がっこうぐらし!称号「自宅警備員」獲得ルート(完結) 作:島国住み
「……ちゃん、お兄ちゃん」
「……んー?」
「起きて。もう朝だよ」
起こされました。時間は……いつもより少し早いくらいですかね。
昨日の昼寝のせいかあまり寝れなかったです。
そのせいか、飛真君はとても眠そうです。体力は回復してるのでそのまま起きます。
どうせ今日も家にいるだけだし、昼寝すれば……
「あれ、マスクしてるの?」
「うん……ちょっと、ゲホゲホ……体調が悪くて……」
あー、昼寝は返上ですね。
目にクマができていて顔色も悪いです。
寝不足と風邪気味なだけに見えますが、空気感染の疑いがあります。
「それはまずい。熱はある? 食欲は?」
「熱はさっき測ったけど平熱だった。食欲は……あんまりないかも」
疑いが増しましたね。空気感染はゾンビにどんどん近づいていきます。猶予はありますが、その兆候を見逃すと手遅れになります。
ゾンビに代謝はありません。よって体温はむしろ低くなっていきます。食欲減退もその一環です。
学校の水を飲ませて感染予防できなかったですからねぇ。
アウトブレイクからの日数から考えても空気感染したと診ていいでしょう。
これを放っておくと、だんだん食人衝動とか味覚喪失とかが現れてシャレにならなくなってきます。
知能が高いと自分の行く末に気が付いてセルフ発狂したりします。
でも大丈夫! ほかの病気と見分けがつかない今のうちなら全然何とかなります。
圭ちゃんを救出する際にちょっと言及しましたけど、ここでキーとなるのが学校の浄化水です。感染してしまっても、人としての意識が残っている内であれば治すことができます。
ここら辺のことはゾンビパニックの真相に関わる話なのでこれ以上は話しません。
気になる人は、原作を読もう!(ダイマ)
とにかく、学校に行って浄化水を調達して妹に飲ませる。
それが今日やらなければならないことです。
「わかった。風邪薬を取ってくるよ。自転車借りるぞ」
学校に行くなんて言えないですからね。理由を説明できない。とりあえず風邪薬ってことにしときます。
「え、もう行くの?」
「悪化しないうちに薬飲んで治さないと」
「それはそう、だけど……起きたばっかだよ。ご飯食べた後でも」
「戻ってきてから食べるよ。着替えるから、咲良は部屋で安静にしてて」
水筒を忘れずに持っていきましょう。それ以外のものはいつものポーチに入っています。
あとはバットを装備するだけです。一瞬で準備できちゃいましたね。
「じゃあ行ってくるからー」
「待って!」
「すぐ戻ってくるから。休んでな」
「私平気だから。ゲホゲホ……確かに、咳はあるけど、平熱だし。薬なんてなくたって……」
急を要するので待ちません!
このまま押し問答してもめんどくさいのでさっさと行っちゃいましょう。
「外は危ないからさ、家に居てよ……」
腕を掴まれました。
しょうがない。油断を誘ってその隙に出ましょう。
「大丈夫、大丈夫だから」
何が大丈夫なのか不明ですが、できるだけ優しい声で言います。
妹の部屋に連れていって、雪の結晶を扱うように寝かせてあげましょう。掛け布団もかけてあげます。
なんかあわあわ言ってますが、されるがままですね。病人は大人しく寝てればいいんだよぉ
そしてベランダに出て怒涛の勢いで吊り梯子を下ります!
自転車の鍵はかけていないです。盗む人間がいないので。
そのままチャリにシュゥゥゥーッ! 超! エキサイティン!
ちょうど通勤通学の時間でゾンビは多いですがそんなことは関係ないです。
飛真君の自転車スキルがあれば余裕で撒けます。
ほら、もう学校です。
スタミナの消費を気にしなければこれくらい早くたどり着けます。
問題はこっからです。ゾンビたちが続々と登校しています。さすがに数が多すぎる。学園生活部の援護がないとセーフゾーンに行けないかも……
「飛真くーん!!」
あれは、りーさん!?
