家にいるから、帰らないといけない」

 

「帰る……? あっ、ここで暮らしてたわけじゃなかったんですね」

 

圭ちゃんにはここらへんの事情は全く話してなかったですね。

それは仕方ないとして、なーんで空気の質量が急に増えるんですかねぇ

さっきまで超にこやかに話してたりーさんは、表情そのまま、目は笑ってないという非常に器用なことをしてます。怖いですね(震え)。

 

 

「えー! 一緒に来ればよかったのに」

 

「そうしたかったんだけど、妹はあんまり戦い慣れてないから。次は連れてくるよ」

 

まぁ次なんてないけどナ。

 

「ふふ、楽しみだわ」

 

「早く会ってみたいな」

 

「……ごちそうさまー。食べたら眠くなっちゃった。お昼寝しちゃおうかな」

 

「ゆきはホント自由だなー」

 

「食べ終わったら作業を始めますよ。今日中に二階を取り戻さないと。まずは歯を磨きましょうね」

 

「ぶー、分かったよー」

 

「私は何をすれば……」

 

「祠堂さんは足のこともありますし、休んでいてください」

 

各々散っていきました。飛真君は特に言及されませんでしたね。残ってるのは皿を洗っているりーさんだけです。

とは言え、さぁ食べたし帰るかーって訳にはいきませんよね。ごちそうになったし、何か手伝ってから帰りますか。

自分にできることといいますと……二階の開放ですかね。

外に比べれば安全な環境で経験値を稼げるのでうま味です。

 

武器は放送室のロッカーで調達します。

ありました。自在ぼうきです。

学校ではお馴染みの掃除道具ですよね。威力は全然ないですが、リーチはそれなりにあります。

 

「飛真くん、ほうきなんか持ってどうしたの?」

 

「これを使って下の手伝いに行こうかなと」

 

「え、さっきシャワー浴びたばっかりじゃない。汚れちゃう! それに、武器がほうきじゃ危ないわ」

 

たしかにほうきではトドメを刺すのは難しいです。でも、()()()くらいは十分できます。

 

「大丈夫です。みんなもいますし、無理をするつもりもないですから」

 

「もしかして、そのまま帰っちゃうの……?」

 

「そうですね、そうしようと思ってます」

 

長居する理由も特にないしな。

 

「…………そっか」

 

まぁいいや。さっさと手伝いに向かいましょう

 

まずは合流しますか。スコップなら単独でも十分動けますけど、今の飛真君には補助が必要です。

バリケードの見張り番をしてたゆきちゃんに聞いてみたところ、めぐねえとくるみちゃんが下に向かったそうです。予想通り。

 

ああ……いたいた。

スコップの子気味いい音ですぐ分かりますね。

俺も混ぜてくれよォ(スマイル)

 

「うわっ……って青木か。手伝ってくれるのか?」

 

教室はゾンビが数体転がってます。丁度倒し切ったのか。

 

「うん。先生は?」

 

「……そっち」

 

教室の端にいました。全然気づきませんでした。

窓から空を眺めてるみたいですね。

 

「どうしたんですか。顔色が悪いですよ」

 

「ああ、飛真君。あの時できたから、今もできると思ったけど……」

 

あの時?

圭ちゃんを救出した時ですかね。たしか、車に戻る前にめぐねえは一体ゾンビを仕留めてましたね。

 

「手が震えてしまって、結局、恵飛須沢さんの力を借りることに……」

 

くるみちゃんが異常なだけで、そんなもんですよ。

イベントで最序盤に覚醒するくるみちゃんと比べてたら精神もたへんで。

かくいう自分も、ゲームを始めたての頃はゴリラに勝てない勝てないと袖を濡らしていました。

 

「多分、武器の相性が悪いんですよ。交換しませんか?」

 

「えっ、いいけど……飛真君、ほうきじゃ心許ないというか」

 

金属バット、ゲットだぜ!!

返してと言われる前に袖を掴んでグイグイ進みます。

 

「まぁまぁ、次の教室に行きましょう。三人でかかれば余裕ですよ」

 

次の教室は……5、6体か。普通の引きですね。モンスターハウスを当てなければなんとかなります。

 

「先生はほうきを使ってゾンビをつついてください」

 

「でも……」

 

「お願いします」

 

「わ、わかったわ……えいっ!」

 

ほうきではほとんどダメージは入りません。しかし、相手の攻撃が当たらない距離から確実に一撃を食らわせることができます。その際生まれる一瞬の怯みを見逃さなければ……

 

ゴンッ!!

 

慣れない武器でもフルスイングで確殺できます。

 

「ありがとうございます。この調子でもう一体殺りましょう。えっと、恵飛須沢先輩は……」

 

「くるみでいいぜ」

 

「くるみ先輩はあっちをお願いします」

 

「あいよー」

 

あとは流れ作業です。めぐねえも始めの恐怖さえ消えればちゃんと動けます。

直接的に手を下しているわけじゃない分、気も楽でしょうしね。

 

「やった……!」

 

クリアできました。これくらいお茶の子さいさいです。

 

「先生のおかげです」

 

「……そんなこと、ないわ」

 

「先生は、生徒想いのいい人だと思います。でも、最初から最後まで全部一人でやろうとするのはよくないですよ。協力すれば、こんなに簡単なのに」

 

そうです。だから、強い武器を寄越すのです!

