がっこうぐらし!称号「自宅警備員」獲得ルート(完結)   作:島国住み

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原作が完結しましたね。いつもよりボリュームがあってびっくりしました。


生存者たち
2人きりの家族


……おはようございますぅ

昨日は色々あって疲れましたが十分に睡眠時間を確保したので体力はばっちり回復していますね。

寝る前に妹に何か言われたような気がするんだが……何だったんだろう?

ボタン連打してたからろくに会話を読めてなかった……

まぁいいや。とりあえず妹の機嫌は直ってよかったよかった。

 

今日もやることはたくさんありますし、朝ごはんを作りますか。

作るとは言っても、さすがにこの時期に腐ってないものは元々保存性に気を使った食料品だけなので大したものはもう作れませんね。

 

ありゃ、缶詰とか加工されたものしか残ってないな。もう調理の余地ないかもしれないなぁ

料理上手のスキルを発動させたかったけど今回はあきらめようかな……

 

「どうしたの、お兄ちゃん?」

 

朝ごはん作ろうと思ったんだけど材料がなくて……ってお、おにいちゃん??え?ナンデ?ナンデオニイチャン??

 

「鳩が豆鉄砲を食らったような顔してどうしたの?私何か変なこと言った?」

 

……そうだ!ログ!ログを見れば何かわかるかも!

   

        (ログ確認中)

 

寝る直前にお兄ちゃんって言ってますね。……いやでも何で急に呼び方が変わったんだ?

そういえば初日あたりにあったアンタ呼ばわりとかもいつの間にかなくなってるし…好感度が上がったのかな?確認してみますか

 

おお……8だ…

なんだよ結構上がってるじゃねぇか…(某団長並感)

やっぱ昨日のカレーかな。よっぽどおいしかったんだろうなぁ

…ん?なんか全体的にステータスも上がってないか?

レベルアップはしてないけどステータスは一回り成長してるし、正気度も危険域を脱してる…

さすがにこれはカレーのおかげではないよな…

よくわかんないけど、ステータスアップは嬉しいからヨシ!

 

いつまでも戸棚で唸ってるわけにもいかないからさっさと朝ごはん食べちゃいますか。

今日はシェフ特製カロリー〇イトです!

正気度に余裕ができたから無理して料理しなくてもよくなったのは大きいですね。

 

「「いただきます」」

 

食べてる間に今後の方針でも考えますか

今日でアウトブレイクから4日目。これからのことで一番心配なのが7日目にある雨の日イベントです。学校籠城ルートなら避けては通れない道ですが、今回の自宅警備員ルートでは果たして雨の日の襲来があるのかは分かりません。ないに越したことはないけど、もしあったら現時点ではとても防ぎきれません。ですのですることは相も変わらず家の要塞化です。あと人手も欲しいですね。2人でさばききれるか不安。……ショッピングモールに行きますか。優秀な人材(みーくん)を確保せねば。もたもたしてると学園生活部に取られちゃいますからね。あーでも昨日あんなことあったからなぁ…今日は家にいて明日行くか。

というわけでとりあえず今日はおうちで要塞化への注力をします。

 

「あの、お兄ちゃん。昨日はごめんね。色々上手くいかなくてお兄ちゃんに八つ当たりしちゃった……でも、もう大丈夫。()()()()()ちゃんとするね。一緒に家を守ろうね。」

 

この決意に満ちた目…そして過去を乗り越えたことを匂わせる発言……もしや覚醒イベント?

これならステータスが上がったのも説明がつく。覚醒イベントは主要キャラにしかないと思ってたけどそんなことなかったですね。雨降って地固まったってことかな?

 

ご飯も食べ終わってさぁ早速作業だ!…と思ったんですけど何をすればいいのかわからん。ここんとこずっと外に出ずっぱりでしたからねぇ。

ずっと手持ち無沙汰なのはアレなので昨日持ってきたソーラークッカーでも使ってみようかな…

 

「今日も外に行くの?」

 

ちょうどいいや。妹に頼んで家のこと色々教えてもらいますか。

 

「あ、家にいるの!?でも私、教えてって言われても教えられることなんてないよ…」

 

そんなこと言わずに頼みますよ。一人でやるより二人でやった方が早いでしょ?