たまたま屋上にいたみたいです。よく見つけたな。
こいつは運がいい。
スムーズに事が運びそうです。
向こう側の準備が揃うまで校庭のゾンビ達を始末しておきますか。
「ちょうど様子を見に行こうかって話し合っていたところなんです。
「そうですよ。みんな
「ははは……」
ゴリ……くるみちゃんが1階まで迎えに来てくれたので危なげなく生徒会室に行けました。
それはいいんですけど、なんだこのホーム感は。
まるでこのまま学校で暮らすのを確信しているみたいじゃないか!
ここの浄化水に用があるだけなんて、口が裂けても言えないですね。
「あの、妹さんはどうされたんですか?」
「それが、高熱を出しちゃって……今日は薬をもらいに来たんです」
「…………そうだったんですね」
あれぇ、冷凍庫に迷い込んじゃったのかな?
飛真君の来訪を誰よりも喜んでいためぐねえからとんでもない冷気を感じるのですが。
「じゃあ保健室に行かないとな。でも、1階はゾンビがうじゃうじゃいたな。今行くのは得策じゃないかも」
「なら、朝ご飯を食べてから行きましょうよ。飛真くん、もうご飯は食べた?」
本当はすぐにでも薬を取りに行きたいのだけど……
登校のタイミングで探索をするのは危険だし、そもそも学園生活部の協力を取り付けないと1階で行動なんてとてもできません。
仕方ない、ロスにはなりますが朝食をいただきましょう。
「いえ、まだです」
「私もご飯たべたい! おなかすいた!」
「じゃあ作ってくるから、待っててね」
「僕も手伝いますよ」
少しでも早く朝食を準備できるようにしなければ。
これだけの人数になれば、準備もさぞ大変でしょう。
「本当!? お願いしちゃおうかな」
「…………」
という訳で放送室にやってまいりました。
りーさんと二人きりというのは、とてもドキドキするシチュエーションですね(白目)
「実は、朝はパンで軽く済ませようと思ってて。だから手伝ってもらうことはほとんどないの」
手伝いを申し出た時あんなに嬉しそうだったのに。必要なかったんかーい!
りーさんはせっせと食パンにハムを載せてトースターに入れています。
確かにそれだけなら1人で十分ですね。
電気使えるの羨ましいわ。
「今日は薬を持ったらすぐに行っちゃうの?」
「そのつもりです。だいぶ苦しそうだったんで、傍にいてあげないと」
「そっか。一緒に居られる時間は今しかないんだね。残念」
……これ反応しないほうがいいやつだよね。
生徒会室でみんなと遊んでいたい(切実)
「そうだ、飛真くんの部屋を作ったの。でも、教室を丸々1つ使えるっていっても広くてなんか寂しいよね。今までと同じようにみんな一緒の部屋で寝るのは、その、道徳的に良くないって。私は同じ部屋でいいと思ったんだけどね」
「その部屋にこの間の洗濯物が置いてあるから。最近は晴れが続いていて洗濯物がよく乾くの。たまには雨も降ってくれないと困るけど、やっぱり晴れているほうが気分がいいわ」
「食べ物はまだ購買部から調達できるけど、服の替えがなくなってきてて。特にくるみの分がね。戦いでよく返り血がついちゃうから。今度みんなで服を見に行こうね。私もずーっとこの制服で、さすがに飽きてきちゃった」
めっちゃしゃべるじゃん……
ご機嫌がよろしくて何よりです。はい。
「どうしたの飛真くん。借りてきた猫みたいになっちゃって。ここは
「その、調理の手際が良くて、すごいなーって」
「調理なんて大げさだよ。片っ端からトーストしてるだけ……っと、ちょうど全部焼けたね。お皿をテーブルに持っていってもらっていい?」
「もちろんです」
この場から逃げられるなら、もうなんでもいいっすよ!
機嫌がいいならいいでなんか怖いですね。
早くみんなを呼んできましょう。
ふー、やっと朝食です。
すごく時間が長く感じました。
ハムトーストとバタークロワッサンです。
お湯も沸いているので、お茶も飲めます。
「やったー! ごはん! ごはん!」
「ゆき先輩興奮しすぎです」
さぁさぁ食べましょう。
上品かつ早く、パンをむしゃむしゃするのです。
「めぐねえ大丈夫か? さっきから全然食べてないぞ」
「ええ、大丈夫です……」
確かにめぐねえの様子がちょっと変ですね。妙に寡黙です。
「あの、皆さん、ちょっといいですか」
「どうしたの、めぐねえ」
「食事の最中にごめんなさい。でも、部員全員に伝えなくてはいけないことがあって。これを見てください」
なんだろ……冊子? あっ(察し)
_人人人人人人人人人_
> 職員用緊急避難 < <待たせたな!