なんでほうきなんて貧弱な装備で駆けだしたかというと、はなっからバーター目的でした。

めぐねえには悪いですが、帰るためには必要なことなんです。

 

「ありがとう……」

 

えっ、泣いてる!?

さすがに魂胆バレバレだったか?

 

「あーっ! 先生泣かせたー!」

 

「違うの、恵飛須沢さん。嬉しかったの」

 

「分かってるよ。めぐねえもさ、いつまでも苗字にさん付けしてなくてもいいんじゃないの? 青木は最初から名前で呼んだのにってゆきがぶーぶー言ってたぞ」

 

「そうね、()()()さん。ずっと生徒は苗字で呼んでたから……ちょっと変な感じね」

 

なんか名前イベント来ましたね。

学園生活部同士の絆が深まるのいいゾ~これ。

バット奪って地固まるということですね。(違う)

 

この調子で他の教室も開放していきましょう!

同じことを繰り返すだけなので、倍速でいきます。

 

 

~~3倍速~~

 

 

「これで全部、ですね」

 

「ふぅ~、さすがに疲れるな」

 

「でも、二階は全部開放できました。二人とも、ありがとうございます」

 

バットのいいところは返り血が付きづらい所ですね。

随分振り回しましたけど、大して汚れてません。

これなら着替えなくてもよさそうです。やることはやりました。さっさと帰っちゃいましょう。

 

「ちょうどキリもいいですし、僕は帰りますね」

 

「あっ……じゃあみんなを呼んできますね」

 

「そんな大げさにしなくて大丈夫です」

 

「まぁ、またこっちに来るもんな」

 

ソウデスネ。行けたら行くわ。

おっと、ポーチ忘れてた。水を持っていくのがここに来た目的でしたね。危ない危ない。

 

「飛真くん、もう帰っちゃうの?」

 

「うわっ……って、りーさんか」

 

神出鬼没すぎるだろ! ウインカーでも出してほしいですよ。

めぐねえに至っては驚きすぎてビクンと跳ねました。かわいいですね。

二階はセーフエリアになったので現れてもおかしくはないですけど、タイミングが妙に良すぎる。

これはチラチラ見てましたね(確信)

 

「そのつもりです」

 

「じゃあ、これ……荷物。缶詰とか入れようと思ったけど、邪魔になるかもしれないからそのままにしておいたわ」

 

「帰るときに武器はそれのままでいいのか? あたしの相棒と交換でもいいぜ?」

 

めっちゃ魅力的な提案ですね。くるみちゃんが使ってるスコップは一点ものの専用アイテムとなってます。各種バフが盛られたまさに鬼に金棒のような一品です。くるみちゃんが使えばさらにバフが強化されます。やばい(やばい)。

他の人も使えます。でも、さすがに譲ってもらうのは遠慮しようかな。

 

「それは()()()先輩に悪いですよ。僕はこのバットがあれば、十分戦っていけます」

 

「それもそうか。さっきも使いこなしてたしな」

 

「いなくなるとなんだか淋しいわ。みんな待ってるから、早く戻ってきてね」

 

おっ? なんかめぐねえ攻めてますねぇ。

いつの間にか仲良くなったみたいです。共同作業したもんね! もうマブダチよ。

……いや違うな。釘を刺しただけか。

 

「…………」

 

りーさんはりーさんで微妙な顔してますね。真意が読めんぞ。

この二人はこちらの魂胆に感づいてる節がありますからね。引き伸ばされないうちに帰りましょう。

 

「じゃあ、また」

 

いつか会えるその日まで。

 

「おう。じゃあな」

 

「帰り道気を付けてね!」

 

「……いってらっしゃい」

 

いつ戻るかを聞かれなかったのは僥倖ですね。一名、ここが家だと思ってる人がいますが。これが信頼ってやつですよ。細かいことは気ニシナイ気ニシナイ。

あとはスタコラサッサです。

 

チャリがあればね、移動中も疾走感があって画的にもそれなりに映えるんですけどね。

徒歩だと泥臭いですね。遅い!

自転車を道中探しながらでもいいんですけど、最短距離で帰ります。

ちょうどこの時間は午前中の昼下がり。大抵の人は学校か職場にいるはずの時間ですから外を闊歩するゾンビは意外と少ないです。

この時間の内に帰らないとヤバいです。プレイヤースキルを過信してはいけない(数十敗)

 

危なっかしい割に進みは遅いので大人しく倍速にします。

 

 

~~5倍速~~

 

 

やっと家周辺です。避けることが難しいので会敵が何度もありましたね。

おかげで、もうちょっとでレベルアップできそうです。

ですけどもう疲れが見えてきています。即帰宅しましょう。

ぬわあああああん疲れたむん!(暗黒合体)

 

「…………!」

 

ベランダに妹がいますね。めっちゃ手をブンブン振ってます。ちょうど張ってたようですね。

 

梯子を登れば……帰宅!

 

「おかえりなさい」

 

「ただいま」

 

外から見た時はすごく嬉しそうだったのに、今はなんか平温ですね。

ニコニコはしてますけど。この顔、なぁんか見覚えあるんだよな……

 

「お兄ちゃん」

 

「なに?」

 

「なんで服が変わってるのか、なんで歩いて帰って来たのか、諸々まとめて説明してくれるんだよね?」

 

「」

 

あっ、詰問タイム始まっちゃった。人助けしてきたのに! 

 

なんだか今日は一日が長く感じられるよ……




まだゲーム内時間で1日経っていないという。
長くなってしまいました。

次は、次こそは、妹パートに入ります……!
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