 

「わかったけど…期待しないでね?」

 

ほいきた。じゃあ始めますか。

 

何となく自分は木材の加工担当、妹は組み立て担当みたいになっておもったより順調ですね。

…組み立て方を教えてもらったのに、知力不足とコマンドミスで失敗しまくって妹に苦い顔されたのは内緒です。適材適所ですよ。うん。

結構なペースで作っているのでいつの間にか(試)のマークが取れてますね。これからは本来の性能で針鼠を作れるようになりますね。…尤もさらに高品質のものを作るなら金属加工技術や設計図が必要になってきますが。

時間は何時ぐらいだろう…もうお昼ですね。集中してて気づかなかったな…

お腹がすいてきてるのでそろそろお昼にしますか。

 

昼食は朝と変わらずカロリー〇イトです。これだけだと味気ないので「あるもの」を用意してます。

 

「まだ食べ終わってないのにお兄ちゃんどこ行くの?」

 

まぁ見てなって……見た感じはできてそうだな……よし!

 

ジャジャーーン! 焼 き リ ン ゴ ~ ! (裏声)

 

ちゃんと「料理上手」も載ってるのでおいしいハズ。

小さく切ったから火もちゃんと通ってますね。

お!正気度が回復した。これは成功ですね。

 

「おいしい!……でもこれバター使ってるよね?大丈夫なの?」

 

バターに関してはとても悩みましたね。腐ってないか何度も確認しました。海外では常温保存が普通らしいのでまぁ大丈夫だろうと思って使いました。焼けばウイルスとか何とかなるでしょ(無知)

わかった。次からは怪しいものに関してはお伺いを立ててから使うからジト目はやめてくれ。

……別に嫌だったら食べなくてもいいんだよ?

 

「いや食べるけど。ちょっと不安になっただけ」

 

あ、それ自分の分……解せない。おいしかったってことかな?

これで調理した扱いになるからソーラークッカー便利ですね。今後も使っていきたい。

 

「それにしてもいっぱい作ったね。木材の残りも少なくなっちゃった。」

 

たしかに材料がもう心もとないですね。窓に板を張ろうなんて考えてたけどこれじゃ道路側の窓の分しかないなぁ。

 

「明日あたりにでも取ってこないといけないね……」

 

せやなぁ。やることいっぱいだ……

飛真君には出来上がったものを庭に置く作業をしてもらいますか。この時間なら警戒してればかれらに襲われることもないでしょう。

 

作った量が多いだけに往復が大変。いちいち二階に登ってはしご降りなくてもいいとは思うのですがドア開けると万が一の時が怖いですからね……

こればっかりはしょうがないか。

自分が家と外とを行ったり来たりしてる間、妹は有刺鉄線をせっせと鉄条網に変えてますね。普通に手際がいいな。

 

「あ、お兄ちゃん。これできたから外に持ってってほしいな。」

 

ほんとだ。一セット鉄条網ができてる。早速持っていこう。

 

こうやって見ると結構様になってきたな。襲撃されても持ちこたえられそう(こなみ)

とは言えまだまだですね。トラップ自体の数がまだ足りてませんし、できれば地形を凸凹にしたいし……

明日ゴルフボールを持ってきて地面に転がせば割とどうにかなるかな?

……こうしちゃいられない。窓に板を張ってもらおう。

板を張る作業はどうしても音が出てしまうので見張り役と張る役と二人必要になってしまうんですよね。

日が傾いてきて、もうほぼ夕方ですからこれが終わったら今日の作業は終わりにしましょう。

妹も了承してくれたので自分もスコップ持って待機しましょう。

 

カンカンカンカンカン……

 

やっぱ音するなぁ。思ったほど大きな音ではなかったけど。

音がする以上、どうしてもかれらはやってきてしまいます。幸い数は多くないので各個撃破していきましょう。

 

……板を張ってる音が止まりましたね。

一対一ではもうかれらには負けません。危なげなく今日の作業は終了……あ、もう一体来た。

音は止まったのに変だな。まぁいいや、サクッとやっちゃいますか。

 

 

ん?なんか飛真君スコップを振るのを躊躇してる?一体どうしたんだ??