> マニュアル <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄
今!? このタイミング!? いや確かに重要イベントだけれども!?
早く帰りたい日に残業が確定した瞬間みたいな気分になってます。
これは遅かれ早かれ踏むことになるイベントです。
このマニュアルは当然皆に大きな衝撃を与えます。きちんと信頼関係が醸成されていない場合、疑心暗鬼が募ることになり部としての統制が取れなくなります。
それだけに、タイミングが大事なのですが、よりによって今かぁ……
「ここには、
「このような状況、って」
「……ゾンビが街じゅうを闊歩している状況、です」
「なんだよ、それ。想定されてたって事じゃねぇかよ!」
「くるみ先輩。落ち着いてください。こうなるまで、先生も僕たちと同じように何も知らなかったんですよね」
「そう……これを読んで私は、私は……」
「その、対応方法ってなんですか?」
「……この学校の地下が非常避難区域となっています。そこに、インフラと十分な生活用品、
「「「…………」」」
俄かに信じられない事実ですからね。固まっちゃいますよね。
「……行ってみようよ! 地下探索たのしそう!」
「私も賛成です。遠くに行かずに物資調達ができるなら、そのほうがいいです」
「そうだな。利用できるものは利用しなきゃな」
まぁ、こうなるわな。
立ち直りが早いのは部員同士でしっかりとした信頼関係があるからですね。
よかったよかった。
しかしですね、当然今日行くことになるわけでして、飛真君もここに付き合うことになるわけです。
妹よ。すまない。帰るの、遅くなりそうだ。聡明だから、きっと身体の変化にも気づくだろう。必ず、必ず戻るから、それまで感染の恐怖から頑張って耐えてくれ。
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屋上に来たのは、何度目だろう。
昨日も含めるともう何十回も上がっているかもしれない。
景色なんてもう見飽きた。
彼が帰ってきているかもしれない。運命の確かさを証明したいがために、またここに来てしまった。
ついさっきまで、彼の元へ再び行くべきか話し合いがあった。
いや、話し合いですらなかったかもしれない。先生以外、誰も乗り気ではなかったのだから。
1人で行ってもいいけど、行き違いになることが怖い。
というかそもそも迎えに行く必要はない。家に立ち寄っているだけ。
帰る場所はこっちなんだから。そうに決まってる。
これまた何度至ったか分からない結論が頭を巡る。
目を向けた校庭も何度見たか分からない砂埃を────
飛真くんだ。
一瞬で分かった。緩慢なゾンビ達とは移動速度が明らかに違う。
「飛真くーん!!」
向こうも私の存在に気づいたみたいだ。さっきまでのうらぶれた気持ちがまるでなかったかのように消える。
急いでみんなに知らせなきゃ!
幸いみんなは部室に揃っていた。
私が窓を見るように言うと、歓喜の声が部屋にこだました。
くるみは早速スコップを持って彼を迎えに行った。
ほかの人たちも色めき立って2階のバリケードに殺到した。
姿が見えただけでこんなにみんなの態度が変わるなんて。私もその一人なんだけどね。
帰ってきた彼は戸惑ったような表情をしていた。
それはそうだ。飛真くんはただ戻るべき場所に戻ってきただけなのに。帰ってきて嬉しいのは分かるけど、待ち望んでいたお客さんみたいに遇されると飛真くんは困ってしまうはずだ。
「あの、妹さんはどうされたんですか?」
直樹さんが当然の問いを発する。次は連れてくると言っていたはずだ。
私からすればあの女がいないほうがむしろ嬉しいのだけれど。一緒に来なかったのには、相応の理由があるはず。
「それが、高熱を出しちゃって……今日は薬をもらいに来たんです」
「…………そうだったんですね」
めぐねえがそう声を発するのに数秒あった。落胆が幕電のように光っている。
でも私は、その数秒で事情を
飛真くんは、私に会うために帰ってきたんだわ!
解熱剤が欲しいなら、学校ではなくドラッグストアに行ったほうがいい。
もっと専門的な薬が必要なら、薬局から拝借したほうがいい。
学校の保健室は市販の医療品しか置いてないし、危険な1階にある。
在学生である飛真くんがそのことを知らないはずがない。
なのにわざわざ学校に来た。
いつも的確な判断をする彼が、薬の調達先として保健室を選ぶとは思えない。
薬は、方便だ。
妹の体調が悪いのは本当だろう。
あの女は飛真くんが学校に帰ることを絶対に許さないはずだ。だから薬を取ってくると言い含めてここに来たに違いない。
これでハッキリした。
妹だから、家族だから仕方なく一緒にいるだけで、ファーストプライオリティは……私だ。
私だけにこにこしていたらおかしく思われるから努めて神妙な顔を作る。
保健室に行くのが単なる名目なのだから、すぐに薬を取りに行く必要はないはず。
まず朝食を食べようと提案したら、あっさりと受け入れた。さらに手伝いをするとまで言ってくれた。
ふふっ、ご飯も食べずにここに駆けつけてきたなんて……よっぽど私に会いたかったのね。
朝食はいつも軽いもので済ませている。私だけでも十分支度は間に合う。
でもせっかく二人きりになれるチャンスを逃す手はない。彼だってそう思っているはずだ。
「今日は薬を持ったらすぐに行っちゃうの?」
「そのつもりです。だいぶ苦しそうだったんで、傍にいてあげないと」
ここには私たちの他には誰もいない。建前を使う必要はないのよ。そういう意味だったのだけど、彼には伝わらなかったみたいだ。硬い言葉が返ってきた。
妹を騙すような形でここに帰ってきたのだから、罪悪感があるのかな。
優しい人だから、きっと家族を大事にしたい気持ちと
私は機嫌よく詰め込むようにたくさん話した。
あまりにも勢いがあったのか、彼は少し引いていた。私が尻尾をぶんぶん振っている犬みたいに見えて恥ずかしい。
食事が始まると、私は寂しくなってきた。
朝食が終わればもう引き留めることができなくなってしまう。彼の口実はあまり融通が効かない。
もっと一緒にいたい。
「あの、皆さん、ちょっといいですか」
めぐねえがそう切り出したのは、そんな時だった。
震えるめぐねえの手には、職員用緊急避難マニュアル、そう書かれた冊子があった。
避難マニュアルには似つかわしくない機密保持条項の後に、後に……
感染、確保、隔離……容赦のない言葉が踊っている。
頭が痛い。読みたくない、知りたくない。取り返しのつかない事が書いてある。それだけは分かる。
意味を読み取ろうと集中しないと文章に向き合えなかった。
くるみが声を荒げても、飛真くんが冷静だったおかげでこの冊子がもたらした衝撃は着実に弱まっていった。
このショックをみんなで共有できてよかった。横に彼がいなかったら、耐えられなかったかもしれない。
今までの私たちは生き延びることだけを考えていた。災害の真相なんて考える余裕も材料も、何もなかった。それがこんなに近くに、通っていた学校にあったなんて。
めぐねえはずっとこれを抱えてたんだ。いつ打ち明けるべきか迷いに迷ったに違いない。
でも、どうしてこのタイミングなのか。もっと早く言ってくれてもよかったのに。
「……この学校の地下が非常避難区域となっています。そこに、インフラと十分な生活用品、
「「「…………」」」
……そっか、飛真くんがいるからか。
こんな大事なこと、部員が全員揃ってからじゃないと言えない。
これを聞いて、妹がいる家に戻るなんてできないだろう。
めぐねえは秘密で彼を縛ることにしたのね。
私にとっても願ってもない話だ。物資が眠っているのならそれは魅力的な話だし、何より飛真くんが出かけてしまう時間を延ばせる。
「私も賛成です。遠くに行かずに物資調達ができるなら、そのほうがいいです」
みんなやる気だ。めぐねえも安心したのか手の震えが止まっている。
事の成り行きを観念した表情で眺めている飛真くんに目配せをする。
これで、もっと一緒にいられるね。
年末年始の間に書き上げようなんて思ってたらズルズル日が経ってしまいました。
がっこうぐらしである以上、職員用緊急避難マニュアルイベントは避けられませんよねー