このかれら、詳細情報があるな……えーーっと、【肉親・母親】!?

あぁ……かれら化しちゃったか。おそらく職場からここまで歩いて帰宅したんでしょうね。帰巣本能ってやつか?

もちろん肉親の成れの果てを目撃して正気度は下がります。そして、たとえかれら化してるとは言え肉親を殺せば……正気度が逝きます。

想定してなかった……どうしよう。

おびき出して家からはなれたところまで誘導しても、結局帰巣本能で家を目指すのでただの引き延ばしにしかなりません。……妹が見てないうちにやるしかないか。

 

「お兄ちゃーん。終わったから戻ってきていいよー!」

 

げ。

 

「そ、それ……お母さん?」

 

ああああああ気づいちゃった……

することは変わらない。やるしかない。しかし……まずいな。やっと正気度が安全域に入ったと思った矢先にこれだよ。正気度を下げるランダムイベント多すぎじゃないか?

 

逡巡してる間に家のすぐそばまでやってきてしまった。

うぅ……最悪の状況だけど…ごめん!

 

グサッ

 

「………………っ」

正気度ゴリッと減ったなぁ…妹も昨日と同じぐらいの水準まで正気度下がってるし…

夕日がまぶしいですね。どす黒い血で汚れたスコップが夕日に洗われて鈍く光ってるのが何とも美しいですね(現実逃避)

 

「お墓……作ろ?」

 

おっそうだな。庭に行って墓を作りますか……

 

浅い穴を掘ってそこに()()()()()()()を埋めて盛り土をしただけの簡素なものですが完成しました。もう日は暮れかけていて薄暗くなっているのでこれ以上は苦しいですね。

妹は無言で手を合わせた後ふらふらと家に帰っていきましたね。

自分も手を合わせて家に戻りましょう。

 

正直そんな気分ではないですけど夕食を作りますか。食べないとデバフがかかってしまうから何も食べないわけにはいかない。

いちおう用意した夕食(少なめ)を一緒に食べているのですが……雰囲気が完全にお通夜ムードですね。

 

「……お父さんは職場がもっと都会のほうだった。今まで救援や目ぼしいラジオ放送がないことを考えると……お父さんも、もう……」

 

確かに父親の生存は絶望的ですね。生き残っていたとしても、ここに戻ってくるよりも職場のほうで籠城していた方が安全でしょうから再会は無理そうですね……

 

それから会話はなくそのまま妹はもそもそと寝る支度をして勝手に自分の部屋に行ってしまいました。

まぁ無理はないですね。こちらも寝るしかないですね。どちらにせよ明日はショッピングセンターに行かないといけない。早く寝て少しでも正気度を回復したいところです。

 

今回はしんみりしてしまいましたが、おやすみなさい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………ん?画面がすこし揺れた?…気のせいだとは思うけど、一回起きてみるか。

 

「あ、いや、起こすつもりはなかったんだけど……」

 

何だ妹か。どうしたんだ?

 

「その、なんか眠れなくて……お兄ちゃんはどうなんだろうって思って確認しようとすこし揺らしたら起こしちゃって……ごめんなさい。」

 

おそろしく微妙な画面の揺れ……オレでなきゃ見逃しちゃうね。起こすにはあまりにも揺れがささやかだったので、ほんとに起こすつもりはなかったようですね。

まぁ、それなら軽く声をかけてみるとかでもよかったんじゃない?とは思いますけどね。

 

兄がかれら化した母親を殺したのをその目で見たのですから。そりゃショッキングで目が覚めちゃいますよね。

自分も起きちゃったので妹に星でも眺めようと誘いますか。町に明かりが全くないおかげで夜空は星たちの独壇場となってます。ぼーっと星を眺めていれば眠気もやってくるでしょう。

 

「家族、私たち二人だけになっちゃったね。」

 

父親の安否はまだわからないけどな。状況から考えてもう生きてはなさそうですが。

でもそう考えるとやっぱ悲しいですね。近い人の死を見てしまうとどうしても自分の死を意識してしまって……

 

「お兄ちゃんは大丈夫なの…?その、今日のこと…」

 

正直大丈夫じゃない。もう一回大きな正気度喪失イベントが起こったら確実に幻覚が見えるようになる。でもダメみたいですねぇ……とは言えませんから…

(まだ)大丈夫だよ。

 

「…………そっか。」

 

かれこれ小一時間ぐらい星を眺めてましたね。

なんか星をみてるのも退屈になってきたなぁ…まだ自分の部屋に帰らない妹には申し訳ないが自分はもう眠いので先に寝かせてもらおう。

 

「……あ、お兄ちゃんもう寝るの?そ、それなら……その、あの……」

 

 

「えっと……きょ、今日は一緒に寝ていい?」

 

は?

 

「あっいや違うの!お兄ちゃん今日色々あって心配で!……なんかお兄ちゃん顔色も悪いし!」

 

……ああ!そういうことか!好感度が高い人と夜一緒に寝る(字義通り)と隣に人がいる安心感からか正気度が普段よりも多く回復します。

基本的に同性同士にのみ適用される正気度回復法だと思ってたんですが兄妹だから大丈夫なんですね。

正気度の低下を察知してそれを緩和する行動をしてくれたってことですね。ありがてぇ

拒む理由はありません。

 

「!じゃ、じゃあ失礼します……」

 

妹がベッドに入ってきたのは良いんだが……すごい妹がガチガチに固まってる…もしかしなくても無理してるよなぁ…

そんな無理しなくても……いちおう一人で寝てても正気度は回復するし。

 

「む、無理なんかしてないよ……?」

 

ほんとぉ?(方法的懐疑)

ま、嫌なら勝手に出てくでしょう。割と夜もいい時間ですし普通に寝ます。

 

 

……なんかすすり泣く声がしますが彼女のために気づかないふりをしますか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────────────────────────────

 

 

今日は目覚めが良かった。気持ちがすっきりしてる。

大きく伸びをした後一階に降りる。

 

もうお兄ちゃんは起きていて戸棚を開けながら何やら唸っていた。

どうしたのか聞いたらなんかきょとんとした顔をされた。私何か変なこと言ったのかな?

 

今日お兄ちゃんは家にいて作業を手伝ってくれるらしい。正直教えられるか不安だけど、私は昨日までの私とは違う。頑張ろう!

 

お兄ちゃんはあんまり手先が器用じゃないっぽい。うまくできなかったから、並行作業ではなく流れ作業で作ることにした。そうすると思った以上のスピードで作業が進んだ。たくさん作ったからおぼろげながら要領もつかんできた。いいかんじ。

 

昼食のカロリー〇イトの味に飽きかけてた頃にお兄ちゃんがソーラークッカーで密かに作ってた焼きリンゴを持ってきた。

とってもおいしかった。疲れてたから甘いものが体にしみた。使われてたバターについて疑問に思い質問したら、思った以上にお兄ちゃんが慌てたからつい意地悪をしてしまった。

 

その後の作業も順調で、その日は忙しくも楽しい一日になるはずだった……

 

私はお兄ちゃんに頼まれて板を張っていた。お兄ちゃんのほうは外に出て音に反応したかれらをやっつけている。

板を張り終えて少ししてもお兄ちゃんが帰ってこない。

もしかして終わったことに気づかなかったのかな?呼んでこよう。

 

外に出るとお兄ちゃんは一体のかれらと対峙してた。一向に倒そうとせず間合いを取るためにじわじわと後退してる。なんか変だ。

 

「そ、それ……お母さん?」

 

よく見るとそれはお母さん()()()()()だった。帰ってきたんだ。あんな姿になっても家に帰ってくるなんて……もしかしたらかれらは生前の記憶の一部を保持してるのかもしれない。

覚悟はしていた。状況から判断して両親はもう生きてはいないのだろうと結論付けていた。でも、こうやって真実を突きつけられると悲しみが、信じたくない気持ちが私を支配する。

 

そして。

 

グサッ

 

「………………っ」

 

私のお母さんはお兄ちゃんの手によって殺された。

……母はすでに死んでしまっていた。だからお兄ちゃんは人殺しにはならないし、こうしないと死ぬのは私たちだ。理性は正論を並べ立て私を諭す。

 

きっと私の顔色は悪くなっているだろう。でも兄はその私よりひどい顔をしている。

黒い血が滴るスコップを持ったまま動かなくなったお兄ちゃんに声をかけてお墓を作ってから、日々のルーチンとして半ば惰性で出された夕食を食べるまで私たちは一度も話さなかった。

ぽっかりと心に穴が開いた感覚がする。なんだか疲れた。さっさと寝よう。食後フラーっと立ち上がり寝る支度をしたらすぐにベッドに入った。「ごちそうさま」を言ってないとかを気にする心の余裕は私にはなかった。

 

疲労感があるのに全然寝れない。かれらになってしまった母親のおぞましい姿、苦痛に満ち満ちたお兄ちゃんの顔。そして家族が死んだということ。これらのことを心のどこかに格納しようとしても収納場所が見つからない。一つ一つが大きすぎる。

それ以上に死への恐怖が私を包んだ。死ぬのが怖い。お兄ちゃんが死んでしまったらどうしよう。そのとき私は家族だったもの(お兄ちゃん)を殺せるのだろうか?

 

病気になったわけではないのに体が震える。怖い。寝ることができずに一人でこうやっていると頭がおかしくなってしまうと思った。

 

「……お兄ちゃんは、大丈夫かな」

 

誰に聞かせるわけでもなくつぶやく。恐怖につぶされそうだったからお兄ちゃんのところに行こうとしたわけだが、そのことを悟られたくなかった。

 

お兄ちゃんは寝てた。さすがに起こすのは気が引ける。でも起きてちょっとでもいいから話をしたい。アンビバレントの中で私は体をちょっとゆすってみるという妥協案を採択した。これで起きなかったらあきらめよう。

 

お兄ちゃんはすぐに起きた。思ったより早く起きてちょっとびっくりしちゃったけど、お兄ちゃんは別に訝しんではいないようだった。

眠れないことを伝えると、星を眺めてれば勝手に眠くなるからそうしようって言ってくれた。

 

星を見る。暗いせいでとてもきれいだ。私たちはとんでもない目に遭ってるというのに星は相変わらずささやかに、でも図々しく光ってそこにあったことを証明し続けている。

ゆっくりとだが気持ちが落ち着いてきた。

お兄ちゃんに大丈夫か聞いたら大丈夫だと言っていた。そんなことないと思ったけど黙っておいた。怖いって思うのは私だけなの?

 

一時間ぐらい星を眺めていたらお兄ちゃんがもう寝ると言い出した。

たしかにもう寝るべき時間だけど私はまだお兄ちゃんのそばを離れたくなかった。

まって…もう少し、もう少しだけでいいから……

 

「えっと……きょ、今日は一緒に寝ていい?」

 

思わず言ってしまった。言った後発言の大胆さに顔が真っ赤になる。

一瞬気まずい間ができた。必死に理由を考える。

 

「あっいや違うの!お兄ちゃん今日色々あって心配で!……なんかお兄ちゃん顔色も悪いし!」

 

今度は言い訳の下手さに顔が真っ赤になった。こんな暗い中顔色なんてわかるわけないでしょ!私のバカ!

 

……お兄ちゃんはなぜか妙に納得して了承してくれた。意外と言ってみるもんだな

 

許可が得られたのは良いのだが、いざ入ってみると緊張でガチガチになってしまった。顔も耳まで真っ赤だからろくにお兄ちゃんの方も向けない……

 

お兄ちゃんに無理しなくていいと言われたが、無理をしてここにいていい権利を獲得したんだ。離れるつもりはない。

 

緊張が解けてお兄ちゃんの方を向けるようになった時にはもうお兄ちゃんは寝息を立てていた。表情を伺おうとジィーっと顔を眺めてたけど急に恥ずかしくなってやめた。

安心したからか今まで抑えてきた涙があふれてきた。

やだ、昨日もう迷惑をかけないって誓ったのに……

 

それでも涙は流れてくる。二人分の温もりと匂いの中、ゆっくりと悲しみを涙で流していった……

 




1ヶ月何も書いてないと今までの流れとかをド忘れしちゃって思った以上に時間がかかりますね。
いちおう前回言ってた2月下旬には間に合ったからよかった……

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